お針子のお節介

作者:志羽

●お針子のお節介
 ビルの屋上、その庭園に――こっそりと。
 とある商業ビルの屋上は、緑あふれる憩いの場所。今、それは止まっているが噴水がありいくつかのテーブルと長椅子。きっと昼間もここは賑わうのだろう。
 このあたりで一等高いビル。冷たい風を感じるものの、酒を飲んで澄んだ夜空を愛でるには丁度良い。
「さむい」
 その言葉とは裏腹に楽しそうな声の主は疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)だ。はふりと吐いた息は白む。それでもこれは格別、とヒコはひとりの時間を楽しんでいた。
 傍らにはつまみと酒と。贅沢な時間だと思っていたがしかし――視線を、感じてそちらを向けば。
「絵になりマス。けどそのお衣装はワタシのつくったものにしまセン?」
 キシ、と機械の、絡繰りの軋む音がする。手をあげ、指で四角を作り、ヒコを見詰めていたのはダモクレスだ。
「なるほど、お得意のお仕事、受けて正解デス」
 創作意欲が湧いてきマスと、そのダモクレスは言う。
 見た目は可愛らしい、お針子。けれど紡ぐのはデウスエクスゆえの言葉だ。
「死んだ彼女に贈って差し上げまショウ」
 お節介かもしれませんが、長い付き合いだからこその最後の手向け――と、彼女は紡ぐ。
 ダモクレスに知り合いなど勿論いない。しかし死んだ彼女、というのにひっかかるものがヒコにはあった。
「アフターケアはおまけデス。あなたにはこれを着て頂きマス。ワタシの最新作、冥婚衣装」
 と、広げたのは――婚礼装束。それを見てヒコは、ああと思い至る。
 しばらく前。桜の季節に出逢い、そして倒した螺旋忍軍の女の事を。
 その女はもういないのだが、婿様お待ちしてますと笑っているような気がして背筋がぞくりとする。
「安心してくだサイ、きっちり送り届けてさしあげマス」
 しゃきん、と彼女の持つ鋏がなる。しかし、ヒコもそうされてやるつもりはまったくない。
 目の前の相手を倒すしか、切り抜ける術は無い。しかし――なんとなく。
 また助けは来る。そう、確信があった。

●予知
「急いで、行って欲しい所があるんだ!」
 と、慌てて夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)はケルベロス達へと声かける。
 デウスエクスの襲撃を予知したが、今その相手と連絡がとれない。しかし襲撃場所は予知できているのですぐにそこに向かってほしいという事なのだ。
 襲撃されるのはヒコ君、とイチは言う。押しの強い女の人――ではないが、それでもしつこそうな相手だという。
 今はまだ無事だろうが、あまり時間はない。
「現場の真上までは、ヘリオンで送るからそこから降下して、ビルの屋上庭園に」
 それなら間に合うとイチは言う。
 敵のデウスエクスはダモクレス。お針子のような姿をした少女だ。針と糸、そして鋏も使って攻撃してくると思われる。
 それから戦闘場所となるビルの屋上庭園に、他に人はおらず特に気を配る必要はないとイチは言う。
「どんな因縁があるかは……というより、また一方的なって感じもするんだけど、命の危機に変わりはないから」
 だから、よろしく頼むよとイチは紡ぐ。
 そしてケルベロス達をヘリオンへと誘った。


参加者
メイア・ヤレアッハ(空色・e00218)
疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)
平坂・サヤ(こととい・e01301)
リィ・ディドルディドル(悪の嚢・e03674)
ラランジャ・フロル(ビタミンチャージ・e05926)
藍染・夜(蒼風聲・e20064)
薬師・怜奈(薬と魔法と呪符が融合・e23154)
朝霞・結(紡ぎ結び続く縁・e25547)

