●列島分断作戦
「リザレクト・ジェネシス追撃戦、おつかれさまなんだよ!」
ケルベロスたちの前に現れた、小金井・透子(シャドウエルフのヘリオライダー・en0227)はにっこりと笑う。
「みんなのおかげで、前の戦争で倒せなかったデウスエクスの多くを倒すことができたんだよ。だけど、特に城ヶ島のドラゴンとの戦いはすごくて、ドラゴンは倒せたんだけど固定型魔空回廊が完成して竜十字島と繋がっちゃったみたい」
それから透子は考えながら言葉を紡ぐ……固定型魔空回廊が完成したと言うことは、竜十字島からいつでもドラゴンが駆けつけてくる状態になったということだ。
すなわち城ヶ島がドラゴン勢力の拠点になったに等しく、その危険性は言うに及ばない。
「だから、城ヶ島の奪還作戦について検討を始めていたんだけど……その過程で何人ものヘリオライダーがとんだもないものを予知したんだよ!」
複数のヘリオライダーがもたらした予知、それはドラゴン勢力が命がけで城ヶ島に執着していた理由に関わる部分だろうか?
透子は問いたそうな目を向けてくるケルベロスたちへ頷くと、大きな地図を広げる。
「ドラゴンたちが城ヶ島に執着していた理由は、日本列島に走る龍脈、フォッサ・マグナだったんだよ。日本列島は、北アメリカプレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレートの三つの境目になっているんだ。それで、城ヶ島からプレートの裂け目に沿って北に進むと、そこにあるのは『封印城バビロン』なんだよ」
透子は地図に指を這わせながら丁寧に説明をする。
「ドラゴンたちは封印城バビロンと城ヶ島を結ぶフォッサ・マグナを暴走させて……」
透子は城ヶ島から石川県沖にある封印城バビロンまでの間を繋ぐように、列島を分断するように指でなぞって、
「関東圏を壊滅させると同時に大量のグラビティ・チェインを手に入れて、そのグラビティ・チェインで『惑星スパイラスに閉じ込められた』ドラゴンたちを助けようとしているんだよ!」
とんでもないことを考えるよね! とケルベロスたちを見つめる。
確かにとんでもない作戦だが、ではどうするのか? という視線を受けて透子は言葉を紡ぐ。
「ドラゴンたちの作戦を阻止するには、『城ヶ島』か『封印城バビロン』のどっちかを破壊する必要があるんだよ」
なるほど線状に繋がっている拠点のうちどちらかを破壊すれば止まるというわけか……しかし、城ヶ島は先の通り実質竜十字島に等しく現実的ではない。となれば、
「うん、『封印城バビロンの破壊』を破壊するんだよ!」
確信めいた視線を向けてくるケルベロスたちに、透子は再びにっこりと笑った。
●戦車工廠破壊作戦
興味を持った様子のケルベロスたちへ透子は説明を始める。
「ドラゴンたちの作戦を阻止するには、要塞竜母タラスクの心臓部を撃破するしかないんだよ」
心臓部の破壊……しかしそれは通常の方法では心臓部に到達することは不可能だった。
理由は、無尽蔵の『竜牙流星雨』とドラゴン戦車の存在、それに加えてサルベージした戦力を操る死神の存在があったからだ……だが、裏を返せばそれらを排除すれば、到達できるということでもある。
「ここに居るみんなには、ドラゴン戦車を供給する戦車工廠を破壊してほしいんだよ!」
今回それをやるんだな? という視線を向けてくるケルベロスたちへ透子は大きく頷く。
「ドラゴン戦車工廠は、たくさんのドラゴン戦車によって守られているんだけど、工廠の破壊に成功すればドラゴン戦車を無力化できるんだよ!」
そして、打っ壊せば無力化できると力強く断言した。
要塞竜母タラスクの心臓部へ到達するための障害、その一つを取り除くことは絶対の条件だ。
その役割の重要性は語るまでもない。
作戦の重要性に理解を示したケルベロスたちへ透子は続ける。
「工廠の破壊は三班で行うよ。たぶん、正面から強行突破して工廠を破壊するのが良いと思うんだよ」
作戦開始地点から工廠までの間には多数のドラゴン戦車たちが犇めいている。
それを強行突破し、工廠へ突入。その上で内部から工廠を破壊する……というのが今回の作戦概要だ。となると問題は、工廠の耐久度と敵の戦力だ。
