温泉と雪景色と美女とオークと

作者:ハル


「いいお湯ね」
「だね~、ママ~!」
 群馬県草津温泉――一泊三万円を越える高級旅館には、今週末も大勢の客で賑わっている。主要な客層としては、年末年始のピークを避けた家族連れと、近場にあるスキー場を目当てに訪れた者達。
 そのためか、昼の女湯……その露天風呂には、主に温泉地周辺でまったりと過ごしたい家族連れが多く入浴しているようだ。
 雪景色と温泉を満喫する妙齢の女性と、子供達。
 大きく息を吐き出し、日頃堪った疲れを癒やす。あわよくば、温泉の効能で肌に張りを。求める事は、ただそれだけだったのに……。
「入浴の後は、全身念入りなマッサージが重要だブヒ!」
「えっ!?」
 魔空回廊を使い、邪悪な妄想を隠さないオークがその穏やかな空気をぶち壊す。
「に、逃げて!」
 自分の身の心配よりも、子供を優先したのは母親の溢れんばかりの愛だろう。だが、オークは自分達の姿に戦きながらも、母達に背を押されて訳も分からず駆ける子供達になど初めから目もくれない。
 変わりに――。
「ガキ共よ、ママは我々が隅々まで美味しく頂いてやるって、お前達のパパに伝言を頼むブヒ~」
 そんな、卑劣極まる言葉を投げかけるのであった。


「……去年に続き、今年もこの季節にオークによる温泉地への襲撃が予知されました。いつものように、女性達の略奪を画策しているようです。またこの事件の発覚には、植田・碧(紅き髪の戦女神・e27093)さんの情報提供が大きな役割を果たしてくれた事も、合わせてご報告しておきます」
 山栄・桔梗(シャドウエルフのヘリオライダー・en0233)は言いながら、そっと碧の表情を伺った。そこには予想通り、微妙な表情を浮かべる碧の姿が。ドラゴンとの激戦の後という事もあり、事件の内容に対する落差も大きいのだろう。
「一般の方からすれば、オークだって大きな脅威です。特に、女性にとっては。現場は群馬県にある、草津温泉をメインとした高級旅館です。その露天風呂に、オークが現れる事になります」
 入浴中の女性、オーク共々10名ずつが確認されている。
「子供達を含めると、人数としてはもっと多くなるのですが、オークは子供達には一切興味を示さないため、被害者女性は一先ず10名と考えて頂いて構いません。女性達は全員が妙齢のご婦人方です。具体的な年齢に関しましては、機密とさせて頂きます」
 桔梗は、やんわりと微笑みながら、
「オークの出現場所は露天風呂という事ですので、女性達をまずは内風呂に避難させ、逆にオーク達は内風呂には絶対に入れないようにしてあげてください。事前に避難させてあげたい所ですが、オークの出現前に女性達を避難させてしまうと、オークの行き先が変わり、被害を防げなくなってしまう可能性が高いのです。オークを確認するまで、堪えてください。ただし子供達については、何か適当な理由をつけて、事前に連れ出してしまっても大丈夫ですよ」
 父親や、旅館の職員に協力を求めるのもいいだろう。
「オークに特殊な個体は見かけられないようですが、妙齢のご婦人方を狙ってきたのですから、オークの引きつけを考えるならば、それなりの……醸し出す色気が必要になるかもしれません。とはいえ、妙齢の範囲は人それぞれで広いですし、頑張ればなんとかなると思います! 例えば、植田さんでしたら大人っぽいですし!」
 桔梗は、『色気』という単語に考え込む碧を鼓舞するように言うと、
「いつもいつも、オークには本当にうんざりとさせられてしまいますね! ご婦人方のためにも、そのご家族のためにも、必ず救出してあげてください! 仕事が無事終われば、旅館の方々からは温泉含めた施設は自由に使っても良いとのお達しも頂いております。どうも、高級シャンパンの差し入れなんかもあるようですよ!? 未成年の方にはデザートが用意されているようです!」