■リプレイ

●お節介
 お針子のダモクレスは、疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)の命を奪おうと――お針子自身はそのつもりはないのだが――距離を詰めて来る。
「――……デウスエクスなのに義理堅い、か」
 そんなに仲が良かったのかとヒコが問えばお得意様デシタと一言。
「彼女のタメにも着て頂きマス」
「いいぜ。俺の命を断てたらその装束着て冥土歩いてやるよ」
 苔色の双眸細め、口端は挑戦的に。
 ヒコはだが、と続きを紡ぐ。
「そう簡単にお前の思い通りに死んでやるかっての」
 と、上方に気配を感じて視線を向けた。
 それにお針子もつられてむける。
「こゆのも縁の糸なのですかねえ」
 なるほど、女難の相と、軽やかに平坂・サヤ(こととい・e01301)はお針子とヒコの間に降り立った。
「また来てくれたのか?」
「お呼びであれば、こたえましょう」
 ええ、とサヤは頷いてヒコのよいようにと紡ぐ。
「このダモクレスは以前ヒコさんを襲った相手の友人かなンかッスかね?」
 ラランジャ・フロル(ビタミンチャージ・e05926)の問いに、多分そうだろうなとヒコは言う。ラランジャはそれに相手が生前のお客だったとか? と首傾げ。
「まぁ、どうでも、ってトコっすけど余計なお節介を焼いてることは明らかッス」
 そう言って、占い師でもない俺にも見える気がするッス……とヒコになまあたたかい視線を。
「それは、女難の相か……」
「モテる相手も選びたいモンっすね」
「おや、まだ無事だった?」
「無事だよ」
 その声に重ねて、君の困り顔や女難の相を視てやろうかと思ってねと藍染・夜(蒼風聲・e20064)は笑う。
 けれどそれは、容易に斃れやしないとの信を籠めて紡いだものだ。
「屋上庭園で良かったですわ」
 すぐに助けに入れますもの、と薬師・怜奈(薬と魔法と呪符が融合・e23154)も降りたって。
 お怪我はありませんねと確認を。
「ヒコちゃんお守り部隊見参ッ」
 メイア・ヤレアッハ(空色・e00218)はふわりと、その羽根広げて降り立つ。傍でボクスドラゴンのコハブもなんだか楽し気にひとこえ。
「ヒコちゃんってばモテモテなの。およめさん、さよならしたのにまだ未練があるのかしら」
「俺は至極真っ当普通にモテたいんだが」
「世の中にはモテずに嘆く男性も多いというのに大層なご身分ね、色男」
 あら、何を言ってるのかしらというようにリィ・ディドルディドル(悪の嚢・e03674)が声重ねる。
「服くらい着てあげればいいのに」
「着れば俺は死んじまうんだが」
「それは、ダメね」
 仕方ないからリィも手伝ってあげるわと紡ぎ、視線はお針子へ。
「あなたが針と糸で繋ぎ止めないように、ちゃんと縁切りしてあげなくっちゃね」
 ちょっきん! とメイアは手をピースにして、ちょきちょきと切るふり。
「ヒコさんはいい男だからモテても仕方ないんだって言ってた!」
 でも、と朝霞・結(紡ぎ結び続く縁・e25547)はきっと強い視線をお針子へと向ける。
「デウスエクスにモテるのはよろしくないからね! 倒すよ! お針子さんとの縁は綺麗にぷつりと絶ちましょう! なの!」
 それは誰が言っていたのか、とヒコは思いつつ。
 仲間達が駆けつけてくれたのは素直に有り難い。
 お針子はうぅんと唸って、何か考え事をしている様子。
「……良き素材のマワリには、良き素材が集まるのデスネ」
 デモ、ヤハリ。
 そう言って、お針子の視線はヒコへと、向けられる。
「衣装がある方からにしまショウ」
 その前に邪魔なものは仮縫いシテ足を止めまショウと、針の雨がケルベロス達へと降り注ぐ。
 前衛達へと注がれたそれが、戦いの始まりの合図だった。

