寒空の劔堕とし

■リプレイ

●人の影遡り
　埼玉県大宮市、大宮駅。
　平日朝7時30という刻は、正しく通勤ラッシュの頃合い。
「んもう！　また罪人エインヘリアルー？　地球はゴミ捨て場じゃないのに！　失礼しちゃうわ！　ぷんすか！！」
　平・和（平和を愛する脳筋哲学徒・e00547）が頬を膨らませて怒りを露わに。
　……その姿と声音から、何故か可愛いと感じてしまう者多数なのだが……怒りを覚えるのは至極当然。
　現れるのは、悪事を重ね、地球へと送り込まれた罪人のエインヘリアル。
　多くの罪を重ねた彼にとって、この大宮駅前を歩く人達を次々と殺戮する事自体……罪に罪を重ねるなど、造作も無い事。
　そんな和に対し、何処か達観した雰囲気の千歳緑・豊（喜懼・e09097）は。
「まぁ、確かにエインヘリアルのする事は、許す訳にはいかないな。まぁ……一方的な殺しなど、私は大して面白く無いとは思うのだがね」
　肩を竦めた一言。
　その一言に、死道・刃蓙理（野獣の凱旋・e44807）は。
「……一方的な殺戮……大量虐殺……戦に於ける、弱者を蹂躙する事と同義……それが正しいとは……思えませんが……」
「勿論、正しいという事を言っている訳ではないよ。彼のやる事に善はない。ただ、戦う分には、多少なりとも抵抗してくれた方が楽しい、って事さ」
「そうですか……」
　豊の言葉に、複雑な表情の刃蓙理。
　でも、如月・沙耶（青薔薇の誓い・e67384）が。
「何の理由があろうとも、皆さん通勤で忙しくしてますのに、所構わず襲撃してくる様な、傍迷惑な輩は退場して頂きましょう。彼らの事情は知ったことではありませんので、容赦無く対峙出来ます」
　と強く言うと、それに頷くルピナス・ミラ（黒星と闇花・e07184）と彩咲・紫（ラベンダーの妖精術士・e13306）。
「ええ。通勤ラッシュを狙うエインヘリアル……こんな人通りの多い箇所にそんな者が現れたら、大惨事になるのは間違いありません。必ず、人々を助けてみせましょう」
「ええ。エインヘリアルによる大量虐殺……そんな事件は、見過ごす訳には行きませんわ」
　そんな仲間達の言葉に、相馬・泰地（マッスル拳士・e00550）は。
「そうだな。取りあえずエインヘリアルが現れ次第、直ぐに仕掛けられるようにしておかないとな……と、ん？」
　半袖裸足の泰地の横で、彼方・悠乃（永遠のひとかけら・e07456）が難しい表情を浮かべながら。
「大宮……死神ブラックパールから、ミッション破壊作戦により、解放された地、ですか……」
　……エインヘリアルがそれに関わっていたものかどうかは分からない。
　でも、何だか胸騒ぎを覚えてしまう悠乃。
「……ま、余り深く考えてもな。取りあえず、ここに居る一般人達を守る為に力を尽くす、それだけだ！」
　と、泰地の力強い言葉に、悠乃はこくりと頷いて。
「そうですね。また、デウスエクスがこの大宮を脅かすというのなら、その人々の戦いを私達が引き継ぎます。戦いは過去から今に繋がるのだから。人々が安らげる未来を護り抜く為に。その思いと願いには、何も違いはありません」
　その決意に、刃蓙理はこくりと頷いて。
「では……避難誘導は警察の協力を仰ぐ、という事で……始めましょう」
　と、ケルベロス達は、大宮駅前へと辿り着くのであった。

