封印城バビロン決戦~死神は禍津ことを希み潜む

作者:神南深紅

●唯一の方法
「リザレクト・ジェネシス追撃戦、お疲れさまだった。英気を養ってくれただろうか?」
 ヴォルヴァ・ヴォルドン(ドワーフのヘリオライダー・en0093)は皆を見渡す。
「皆の活躍でおかげ多くのデウスエクスを撃破出来た。特に城ヶ島でのドラゴ戦は熾烈を極めた。3竜の撃破には成功しましたが、奴らのドラゴン達の捨て身の迎撃で固定型魔空回廊が完成、竜十字島から多数のドラゴンが城ヶ島に出現している。由々しきことだ」
 ヴォルヴァの表情は硬い。この時勢でも東京圏は人口が密集している。そこにドラゴンが拠点を築くことはそこの住まう多くの人々に危険が及ぶ可能性が高いということだ。
「城ヶ島奪還作戦も検討されていたのだが、それよりも先に複数のヘリオライダーにより、恐ろしい予知がもたらされた」

 ドラゴン勢力が、命を捨てでも城ヶ島に執着していた理由。
 それは、日本列島に走る龍脈、フォッサ・マグナだったのだ。

「この地図を見てくれ。日本列島は、北アメリカプレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレートの3つの境目となっている。そして、城ヶ島からプレートの裂け目に沿って北に進むと、そこにあるのは……『封印城バビロン』なのだ」
 つまり、ドラゴン勢力は、封印城バビロンと城ヶ島を結ぶフォッサ・マグナを暴走させ、関東圏を壊滅させ大量のグラビティ・チェインを奪取するつもりなのだ。その潤沢なグラビティ・チェインを使い『惑星スパイラスに閉じ込められた』ドラゴンの勢力の救出を行おうとしているのだろう。
「この恐ろしい計画を阻止するには2つの方法がある。作戦の起点である『城ヶ島』か『封印城バビロン』の破壊だが、城ケ島はぶっちゃけ無理。だから『封印城バビロンの破壊』を成し遂げるしかない……と、いうのが結論だ。そのためには情報が欲しいとヴォルヴァは続ける。
「ドラゴンどもの作戦を止めるには、要塞竜母タラスクの心臓部を撃破するしかないが、通常の方法では心臓部にはたどり着けない。『竜牙流星雨』を止め、ドラゴン戦車を供給する戦車工廠を破壊し、サルベージした戦力を操る死神を撃破する必要がある。皆にはたとえ難しくてもダンジョン探索中のケルベロスが遭遇した死神『マガツキマイラ』の見つけ出し、倒して欲しい」
 それがどれほど難しいことかわかると言いながらヴォルヴァは言う。
「マガツキマイラは、ケルベロスの探索によって減少した戦力を回復させると共に、要塞竜母タラスクが撃破された場合に、即座にサルベージする準備を行っているようだ。そんなことを許せば状況はこれ以上ないくらいに悪くなる。マガツキマイラの撃破は全体の作戦を完遂するための絶対条件だ。ただ、どこに隠れてサルベージの儀式をしようとしているのかさっぱりわからない」
 お手上げだとヴォルヴァは両手を挙げて肩をすくめた。
「申し訳ないが、皆には3つのチームに別れてダンジョンを探索し、マガツキマイラを見つけ出して撃破して欲しい。儀式さえ阻止できればマガツキマイラは倒せなくてもいい」
 大事なのは儀式をさせないこと、サルベージを許さないことだ。
「とはいえ、やみくもにダンジョン全てを重点的に探している時間はない。有力候補地をあげておいた。各チームで手分けして効率よく探索してもらいたい。どのようなルートでどう回るかもあらかじめ決めておいたほうがいいと思う」
 後でチェックして欲しいとヴォルヴァは資料を皆に渡す。
「多くの猛者たちが封印城バビロンの防御力を削るべく探索を行ってくれた。その地道なる努力に報い、必ず作戦をやり遂げて欲しい。サルベージなんてリセットさせるわけにはいかんからな。輝かしい戦果を期待している!」
 ヴォルヴァはやっと笑った。ニヤリと。