参加者
チーディ・ロックビル(天上天下唯我独走・e01385)
ミツキ・キサラギ(剣客殺し・e02213)
シィ・ブラントネール(フロントラインフロイライン・e03575)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
植田・碧(紅き髪の戦女神・e27093)
レーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349)
黒岩・詞(エクトプラズマー・e44299)
ベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)

■リプレイ


 旅館の従業員と同じ呉服に身を包んだベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)は、母親に日頃の感謝を伝えるという趣旨の元、子供とパパ向けのイベント開催のために奔走していた。
「ええ、小さな女の子達ですし、ママの似顔絵を描いてもらったり、ビーズでアクセサリーをパパさん達と作って貰うのがどうかな、と」
 事情を粗方説明した旅館職員達との、各種打ち合わせ。ようやく形が纏まると――。
「……今月のお小遣いは、ピンチになっちゃいそうですね」
 ベルローズは苦笑を浮かべて呟いた。それでも、助けを待つ人々の安全には代えられない。

「天才か俺様?」
「…………」
「オークの標的になっていないガキ共をイベントだーっつって風呂から離しておく。んで、ガキ共と一緒に女共が露天風呂から出て行っちまわないように、露天風呂で別のイベントをやる。こうやってごく自然に救出対象を絞る訳だ。いや、マジで――この案出した俺様は天才か?」
「…………はぁ」
 男湯にて待機するミツキ・キサラギ(剣客殺し・e02213)は、もう何度目か分からないチーディ・ロックビル(天上天下唯我独走・e01385)の自画自賛に、深々と溜息をついた。
 おまけに、事前確認だと言い張って、チーディは壁の上から女湯を覗こうとするのだからたまらない。まさか身内にも危険人物がいようとは……。
(「はぁ、何事もなく終われればいいんだが」)
 平穏無事に。ミツキはそう心から願った。

 雪の散らつく露天風呂は、まさに絶景。視界には一面の銀世界が広がり、温泉に浸かった身体だけでなく、心までをも一新させてくれるかのよう。
「本当にいいお湯ね。でも、温泉が気持ちの良い時期は、オークも多いのかしらね?」
 タオルで肌をキッチリガードした植田・碧(紅き髪の戦女神・e27093)が、寒暖差に白い吐息を吐き出しながら呟いた。
「……いや、そうでもないわね」
 続く否定の言葉は、碧自身が生き証人だからこそ。
(「……また女性を狙う卑劣なオークですか。しかも、家族連れの多い温泉で……」)
 18歳の姿に変身したレーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349)は、口元まで浸かったお湯をプクプクと泡立てながら、いずれ出現するであろうオークの存在に戦々恐々としていた。
「ママ~、おそとすっごくきれいだね~!」
「ええ、そうね」
 そんなレーヴとは対照的に、母子は温泉を満喫しているようだ。
「知っているだろうか。この後に母親と、父娘を対象にしたイベントがあるようだ」
 母娘の時間を邪魔する申し訳なさを押し隠し、エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)がそれとなく布石を打つ。
「えっ、どんなどんな~!?」
 突然話しかけられた母親達は少し驚いたようだが、子供が強く興味を示してくれた。
「聞いた話では、母親――つまり貴殿等は、無料でマッサージが受けられるとか。その間、子供達には父親と一緒にまた別のイベントがあるのだとか」
 無料のマッサージと耳にして、母親達の目が輝く。
 ――と。
「アナタ達に素敵なイベントの告知よ! なんと、特別なエステの施術を無料で行うことになったの!」
 タイミング良く、フォーマルな装いをしたシィ・ブラントネール(フロントラインフロイライン・e03575)が露天風呂に顔を出す。
「施術を受けて貰えば、こんな玉のお肌になれちゃうわ!」
 シィは軽く腕捲りをしてみると、自らの肌に実際に触れてもらう事で、エステの効果などをプラチナチケットも併用して説明する。
「それじゃあ、子供達はパパ達の所へ――」
 やがて、シィは子供達を安全な場所へ誘導しようとするが、さすがにそれには若干の抵抗を覚える母親が数人いた。
「心配しなくても大丈夫よ。彼女は信用できるわ。何よりも、子供達にとってイベントやいろんな体験ってすごく重要な事だと思うの。家にも娘がいるんだけれど、その子も子供の頃に体験したイベントが、その後の人生に大きく影響したりしているのよ」
 もう一押し。そう判断した黒岩・詞(エクトプラズマー・e44299)が、『母親』としてフォローに入る。
 その言葉にようやく全員の母親が納得してくれると、(「ありがと、アオママ!」)口の動きだけで伝えたシィの感謝に、詞がニッコリと頬笑んだ。