「工廠を破壊するには八人のケルベロスが全力で攻撃しても十分はかかっちゃうんだよ。あとドラゴン戦車は数えきれないくらいいるんだけど、突破と突入後の防衛含めて各班それぞれで十体倒せればなんとなかると思うんだよ」
つまり殲滅は不可能……突入、破壊、その間の防衛、それぞれの戦力分散などをどうするのかなど、よくよく話し合う必要があるだろう。
「あと、出てくるドラゴン戦車は超広域索敵ドラゴン戦車・クレアヴォヤンスと、重装ドラゴン戦車・ドライラドで、工廠が破壊できればドラゴン戦車たちはグラビティ・チェインを絶たれた状態になって無力化するみたいだよ」
一通りの説明を終えた透子はケルベロスたちを真直ぐに見つめ、
「厳しい戦いになると思う……でも、沢山の命を助けるためにどうか力を貸してほしいんだよ!」
祈るように両手を胸元に重ねた。
参加者 | |
---|---|
エルス・キャナリー(月啼鳥・e00859) |
月見里・一太(咬殺・e02692) |
上野・零(焼却・e05125) |
空木・樒(病葉落とし・e19729) |
イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083) |
ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591) |
服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027) |
氷岬・美音(小さな幸せ・e35020) |
●
要塞竜母タラスクの体表面を一行は駆ける。
視界にはドラゴン戦車の大群……そして、ドラゴン戦車の大群の向こうに見えるのは、それらを生み出すための工廠。
一行の目的はあの工廠の破壊。そしてドラゴン達の賢しい企てを阻止することだ。
「強者を称するならばなぜ野戦決戦を望まぬのか!」
だが、そのドラゴンの賢しさが気に入らないのか、服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)は些少の企みなど微塵に砕いてやるゆえ考え直せ! と拳を握りしめる。
正面から撃ち合うことを良しとする無明丸としては、個体最強……その名を冠するドラゴンが策をめぐらすことが気に入らないのだろう。
「適当に食い破るだけさ」
憤りを露にする無明丸の言葉に同意するわけでも否定するわけでもなく、月見里・一太(咬殺・e02692)は淡々と言い放つ。
策があるなら策ごと食い破れば良い。正面から突っ込んでくるなら正面から食い破れば良い。
問題は何を捨てて、何を拾うかだろう……否、全てを拾う覚悟を決めることだ。
一太の言葉にむむむと唸る無明丸。それを横目で確認しながらいよいよ近づいてきたドラゴン戦車の大群を再度見据え、
「……結構重要な部分だし、確実に目標を達成しないと……」
「はい、必ず工廠を破壊しましょう」
上野・零(焼却・e05125)が独り言のように呟くと、それに応えるように、氷岬・美音(小さな幸せ・e35020)が笑顔を向けてくる。
タラスクを攻め切れないでいた理由の一つ。それがこの工廠の存在だ。この工廠がある限り無限にドラゴン戦車が戦力として投入される。
故にタラスクを倒すならば、この工廠の破壊は必須に近い……つまり、ここでの失敗は全体の失敗につながる可能性があるのだ。とは言え、
「焦らず気負わず参りましょう」
零達の少し後ろを駆ける、空木・樒(病葉落とし・e19729)が言うように焦らず、気負わず、腹をくくるしかないのだ。
零と美音はお互いに顔を見合わせてから、いつもの笑顔の樒に小さく頷いた。
ドラゴン戦車の大群まで、あと少し。
臨戦態勢に入るドラゴン戦車達を前に、樒達は一団となって進む。
「ドラゴンだって終焉からは逃げられない」
眼前に迫るドラゴン戦車達に、イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)は工廠も戦車もすべて塵も残さずに燃やし尽くして、滅ぼしてあげるからと気合十分な様子で拳を握る。
「熱いライブになりそうだ」
