黄昏に咲く花

作者:椎名遥

 冬の日は駆け足で暮れてゆく。
 既に太陽は西の地平へ姿を消して、空には名残の赤さが残るだけ。
(「少し、急ごうかな」)
 時計を見れば、そんなに急ぐ必要はない時間ではあるけれど、『もう夜だよ』と呼びかけるような空の色に背中を押されて、エリヤ・シャルトリュー(影は微睡む・e01913)は足を速めて家路を急ぐ。
 大通りを抜けて、少し近道になる公園を通り……ふと、鼻をかすめた匂いに、エリヤは足を止めて首を傾げる。
(「……何の匂いだろう。花、かな?」)
 甘くとろけるような蜜の香りと、それに隠れるように紛れた別の何か。
 嗅いだ覚えのない匂いに、首を傾げながらも周囲を見回すも、それらしい何かは見当たらず。
 気のせいか、と再び歩き出そうとして――、
「ネエ」
「――っ!」
 背後から声が届く。
 吐息すら届きそうなほどに近くからの声に、飛びのきながらエリヤが振り向けば――そこには、いつの間にか一人の若者がたたずんでいた。
 半袖シャツに短めのズボンと、冬の寒空の下では薄着に過ぎる服装ではあるものの、目深にかぶった大きな帽子だけは今の季節に合っているようにも見える。
 そうしてうつむいたまま、顔を見せることなく、若者は言葉を紡ぐ。
「キレイナ、ハナ、ダネ」
(「この人……」)
 何か、おかしい。
 ぎこちない喋り方、不自然に力の抜けている体。
 こうして話している今も、若者はうつむいたままで視線はエリヤには向けていない。
 でも、『誰か』の視線は間近から自分に向けられている。
「ソノ、えりかノ、ハナ、トッテモキレイ」
(「まるで、誰かに操られているみたいな……っ!?」)
 知らず、髪に揺れる紫のエリカの花に手を触れて警戒を強めるエリヤの周囲に、先程も感じた匂いが立ち込めてゆく。
 人を惹きつける甘くとろけるような蜜の香りと、それに隠れるように漂う――腐臭。
 それに気づいた直後、ぼとり、と若者の顔から何かが落ちる。
「モウ、コノカラダハ、ダメダカラ――」
「――その綺麗な花を咲かせる、あなたの体をちょうだい?」
 腐り落ちた眼球を失い、虚ろな眼窩をエリヤに向ける若者。
 その頭上で、帽子が――帽子に擬態していた攻性植物が、蠢く。
 触手のように蔦を伸ばし、花粉をまき散らし、内に隠していた目をあらわにして。
 強い――物理的な感触すら感じそうなほどの、強い執着を込めた視線で、攻性植物はエリヤを見つめる。
「そんなに綺麗な花を咲かせるのだもの。それほど好きなのなら――花に全てを捧げたっていいじゃない」


「エリヤさんに危険が迫っています。皆さん、急いで現場へ向かってください」
 集まったケルベロス達へ、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は焦った表情で呼びかける。
「今から数分後、エリヤさんが公園で攻性植物に襲われます」
 現状、取れるどの連絡手段を使ってもエリヤに連絡を取ることはできず、それ故に予知を外すこともできない。
 それが偶然の結果なのか、それとも何らかの介入によるものなのかはわからないが――確かなことは一つ。
「このままであれば、エリヤさんは一人で攻性植物と対峙することとなり……命を落とします」
 今から現場へと急げば……それでも、多少の遅れは出てしまう恐れはあるものの、致命的な遅れになる前に到着することはできるだろう。
「ヘリオンで現場まで急いで送りますので、皆さんは到着次第戦闘に入ってください」
 戦場になるのは、人気のない公園。
 偶然なのか、それとも邪魔が入らないようにしたのかはわからないが、巻き込まれる人がいないのはケルベロス達にとっても好都合。
 仲間を助け、全力で戦い、デウスエクスを倒す。
 ある意味では、この上なくシンプルなケルベロスの戦いだ。
「相手は“妖精花“エミー・ピークを名乗る攻性植物で、エリヤさんに強く執着を抱いているために、途中で逃げ出すことはありません」
 逃走阻止を考える必要はないが――その一方で相手の執念を甘く見れば不覚を取る恐れもあるだろう。
 そう、口早に説明を終えると、セリカはヘリオンへと向かう。
「『それほど好きなのなら、花に全てを捧げたっていいじゃない』ですか……」
 その口からこぼれたのは、エリヤに向けてエミーが語った言葉。
 草花を育てることに人生を捧げた人は、いないわけではない。
 だけど、エミーの語る『花』はエミー自身だけ。ただ自分の養分として使うだけ。
「エリヤさんを殺させるわけにも、新たな寄生先を与えるわけにもいきません――皆さん。急ぎましょう」


