「今日はありがとう。楽しかったですよ」
握っていた手を離し、『恋人』が微笑んだ。
「本当なら、泊まっていきたいところなんですけどね……」
名残惜しいのはマルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)も同じである。しかし、
「うぅん。用事があるのはわかってたから。
時間がないのに、それでも会いに来てくれたことの方がうれしい」
微笑んで、もう一度手を握り直す。
「そう? えぇ、私もです」
ふたりは顔を見合わせて笑った。
「じゃあ、これで。この埋め合わせは必ず、また今度……!」
「ふふ、期待してる」
手を振って後ろ姿を見送ったマルレーネは、やはり少しは寂しくて、あてもなく街をうろついた。
ふと気がつくと、喫茶店や雑貨屋など、小洒落た店が建ち並ぶ一角に入っていた。
「こんなところがあったなんて」
いい香りのパンケーキ、可愛らしいペアのマグカップ……。どの店も魅力的だが、見て回りはするものの、やはりひとりでは物足りない。
「……今度、一緒に来てみよう」
そう思えば、物足りなかった気持ちが、次に会うときの楽しみに変わるから不思議である。仄かに微笑んで散策を続けていた、そのとき。
「愛……なんて素敵なのでしょう。どうすれば、それを知ることが出来るのかしら?
たとえば、あなたたちを真似てみればわかるのかしら……こんな姿で?」
「……ッ!」
反射的にマルレーネは跳び下がり、拳を握りしめる。
道の向こうに立ってこちらを見つめていたのは、一房だけ髪を赤く染めた女。
しかし胸には大きなモザイクがかかり、手には炎のようにオーラを纏う「心を抉る鍵」。
「どうかしら? これなら私を愛してくれる?」
ドリームイーターはその鍵を振り上げ、一直線に飛びかかってきた。
思えば、いつの間にか辺りには猫の子一匹見えなくなっている。となれば、敵は自分だけを狙ってきたのであろう。
そう察したマルレーネは、
「ぜんぜん、似ても似つかない!」
と、鍵を弾き返しながら吐き捨てた。
集まった一同の、そして呼び集めた張本人の崎須賀・凛(ハラヘリオライダー・en0205)の前には、巨大な寸胴鍋がスパイシーな香りを立てていた。
話に出てきたお洒落な喫茶店などとは、似ても似つかぬ光景である。
「さささ。『準備』ができたら、すぐに出発しなきゃ。マルレーネちゃんのピンチなんだから!」
そんなことはお構いなしに、凛はカレーをよそって差し出してきた。すべからく大盛りである。
準備というのは、腹ごしらえらしい。
「もぐもぐ……。ん~、おいしい♪」
ジャガイモは大ぶりに切られ、よく煮込まれてとろけている。満面の笑みでその柔らかさを堪能した凛は、少し表情を改めて。
「マルレーネちゃんのことを、『ラブ・シーカーS』っていうドリームイーターが狙ってるみたいなの。
もちろん、マルレーネちゃんには連絡しようとしたんだけど……」
口ごもった凛は、空になった大皿を手に寸胴鍋に向かう。よく見ると、奥にも鍋がもうひとつ。こちらは挽肉のキーマカレーのようだ。
山ほど盛った凛は席に戻り、スプーンを手に説明を続ける。
「もぐもぐ……。
出かけてるみたいで、つながらないの。気づいてないだけだったらいいんだけど……」
瞬く間に空になった大皿にスプーンを置き、凛はため息をついた。
一刻の猶予もないことは間違いない。
そうそう敵に後れを取る彼女ではないだろうが、さすがにドリームイーターにたったひとりで立ち向かうのは無謀である。
寸胴鍋が、さらに奥にもうひとつ。ダシのとれたとろみの強い和風カレーを、今度は丼によそった。
「もぐもぐ……。
幸い、辺りは人払いされているから、巻き込む心配はないわ。
……まぁ、建物はどうしようもないけど、そんなことを言ってる場合じゃないから、気にしないでいきましょ!」
と、凛は鶏肉を口に放り込んだ。
「兎にも角にも、マルレーネちゃんの無事がいちばん!
