「リザレクト・ジェネシス追撃戦、皆ようやってくれたな。有難うな」
宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)がタブレット端末を左手に持ち、すすっと操作をしながら集まってくれたケルベロス達に話しかけた。最後にタンっとタブレット端末をタップした後、改めて顔を上げた。
「ちょっとごめんやで、ちょっと準備があったから……。んで、そんな皆のおかげで戦争で打ち漏らしたデウスエクスの撃破、レリ王女との交渉に成功できたわけやけど、ここで別の情報があった」
その言葉に何人かのケルベロス達は頷く。どうやら作戦の内容は予想がついている者もいるようだ。
「セリカちゃんから話は聞いてくれた人もいるんかもしれんけど、知らん子もおると思うから、まず聞いて欲しい。
追撃戦で3竜の撃破には成功したんやけど、ドラゴン達もただでは済まさんかった。固定型魔空回廊を完成させて、竜十字島からのドラゴン達が城ヶ島に出現し始めたんや。城ヶ島は神奈川県やけど、東京とは目と鼻の先や。ここにドラゴンの拠点があるのは出来へんわけやな。
で、その奪還作戦を考えていた……わけやねんけどな、そんな時にセリカちゃんを中心とした何人かのヘリオライダーの予知で、ドラゴン勢力が命を捨てでも城ヶ島に執着していた理由が分かった。それはな、日本列島に走る龍脈、フォッサ・マグナやったんや!」
そう言って絹はタブレット端末を操作し、部屋を少し暗くすると、予め接続していたプロジェクターにある地図を投影した。それはどうやら日本列島のようだった。
「あんな、日本列島について説明するで。日本列島は、北アメリカプレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレートの3つの境目にあるのは、知ってる人は知ってると思う。そんで、ここが城ヶ島……」
絹はそう言って映し出された地図からレーザーポインタで城ヶ島をくるくると指す。
「そっからプレートの裂け目に沿って北に進む……。と、ここな。ここにあるのは、『封印城バビロン』やねん」
「それが、狙い……そうか……」
一人のケルベロスがドラゴンの狙いを、素早い思考で読みきった。
「せや、封印城バビロンと城ヶ島を結ぶフォッサ・マグナを暴走させて、関東圏を壊滅させる。それと同時に、大量のグラビティ・チェインを獲得できるわけやな。そんで、そのグラビティ・チェインで狙ってるんは『惑星スパイラスに閉じ込められた』ドラゴンの勢力の救出することみたいや。
当然、こっちもそれを阻止せなあかん。さっきの地図で分かってもらったと思うけどこの2地点、『城ヶ島』と『封印城バビロン』どっちかを破壊するで」
成る程と頷くケルベロスや、事態が未だ理解できていないケルベロスもいるが、どうやら理解した仲間がフォローしてくれるようだ。
「ただや、城ヶ島には、固定型魔空回廊できてしもたからな、ドラゴンは竜十字島の全戦力を投入する事が可能な訳や。せやからそれには竜十字島決戦を覚悟する必要もある。せやから、今出来るのは。『封印城バビロンの破壊』が唯一の手段になるわ。そんなわけでまず作戦の第一弾として封印城バビロンに乗り込んでもらうで! よろしくな」
絹の説明にもう一度頷いたケルベロス達は、更に詳細を求めた。
「大きな状況の説明しとくな。まず、敵の作戦を止めるには、要塞竜母タラスクの心臓部を撃破するしかないらしい。でもや、普通に心臓部に到達できるっちゅう甘いモンでもない。
んで、それをやる為には全体として無尽蔵の『竜牙竜星雨』を止めて、ドラゴン戦車を供給する戦車工廠を破壊して、んでサルベージした戦力を操る死神を撃破する。これで漸く心臓部に到達できる訳やな。