参加者
藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)
落内・眠堂(指切り・e01178)
エリオット・シャルトリュー(イカロス・e01740)
エリヤ・シャルトリュー(影は微睡む・e01913)
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・e02879)
ソフィア・ワーナー(春色の看護師見習い・e06219)
 

■リプレイ

 夕闇に染まる公園の中で、二つの影が交錯する。
 一つは、蝶の魔術を操るケルベロス、エリヤ・シャルトリュー(影は微睡む・e01913)。
 そしてもう一つは、犠牲者の体を操り新たな宿主を求める“妖精花“エミー・ピーク。
「あはは、凄い! 素敵よ!」
 足元を狙って牙をむく蔦を後ろへと飛んでかわし、着地するよりも早くエリヤが放つ水晶の炎をエミーの蔦が打ち払う。
 どちらもいまだ無傷。
 エミーの蔦はエリヤを捕らえられず、エリヤの反撃もエミーには届かない。
 それは、双方の実力が伯仲しているから――ではない。
「その体なら、私はもっと強く咲ける。だから暴れないで」
「くっ……この!」
 毒の花粉を払いのけようとするエリヤの腕に、伸びる蔦が絡みつく。
 怪我をさせないように、手加減しながら捕らえたエリヤに近づきながら、エミーは犠牲者の体と自分をつなぐ根をエリヤへと伸ばす。
「――私の体を傷つけないで」
 その根が届く寸前――、
「まぁ、こいつが可愛いし優しいのは大いに理解できるが……」
「迎えに来たぜ、エリヤ」
「にいさん! 眠堂さん!」
 響いた声は、エリオット・シャルトリュー(イカロス・e01740)と落内・眠堂(指切り・e01178)。
 双子の兄と戦友の声に、エリヤが目を見開き。
 直後、巻き起こる煙がエミーの視界からエリヤを隠す。
「仲間の危機とあっちゃ、放ってはおけねえ!」
「――お迎えにあがりました」
 びろうどの如く揺らぐ煙の中、白銀と紅の色が踊る。
 鋼鉄の腕から木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・e02879)が繰り出す白銀の一撃。
 幽けき紅の炎を宿して閃く藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)の刃。
 走り抜けた二つの色がエリヤを縛る蔦を断ち切り、解放し、
「お前なんぞに弟は渡さねぇ」
「エーリャは僕の大事な友達だ、食わせてなんやるものか」
 エリオットの呼び出す炎の怪鳥と、それに並走するロストーク・ヴィスナー(庇翼・e02023)の流星の煌めきを宿した蹴りがエミーを退かせる。
 そうして解放されたエリヤに駆け寄って、ソフィア・ワーナー(春色の看護師見習い・e06219)は安心させるように笑いかける。
「大丈夫ですよ。みんなで迎えに来ましたから」
 ソフィアに続けて、エミーから距離を取ったロストークとエリオットもエリヤの傍に近づいて、
「早く帰ろう、もうそろそろ晩ご飯の時間だろう?」
「日が暮れちまうと寒いぞー」
「……うん!」
 普段通りに、いつものように、エリヤに笑いかける二人。
 その光景に、エリヤも安心したように笑顔を浮かべて頷き――、
「あなた達――何?」
 殺意と敵意に満ちた言葉が、その空間を凍てつかせる。
 邪魔な乱入者――ケルベロス達をにらみつけるエミーの視線は、物理的な圧さえ感じさせるほどの憎悪に満ちている。
 けれど、
「仲間で」
「友達で」
「――弟だ」
 その視線に怯むことなく、ケルベロス達はエミーの前に立ちふさがる。
「月並みだけれど、僕達をどうにかしなくちゃエーリャには触れないと思いなよ」
 その視線も触れさせないと、エリヤを後ろにかばってロストークは槍斧を構えて前に立ち。
 同時に、ウタとソフィアが仲間達に守りの加護を巡らせる。
 その光の中で、エリヤは瞳に刻まれた式を起動する。
 ローブに織り込まれた魔術回路を通して自分の影から呼び出すのは、異形の無数の蝶の群れ。
(「不気味な敵さんにはびっくりしたけれど、みんなと一緒だから大丈夫」)
 一人じゃない。みんながいる。
 だから――、
「さっさと此奴を片付けて帰ろうぜ、エリヤ」
「――うん!」
 エリオットに頷くエリヤの声に応えて、呼び出された蝶の群れは一斉にエミーに襲い掛かる。