そんなイズナの様子とこれから始まる戦いを想像して、ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)はBIC4003/UC Modelを持つ手を今一度確認し、
「さて、思いっきり暴れましょう」
静かに……それでいて腹の奥から湧き上がる殺意として力に変えるように、エルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)が宣言すると……一行はドラゴン戦車の大群の中に身を躍らせた。
●
「第一波、来ます!」
銀色の髪のレプリカントが警告を発した瞬間、ドラゴン戦車の大群へ突撃したエルス達を歓迎するかのようにビームと砲弾が降り注ぐ。
「はぁあああああーーー!」
雨あられと降り注いでくる閃光と砲弾の直撃を避けようとイズナが真白なもふもふコートで顔を隠そうとするも……その眼前で、ウルトレスが閃光を受け止め、無明丸が拳で砲弾を弾く。
そして弾いた勢いのまま足を止めず、ウルトレスは銃弾によって燃え広がった炎の壁を突き抜け、
「ノリが良いのは結構だが、少し黙ってろ――」
エレキベースをかき鳴らしながらドライラドの一体の懐へ飛び込み、エレキベースの先端を首の下に突き入れた。
堅牢設計の特注楽器だからこそ許される荒業でもって突き刺されたエレキベースは、ドライラドの巨体を一瞬浮かせるほどの威力を誇り、
「わたしもやるよ!」
「まずはお前らからですね!」
ウルトレスの一撃で浮いたドライラドの丸見えになった腹へ向けて、砲撃形態に変形させたドラゴンハンマーをイズナが向け、エルスが地面に守護星座を描く。
「……燃え上がるは我が心体、我が地獄」
エルスが描いた守護星座が光を放って自分達の体を淡い光で包み込む中、零は物理焼却で体のほぼ全てを地獄その物に変える事で、肉体のリミッターを完全に解除する。
「――さぁ、いざ至れや地獄道、黒き焔は此処に一つ」
更に零は結晶焼却で外側に高純度の黒い地獄を纏わせて、己の地獄の練度を最上の状態へと引き上げ――黒き地獄を纏いし地獄の化身となって、イズナの砲撃で爆発するドライラドの腹に右手を振るう。
振るわれた零の右手はドライラドの腹をごっそりと抉り取り、腹を爆破され抉られた苦痛にドライラドは悶えるように吠えようとするが、
「さぁ! いざ尋常に……勝負ッ!!」
続けざまに無明丸がドライラドへ向かって思いっきり突っ込み吠える暇すら与えない。
「ぬぁああああああああああーーーーーッ!!!」
思いっきり力を籠めていた拳を思いっきり振りかぶって……思う様グラビティ・チェインを籠めておびただしく発光する拳を全力全開でドライラドの顔へ叩き付け、そのまま他のドラゴン戦車達の顔面も殴っていく。
「――地獄から番犬様の御成りだ、纏めて砕けろ竜戦車共!」
無明丸に殴られたドライラドが仰向けに倒れ、ひっくり返された亀のように無様を見せるドライラドへ一太が鎌を回転させながら投げつける。
「美音の中に眠りし力よ、爪に宿りて全てを引き裂け!」
鎌を投げた一太の横を駆け抜けた美音は、自分自身の猫の本能として敵を狩る瞬発力を発揮し、ドライラドの脚を蹴って腹の上に乗ると爪に霊力を込めて、零によって抉られた部分を更に切り裂き、神経を麻痺させる。
美音がドライラドの腹を裂く中、上空から一太の鎌が飛来し……回転するのこぎりのように、ドライラドの首を抉る。
鎌の回転に併せて血飛沫を上げるドライラドの首へ、樒は影のように近づくと、一太の鎌に裂かれた首筋へ手刀を捻じ込んで――その首をあっさり斬り落とした。
「まずは一匹」
美音をまねるように、首を落とされたドライラドの脚から腹へ飛び乗ったエルスは血に濡れた手を拭きもせず、いつもの笑顔を見せる樒に一つ頷く。
それから漆黒の瞳を工廠へ向けて……そこまでの最短距離にいるドラゴンを確認し、真横から突進してきたドラゴンを無視して次の獲物を指し示す。
「つぎはあやつじゃな!」
次の目標を示された無明丸は嬉々としてドラゴンへ突撃して行く。
それと同時に横から突進してきていたドラゴンがエルスへ向かって砲弾を放ち……その砲弾はエルスの真横で弾ける。