それぞれの班に、作戦が割り当てられているわけやけど、うちらのとこは、無尽蔵の『竜牙竜星雨』を停止させる為に、竜牙竜星雨を発生させてる、寄生型ドラゴン『ハートドラゴン』の撃破をするで。
ハートドラゴンは、『竜牙竜星雨』の竜牙兵によって護られているから、ダンジョン突入したら、竜牙兵の群れを薙ぎ払いつつハートドラゴンの元に向かって撃破してな」
ケルベロス達は一つ一つの作戦の一角である事を認識する。何処が駄目であっても、作戦の成功は全体的に厳しくなるだろう。どこも気を抜けないのだ。
「そんでもって、この『ハートドラゴンの撃破』を担当するのが、うちんとこと、雄大くん、桔梗ちゃんの3チームや。うちらで、予め作戦別で分けさせてもろた。作戦は『竜牙兵を蹴散らして道を切り開くチーム』と『ハートドラゴンと決戦するチーム』と『ハートドラゴンの周囲の竜牙兵を抑えるチーム』でかかる。んで、うちんとこは『ハートドラゴンの周囲の竜牙兵を抑えるチーム』になってる。ボスのハートドラゴンに立ち向かう仲間を、安心して戦闘に専念させる為に頑張る役目。せやから、その為の作戦。考えてな」
絹の言葉にやる気を出して、拳をあわせるケルベロス達。最後に絹が一言付け加えた。
「今回の作戦は、はっきり言ってめっちゃ重要や。うちらの力みせたるで! 頼んだ!」
参加者 | |
---|---|
ギルボーク・ジユーシア(十ー聖天使姫守護騎士ー十・e00474) |
セレナ・アデュラリア(白銀の戦乙女・e01887) |
館花・詩月(咲杜の巫女・e03451) |
据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357) |
レミリア・インタルジア(咲き誇る一輪の蒼薔薇・e22518) |
スノー・ヴァーミリオン(深窓の令嬢・e24305) |
アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467) |
エフレム・ツワブキ(追儺の獣・e25780) |
●託された番犬達
ヘリオン3基から降下したケルベロス達。眼下に聳え立つのは『封印城バビロン』だ。
ドドドドドド……!
全24名のケルベロス達がその地に降り立つ。そして、駆けた。
「ドラゴンの狙いは慈愛龍達……! その企み、果たさせるわけにはいかない!」
ギルボーク・ジユーシア(十ー聖天使姫守護騎士ー十・e00474)がそう叫ぶと、
「人々を守る為、ドラゴン達を倒す道を切り拓きましょう! それがケルベロスとして、そして騎士としての私の務めなのですから」
セレナ・アデュラリア(白銀の戦乙女・e01887)も続く。
「ここに来るのも何度目か……ドラゴンは余程根競べが好きとみえますな」
「根競べ……ですの?」
据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)の言葉に反応したのは、スノー・ヴァーミリオン(深窓の令嬢・e24305)だった。
「そうですな、スノーさん。詳しくは後ほど説明いたしましょう……。戦いが、終わってからでも……」
「そうですわね。今のところ、ドラゴンの事なんてさっぱり分かりませんが、戦いを終わらせるというのは分かりますわ」
そんな軽快なやり取りをしている二人の隣では、エフレム・ツワブキ(追儺の獣・e25780)とレミリア・インタルジア(咲き誇る一輪の蒼薔薇・e22518)が無言で駆けていた。お互いに思う事は違うのだろうが、この恋人達もまた、決意に満ちた表情をしている事は確かだった。
ケルベロス達は一気に『封印城バビロン』の門前へとたどり着いた。
「この扉を開けたらハートドラゴンの元まで駆け抜けるのみです。……竜牙兵は全て俺達が蹴散らします」
結城・レオナルドがそう言うと、
