灰雪の夜

作者:雨音瑛

●足を止めて
 ドラゴニアンの少年は、傍らのビハインドともに帰路を急いでいた。
 日が落ちたからか、雪が降り始めたからか、あるいは――。
 白い東洋龍の姿をとるその少年の名は、一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)。ビハインド「一之瀬・百火」が不意に足を止めたのに気付いて、彼もまた足を止める。
「鳥居? ……神社?」
 首を傾げる白をよそに、百火がするりと鳥居を抜けてゆく。
 白としてはあまり気が進まないところだが、百火を置いていくわけにもいかない。やや重い足取りで鳥居を抜けた先では、着物姿の少女と百火が向かい合っていた。
 明滅する照明に浮かび上がる少女の姿は、幻のようだった。
 白銀の髪は腰より長い。綺麗に切りそろえられた前髪の合間からは、紅の角が二本覗いている。
 黒地の着物に咲く花は椿。こちらも鮮やかな色彩だ。
「待っていたわ、『兄様』」
 少女の右の手に携えた何かが持ち上がり、少女の顔の隣でふわりと浮いた。
 怪訝な顔をする白と、白を庇うように立つ百火。
「――邪魔よ。用があるのは、兄様なの」
 少女が表情を曇らせると、髑髏の眼窩に青い炎が灯った。

●救援を
 ゆっくりと落ちてくる雪を一度だけ視線で追って、ウィズ・ホライズン(レプリカントのヘリオライダー・en0158)は顔を上げた。
「白が、デウスエクスの襲撃を受けることが予知された」
 その言葉に、ヘリポートに沈黙が満ちる。
「急ぎ連絡を取ろうとしたのだがな、連絡がつかないんだ。つまり、既に襲撃を受けている可能性がある。白が無事であるうちに、救援に向かってもらえないだろうか?」
 白を襲撃するデウスエクスの名は「一之瀬・千氷髏」。種族は死神だという。
「千氷髏は高い攻撃力を持ち、3種類のグラビティを使い分けてくる。青い炎で氷を与えるグラビティ、武器に半透明の鎖を絡めて攻撃力を下げるグラビティ、加護を破壊する楔を打ち込むグラビティを使用するようだ」
 戦闘となるのは、彼女ひとりだけ。古びた神社での戦闘となるが、周囲に一般人は不在。
 元より廃棄されたような神社であるから、一般人が訪れるようなこともない。そうなれば、人避けや人払いも不要というもの。道路からの明かりもあるから、照明の持ち込みも不要だろう。
「白と千氷髏、同じ姓を持っているようだが二人の関係は不明だ。ともあれ、心して向かって欲しい」
 それに、とウィズは空を見上げた。
「……雪も、降っている。君達も充分に気をつけて、白の救援に向かって欲しい」
 宿縁の来訪は、いつだって急だ。
 たとえ、心の準備ができていなくとも。


参加者
進藤・隆治(獄翼持つ黒機竜・e04573)
朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)
ヴァルカン・ソル(龍侠・e22558)
比良坂・陸也(化け狸・e28489)
一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)
霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)
ケルツェ・フランメ(不死身の自爆王・e35711)
アリッサム・ウォーレス(花獄の巫竜・e36664)