●夜空にひらりと
 戦いの始まりは、手数をもってそれぞれ、戦う状況を作り上げる。
 メイアはオウガメタルの力を後衛へと支援を。それから怜奈も、雷の壁を展開し支える。
 そして前衛へは結が対する。
「加護の翼、紅き焔を纏って、ここに」
 自らのグラビティを紅く燃える翼に変えて、前列の仲間達の上へと広げる。
「折角の逢引を裂くのは無粋だがね、まぁ虎落笛だとでも思ってよ。そう、「殯」――お誂え向きだろう?」
 紡ぎ、夜は天旋の形変え竜砲弾をお針子へ。
 お針子はそれを運よくかわし己の得物が目前に迫るのを見る。
「さあさ、お前と俺で対等に力比べといこう」
 ヒコが走り込み見舞う流星の輝きと重力の一蹴。
 それうけてお針子は成程成程と頷く。攻撃受けて、まるで何か測っているような在り様だ。
「女モノも……フム、着れる体形デスネ」
 そう言ってお針子は改めて、ヒコと視線を合わせる。
「ワタシの手に掛かればオヨメサンにもヘイキにも為れマスヨ?」
 その手に構えて持った何本もの待ち針が見える。それを真直ぐヒコに向けるお針子。
 しかしその針先はサヤが糸括履く足で叩き落とす。
「なるほど、女難の相」
 よく狙われますねとサヤが紡げばヒコは困ったもんだと返す。
 その因縁を、サヤは――というより、ヒコも知らない。この場にいる誰も、何故かわかっていないのだ。
 ただ、どのようなものにせよここに現れたというのは情が深かった故なのだろうとサヤは思う。
「死んだ後まで残る想いがあることは、知っているのです」
 それでもサヤは、今いきている意志を推しますゆえ――あなたがそれを望むなら。
 そう視線で問えば、ヒコは一つ頷いて、望むと応える。
 その答えに、力になりましょうとサヤは力振るうのだ。
「おかえりなさい」
 再起――認識による世界の浸食。極少範囲の再構築。未来を手繰る糸の先を仲間達へとサヤは預ける。
 しかしお針子も鋏を取り出して。
「チョキンといきまショウ、裁断はオテノモノ」
 その刃向けられたリィは構えて、魂喰らう一撃を拳でもってその鋏を迎え撃つ。
 同等の衝撃が互いを撃つ。そこへ、リィの援護というようにボクスドラゴンのイドが竜の吐息をお針子へ。
「思い込み……って厄介ですわね。女難の方の様なので仕方ないですわね」
 と、ヒコをちらりと見つつ。怜奈は傍らに御業を召喚する。
 その御業はお針子を捕まえる為に手を伸ばす。
 お針子はその緩慢な動きを見て、余裕を持ってかわす。
 そこへラランジャがお針子狙って流星の煌めきと重力をのせて飛び蹴った。
 ラランジャからの一蹴を喰らったお針子はよろめいて、それでもまだ動きは止まらない。
 しかし、確実にこちらの命中の精度は上がっている。
 皆で重ねている攻撃はお針子に確実に影響を与え募っている。
 お針子向けた攻撃を、結のボクスドラゴン、ハコが代わりに受け。そしてお返しとばかりにタックルを仕掛ける。
「要らない糸は裁って始末するでしょう? だから、あなたのお節介も綺麗に裁って始末しないとなんだよ」
 それに、と。その身に纏うオーラの形を変えながら結は言う。
「後ね! 選ぶ権利は誰にだってあるんだよ? だから、あなたのお節介はここでおしまい!」
 結が放ったオーラの弾丸は、お針子へと喰らい付く。
 そして、その言葉を聞いたヒコは深く深く、頷いていた。
「そうだ、その通りだ。本当に」
 お針子に好きにされる義理もない。そもそもだ。