「さて、竜牙兵共をぶちのめして、心臓を破壊するまで時間を稼ぎますか……傍から見たら負け戦だが、戦は負け戦こそ面白い……」
武田・克己がそう言って、彼と共に勢い良く扉を開け放った。
そして、次々に突入していくケルベロス達。
彼等は絹の話の通りに、それぞれの任務を心得ていた。今真っ先に入って言行ったレオナルドの班が、まずは目標であるハートドラゴンへの道を切り開くチームだ。
「頼んだよ」
アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)がその後姿に、信頼をのせて声をかけた。
「大丈夫。僕らもまた、為すべき事がある。行こう」
館花・詩月(咲杜の巫女・e03451)が言うと、アビスは頷いてその城へと足を運んだのだった。
レオナルド達が、道を切り開いていく。物凄い竜牙兵の数である事は確かだったが、彼等もその覚悟があるから任務を引き受けたのだ。彼等を盾とし、すり抜け、目的の次の場所へと駆けて行く。
そして、暫しの別れの時。彼等が沸き出てくる竜牙兵を受け持ちながら、此方に進めと促した。
すると、もう一班が礼を言って駆けて行き、続けて此方の班も後に続いた。
「此処まで露払いしてくれた皆さん、ドラゴンと対峙する皆さん。そして、私たちも。必ず、皆で戻りましょう」
「こっちは大丈夫。お任せだよ! そっちお願いね!」
最後にレミリアが言い、シルディ・ガードが応えてくれた。
ケルベロス達の戦いは、正にここから始まるのだ。
●託した番犬達
封印城バビロン内部に入り込んだケルベロス達は、いよいよ目的の場所にたどり着いたと認識する。
「ドラゴン、やはり必死……! ここまで多くの企てを阻止してきてこそいますが、一つ一つの脅威が実に大きいですね」
ギルボークは思わずそう呟いた。そう感じる事が出来るほどに、異様な雰囲気であったのだ。
(「だからこそ、役目をしかと果たし勝利をつかまなくては……!」)
ケルベロス達は頷きあって、その部屋へと進んでいった。広めの空間である。そして、その右奥には胸部に大きなハート型の心臓が脈打っているドラゴン、ハートドラゴンの姿があった。
「さて、皆様。あれが目標のようですわ。依頼してくれた三十路様の為にも、頑張り所ですわ」
(「とは言え、このドラゴンより、三十路様のほうがよっぽど怖いのですけど」)
スノーがそう思った時、ドラゴンが胸部から光を放ち、そこから竜牙兵が生み出している所が確認できた。その数は圧倒的であった。
「ここが、元凶のようですね」
レミリアはそう言って、ゲシュタルトグレイブ『Skakar skakande ljus』を握りながら、エフレムを見る。
「……エフレムさん、貴方と共に。行きましょう、戦場へ」
エフレムは恋人の決意が痛いほど分かった。いつでも彼女は、怯むこと無く戦場へ向かう。特にドラゴンとの対峙の時は、大怪我をしている。それでも彼女は、戦う事を止めない。
(「ーーならば、傷つけられる前に、敵を壊せばいい」)
エフレムは心の中でそう思いながら、
「あちらのチームが、心置き無く戦えるよう尽力しよう。同じく、空の上で戦っている皆のためにもな」
こう、レミリアに返した。
すると、一斉に大量の殺気が此方に向けて放たれた。竜牙兵とハートドラゴンが、息を合わせたように視線を向けたからだ。
「よぉ来たのぅ、小童共よ。まずは死地へようこそ……そう挨拶しておこうかのぅ」
その声の主は、老獪にそう言った。
「その血肉、竜牙竜星雨の糧として、貴様らの同胞を鏖殺せしめん!!」
そして、ハートドラゴンが高らかに宣言すると、一斉に生まれたばかりの竜牙兵達が、己が武器達を手に取り、ケルベロス達を囲んでいく。
だが、此方もその為の作戦を練ってきた。今こそ作戦を実行に移す時。
「おっと残念、そこでストップです」