参加者
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
橘・芍薬(アイアンメイデン・e01125)
シルフィディア・サザンクロス(ピースフルキーパー・e01257)
ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)
カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)
葛城・かごめ(幸せの理由・e26055)
カヘル・イルヴァータル(老ガンランナー・e34339)
款冬・冰(冬の兵士・e42446)

■リプレイ

●たくらみ
 微かな違和感は先に進むにつれて確信へと変わってゆく。それほどこの日の封印城バビロンはいつもと違っていた。
「ボクの熱い思いを感じて欲しいデス!」
 愛用のギターを手放すことなく背に負ったまま、可憐な唇を大きく開いたシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)はその言葉通り、熱くたぎる炎の息をロングブレスで敵へと吐き、焼き払う。誇る名もなき下級ドラゴンの残霊がシィカの攻撃に完膚なきまでに破壊され消えてゆく。
「案外ここが目的の場所かもしれませんね」
 橘・芍薬(アイアンメイデン・e01125)が相棒である九十九と華麗な舞を披露し、癒しの花びらが舞散る中言う。
「ボクの勘だときっとこの近くデス!」
 芍薬の意見にシィカはニカっと笑って言う。
「せ、狭い道ですが……こちらからならば敵の数はわずかです」
 いつの間に偵察をしていたのか、シルフィディア・サザンクロス(ピースフルキーパー・e01257)はごく控えめな口調と声音で言う。大声で話すことで敵に感知されることを警戒していることも理由だろうが、生来の性分でもあるのだろう。
「わかりました。シルフィディアさんの言うことなら私は全面的に信じます」
 いかにも魔法使いという風な長く黒いマントをひるがえして、ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)は率先してシルフィディアが示した道へと足を向け、無造作に構えたバスターライフルから放たれた凍結光線が道の中ほどのいた残霊を凍りつかせ、破壊する。
「いないわけじゃないのですね?」
「は、はい。すみません。まったく敵と遭遇しない道はなくて……」
 ウィッカの問いにシルフィディアは申訳なさそうに返答する。
「ここもエンカウントっと」
 芍薬は自分で作った地図に小さく書き込みをする。敵の少ないだろう道を選択してきたつもりだが、それでも地図にはもうたくさんの印がある。
「それにしても、死神とドラゴンって仲良しなんですね。誰が間を取り持ってるのでしょうか」
 ダンジョンの奥でありながら、殺気も気負いも緊張も感じさせないのどかな口調でカルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)がつぶやく。それはこのミッションを引き受けた時からの淡い疑問であった。
「なるほど、さながら薩長同盟を結ばせた坂本龍馬的な存在がいるのではないかと思うのじゃな?」
 カルナの銀砂色とは違う銀色の髪をしたカヘル・イルヴァータル(老ガンランナー・e34339)が周囲の罠を見破ろうと眉根を寄せて探索しつつ言う。
「坂本? さぁどなたでしょう?」
「なんじゃ、幕末は苦手かの?」
 カヘルの相棒であるボクスドラゴンも銃を構えて首をかしげる。
「目標確認。戦闘モード、起動。カルナとカヘルに……」
 全てを言い終わる前に。款冬・冰(冬の兵士・e42446)の動きは始まり、そして終わっていた。エンカウントした敵の集団との間合いを超加速突撃で一気に詰め、蹴散らし隊列を乱している。さらにカルナのレーザーが敵軍を同時に攻撃し、カヘルは長年の経験と技量からなる老獪なる達人の一撃を生き残った残霊を放ち倒す。残る残霊を必殺のエネルギー光線で倒した葛城・かごめ(幸せの理由・e26055)は変形させた胸部を戻し雅な和装を整える。
「目標戦闘不能確認。臨戦より警戒態勢に移行」
 残霊の消滅を確認した冰は稼働状態を変化させる。
「最後の探索になるのかもしれないこの道幸、楽しんでいきましょう。あ、カルナさんそっちじゃありません」
 淡く笑ったかごめは優しく逆方向へと向かいそうになるカルナを止め、視線を巡らす。その先に、最初の目的地である四階中央付近、木箱と宝箱の部屋が見えてきた。部屋は内部から漏れる光に淡く輝いていた。