 冥婚衣装とは、と思うのだ。
「先ずはそのよく分かんねえ衣装のテーマでも聞いてやろうか?」
 双翼で辻風起こし、梅花とともに跳び蹴れば、お針子の表情が痛みに曇る。
 そこを見逃さず――次手。
「冥黒裂閃、天滑べ地駆け喰らい尽くせ」
 宵闇を裂き、黄泉路を拓きて、冥府へ葬る――天駆ける速翼の鳥が羽ばたきお針子へと襲い掛かる。
 残念乍ら――此方の光源氏殿は未だ身を固める気も楔に繋がれる気もない様子と夜は瞳細め。
「冥府への旅路に似合いの己が衣装を仕立てると良い」
 いつか俺も其処へ辿り着いた時には死衣代を安くまけてくれる? と夜が笑って見せればお針子は小さく笑み浮かべ。
「お衣装替え、皆さんも致しマス?」
 少々お待ちいただければお揃い誂てさしあげマスとお針子は紡ぐ。
 そしてお針子は、針を躍らせ縫い付けるように攻撃を。
 けれどそれを結が舞い踊り、癒しの力持つ花弁のオーラを降らせ解いていく。
 その言葉にメイアは好みじゃないのと言って手のひらに冷気を。凍える歌を謳いながら、カチコチ固まって小瓶の硝子のように形なす。
 それを指先に宿して、お針子へと向けるメイア。
「そんな冥婚衣装より、コハブの毛皮の方がすてきなんだからっ」
 その指先から放たれた魔弾はほうき星のように尾を引いて。
「サヤはおそらく、ご依頼主にお会いしたことはございます」
 けれど、とサヤが紡いで隠し放つは繊月の刃。
「素直に彼岸へつれていかれましては困りますゆえ、仲人をなさるなら、まずはサヤを斃してくださいねえ」
 空の裂け目、空の底。それを辿って閃く刃がお針子の身の上を走る。
「あなた相手に何の感情もないし、ヒコの痴情のもつれなんて本当にどうでもいいけど、これも仕事のうちだから」
 早く倒れてくれる? とリィは踏み込み――その脚を振り上げた。
 電光石火、お針子の顎先を狙って振り上げられた足は的確にその場所を射抜く。
「お裁縫……もっと有効活用出来るのに……まぁ、ダモクレスでは仕方ないですわね――エルバイトシュトゥルム」
 そこへ怜奈は電気石を秘薬を用いて能力解放する。そして静電気を極限増幅させ、突風に乗せて放てばお針子を穿つ。
「折角のお洋服もボロボロですわね。終わりにしたら如何でしょうか?」
 怜奈は次の攻撃も来ますよと告げる。
「目標、捉えたッス。逃がさないッスよ!」
 攻撃の手をラランジャも加える。
 その一撃が入ればお針子の腕は石のように重くなっていき、その動きの機会が奪われた。
「なンか、敵に気に入られてるみたいッスし……あちらへ送ってやっちゃってくださいッス」
 そして――やはり最後のケリはヒコ自身が付けるべきだろうと、絶える間際に道が開ける。
 夜はそれは黄泉路の餞となるだろうと、梅花の香りにそっと笑んで双眸閉じる。
 仲間の作ったその道を、アイツを解した腐れ縁――と、ヒコは思い出しながら詰めて。
「敵とは云え互いに厄介な奴と縁あったもんだ。縁ついでに伝言を頼まれちゃくれないかい」
 ソレは、と壊れかかったお針子は小さく、問うて。
 それにヒコはよく聞いて覚えておいてくれよと紡ぐ。
「ソッチで二人仲良く倖せに暮らしてろ……と、な!」
 飛び蹴って、その身を貫く。
 お針子はがらりと崩れて――そこに残ったのは彼女が作った衣装のみ。
「そんなもん、置いていかなくていいのにな」
 そう零せば、ひらりと衣は舞い上がり――もう手の届かぬ夜空へと消えていった。