「アフターケアの時間含め、小一時間くらは楽しんで頂けると思います」
 合流したベルローズが中心となり、ケルベロス達は無事に子供達を父親と旅館従業員の待つスペースへ送り届けた。
「イベントでお子さん達は、ママさんにプレゼントを用意しているようですよ。是非、出来上がりをお楽しみに!」
 ベルローズが従業員然とした態度で軽く笑顔を見せる。
 すると、母親達の間から感謝の声が沸いた。
「親子を守るためにも、……私自身の犠牲は仕方ない、ですね……あぅ……」
 レーヴが、ケルベロスだけが感じている得も言われぬ緊張感の中、祈るように両手を合わせている。
 その時――。
「入浴の後は、全身念入りなマッサージが重要だブヒ!」
「……ひぅっ……!?」
 ついに回廊から続々と10体のオークが飛び出し、レーヴの脳裏を触手に弄ばれた過去の記憶が過る。
「「「きゃああああああ!」」」
「ママさん方、内風呂を経由して、脱衣所まで急いで避難してください!」
 だが、母親達の悲鳴とベルローズの避難を呼びかける声を耳にしたレーヴは我に返る。己は、震え慄くためにこの場にいるのではない。トラウマに似た記憶と、僅かな甘さを宿す幼い性の感覚を怒りと嫌悪で覆い隠し、レーヴが身を張るべく決意を固めると。
「奥様方、逃げてくださいませ! 行きますよ、プラレチ!」
 彼女達を守るため、寄り添うようにして誘導を開始する。
「いい度胸だ、レーヴ。さぁ、私も猫被るのもここまでだ。ぶちのめしてやるぜ!」
 メガネという彼女なりの鎧を脱ぎ捨てた詞は獰猛な笑みを浮かべると、
「こんなとこじゃ煙草は使えねえな……ちょっと頼りねえがこれで行けるか……?」
 ケルベロスと母親達を囲うように集うオークに、温泉の湯気を媒介に構成したエクトプラズムを放つのであった。