ちゃんと全員、怪我しないで帰ってきてね。カレーのおかわりも、まだ残ってるんだから」
そう言って凛は、口元をナプキンでぬぐった。
参加者 | |
---|---|
一式・要(狂咬突破・e01362) |
メリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634) |
ミルティ・レイリス(グラフティンカーベル・e03498) |
機理原・真理(フォートレスガール・e08508) |
マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685) |
フワリ・チーズケーキ(ふわきゅばす・e33135) |
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384) |
ケル・カブラ(グレガリボ・e68623) |
●愛の力ってなにかしら
「愛する者の姿を模して襲ってくる敵……少々事情は異なるとはいえ、他人事とは思えません」
と、如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)は整った眉を寄せた。
「愛するモノ、ネ……」
と、ケル・カブラ(グレガリボ・e68623)は苦笑いする。愛と聞いて思い出す……といえば。
そんな彼らの隣に腰掛けているのは、ふたりの少女。
そのひとり、フワリ・チーズケーキ(ふわきゅばす・e33135)が、小さな拳を握りしめた。
「マルレーネお姉ちゃんの敵を、みんなでやっつけちゃうのにゃー!」
「ミルも、フワリちゃんのそっくりさんが出てきたら困るなー。フワリちゃんをいじめる人は、ミルがお仕置きするの!」
と、ミルティ・レイリス(グラフティンカーベル・e03498)も意気込む。
「わぁ、ありがとにゃー」
「こらこら、違うでしょ」
一式・要(狂咬突破・e01362)が苦笑する。
そうこうするうちに、ヘリオンが降下を始めた。
メリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634)は席から立ち上がり、芝居がかった仕草で一同を見渡す。
「さぁ、無事に事件を解決して、幸せなデートの時間を過ごせるようにしないとね♪」
最後に視線を向けたのは、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)の方。
しかし真理はそれに応じず……応じるゆとりもなく、着地して扉が開くや、
「行きますッ!」
と、ライドキャリバーに跨がった。まるで弾丸のように加速する。
「あらら……。まぁ、無理もないですよね」
メリーナが肩をすくめる。
「じゃあ、急ぎましょう!」
「そうだね。
その前にフワリちゃん、口の端にカレーついてるよ」
「にゃにゃにゃ……!」
要から差し出されたティッシュで口元を拭いながら、フワリはヘリオンから飛び出し、真理の後を追う。
そのころ。人気のなくなった雑貨店の前では、ふたりの人影が対峙していた。
「どうかしら? これなら私を愛してくれる?」
「ぜんぜん、似ても似つかない!」
マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)はオウガメタルを纏った拳で、振り下ろされた鍵を弾き返した。
「そう? 自分では、けっこういい線いってると思うのだけれど」
自分の全身を見下ろし、ラブ・シーカーSは肩をすくめた。
「この……!」
その仕草のひとつひとつが、いちいち癇に障る。彼女らしくもなく眦をつり上げたマルレーネは、殴りかかろうとした。真理はそんな顔、しない。そうは思うのだが。
わずかに躊躇したのか、敵の方がが先に間合いを詰めてきた。胸元のモザイクが巨大な口のように大きく開き、マルレーネの肩にかじりつく。
「あぁッ……!」
「いいのよ? 素直になって、愛してくれても」
ラブ・シーカーSが微笑みながら、膝をついたマルレーネに近づいてくる。
爆音が急速に近づいてくる。
「マリーを、しかも私の格好で狙うなんて、ダメなのですッ!」