■リプレイ

●『妹』
「お前は……一体、誰なんだ……?」
 一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)の問いに、少女は微笑んだ。
「あら、私としたことが。私の名前は、一之瀬・千氷髏。一之瀬・白――兄様の、妹よ」
 そう名乗った少女は白の武器に半透明の鎖を絡ませた。
 白の赤い瞳に、動揺が走る。攻撃にではなく、返答への反応だ。
「妹!? そんなはずが……いや、待てよ。何か、百火に似ている様な――まさか、死神の奴等……!?」
 脳裏に浮かぶは不吉な考え。白の背中を悪寒が駆け抜けた。しかしそれを問い質したところで、答えは望めないだろう。
 何より、答えの真偽を確かめる方法も無い。
 ならばこの場はひとまず――。
「百火、動きを止めろ!」
 白の指示のもと、ビハインド「一之瀬・百火」は両腕に纏った鎖を千氷髏へと向けた。絡みついた鎖が千氷髏を組み伏せ、四つん這いにさせる。
「噛み砕け、咬龍の牙!」
 手刀に収束させた魂魄が巨大な戦斧の形を取ると、一瞬で千氷髏の元へ肉薄する白。振り下ろした際の手応えは、確かにあった。
 妹に似た少女はゆるりと鎖を振りほどき、白へと微笑みかけた。
「千氷髏は兄様の妹なのよ? 妹には優しくしなきゃ……ッ!?」
 白に妖しい視線を向ける千氷髏に、百火は神社の中に落ちている枝やゴミを飛ばしてぶつけにかかった。
「酷いわ、兄様。千氷髏のいない間にそんな出来損ないの妹をつくるなんて」
 千氷髏の首位に、青い炎が灯る。千氷髏が瞬きをするやいなや、炎が白へと飛んで行く。
 百火が両手を広げ、白の前に飛び出した。そのまま緑鎖を握りしめ、千氷髏の身体を拘束する術を行使する。
「まあ……生意気。あなたを先に排除したら、兄様は私の方だけを向いてくれるかしら? そうよね、そうだわ、そうに決まってる」
 ひとりくつくつ笑う千氷髏に、白はオウガメタルを纏った拳を叩き込んだ。
(「まさか、百火の複製を造り出すなんて――くそっ、何て事を……!」)
 けれど。なぜ、彼女の髪は白いのか。なぜ、肌が浅黒いのか。
 白の知る百火よりも、成長しているように見えるのか。
 嫌な想像だけが、白の脳内を占めてゆく。