「駄目よ、その子は渡さない。私の物よ!」
 襲い掛かる蝶の群れを、エミーは咢へと変形させた蔦を振るって迎撃する。
 縦横に振るわれる牙の乱舞が無数の蝶を喰らいつくし、
 続けて撃ち込まれるロストークのボクスドラゴン『プラーミァ』のブレスもまた、牙の中へと消えていく。
 だが、それだけの攻撃を受ければ牙も無傷ではいられない。
「女神フローラよ、どうか私に癒す力をお分けください」
 ソフィアの祈りが前衛に立つ仲間達を包み込み超感覚を目覚めさせれば、速度の落ちた蔦を景臣が受け流し、返す刃が一本の蔦を切り飛ばし。
 続けて踏み込むロストークの槍斧が一閃すれば、さらに一本の蔦が宙を舞う。
「そこ!」
 そうしてできた間隙をかいくぐって、肉薄したエリオットが破鎧衝を放ち――、
「邪魔だって――言ってるでしょう!」
「くっ!」
 その拳を、新たに生まれた牙が受け止める。
 そのままエリオットを牙にとらえて振り回し、放るとともに追撃とばかりにもう一本の蔦を振りかぶり、
「髄を射よ、三連矢」
 蔦が降り下ろされるよりも早く、一陣の風の如き速さで眠堂が撃ち込む三連の矢が蔦の動きを縫い留める。
 それによって蔦の動きが止められたのは一瞬。
 だけど、回避には十分。
 飛びのいて蔦をかわし、続けてウタの回復支援を受けてエリオットは得物を構えて立ち上がる。
「もう、あなた達はいらないのに!」
 受けたダメージ以上に思うように動かない状況に怒りの声を上げながら、周囲を薙ぎ払うように振るわれるエミーの蔦。
 自身へと迫る蔦を螺旋を籠めた掌で迎撃し、それでもなお相殺しきれない衝撃が眠堂を跳ね飛ばし――地面に叩きつけられる前に、回り込んだソフィアが眠堂を受け止める。
「背後もヒールもお任せを!」
 笑顔と共に送り込まれるオーラを受けてダメージを回復し、軽く掌を振って残る痺れを散らしながら眠堂は小さく苦笑する。
「強かに咲くもんだなあ、花ってのは」
 驚くほどの場所で花は咲いている。コンクリートの隙間からでも、荒れ地の上でも――誰かの屍の上でも。
「己が生きる為、他者を糧にするってのは……まあ自然界っぽいけどよ」
「だが譲れねえものは譲れねえよ」
 その言葉に、ウタも苦い表情で頷きを返す。
 自然は決して優しい世界ではない。
 虫を誘い喰らう食虫植物や苗床にする冬虫夏草は極端な例にしても、周囲の植物を蹴落として繁栄しようとする生存競争は自然界のどこであっても繰り広げられている。
 だから、その点においてはエミーの行動は自然の摂理にのっとっているともいえる。
 ――そして、
「言ったはずだ。お前なんぞに弟は渡さねぇ」
(「絶対に、喪ってたまるか」)
 エリヤを捕らえようと伸びる蔦を両断して、エリオットはエミーを見据える。
 視線に込めるのは、大切な家族を守ろうとする強い意志。
 繁栄するために周囲を糧とするのが自然の摂理ならば、家族や仲間のために外敵に抵抗することもまた自然の摂理。
「花が好きなんだから自分の糧になれとか、虫唾が走るぜ」
「エリヤさんは渡しません」
 エリヤをかばい、エミーに向き合うウタとソフィア。
 その二人の視線を受けて、
「いいじゃない、私も花なんだから。好きなもののために命を捧げられるなんて、きっと幸せよ?」
 犠牲者の死体を操り、首を傾げさせ、そう答えるエミーの言葉は……どこまでも悍ましい。
「そういう台詞を吐きやがるのは、如何にも悪ってカンジだよな」
 牙をむく蔦を切り払い、そのまま止まることなく地面へと走るウタの刃は乙女の星図を描き出す。
 その御手から零れ落ちたる輝きは真珠星。
 零れ広がる癒しの光に包まれて、景臣は刀を構える。
「綺麗な花には棘があると言いますが……その範疇を越えて美しい花を枯らしてしまう悪草ならば、確と間引かなければなりません」
 銀月の光を宿す直刃に雷の霊力を纏わせて、放つ神速の突きがエミーの蔦を切り飛ばす。
「御安心を。これでも剪定には自信がありますので」
 胸によぎるのは、花々を愛した大切な女性の姿。
 いまだ色あせることのない彼女との思い出に、景臣はそっと笑みを浮かべ、
「にいさん、ローシャくん!」
「「ああ!」」
 同時に、猟犬の如き動きで走るエリヤの鎖とエリオットのストラグルヴァインがエミーの残る蔦を抑え込み。
 ロストークが両手の槍斧を振りぬいて、動きを封じられたエミーに深々と十字の傷を刻み込む。