真理の乗った『プライド・ワン』が、炎を纏って突進した。
「あら……!」
敵が跳躍して、街路樹の枝に飛び移る。
しかし、
「よそ見は損ですよッ!」
メリーナが、流星の煌めきと重力を込めた蹴りを浴びせる。吹き飛ばされた敵は石畳に叩きつけられた……かと思いきや、くるりと宙返りして着地したではないか。
「あらあら……痛いわ」
と、敵は笑った。
「なんですか、その余裕!」
メリーナが唇を突き出す。
「簡単にはやらせないということですね。
ですが、ここまでです。横暴は止めさせていただきます!」
沙耶が握りしめた大槌から、竜砲弾が放たれる。
敵はとっさに鍵を盾にしてそれを受け止めたが、その威力はとうてい防ぎきれるものではなく、雑貨屋のショーウインドウを粉々に砕きながら吹き飛ばされた。
しかし敵はすぐに立ち上がり、ウサギの絵がプリントされたティーポットの破片を踏み砕きながら戻ってくる。
その敵に、ケルは指を突きつけた。
「アナタは愛を知りたいんデスネ? それなら簡単デス!」
「へぇ……?」
「このボク、グレートプリティーセクシーガーリッシュボーイと愛し合えばいいのデース!」
微笑みを浮かべながら片目をつぶる。常人が発すれば寝言であろうが、土蔵篭もりの忌まわしき美貌は敵を縛る呪いにも成りうる。
「だったら、愛し合いましょうか? その血も、肉も、骨も、すべてを私にさらけ出してくれる?」
巨獣の顎のごときモザイクが、ケルを飲み込んでかじりついた。
「嘘デス嘘デス! 死ぬほど痛いのは嫌デースッ!」
纏っていたバトルオーラまで力なく揺らめき、血塗れになったケルは這々の体で退いた。
「もうちょっと穏便な愛がよかったデス……」
「デウスエクスにそれを期待するのは、ちょっと無理だろうね」
要がため息をつく。
「どうにもやりづらい相手だけど……当人たちが躊躇しないのなら、遠慮は無用か」
襲い来るモザイクを避けながら、電光石火の蹴りをお見舞いする。街灯に叩きつけられた敵はまたしても起きあがったが、隙はできた。
その間に、真理はマルレーネを助け起こす。
ところがマルレーネは開口一番、
「用事はどうしたの!」
何のことかを完全に忘れていた真理は、きょとんとした顔をしたが。
「マリーの助ける以上に大切な用事が、ある訳ないでしょう?」
そうね、真理ならきっとそう言うと思ってた。だって……きっと私もそうするから。
思わず表情を緩めてしまったマルレーネだったが、慌てて頬に両手を当てて敵を睨む。すると仲間たちの背後で、色とりどりの爆発が起こった。
「真理の予定を台無しにして……代償は高くつくよ!」
チェーンソー剣で斬りかかる。ところが敵は、嘲笑しながら跳び下がった。
「あはは……♪ なにもかも後回しにして駆けつけるなんて、素敵な愛だわ。
……えぇ、私もそう。あなたを殺すことだけを、考えてるもの」
「く……ミルティ!」
「はい、なの!」
マルレーネの意図を察して、ミルティはオウガメタルを煌めかせる。
「ミルティちゃん!」
「うん、フワリちゃんも!」
「任せて。私はみんなを守るにゃ!」
頷きあったふたりはドリームイーターを一瞥し、そして仲間たちを見渡した。
ミルティのオウガメタルが仲間たちの超感覚を目覚めさせ、フワリの足元に広がったケルベロスチェインは魔法陣を描く。
「これで、イチゲキヒッチューだよ!」
「元気百倍なのにゃ!」
「助かります」
「さっきのお返しデース!」
沙耶が錫杖を構えると、その先端から『時空凍結弾』が放たれた。それは狙いも正確に、敵のモザイクを貫く。そこから刃のように氷が発して、ラブ・シーカーSはよろめいた。
そこに、ケルが躍り掛かる。ミルティの援護もあってか、その蹴りは胸元に食い込み、敵は悶絶しながら転げ回った。
「ち……!」
起きあがった敵は憎々しげに舌打ちし、モザイクを飛ばしてきた……かと思えば、後ろに大きく跳躍したではないか!
「あッ!」
ミルティのビハインド『ミスティ』がすかさず割って入り、モザイクを受け止めた。無傷とはいかずよろめいたが……。
「ゴメンね、今は気にしていられないの!