●『意思』
 何かに気付いたように、千氷髏が目を細めた。
「兄様には千氷髏だけがいればいい。そうよね?」
 少しばかり口調が早まり、焦りのようなものが見えた。白がそう認識するが早いか、半透明の鎖が伸びてくる。
「しまっ、……!」
 千氷髏の変化に気を取られ、動作への注意がおろそかになっていた。庇おうと急ぐ百火も間に合うかどうか。
 この一撃で倒れることはないだろうが、いっそう不利になることだけは確か。
 現在よりも次の行動に意識をシフトして身構えたその時、
「白殿に手出しはさせません! 絶対に!」
 ボイスプログラムで作り出された、よく知る声が聞こえた。レプリカント――ケルツェ・フランメ(不死身の自爆王・e35711)の腕に、半透明の鎖が絡まる。
「ケルツェ殿……!」
「私もいるよ! 猛吹雪にご注意ください、なんてね?」
 元気に告げるは、スコティッシュフォールドのウェアライダー朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)。少しでも千氷髏を引きつけようと、かつて喰らった魂を千氷髏の周辺に忍ばせ、一気に射程圏内へと入り込む。竜巻状に撃ち出せば、千氷髏の身体に凍傷を負わせながら傷を刻む。
「くっ……!」
 千氷髏が数歩下がったところで、白の背後で鮮やかな爆発が起きた。アリッサム・ウォーレス(花獄の巫竜・e36664)が、千氷髏を真っ直ぐに見る。
「冷たい冬に、春を待つ椿のように……これが貴女が産まれた理由で、待ち望んだ邂逅であったとしても……友人の命を狙う者を、許す訳には参りません」
「環殿、アリッサム殿!」
 白の声に、安堵と喜びが満ちて行く。
「お前に恨みは無い。けれど……仲間を害そうというのであれば、ここで破壊する」
 エアシューズ「リンクス」に星屑を纏い、霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)は宙を駆けた。年齢の割に落ち着いた様子は、単に場数を踏んだケルベロスのそれではないように見受けられる。
 和希とて、複雑な思いが無いわけでは無い。しかし戦闘となれば話は別だ。容赦なしに、速やかに撃破する所存である。
 同じ技で迫る進藤・隆治(獄翼持つ黒機竜・e04573)の星屑が、千氷髏の肩口を抉る。
「ふむ、ひとまずは無事で何よりだ」
「和希殿、隆治殿!」
 白との距離がまた離れたその隙に、ヴァルカン・ソル(龍侠・e22558)は丹田で氣を煉り始めた。
「炎による守護、其の精髄を見よーー!」
 やがて炎の息吹と共に解き放された氣は、ヴァルカンを含む前衛の前に紅蓮の壁を生成する。守り、癒す壁は、なにより盾として立つ者の矜持として働くことだろう。
「白……お前が迷い傷つけば、それだけ周りを悲しませることになる。それを肝に銘じた上で、どうするか――お前自身の意思で選べ。余計な火の粉を払う程度なら……ふ、師の務めとして引き受けよう」
 向けられた言葉に、白はただ息を呑む。
 星獄鎖で白の守りを固める比良坂・陸也(化け狸・e28489)は、小さくため息をついた。
(「先日に続いてまたかよ……どういう種を使ってんのか調べて根を断たねーと駄目だなこりゃ」)
 千氷髏、そして白の顔を素早く見て、陸也はひとまず安堵する。
「過ぎれば毒、適度ならば薬、ってね」
 なんだかんだ言いつつも、白は陸也よりも年下なのだ。無理をさせるわけにはいかない。
「師匠、陸也殿まで……みんな……」
 ありがとう、を言うにはまだ早い。白は視界のにじみ始めた目をこすり、千氷髏へと向き直った。
「千氷髏、だったか……僕を狙ってくるだけならまだいい。けど、皆を傷付けるというのなら――」
 指輪に触れ、剣を顕現させ。切っ先を、千氷髏に向け。
「可哀想ではあるけど……今、此処で終わらせてやる……! 往こう……皆、百火!」
 師直伝の剣技にて、鮮やかに斬りかかる。百火もどこか嬉しそうに、けれどいっそうの気迫を持ってポルターガイストを起こした。
「その意気ですよ、白殿!」
 長い腕でペイントブキを振るい、ケルツェは士気を高める背景を完成させる。
「そう、それが兄様とあなたたちの選択なのね。なら――」
 千氷髏の笑みが、深まった。
「まずは兄様以外の全員を倒して、兄様の心を折らせてもらうわ!」