 戦いが進むにつれて、戦況はケルベロス達に優勢に傾いていく。
 槍斧を振るうロストークの迎撃に動こうとする蔦を、景臣は動きの出だしで切り払う。
 蔦の鞭、牙、毒の花粉。
 相手の動きは何度も見た。
 そして、積み重なる呪縛で動きが鈍った相手と、重ねた加護で感覚を鋭くした自分達。
 一度傾いた天秤は、相手にこれ以上の切り札がない限り加速していくだけ。
 故に、
「さあ――」
「終わらせよう――謡え、詠え、慈悲なき凍れる冬のうた」
 ここからは、決着をつけるとき。
 景臣が刃を一振りすれば、巻き起こる炎が神経をも焼き切る紅き地獄を作り出し。
 その焔の海の中で、ロストークの詠唱に応えて槍斧に刻まれたルーンが解放され、霧氷を纏う。
 撃ち込まれる炎と氷がエミーを焼き、凍てつかせて。
「何で、どうして私を拒むのよ! あなたも花が好きなんでしょう!? それなのに、どうして!?」
 そうしてほとんどの蔦を失いながらも、エミーの視線はエリヤを捕らえて離さない。
 叫ぶようなその声に、
「その理由は、あなたの足元にあるのでは?」
 ソフィアが、そっとエミーの足元を指さす。
 そこにあるのは、戦いの中でエミーが踏みにじった花壇。
 早くに芽を出していたいくつかの花も、今は無残な姿をさらしている。
「こんな花が何だっていうの?」
 それを一顧だにすることなく踏みにじり、にらみつけるエミー。
 その姿に、エリヤは悲し気に首を振る。
「お花は好きだし、お花の世話も好きだけど……誰かの体を奪って養分にして、自分だけが咲こうとするようなきみには、僕をあげられないよ」
 誰かを犠牲にして自分だけが咲こうとすることは、自然であれば珍しくない。
 けれど、自然から離れたならば、別の在り方を作っていくこともできる。
 兄であるエリオットの手にする攻性植物のように。
 景臣が趣味にしている園芸のように。
 自然の木々よりもずっと知恵や力を持ったエミーは、別の在り方を探すこともできたはず。
 その上で、人を襲って自分だけ繁栄しようとする生き方を選ぶのならば……その先にあるのは、どちらかの滅びだけ。
「生命を脅かすのなら容赦はしないぜ。その矛先が俺の戦友となれば尚更だ」
 眠堂が手にした木魂釦を操れば、山彦を返して巻き起こる煙がエリヤを包み込む。
「終わらせよう、エリヤ」
「うん、にいさん」
 頷き、視線を交わし、エリオットとエリヤは詠唱を始める。
 地獄の炎を足に纏わせたエリオットが地面をひとつ打てば、 白銅と黒の炎が怪鳥の形を作り出し。
 瞳に浮かべた蝶の姿をした魔術の式とローブに織り込まれた魔術回路から、エリヤは自分の影を針を備えた異形の蝶の群体へと変じさせる。
「嫌よ、私は咲き続ける!」
 術を完成させまいと、エミーは毒の花粉をまき散らし――襲い掛かる花粉を、ウタの炎を纏った蹴りが焼き払う。
「あんたも花の端くれなら、これからも花を沢山愛おしみ大切に育ててくれるエリヤの為に、一丁滅びちまうってのはどうよ?」
 そのまま蹴り足を戻し、息を吸い。ウタが紡ぐのは『疾き風の歌』。
 変幻する即興曲が一陣の風と共に吹き抜けて、エリヤの背を押す力となって、
「――やっちまえ!」
 そうして、詠唱は完成する。
「白銅炎の地獄鳥よ、我が敵を射抜け」
「《我が邪眼》《閃光の蜂》《其等の棘で影を穿て》」
 二色の炎をなびかせる怪鳥がエミーに食らいつき、火柱となり。
 巻き起こる火柱を、針雨のように降り注ぐ影の蝶が塗りつぶして――。