いくよ要ちゃん! フォーメーション!」
メリーナは叫ぶや、要に向かってウインクしつつ敵を追う。
「どんな作戦よ、それ」
そう言いつつも要は、敵を押し包むように逆側から迫る。
「それ!」
敵の周囲に、無数の影絵が踊る。子供たちが楽しげに手を取り合って。
「緞帳が降りて、『魔法』が解けて……」
しかしメリーナの指がパチリと弾かれるや、影絵は輪郭を失って崩れ、敵に絡みついて、凄まじい「重力」で奈落へと引き込んでいく。
「重力というならね。
招き入れたら逃がさない。生憎、地球さんは嫉妬深いんだ」
今度は要の鎖が、敵をからめ取った。地球の力を借りて……といえばもっともらしいが、要するに、渾身の力で地面に叩きつける。
煉瓦を模した色鮮やかな石畳が砕け散り、無数の骨がへし折れる音が響く。飛び散った血が、地面を汚した。
「ぐ、ああ……!」
「愛を知りたいのに、逃げるつもり?」
「私を倒せないようで、マリーの愛は得られないですよ!」
「ちょ、ちょっと、真理……」
マルレーネがさすがに照れくさそうに、うつむいた。
「逃がさないのですよ……!」
平然とした顔の真理。その手のひらが地面に触れると、彼女に寄生した攻性植物が地中に根を張っていく。蛇がうねったように石畳が持ち上がり、敵の足元から突出した穂先が、腹を貫く。ほとんど同時に、気を取り直したマルレーネが放った桃色の霧が、敵を押し包む。
「霧に焼かれて、踊れ」
強酸性の霧に服を裂かれたラブ・シーカーSが、笑う。
観念したようである。といっても、それは包囲されたこの状況から退くことを諦めたというだけであって、
「うふふ……。ムキにならないで。彼女の愛は、私が代わりに受け止めてあげるから」
と、婉然とした笑みを浮かべて嘯いた。
●愛の力ってこれかしら
実際、敵はケルベロスという強敵に囲まれながらも、まったく恐れなど抱いていなかった。
要が、ケルが立て続けに仕掛け、後方からは沙耶とメリーナが狙いを定める。少なからぬ手傷は負わせたはずだが、それでも敵はモザイクを飛ばし、あるいは喰らいつき、ケルベロスたちを苦しめた。
「沙耶さん、味方デス!」
「ご、ごめんなさい……! く……厄介ですね、これは」
ケルの声で沙耶は、振りかぶった大槌を寸前で止めた。頭を振って、沙耶はなんとか正気を保とうとする。
「気にしないでほしいデス。敵の力、凶悪ですからネ……」
「どんなに敵が強くたって、防いでみせるからね!」
ミルティが長剣を振り、地面に守護星座を描いて仲間たちを護る。霧がかった意識に、清涼な風が吹き込んだ。
しかし、ラブ・シーカーSのもっとも恐るべき一撃は。
「ふふ……教えてちょうだい、あなたたちの知る愛を。愛の恐ろしさを!」
刃を交いくぐりながら、敵は妖艶に笑う。振り下ろされた刃が、ケルを、要を、次々と切り裂いていった。
「なんの、これくらい……!」
傷そのものも深い。胸から腹をザックリと切り裂かれながらも、ケルは立ち上がったが……。
「おぉ、探したよスィートハニー! あぁ、この出会いは運命、それはディスティニー!」
目の前に立っていたのは、色とりどりの……というよりは、ゴチャマゼの花束を手にした、頭髪と出ッ腹が残念な中年男。
「うげ」
思い出したくもない記憶。下卑た欲望なら鼻で笑うこともできたろうが、想いが純粋なだけにタチが悪かった。
「おほー! 鳥肌立ってきた~ッ!」
これは、精神的にクる。
「く……!」
要の額にも、汗がびっしょりと浮かんでいた。
「がんばれがんばれ、要おにいちゃん!」
声援とともに、フワリが舞う。花びらのオーラが要たちに降り注いだ。
「……怖い夢でも、見ました?」
メリーナが要の頬に手のひらを当て、正面から顔をのぞき込む。
「……大したことじゃないよ」
「にゃにゃ! 次はにょきにょきいくにゃー、ミルティちゃん!」
「うん! にょきにょきしたら更にバラマキだね!」
フワリの伸ばした攻性植物が敵に絡みつく。そしてミルティのまき散らした塗料が降り注ぎ、敵の足元を濡らした。