●『仲間』
 何が何でも、白をその手に。千氷髏は瞳孔を開いてケルベロスの戦列に突っ込んだ。
「邪魔よ邪魔よ邪魔よ、私と兄様の間にあるものは全て、邪魔なの!」
 狂的な笑みを浮かべて撃ち出した破魔の楔は、隆治へと突き刺さった。加護のいくつかが消えるが、隆治の態度は落ち着いたものだ。
「直に攻撃できないからといって、八つ当たりは止して貰おうか」
 楔を抜き、捨てる。
 彼の背後から、環が如意棒を手に迫る。隆治を飛び越えて叩き込まれようとする如意棒、それを捌こうとする千氷髏。しかし環の速度は千氷髏を上回り、胸元へと一撃を加えた。
「一之瀬さんはこれでもかってくらい苦しみました」
 わずかな静寂と環の言葉に、千氷髏は眉をひそめる。
「悩んで悩んで悩み抜いて、ようやく少し前に進めそうなんです。……邪魔をするっていうのなら、こっちだって黙ってません」
「あなたが兄様にとってどういう存在かは知りませんが、私は兄様の『妹』。血を分けた『妹』、つまるところ、」
「知ったこっちゃねーですよ」
 語る千氷髏を、環は一笑に付した。そうしてちらり見遣るは白、そしてその傍らの――、
「そもそも一之瀬さんの妹は『一之瀬・百火』ただ一人なんですから」
 それを聞いて、白と百火は顔を見合わせ、うなずいた。
 確かなものと不確かなものは同じくらいこの世界に満ちているけれど。何を確かなものとするかは、きっと自分次第だ。
 冷静に立ち回る和希の耳に、囁く声が聞こえる。デウスエクスを壊せ、その力を奪え、と。
 言われなくても、とごく小さく呟いた声には冷たさが、瞳には興味が宿っていた。
「――動くな。壊せないだろうが」
 蒼い魔法剣が一つ、二つと和希の周囲に産み堕とされてゆく。禍々しい揺らめきを伴い、剣たちは千氷髏へと殺到した。
 空を切る音に混じり、狂気の囁きが千氷髏の耳に届く。
 その程度、と躱そうとした千氷髏の動きは鈍い。
 足が止まった千氷髏の腹部を、剣たちが侵徹した。染み込む呪詛に呻く千氷髏を見て、隆治は左腕の地獄を歪ませた。
「その身に刻み込んでやろう」
 地獄が刻む傷で、千氷髏の状態異常が一気に増加する。白から迷いが消えたのなら、遠慮する理由はないというものだ。
 そこに畳みかけられるのは、陸也の「御業」による炎。
「白、今だ」
「ありがとう、陸也殿!」
 そう意気込む白の様子を、陸也はあらためて観察した。
 見守り、「決着をつけて乗り越える」と信じる。確かに年上の仕事であるし、立派な態度ではあるのだろう。
 とはいえ、白はまだ13歳の少年だ。
 何でもかんでも抱えて、結果として潰れてしまうのならば本末転倒なことこの上ない。
 逃げればどうなる? 傷が残って治らないかもしれない。
 逃げなければどうなる? 致命傷になることだってある。
 先に生まれた者――先達としての努めは、そういう時にどうにかするものだと陸也は心得ている。
(「ま、抱えきれるのなら乗り越えて欲しいが」)
 心中で零す陸也の前に出て、白はオウガメタルを腕に纏った。千氷髏の懐に潜り込み、正面から肘での一撃。後ろに押し出された千氷髏に、背後から鎖で打ち付ける百火。
 続いて、白が衝撃を与えた箇所にヴァルカンが刃を走らせた。回復不能と思うほどに、状態異常が増える。
 一朝一夕に乗り越えられる問題ではないのだろう。それを重々承知しているから、ヴァルカンはあえて静かに白を見守る。
 言葉をかけるなら、本当に必要な時に。行動で示すなら、臨まれていると思う時に。
 武術の師匠として、何より白自身が乗り越えるべき問題として。
 誰しも役割があるのだろう。
 ならば、いまアリッサムがこなすべきことは、白のために耐える者を癒すこと。
「”可憐”な青は、幸福の兆し。困難を乗り越え、”どこでも成功”です」
 不意に出現した光の中で、アリッサムが舞う。すると彼女の周囲に青いネモフィラの花が咲き、ケルツェの元へも光が降り注いだ。
「ありがとうございます、これで白殿を遠慮無く守れるというものですね!」
 アリッサムに礼を述べ、ケルツェは千氷髏との間合いを計る。
「私はいくら傷ついても構いません。しかし白殿へ危害を加えるなら、どんな手を使っても倒させていただきますよ! 絶対に、ね!」
 ケルツェにとって白は愛する生徒であり、同時に友人でもある。雪を回避するように千氷髏と距離を詰め、見舞うは呪詛を載せた斬撃。
 完璧な弧を描いたそれは、千氷髏の胸元から血を噴き出させた。