●木箱と宝箱の部屋
 目的の部屋まで残霊との遭遇はなかった。古い扉の前まで一足先にたどり着いていたシルフィディアは後続が到着すると小声で聞いた。
「み、みなさんご無事ですか……? どうやら罠や仕掛けはないみたいです」
 今は戦闘中ではないため、シルフィディアはごくごく控え目な口調と小さな声で報告する。
「そのようですね。ここまで私たちが来るとは思っていなかったのか、護衛をつけるだけの時間や余力がなかったのかもしれませんが」
 かごめもざっと辺りを調べるが、それらしいギミックはない。
「中で何らかの儀式が行われているのは間違いありません。見ていないうちに断言はできませんが、たぶん要塞竜母タラスクを即座にサルベージする準備でしょう」
 魔術に長けた者としてウィッカは見解を仲間たちに告げる。
「無事にここまでたどり着けて大当たりなんて、僕たちとってもついてますね」
 ここまでに3回ほど迷子になりかけたカルナだが、少しも気にしていない様子で屈託ない笑顔を浮かべる。
「わしの嗅覚もマガツキマイラはここだと感じておるわ。各々方、準備はよろしいかの?」
 カヘルは扉の横の壁を背に銃を構え、ボクスドラゴンも同じ姿勢をとる。
「開けるわよ! 九十九!」
 扉を芍薬と九十九が両方から力を入れ押し開ける。
「じゃ、行こう! レッツ、ケルベロスライブ!! イェーイ!!」
 蹴破るように扉をあけ放つとシィカは真っすぐに部屋の中央へと向けて走り出した。
「最終目標マガツキマイラ確認。戦闘モード、再起動」
 冰は見た。鳥の様でもあり、翼竜のようでもあり、植物でもマシンでもあるその姿。タラスクのサルベージを試みるマガツキマイラの奇怪なるその姿を。