「……あうぅ……またっ、あの感覚がぁ……変ですっ、ダメになっ……あうっ!!」
 レーヴは無垢な瞳を白黒させながら、オークに抱き寄せられた18歳の細く白い柔肌を慄かせていた。ガントレットで高速の重拳撃をオークの鼻っ面へ叩き込むまでは良かったが、未知に感覚にまたも翻弄されている。動けない彼女に変わり、爪を伸ばしたプラレチがオークに襲い掛かった。
 だが、そんな彼女達の災難は、決して無駄ではない。
「た、助けて、助けてくださいっ!」
「うっひょおおっ~!」
 オークの襲撃から間もなく女湯の露天風呂に飛び込んだチーディが、引き付けの隙を見て逃げてきたあられもない姿の母親を抱き止め、歓喜の雄叫びを上げている。
「かかって来い、豚共! 丸焼きにしてやるぜ!」
 表面上は威勢のいい言葉を吐き出しながら、チーディはどさくさに紛れて蕩ける様に柔らかな胸を一揉み、二揉み。溢れんばかりのやる気を貰ったチーディは、独自の歩法でオークの周囲を高速旋回すると、両脚から噴き上げる地獄の炎で広範囲の空気を喰らってオークの動きを一斉に鈍らせていく。
「ママさん達には触手1本触れさせないんだから!」
 オークの触手が、露天風呂に乱れ飛んでいる。混乱する母親達をすぐ背後に迫る触手から守るため、彼女らの前に出たシィの豊満な胸を触手が這い回る。
「~~~~っっ!?」
 愛を誓った肢体を醜悪な豚に汚される。シィの脳裏を、彼の凍った瞳が過った。だが、淫毒霧が散布された瞬間、浮かびかけた罪悪感すらも悦びに変換されかけて、シィは愕然とした。
「レトラ! 変身よ!」
 捻じ曲げらそうになる心から毒素を振り払うように、シィはレトラの召喚と共にワイルドスペースへとアクセスさせ、『ライドキャリバー』という異なる可能性を引き寄せたレトラを炎と共にオークの只中へと突撃させる。
(「屋外とはいえ、露天風呂は狭いな! ここは、私達が引き付ける他にない!」)
 油断すれば、オークの意識は彼らの好みなのであろう妙齢の女性達に向かってしまう。懸念を浮かべたエメラルドは碧に視線を向け。
「植田殿!」
「ええ、分かっているわ!」
 髪を纏めていたゴムやタオルを解き、上気して濡れた肌に張り付けさせる。これで如何程の効果があるかは不明……そう思っていたが。
「ブヒィィィッッ!!」
「もうっ、ゲンキンなんだから!」
 少し色気を意識してやれば飛びついてくるオークに、碧が毒づく。多少の嗜好さえ満たしてやれば、逃げていく母親達よりも近場のケルベロスという訳か。
「……うまっ、……旨いブヒ! ……メスの濃厚なエキスーー!」
 エメラルドに、肉欲と肉厚の唇の剥き出しにしたオークが飛び掛かる。
「ひぁっ、汚い唇がぁ……んぐううっ!?」
 組み伏せられたエメラルドは、母親たちの面前でジュルジュルと下品な音を立てて体液を吸われ、激しく四肢をバタつかせた。
 さらに後衛にも、触手がすぐ傍まで迫っている。
 碧はスノーに誘導と仲間の援護を頼みながら、触手を煌めきと重力を帯びた飛び蹴りで弾き飛ばす。
「て、てめぇら、どこ触ってやがる!」
「胸がないのが残念ブヒ」
「でも、熟れた肌の感触は絶妙ブヒねぇ」
「う、熟れ!? こ、このっ……大人の魅力って言いやがれ! 後、胸の事言った奴は後で絶対殺す!!」
 呻きと激昂の迸りにケルベロスが横眼に視線を這わせると、詞が数を利して襲うオークの触手に、指一本動かせない密度で埋もれていた。
 程なくして、別の個体が伸ばす触手が碧にも迫る。
「……っ……ぁっ……ミツキ……くんっ……!」
「彼氏か誰かの名前ブヒ? 興奮を煽る反応をしてくれるブヒィ! 残念ながら、そんな男はどこにも――」
 淫毒霧を浴び、頬を紅潮させながら膝を笑わせる碧の口から反射的に出た男の名に、オークが下卑た嗤いを見せる。
 ――が!
「俺ならいるぜ、ここにな!」
 空気を切り裂く殺意に満ちた声を、オークの耳が己に向けられたものだと認識するのと同時、略奪の優越感に浸って油断しきっただらしのない体躯に炎を纏った苛烈な蹴りが叩き込まれ、問答無用で焼死体へと成り果てる。
 ミツキと碧の視線が、一瞬だけ交錯する。
「……ぅ゛っ」
 だがミツキは、タオルのみという際どい碧の姿に気づき、そっと視線を逸らした。その後も肌色が支配する空間に、ミツキは視線の置き所を迷いながらも。
「作戦上は問題ないが、念のために女性客が避難するまで待機しようと思ってたんだ。けどチーディはソッコーで壁を乗り越えていくし、何より……碧の俺を呼ぶ声が聞こえたから、な」
 ……心配した。最後にそうボソッと呟き、残る気持ちをミツキは背中で語る。背中に感じる碧の視線に、こそばゆいものを感じながら。
「皆さん、ママさん達の避難は完了しました! 後はオークを仕留めるだけです!」
 と。避難誘導を行っていたベルローズが操る黒鎖が、オークの一団を捕縛する。
 間髪入れず、エメラルドの冷気を帯びた手刀が荒れ狂った。
 ケルベロス――特に女性陣は、ジャマーのオーク達に呼び覚まされた性感に背筋を震わせながらも、チーディとミツキの力を借りて反撃に出るのであった。