●『宿縁』
「ねえ兄様、兄様、兄様兄様……」
 千氷髏が凍てつく炎を放つがその勢いは弱く、受け止めたケルツェは胸を反らした。
「そんな生ぬるい攻撃では誰一人倒すことなんて出来ませんよ! 私を筆頭に!」
 実際のところ、全体の被害は軽微だ。というのも、盾役の奮戦によるものが大きい。
 百花、隆治、ヴァルカン、ケルツェがまさに鉄壁となって白を庇い立てるのだから。陸也とアリッサムによる盾の強化も、心強い。
 その中で特に傷ついているのはケルツェであるが、戦意を失うどころか目を輝かせてなおもこの場に立ち続けている。
 全ては白のためだ。親愛なる生徒にして、一緒に笑いあう友のためなのだ。
 もちろん彼らが庇うのは白だけではない。だから攻撃を担うものや回復を担う者も、安心して攻撃に回れる。
 和希のバスターライフル「アナイアレイター」の銃口に集まった光が放たれ、千氷髏を包み込む。
 千氷髏が、雪の積もりつつある石畳に膝をついた。もはや限界なのだろう。
「……決着は、一之瀬団長達の手で」
「だな。とどめは一之瀬に任せる。しっかり終わらせて帰るぞ」
 ガジェットから蒸気を噴出させ、隆治は白の防備を高めた。
 また、アリッサムが起こす彩りの爆発は、白の攻撃力を高めてくれる。
「どうか、あなたが望む形で決着を」
「そうだね。一之瀬さんに任せたよ!」
 繋がった宿縁の意図を断つのは、繋がれた者同士の仕事だ。
 環も攻撃の手を止め、白へと呼びかける。
「みんな、ありがとう。そして、千氷髏……さよならだ。……百火、動きを止めろ!」
 絞り出した声は最後に少しだけ裏返って。
 百火の鎖が絡んだ千氷髏は無抵抗に這いつくばって。
 手刀の形を取る手はわずかに震えるけれど、魂魄を収束させて戦斧となって。
「噛み砕け、咬龍の牙!」
 間違えるはずのない距離で、正しく振り下ろした。
 千氷髏はゆっくりと地に伏し、動きを止める。
「……ねえ、兄様」
 ゆっくりと上半身だけ起こした千氷髏が、手を伸ばす。
「手を、握って――」
 白は無意識に手を伸ばし、千氷髏の手を握った。
 哀れみを抱いたからではなく『兄』の務めだと思ったからか。
 握った手の温度と感触は、すぐに消えてゆく。そして光の粒となって、柔らかに上昇していった。
 いつか降る雪に交じって、誰かの傍にいようとするかのように。

 一応は神社だ、戦いの痕をこのままにしておくわけにはいかないだろうと、アリッサム、隆治、ケルツェの3人はヒールグラビティで修復を試みた。
 もしこの場所に神様がいるのだとしたら。どうか彼女を正しいところへ連れて行って欲しいと、歪められた悲しい命が二度と生み出さぬようにとアリッサムは願う。
 幻想を含みつつ修復される光景を眺める白に、そっと和希が声をかける。
「一之瀬団長や百火さんが無事であれば、それで良いのです。……ただ、何かあれば言ってくださいね?」
「うん……ありがとう」
 ゆっくりとうなずく白の元に、ぶん、と手を振るケルツェが駆け寄って来た。
「ヒール完了です! 風邪を引く前に帰りましょう!」
「ああ、俺も寒いのは苦手だからな。早く帰ろう」
 身震いひとつ、隆治はなおも雪の降る空を見上げた。
 人の命を、絆のつながりを歪めて生み出された命の形は、廃棄された神社のように寂しく、悲しい。
 さて、とヴァルカンが白を見た。
「飯でも食いに行くか。久々に奢ってやろう」
「ありがとうございます! みんな、師匠がご飯奢ってくれるんだってー! 焼肉と焼肉と焼肉、どれがいいかな?」
「待て、そういうことでは……まったく、仕方の無い弟子だ」
 ため息をつくヴァルカンが見た白の横顔は、普段の楽しげな表情だった。

 仲間と神社を後にする中、白は一度だけ振り返った。つられるように、百火も同じ行動を取る。
 ここに来た時と同じように、雪が降っている。
 ただ違うのは、ひとりの少女がもういない、ということだけ。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年2月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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