●生か死か
 いつもならば散在する木箱も宝箱も部屋の隅に寄せられ、確保された部屋中央のスペースにマガツキマイラがいた。その足元には複雑な文様と形が浮き上がる魔法陣は今も息づくかのように力を帯びた光の明滅を緩やかに繰り返し、より大きく高く変化しようとし続けている。そう、儀式の準備は今も続けられているのだ。
「貴様らの思い通りになんて、絶対させませんよ……!」
 飛び出したシィカよりも速くシルフィディアが敵へと走る。墜龍槌を『砲撃形態』」に変形させ竜砲弾をぶっ放す。そのシルフィディアの身体をかすめてゆくかのように、全く同じタイプの力がカルナから放たれマガツキマイラへ迫ってゆく。奇襲のごとき電光石火の攻撃だが、一瞥したマガツキマイラはメカメカしい左前肢で二人の攻撃を受け止めた。
『誰何?』
 複数の思念が寄り集まったような耳障りな不協和音が誰何の念を伝えてくる。
「絶対にその魔法陣を完成させはしません」
 ウィッカがまばゆい流星の光と力を秘めた飛び蹴りをマガツキマイラの挙げた腕へと炸裂させ、その反動で反転しつつ間合いを取る。
「もっともっと動けなくなってもらいます」
 芍薬もドラゴニックハンマーを変形させて竜砲弾を放つ。小さな九十九も武器を手にペちペちと敵を打つ。
「みんな僕より過激でロック過ぎデス。でもそんなみんなが大好きデス! ここからが本当のドラゴンライブ、デス!!」
 シィカの唄が響く。世界を変える思いのこもった力強く希望に満ちた音楽の力が最前列で戦う者たちの攻撃力をもっと強く高めてゆく。
『退け!』
 マガツキマイラがまるで群がる羽虫でも追い払うかのように無造作に放った声と力。誰かを狙ったわけではなさそうな雑な攻撃であったが、前衛よりも人の多い後衛へと向かった光が皆を焼く。敵の攻撃後の間隙、その好機を冰は見逃さない。
「まれびと来たりて凍空を翔ぶ。何者にも、阻まれる事無く」
 一瞬で形成された氷の長刀は時間も距離をも超越し、始まった時にはもう攻撃が終わっていた。燕が空を飛ぶように、空間を切り裂くように穿たれた長刀は斬り抜けた後に自壊した。
「これがわしからの挨拶代わりじゃ。遠慮なく受け取るがいいぞ」
 傷の痛みに少々顔をしかめながらもカヘルは神速の所作でリボルバー銃を抜き放ち、惜しみなく弾丸を打ち込んでゆく。カヘルの半身でもあるボクスドラゴンもリボルバー銃を手にカヘルに治癒の力を使う。
「本当は前衛から先に使いたかったのですが、戦いとは思ったようにはならないものです」
 なによりも守ることを優先すると誓った遠い日の記憶はいつまでも色あせずかごめの中で燃え上がる。だから、ケルベロスチェインで描く魔法陣はマガツキマイラの攻撃で傷ついた自らをも含む後衛の足元に展開され、癒しの力を放ってゆく。カヘルだけは戦闘に支障のない程度にまで傷が回復したが、他の者たちは復調とは言い難い。それほどマガツキマイラの一撃は強烈だった。
『不快』
 儀式を続けていたマガツキマイラは自分の攻撃にも倒れないケルベロス達へと向き直った。中断されたサルベージの魔法陣は消えてはいないが、明滅していた光は消えたままで大きさも変わらない。
「生きる価値のない目障りなクズめ……さっさと死に絶えろ……!」
 シルフィディアの言葉と同時に枯森蔦はツルクサの茂みのような『蔓触手形態』となり、マガツキマイラへと絡みつき締め上げる。マガツキマイラの植物のような右前肢が抗う。
「風よ、嵐を告げよ」
 カルナの願いに応じるように、召喚された氷晶まじりの暴風がマガツキマイラに吹きつけ、魔力をはらんだ氷たちがその身体を凍えさせる。
「この際です。私たちからの冷たい攻撃を連続で受けていただきましょう。頭も冷えるかもしれません」
 ウィッカはそう言いながら凍結光線を発射する。それは違うことなくマガツキマイラに命中し身体から熱を奪う。そして、ウィッカはマガツキマイラの足元で力なく浮かぶ魔法陣へと視線を向ける。
「どうやら戦っている片手間に儀式を編むことは出来ないみたいですね」
 ウィッカは冷笑を淡く唇に浮かべる。
「私と九十九が守るかぎり、絶対に仲間から犠牲者なんて出さないわ。そうよね、九十九」
 上品なメイド服姿の芍薬が華麗なる舞いを披露する。美しい演出の様に可憐な花びらが戦場に舞い降り、それが後衛の怪我を治してゆく。もちろん、九十九も『応援動画』をかごめに見せてさらなる治癒にまい進する。
「お待たせしたデス! これがボクからキミへの最初のプレゼント、デス! あ、お返しとか気を遣う必要なら全くないデス!」
 ギターをかき鳴らした後の決めポーズから一転、シィカは対デウスエクス用のウイルスカプセルをものすごい剛腕ぶりでマガツキマイラへと投げつけた。バコンと異音を発して命中したウィルスカプセルの中身がマガツキマイラへと浸透する。
「ヒットデス!」
 喜ぶシィカにぎろりとマガツキマイラの視線が飛ぶ。
『断罪』
 マガツキマイラの怒りを含んだ音のない筈の思念が部屋を震わせ響いてゆく。深淵のような黄色の瞳はシィカではなく冰を捉え、斬撃をもってその傷口より命そのものの力をごっそりと奪ってゆく。
「冰から奪ったエネルギーでマガツキマイラが自己修復」
 傷の痛み、全身の倦怠、視界の暗転。どれもが冰の予想出来る範囲の状態だった。膝をつき、倒れ込んでしまいそうな誘惑に、冰は敢然と抗った。
「被害甚大……なれど、戦闘継続、可能」
 冰は簒奪者の鎌を回転させながら投げつけ、マガツキマイラを切り刻んで持ち主の手に戻る、はずがガランと音を立てて転がってゆく。長い銀色の髪が地面に広がる。冰は倒れて動かない。
「嬢ちゃん!」
 精神を極限まで集中しマガツキマイラの爆破を試みていたカヘルの反応は、彼史上最も迅速だったかもしれない。
「頼む!」
 その一言だけで相棒のボクスドラゴンが冰へと治癒の力を使う。
「力を借りるわ」
 かごめはワイルドスペースから自己の残霊を喚ぶ。かごめ本人とかごめの影、二人がかりの回復技が倒れた冰に潤沢な力を注ぎ込む。すぐに影は霧散するが、再び冰が立ち上がる。
「大丈夫ですか? まだ戦えますか?」
「戦闘続行、可能」
「わかりました。必ずあの敵を仕留めましょう」
 かごめはやや退き、冰は前へと進み出る。