即座に反応した赤煙が、此方に襲いかかろうとした竜牙兵の行く手を阻むように鍼を地面にうちこむと、エフレムにも鍼を投げて彼の肩に挿した。
「さてと……ここから先は通行止めだよ。というわけでしばらく僕らと付き合ってもらおうか」
と、アビスが言うと、レミリアも並び、『Skakar skakande ljus』を投げつけた。
「我が名はセレナ・アデュラリア! 騎士の名にかけて、此処から先は通しません!」
「この役目、見事果たして見せましょう!」
セレナが勇ましく口上を述べ、ギルボークも敵を行かせまいと、己を鼓舞する。
すると、詩月がちらりと、ハートドラゴンと対峙する班であるもう一班に視線を送る。レベッカ・ハイドンとの一瞬の交信ではあったが、それだけで、通じるものはある。
「ここは僕らに任せてもらおうか。……貴方達は貴方達で、為すべき事を」
詩月そう言って、少し微笑を浮かべた。
「その大きいハート。お任せ致しますわね。勿論、一匹もそちらには行かせませんので、ご安心してくださって結構ですわ。では、行きますの!」
スノーが最後にそう言った時、ケルベロス達は一斉に動き出した。そう、既に腹などとうにくくっている。
例え誰かが倒れても、絶対にここは死守する。それが任務だと。
そして、見事に完遂するのだ、と。
●阻む番犬達
「お前達の蹂躙を、看過することはできない。一一 此処から先。我らの尽くを滅ぼすまで、一歩たりとも進めぬと知れ」
エフレムが仲間の攻撃に傷ついた竜牙兵をオーラの弾丸で屠る。
ケルベロス達は、予め立てていた作戦を実行していった。
前衛で体を張る、ギルボーク、レミリア、アビス。彼女等が最前線に立ち、セレナ、スノーが壊す。
赤煙の攻撃支援を受けた、エフレムとアビスのボクスドラゴン『コキュートス』が止めを刺す。
そして、傷つき、動きが鈍った者に対しては、詩月が適切な回復を施していくのだ。
その動きは少しの無駄も無く、見事と言う他無かった。
こうして効率よく敵を排除していくケルベロス達だが、一瞬たりとも気は抜けない事は確かだ。まず数が多い。倒しても、倒しても、倒してもその竜牙兵の数は減ることが無い。
しかし、攻撃を止めてしまっては、一気にその数は増加する。
「4体抜けます!」
最前線で体を張っていたギルボークが、ドラゴニックハンマー『エルキュール・スタンプ』で1体を叩き潰しながらそう叫んだ。彼の横から竜牙兵が4体すり抜け、ハートドラゴンに加勢しに向かう。
「させません!」
セレナが抜けている竜牙兵の1体に向かい、ゾディアックソード『星月夜』を振りかざし、その力を肉体にめぐらせる。
『アデュラリア流剣術、奥義――銀閃月!』
閃光のような一撃が、竜牙兵の1体を破壊する。
『気脈の流れはグラビティチェインの流れ……』
続いて赤煙がオーラを纏わせた鍼を1体に飛ばし、その動きを封じる。
『雷竜の牙――――轟け咆哮!我が敵を貫き滅せよ!』
鍼の突き刺さった1体を、レミリアの雷となった槍が貫き、そして破壊する。
そして、もう1体にはアビスが対峙し、その縛霊手『abs-blizzard』によって、装甲を破壊する。
『わらわのモノにならないならいいわ…消えなさい』
そしてその1体を中心に、スノーが如意棒で纏めてダメージを与える。だが、最後の1体がそれでも抜けていく。
「……させるわけが、ないだろう?」
エフレムが、そのハートドラゴンの元に加勢しようとする1体に、憎悪という感情を向け、それを刀にかえる。
『一一 獣の叫びが木霊した。赤を散らせ、飛沫を上げよ。どちらの首が先に落ちるか。いざ、尋常に。』
腰に構えた憎悪の刀を、右手に持ち、前かがみの状態から、ゆっくりと右脚を摺り、狙いを定める。
『骨の髄まで、味わっていけ。』
刹那の抜刀。
ドドドドドド……!!
その憎悪が力となり激しく地面を割りながら、目標の竜牙兵に向かう。
ドッ!