「……くっ、私に触れる事を許した覚えは……っ、ありませ……っっ!!」
 呉服の裾から中に潜り込んでくる触手に、ベルローズは切り揃えられた前髪の下に灯る灰の双眼を、嫌悪と微量の切なさに歪める。
「ぃっ、ひぁ! ……あ……あぁッ、そこは!?」
 呉服の中で触手が一際大きく蠢くと、ベルローズは裾を抑え込むようにしてしゃがみこんだ。
「それ以上は許さねぇよ。覚悟しな!」
 ベルローズを襲うのは、詞の胸を嘲笑ったオークだ。詞は煙管に先祖である侍の霊・竜玄を憑依させ、実体化した刃でオークを暴力と斬撃の渦に堕とす。
「いい加減、頭がオカシクなりそうね! でも……」
「……うぐぅぅぅッ! んんんん……!?」
 シィは、すぐ傍で触手とオークキッスの洗礼を受けるエメラルドを見て、唇を掌で覆った。いくら身体を弄ばれても、唇だけは最愛の人のために守りたい、そんな乙女心が垣間見える。
「レトラ、エメラルドを助けるわよ。炎でこんがり焼いちゃいなさい! あと、ミツキのエッチ! こっち見ちゃダメよ!」
「へぇ、ミツキくん。どういう事なのかしら?」
「不可抗力だ!」
 弱ったオークを優先して、超高速斬撃と神霊撃でステーキに変えていく。
 碧とスノーがヒールによって毒の影響を緩和すると、ミツキのナイフがオークを血の海に沈める。
「や、やっぱりオークは苦手です!」
 涙目のレーヴが、電光石火の蹴りでオークを吹き飛ばした。
「――前々から思ってたんだがよぉ。豚共ォ!! てめぇらのくっそ汚ねぇ見た目のせいで、きゃーえっちーなシーンなのに全っっっ然嬉しい気分にならねぇんだよぉ!!」
 言うなれば、チーディの訴えるそれは、アダルトなビデオで延々男優のケツばかりが映っているようなもの。
「おまけにシィのシャーマンズゴーストが、俺様の視界から女共の裸体を隠す絶妙な位置取りを常に取ってやがる! くそが! とにかくここでお前らを残らず焼き殺すッ!!!」
 苛立ち交じりに、チーディは地獄を纏った如意棒をオークに叩きつける。
 すると次の瞬間、最後のオークは爆ぜて消えた。


「いや、こりゃうめーなぁ!」
 グビグビと、鮮やかなピンク色のシャンパンをチーディが喉の奥に流し込んでいく。
「……もう、らめぇよぉ~……」
「お酒弱いのに無理するからよ」
 チーディに対抗して同じペースで飲んでいたシィは、すでにグロッキー状態。エメラルドに水を飲ましてもらい、何食わぬ顔でシャンパングラスを空ける詞の膝の上で介抱してもらう、まさにお嬢様待遇だ。

 ミツキ、碧、レーヴ、ベルローズは、大量に用意された各種デザート類に、舌鼓を。
「これだけ用意してもらうと、残すと申し訳なく思っちまうな」
「ふふ、そうね。後でシィさん達にも協力してもらわないと」
 ケーキバイキングさながらの品数に、少し膨れたお腹を擦りながらミツキが言うと、碧が微笑を浮かべる。
(「……ぁぅ……オークの感触が……!」)
(「……補填額はいくらくらいになるのでしょうか」)
「すげぇな」
 だが、ミツキの心配は杞憂に終わるかもしれない。レーヴとベルローズが、猛烈な勢いでデザートを消費していく。
「せっかく来たんだ。帰る前に温泉を楽しむのもアリだな」
「もちろん、せっかくなんだから!」
 ミツキと碧は、レーヴとベルローズに一言かけてから立ち上がると、それぞれ男湯と女湯に入っていく。貸し切り状態の露天風呂と雪景色。薄い垣根を隔て、二人は語らう。これまでの事と、これからの事を。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年2月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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