●終焉
 戦闘は続いた。マガツキマイラはなかなかに頑丈でケルベロス達が渾身の技を繰り広げても弱っている様子が見えない。そして、攻撃は強烈でその都度、必死に治癒の力を注ぎ込まなくては戦闘状態を維持できない。それでもケルベロス達は有利であった。戦っていれば、マガツキマイラは儀式を続行できず、発動に至らない魔法陣は浮かびあがることもない。時間稼ぎでも構わないケルベロス達と儀式の完成を焦るマガツキマイラ。それが決定的な分かれ目となる。無駄とも思える激しい移動。
「逃げないで、もっと付き合ってくださいね」
 カルナの目にはこの場を捨てて別の場所で再起を図るように見えた。だから、その逃走路を潰すように立ちふさがる。
『邪魔』
 怒り狂うマガツキマイラが放った炎がカルナを飲み込む。鋼鉄さえ解けるほどの高温の炎にもがき転がるカルナ。
「カゴメ、カルナに支援を」
 冰は燃えるカルナから強引に視線を外し、マガツキマイラに斬りつける。『虚』の力をまとった刃は敵の傷から生の力を簒奪してゆく。そう、少し前に冰自身がマガツキマイラに受けた攻撃と同じように。
「そうじゃ。逃がしはせんぞ!」
 カヘルは不思議な魔法のブーツに理力を籠め、星型のオーラでマガツキマイラに蹴りをぶち込む。ボクスドラゴンはカヘルの治療に全力を注ぎかごめを待つ。
「わかりました」
 炎は消えても消し炭のように真っ黒となったカルナは横たわったまま動かない。
「もう一度、力を貸して」
 再びかごめは影のかごめを喚ぶ。二人ががかりの強烈で温かい治癒の力が死線をさまよってもおかしくない程のダメージからカルナを引き戻す。
「あ、ありがとう。お花畑が見えたかも」
「敵の動きを見破る慧眼、お見事です。もうちょっと戦えますか?」
「うん、大丈夫」
 カルナが立ち上がり敵を見る。
『無念』
 腕がもげ、翼が落ち、身体が前のめりに崩れゆく。シルフィディアの音速を超える拳、そしてウィッカの拳の両面攻撃が追い詰められたマガツキマイラを吹き飛ばし合う。次の攻撃準備に入っていた芍薬は目を見張り姿勢を解く。
「魔法陣が、消えたわね」
 マガツキマイラが倒れ、力の供給を完全に絶たれた魔法陣は何も為すことなく消えてゆく。
「ボクたちの完全勝利デス。あとはタラスクの撃破デスけど、きっとやってくれているのデス! じゃここで魂のセッションを……」
 シィカのギター演奏はこの後全力で皆に阻止されたが、誰一人欠けることなくマガツキマイラを撃破したケルベロス達の戦闘はまさに完全勝利であっただろう。
「近くに竜影海流群もいないみたいだし、帰ろうか?」
 皆への治癒を終えた芍薬は立ち上がった。

作者:神南深紅 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年1月30日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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