そして、地面と共に憎悪が弾けると、竜牙兵は声を上げる事も無く切り刻まれ、四散していくのだった。
●そして、高らかに
戦いはケルベロス達の防衛線と、それを数の力で圧殺しようとする竜牙兵の図式になっていた。
「ぐっ……だが、まだまだぁ!」
ギルボークが、腹部に竜牙兵の剣を受け、耐える。返す刀でその敵を切り捨てる。
「敵は雲霞の如く。けれどこの手は蟷螂の斧などではない事、証明させてもらおうか」
詩月がギルボークの懐に突き刺さった剣を見て、すかさず右手の簡易式符印刷機から符を5枚印刷する。そして、機械弓に番える。
『我が心は花なり。花が心は祝ぎなり。なれば祝ぎに相応しからぬものを遠ざけ給え。』
詩月はその弓を弾き、符をギルボークを中心にした前衛へと飛ばす。すると、ギルボークに刺さった剣がガシャリと落ち、彼の傷が癒えて行く。
「ほんと、数だけは多いね……」
アビスがそう呟き、目の前の竜牙兵と対峙する。
「他の戦場の仲間に報いるためにも、ここは踏ん張り所ですぞ」
赤煙が仕上げといわんばかりに、オウガ粒子を彼女を中心とした前衛へ撒き、にやりと笑った。
実は、このチームの影の立役者こそ彼かもしれなかった。仲間を鼓舞しながら効率良く力を与えて行っていたのだ。そして、その笑みは力が隅々にまで全てにおいて行き渡った事を示していた。
「与えられた使命は果たす。それが、騎士の誇りです!」
「ハートドラゴンを倒す為、一緒に戦う皆を守る為、今ある力を出し切り竜牙兵を抑えましょう!!」
セレナが勇ましく咆え、レミリアが呼応する。
ケルベロス達の作戦の肝は、長期戦を予測した支援を行った赤煙だけではなかった。
アビスとレミリアは盾となりつつも、確実なるダメージを敵に与える。
ギルボークは盾の中でも、全体のダメージがどれくらいであるかを把握し、全員に共有する。
詩月の回復力と、敵の攻撃の効果をリセットする冷静さ。
エフレム、コキュートスが敵を確実に殺しきれば、スノーが縦横無尽に暴れまわる。
そして、セレナが1体たりとも通さないという気概で、敵を押し返し、味方に勇気を与えるのだ。
現実的なバランス重視ではあるが、少し攻撃的であり、殺しきるという作戦なのだ。持久戦に重きを置くためには、防御とともに攻撃が重要。守ってばかりではじり貧になるからだ。
作戦を成功させる為の精神力と、全員の意識を統一させるという団結力。
それが揃った時、ケルベロス達に敵う竜牙兵など居なかった。
永遠と続くかと思う敵の数。だが、必ず終わりは来る。それは、今ハートドラゴンと対峙している班への信頼。
「次です! さあ、来なさい!!」
「右から3体!!」
「まだ行けます!」
セレナが叫び、ギルボークが状況を伝え、レミリアが咆える。最前線の3名はダメージは受けてはいるが、健在だ。
『……まだ倒れてもらっちゃ困るんだよね。』
そしてアビスが六角形の氷の盾を前衛へと張り巡らせ、少しの隙も与えまいと敵から与えられた力を消し去った。
詩月が回復の必要がないと悟ると、呪詛を載せた斬撃を放ち、敵の力を上回る。
ケルベロス達の気概が、完全に竜牙兵を上回った時、唐突にそれは訪れた。
バリン……!
「なんですの!?」
スノーの目の前で、硬直した瞬間に次々と音を立てて結晶と化し、崩れ落ちていく竜牙兵達。
「どうやら、耐えきれたようですな」
赤煙はそう安堵の言葉を紡ぎ、続けて酷い怪我の方は御座いませんかな? と聞く。その崩れた中央部分には、コギトエルゴスムがあった。
はっとその意味を察し、ケルベロス達はハートドラゴンのほうへと振り返った。その視線の先には、リリエッタ・スノウが放った光線の後、ミリム・ウィアテストの青い炎の大剣が心臓部分に突き刺さり、ハートドラゴンを屠った瞬間だった。
ケルベロス達は、目の前でドラゴンを倒したチームに駆け寄る。どうやら激戦であったようだったが、幸い命に別状は無いようであった。それならばと、自然に沸き起こるのが、任務の成功への喜びというものだろう。
何を言うまでも無く、お互いに破顔し、拳をあわせ、ハイタッチをする。
「使命、達成です!」
セレナが高らかにそう宣言すると、頑張ってくれているはずのもう1班へと届くように、勝ち鬨をあげたのだった。
「しかし……」
最後に、赤煙がこう呟いた。
「竜牙兵は、もう腹一杯ですわい……」
と。
果たして、任務を達成したケルベロス達は脱出の途に就いた。
護り切ったという結果を、その誇りを胸にしながら。
作者:沙羅衝 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年1月30日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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