 ――影の雨が止んだ時、そこには何の姿も残っていなかった。


 戦いが終わり、危機は去り。
 静けさの戻った公園で、景臣は崩れた花壇の土を救いとる。
 戦いの中で踏まれたり折れたりした木々は、決して少なくない。
「……その儘にするのは、心が痛みますから」
「公共物は大切にしなくてはいけませんからね!」
 そこにソフィアも加わって、公園を修復していく背後では、彼女のファミリア子猫の『パクス』が、眠堂のファミリアのオコジョ『白夏』と一緒にプラーミァにじゃれついている。
「毎度思うけれど、やっぱり花はおとなしいのが好みだなあ……」
「まあ、やんちゃな花は、大体が厄介事と一緒だからな」
 彼らの様子を眺めながら、ロストークは眠堂と言葉を交わしつつ公園を見て回る。
 直せる部分は修理して、大きく壊れた部分にはヒールをかけて。
 そうして、修理することしばし。
 一通りの修理を終えて、ソフィアは伸びをしつつ笑い。
「ちょっぴり小腹が空いちゃいました……」
「おつかれさん。帰ったら晩飯にしようか……ホント、無事でよかったよ」
 そんな彼女や、安心したように笑うエリオットと並んで、エリヤは公園の出口へと歩き出して……その前に、と一度後ろを振り返る。
 元の姿を取り戻した公園には、デウスエクスの名残は残っていない。
 戦いの傷跡も、エミーの残滓も……犠牲者の遺体も。
(「操られていたお兄さん、これでゆっくり眠れる……といいな」)
 全てが消え去ったその場所に、ウタは鎮魂曲を爪弾き、エリヤはそっと手を合わせる。
(「救えず悪ぃ……蒼き地球で安らかに」)
(「おやすみなさい」)

作者:椎名遥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年2月8日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
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