そこに、要とメリーナとが躍り掛かる。要の拳は鍵で受け止められてしまったが、その隙を狙って投じられたメリーナの大鎌は、敵の肩を深々と切り裂いた。
「ぐ、ぐぐ……!」
ラブ・シーカーSの顔が怒りと苦痛とで醜く歪む。こう見るとやはり、ふたりは別人だと感じる。
「なんて憎らしい……こうなったら、ふたりでここで死にましょうよ!」
敵は血を吐くように叫び、全身をぶつけるようにして鍵を突きつけてきた。
「マリー!」
突き飛ばすように割って入ったのは真理である。
視界が赤い。血? いや、これは炎だ。炎が、町を焼き尽くしているのだ。敵が迫る。父が、その前に立ちはだかるべく背を向け、去っていく。
暗転。現れた人影が、真理の腕を掴んだ。全身を炎に包まれ、灼けていく声帯でかすれがちに、真理の、娘の名を呼ぶ……。
「真理!」
気がつけば、マルレーネがのぞき込んでいた。
仲間の癒しを受け、正気に戻れたらしいが。マルレーネの表情には安堵と、同時に怒りがある。
「真理。無理してまで私を庇わないで」
「え……」
「守られるだけのお姫様じゃ、ないから。どんな困難でも、ふたりで立ち向かう……そうでしょ」
「……えぇ」
「茶番を……!」
「あれが茶番に見えるようでは、あなたに愛は理解できないでしょうね」
ため息をつきながら、沙耶は敵前に立ちはだかった。
「大切なところに土足で踏み込むような真似をしたところで、愛は決して手に入りません」
「他人を真似て理解できるようなもんじゃ、ないですもんネー」
トラウマを吹っ切ったケルが、肩をすくめる。
「お返しデス!」
放たれた黒色の魔力弾が、敵を押し包む。
「うああ……!」
「どうです、キッツいでしょう、トラウマって? 思い知ってくだサイ!」
「勝利の運命を切り開きます!」
沙耶の声とともに、赤銅色の戦車が現れた。それは石畳を踏みしめながら果敢に突進する。繰り出された槍に深々と貫かれた敵は、跳ね飛ばされて雑貨屋の軒に叩きつけられたのち、地面に落下した。
「さぁ、おふたりとも」
沙耶の声に頷いた真理とマルレーネとは、いちどしっかりと手を握りあった。
「マリーは決して、離しませんから!」
「真理の真似をしたこと、後悔させてあげる!」
ふたりのチェーンソー剣が唸りをあげる。モザイクに深々と食い込んだ剣からは、くぐもった振動音が鳴り響いた。その音が再び甲高くなると同時に、ラブ・シーカーSは全身の血を石畳にまき散らしながら、動かなくなった。
「怖かったねー! もう大丈夫!」
メリーナがフワリとミルティ、幼いふたりを抱きしめた。
「さて、帰ってカレーを……あぁ、片づけね。わかってるわかってる」
要がため息をつくのもわかる。しかし、放置もできまい。
「頑張ってヒールしよう♪」
ミルティはためらう様子もなく、修復に取りかかった。そのおかげであろうか。
「なんだか、以前にも増して建物がファンタジックになってますね」
「来たときより、可愛くなってますね」
沙耶とメリーナとがあたりを見渡し、微笑んだ。これはこれで、かえって街の雰囲気を作り出しているようでいい。
満足げに頷いていた真理がふと、
「……もし私がふたりになったら、どうするですか?」
と、傍らに声をかけた。するとマルレーネは小首を傾げて考えたのち、
「だったら、私もふたりになる!」
と、真顔で答えた。しばらくそのまま顔を見合わせたふたりが、同時に吹き出す。
その様を見ていたフワリが、ふたりの顔を見上げて笑った。
「ねぇ。ふたりがけっこんしても、フワリとも遊んでね、なのにゃ!」
作者:一条もえる |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年2月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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