「さぁ、次だ」
バトルオーラを纏った左腕に爆発の煙を纏いつつ一太が促すと、エルスは爆風で乱れた髪を直しもせずに無明丸達を追った。
●
丸太のようなドラゴンの尻尾が払われ、砲撃が降り注ぐ。
その丸太のような尻尾をウルトレスと一太が受け止め、砲撃を無明丸が弾く……が受け止めきれなかった威力は、じわじわと蓄積し浅からぬ傷をつけていく。
「時は金なり、そして命なりです」
しかしそれでも樒が王薬【厘削】で極めて重要なレベルで神経伝達速度を高めつつ仲間達の体力を戻せば十分に戦っていける程度だ。
「――塵すら残さない。緋の穂は破滅を齎すもの」
樒が仲間を回復する目の前で、イズナが両手を空へささげると……陽のように焔を纏う樹枝が、流れ星のように満天の空から流れ落ちる。
滅びの秘宝であり、終焉をもたらす伝承の炎であり、火の種子から生まれたそれは無数の炎の槍のようにドラゴン戦車達に降り注ぎ、燃え広がる。
ドラゴン戦車達にとって、はじめは小さき綻びであったそれは、気付いたときには取り返しのつかない炎となっていた。
「美音のオウガメタルよ、力を貸してね」
イズナが作り出した炎の中で踊り狂うように苦しむドラゴンへ美音が突っ込むと、風の様に身に纏うオウガメタルを鋼の鬼と化してその額へ叩き込む。
叩き込まれた美音の拳は、ドラゴン戦車の頭部を砕いて……頭部を砕かれたドラゴンは炎の中に沈んだ。
(「このままいけば支えきれそうですね」)
仲間達の様子と、工廠までの距離を見て樒は冷静に考える。
この場のドラゴン戦車達は確かに強敵だが、一体一体は特筆するような強さではない。このままいけば問題なく支え切れるだろう。
それに……と、周りを見回せば他の班の仲間達も足を止めずにドラゴン戦車と戦い続けている。
まるで三つの班で一つの生物のように進む自分達はケルベロスそのものではないか……ならば、この牙は必ず敵の喉元にまで届くだろう。
「後ろから支えます。存分に暴れてください」
樒は仲間達を鼓舞するように声を掛けると、芽生の枝を持つ手に力を込めた。
「今日は随分とオーディエンスが多いな」
ドラゴンの正面に立ち、ビームを受け止めながらウルトレスはエレキベースを激しく弾く。
エレキベースを弾く速度が力強く、激しくなるのとともに、胸部が変形展開し始め、いよいよ頂点に達した瞬間に必殺のエネルギー光線が放たれる。
放たれた光線はドラゴンの装甲を貫通し、続けざまに飛び込んだ無明丸が、流水のごとき動きで拳につけた腕輪型の小型の日本刀を拳で振るい、ドラゴン達を薙ぎ払う。
「もういっぱぁつっっ!」
さらに無明丸は薙ぎ払った勢いのままにもう一回転して二発目の薙ぎ払いをかまし、
「……あと一息……」
全身地獄の炎を纏ったままの零が、その炎の一部を打ち出すように敵の生命を喰らう炎を撃ちだせば、正面に居たドラゴンがゆっくりと横に倒れる。
「見えた……!」
「けれど、道は閉ざさせません……!」
そしてほぼ同時に銀髪のウェアライダーと紫髪のレプリカントが流れるような連携でドラゴンを撃つと……倒れたドラゴンの向こう側に工廠の入り口が見えた。
●
工廠へ足を踏み入れた零達の前には、謎の機械と大量のドラゴン戦車達が待ち構えていた。
機械については人知を超えていて理解はできなかったが、壁一面に埋め込まれた機械達を片っ端から壊していけば間違いないことは理解できた。
「破壊工作はお手のものですよ」
「わたしの炎の槍でまとめて全部焼き尽くしてあげるよ!」
その機械を見た樒は微笑みを浮かべて得意分野であることを主張し、イズナはとりあえず目についた機械にドラゴニックハンマーから轟竜砲をぶっぱなす。
そんなイズナ達に、中に居たドラゴン戦車と外で倒し切れいていないドラゴン戦車達が迫ってくるが……それらは他の班の仲間達が押さえてくれている。
「こういうの苦手だけど、がんばります!」
とは言え彼らもいつまでも持つわけではない……早急に機械を破壊する必要があるだろう、美音は星の加護を受けたとされるリボルバー銃から弾丸をばら撒くように放ち、機械に穴をあけてゆく。
次々と機械に損害を与えていく美音をドラゴン達が黙って見ている訳もなく、鞭のようにしなる尻尾や砲弾が飛んでくるが……無明丸と一太がこれを受け止める。