●夜の端で
 お針子のダモクレスが果てれば、この場に戻るのは静けさだ。
 その中で、ヒコは少しだけ眉を寄せ、困ったような顔をして、歯切れ悪く口開く。
「――……あー、駆けつけてくれて感謝している」
 お針子を倒し、安堵して。
 素直に礼を言うのはむず痒いが、そこはちゃんと告げねばならないこと。
「好い気分だったのに醒めちまった。呑み直してから帰るかね」
「成程、此処は穴場という奴」
 と、夜は片目を瞑り、盃傾ける仕草をして見せる。
 その様にわかったよとヒコは小さく笑い子星。
「ほら、ツマミと酒分けてやるから少し付き合え」
 が、酒は無理かと視線を向けたのだがそこは心配無用だった。
「屋上庭園が貸し切りだなんてとっても贅沢なの」
 ヒコちゃんなんでここをもっと早くに教えてくれないのとメイアが不満漏らせば、今晩はこっそり楽しむ予定だったんだとヒコは言う。
 それに今日は風がいつもより冷たい。
 寒くて羽根がぶるぶるーとしないように温かい格好。おそろいね、とコハブの首にもマフラーを。
「えへへ、お菓子も持ってきているの」
 そしてちゃんと、お菓子の袋を切る愛用の可愛いハサミも。
 糸もお菓子の袋も簡単に切れるのよとメイアがしょきしょき動かせば、ヒコは切ってくれてありがとよと笑う。
「折角ッス、オトナには負けてらんないッスよ」
 ホットココアもいかがっスか? と差し出せば寒いので欲しいとリィが手を伸ばす。
 その温かいものを手に見上げる空には星が瞬いている。
 それを見上げつつラランジャは小さな林檎のパイ包みを口に。
「クッキーやマフィンもあるよ。マフィンはチョコやオレンジピール入り」
 と、お疲れ様! なんだよと結は笑ってお菓子を取り出す。
「ハコは、後で。余ったらあげるから」
「ハコちゃんおやつ食べる? 他の子の分もちゃんとあるから大丈夫ですわ」
 と、皆が楽しそうに食べている様子にそわそわしていたハコへと怜奈はおやつセットを。
 他の子にもありますわと、皆へも渡す。
 ラランジャはそれ貰っていいっスかとマフィンを一つ。手にしたそれはオレンジピール入りで、ココアの甘みとも丁度よく。
「サヤちゃんのお菓子、なぁに?」
「ほうじ茶と、すこし早い桜餅です」
 おいしそう! と瞳輝かせるメイアにサヤはどうぞとさしだす。
 わたくしはミニドーナツ、とメイアは一つ取り出して。
「リィちゃん、はいあーん」
 差し出されてリィは言われるがまま、口を運べばそこに甘い味。
「イドちゃんも食べる? どーぞー」
 と、イドもそれに飛びついて。餌付けされてるわねとリィは見遣る。
「大人たちも食べるかしら?」
 ふと、メイアが視線向ければ大人達も楽し気だ。
 その様子を目にしたリィは半眼だ。寒いとふるふる。温かい飲み物で少しは温まるがやはり寒い。
「こんな寒い中、わざわざ外でお酒だなんてどうかしてる」
「お酒って紅茶とお菓子セットよりおいしいのかしら」
「どうなんでしょう。そちらも桜餅いかがです?」
 そう声かければ、ヒコはもらうと手を伸ばす。
「想いを還すには、好い日ですよ」
「還すも何も」
 桜餅貰いながら、覚えが全くない想いはなとヒコは言う。
「……引く手数多は生き飽きずに済みそうだよ?」
 そんなヒコに夜は笑って。
「待ち針で『たった一人の誰か』に穿たれるのを望まぬうちは浮世の身を楽しむのが良い」
 というものの、酒の肴に夜はヒコの女難を忍び笑う悪戯を。
「もう本当に女難はいらないんだが」
「ヒコ、そういうのフラグって言うのよ」
 リィに突き付けられた言葉にヒコは押し黙る。
 やがて、もうこりごりだと言うが、縁はどこでどう紡がれるのか、未来は誰もわかりはしない。

作者:志羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年2月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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