「さぁかかるぞっ! 片っ端から叩き壊せぃ!!」
そして爆炎と、衝撃に耐えながらも無明丸は、近場の機械を緩やかな弧を描く斬撃で切り裂き、
「この程度で終わると思うなよ、竜戦車共!」
一太もまた、チェーンソー剣の刃で無明丸と同じ場所を切り裂いたのだった。
杖のような如意棒を真直ぐに突いて機械を破壊しながら、零は他の班を含めた仲間達をじっと見つめて、
「……順調、だね……」
小さく頷く。工廠までの道のりはほぼ最短で走り抜けることができ、中に入ってからは他の班の補助もあって破壊活動に専念することができている。
組み立てた作戦はほぼ想定通りに動いている。
さらに、この班だけの話でも傷ついた一太達を樒が支え、前線は常に最高の状態で破壊活動に勤しむことができている……戦力的にも十全。
ならば後は、工廠の機械が止まるまで破壊を続けるのみだ。
「この憎いドラゴンの造り物、全て砕けよ! 燃えよ! そして跡形もなく消え去れ!」
あっちの機械が重要そうですよと少し愉しそうに、無限のグリモアから物質の時間を凍結する弾丸を精製し、機械へ射撃するエルスの姿を見て、零は今一度頷き、
「ライブもそろそろクライマックスだな」
ウルトレスもエレキベースを弾きながらそのヘッド先端を機械に捻じ込んで、近くの機械を破壊していったのだった。
「そろそろ決めてください」
何度目かの樒の癒しが一太達の背中を押し、ウルトレスがベースを弾きながらエネルギー光線を放ち、
「レーヴァテイン!」
イズナの炎の槍が降り注ぐ。イズナの炎の槍と、ウルトレスのエネルギー光線は違わず機械を破壊してゆき、
「獄炎よ、朔月を充たせ。厄裂き闇裂き凶裂き、仇為すを照らし侵し充たして焦がせ」
一太が両の手を牙のように合わせると、そこに地獄の炎を超圧縮する。
超圧縮された炎はレーザーとなって射出されて、機械の中へと吸い込まれ……次の瞬間、内部に発生した熱によって機械は外側へ膨張して破裂する。
「終焉の幻、永劫の闇、かの罪深き魂を貪り尽くせ!」
さらにエルスが、時々夢に浮かぶ、かつて滅亡した世界を覆う闇を虚無と現実の狭間から召喚し、機械を飲み込ませる。
絶え間なく浸食する闇は、機械すらも貪り尽くし――ついには工廠全体の機械を停止させるに至ったのだった。
すべての機械が停止し、同時にドラゴン戦車達の動きが止まる。
「終わり、ましたね」
停止したドラゴン達を何処か冷たい視線で見つめ、エルスがぽつりと呟き、
「ああ、終わったな」
「……お疲れさま……」
一太と零も、エルスに同意するように頷く。エルスとしては周りに居るドラゴン全てを葬りたいところだろうが……そこまでしなくても工廠からのグラビティ・チェイン供給が立たれたドラゴン戦車達は、すぐにでもコギトエルゴスムになるだろう。
「わははははっ! この戦い、わしらケルベロスの勝ちじゃ! 鬨を上げい!」
故に、これ以上労力を使う必要はない。無明丸が言うように勝鬨を上げ、この場勝利を喜ぶべきだろう。
「悪くないライブでしたね」
両手を上げて素直に勝利を喜ぶ無明丸に、ウルトレスは視線を向けてエレキベースを小さき弾き、
「ええ、それに皆さん無事で何よりです」
樒もまたいつもの笑顔のままに、大きく頷いた。
「これで、他の人達も戦いやすくなるかな~?」
そんな樒の顔を、緋色の瞳でじーっと見つめながらイズナは、自分達の活躍で他の人が楽になったのかなと小首をかしげ、
「そうですね。あとは皆さんを信じて待ちましょう」
美音は大丈夫ですよと、両手の拳をぐっと握りしめた。
いずれにしても自分達の役割はここまでだろう。
一行はお互いに顔を見合わせると、各々の方法で勝利を噛み締めることにした。
作者:八幡 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年1月30日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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