●風向けば
　そしてケルベロス達が大宮駅前へと到着、展開して暫し。
　エインヘリアルの姿は、未だ無い……日常の通勤風景が展開され、バスを降りる人、歩いている人……様々な人が、電車に乗る為、大宮駅に向けて歩いている。
　……そんな一般人達の通勤風景に、沙耶は。
「……絶対に、護ります……」
　と、思わずの一言を紡ぐ。
　そして……一般人の波を眺めながら、数分。
『キャアアアア！！』
　響き渡る、叫び声。
　突如、姿を現した、巨躯のエインヘリアルが大宮駅前へと降り立つと共に……ゾディアックソードを抜く。
『へへへ、さぁ、殺戮の宴を始めようぜぇ！！』
　血走る目は、もはや凶器に包まれているのは間違い無い。
　……そんなエインヘリアルの出現位置へ、直ぐに駆けつけるケルベロス……一番先に辿り着いたのは、泰地。
　しかし、エインヘリアルの目前には、先ほど悲鳴を上げた女性が、座り込んでいる。
『先ずは、お前からかぁ！？』
　ニタり笑みを浮かべたエインヘリアル……その顔に向けて、泰地が。
「待ちやがれこのデカブツー！！」
　走り込んだ勢いそのままに、『顔面蹴り』を喰らわす。
　顔がひしゃげ、横に倒れるエインヘリアル……そして。
「オレ達で敵の注意を惹きつける、市民の避難は任せたぜ！」
　と、泰地が悠乃に避難を促すと、悠乃が彼女の手を引いて、其の場から逃がす。
　その動きに合わせて、和とルピナス、沙耶が。
「みんな！　こいつはデウスエクスだよ！　早くここから逃げて！！　そこのおまわりさん！　避難誘導おねがいー！！」
「警察の方、こちらです！　ここは危険ですから、周りに居る方々を至急駅の方に避難誘導、御願いします！」
「大丈夫……必ず、私達が皆さんをお守りします。すいません、こちらのおばあさんに、肩を貸してあげて下さい」
　警察、警備員、そして通勤途中の若いサラリーマンの人達等に呼びかけて、出来る限り早く、その場から避難する様に誘導する。
　その一方で、豊、紫、刃蓙理は泰地と共に、エインヘリアルの真っ正面へと正対。
　……飛び蹴りの衝撃を、首を振って逃れるエインヘリアル……そして、ケルベロス達を視界に収めると。
『テメエ……何しやがる！！　痛えじゃねえか！！』
　怒りに紅潮する表情、それに対し、先ずは刃蓙理が殺界形成を発動し、殺気に包む。
　その殺気に、何処か嬉しそうに笑うエインヘリアル。
『ほう……そういう訳か！』
「私達はケルベロスですわ。もう、あなたの好きにはさせません」
　と紫が敵を真っ直ぐに見据えて宣言、それに刃蓙理も。
「ええ……被害を最小限に……ここで、完全に抑え込む……」
　と、静かに頷く。
　……そんなケルベロス達に、エインヘリアルは。
『面白え……殺せるというなら、殺してみろや！！』
　と、ゾディアックソードを、思いっきり振り払う。
　剣が風を薙ぎ、風が周りの建物に被害を与える。
　……それを両手で耐える豊。
　風が収まり、腕をずらして。
「ふふ……互いに命が掛かるからこそ、戦いは面白い。どうだ、君はそう思わないか？」
『はぁ、何ほざいてやがる！』
　エインヘリアルの反応に、少し残念そうに溜息一つ。
「逃げる相手しか斬れない、なんてことはないだろう？　戦闘狂のエインヘリアル君」
　と言いながら、跳弾射撃で牽制し、惹きつける。
　その間に、周りに居る一般人を早急に避難させていくケルベロス。
　……数分の後、どうにか周りに居た一般人達は大体、避難完了し、誘導していた仲間達も合流。
　と豊がクイックドロウの一射で牽制している所へ、更に和と悠乃が。
「さあ、よそ見なんてしてる暇があると思うなよー！」
　と後衛位置からサイコフォース、そして悠乃のスターゲイザー。
　そして、二人の牽制に続けて、紫が前衛陣に向けて。
「雷の障壁よ、仲間を護る力となってください！」
　とライトニングウォールで、BS耐性を付与。
　……そして、ディフェンダーの泰地、刃蓙理の行動。
　泰地は大きな声で挑発しながら、蹴り続ける。
　一方の刃蓙理は……。
「……こっちを見ろ……」
　と、ファナティックレインボウ。
　そしてルピナスは。
「卓越した技術の一撃で、凍ってしまいなさい！」
　と達人の一撃で氷り効果付与の一閃。
　更に、沙耶もスターゲイザーを降り注がせる。
　……そんなケルベロス達の猛攻の一巡にかなりのダメージを喰らうのだが……でも、狂暴なエインヘリアルは。
『クソッ、巫山戯やがって！！　全部、ぶち殺してやらあ！！』
　と、怒りのままに、そのゾディアックソードを振り回す。
　……周りにあった、バス停等が破壊されていく。
　でも、そんなエインヘリアルの暴走をに押しきられる事無く、敵の攻撃を受け流しながしつつ、喰らったダメージについては紫が即座に。
「大丈夫ですか、すぐに緊急手術を行いますわ！」
　と、ウィッチオペレーションにて回復、その後。
「いまだっ！　神速の～……てややー！」
　と和がスターゲイザーで攻撃する一方、豊が。
「ターゲット」
　短く呟き、『走狗』。
　そして悠乃は。
「古の祈り、守りの印、危害を封じる力をここに」
　と『聖封印』にて、武器封じの効果を付与。
　そして、攻撃が制限されたところに、泰地のファナティックレインボウと、刃蓙理の斉天截拳撃で牽制。
　その上で、沙耶のマインドソードを真っ正面から斬り付け、そして。
「螺旋の力よ、敵の内部から破壊しなさい！」
　と螺旋掌。
　……着実にダメージを重ね、エインヘリアルを消耗させる。
　その後も、少しずつ少しずつ体力を削り……十数分が経過。
『ク……ッ！！』
　と、体勢を崩したエインヘリアルに、豊が。
「そろそろ、限界のようだね」
　と、言い放つ。
　が、エインヘリアルは。
『うるせえ！！！』
　と、怒り狂う。
　……そして、和が。
「地球からー……いなくなれー！！」
　と、渾身の『全知の一撃』を叩き込み、そして……同時にルピナスが。
「無限の剣よ、我が意思に従い、敵を切り刻みなさい！」
　と『暗黒剣の嵐』を叩き込み……そして、沙耶が。
「貴方の運命は……皇帝の権限にて、命じます！！「止まれ」」
　と、『運命の導き『皇帝』』を一閃。
　……その一撃は、エインヘリアルを完全に破壊し尽くし、絶叫と共に死するのであった。

●安息と共に
「勝った！　ヴィークトリーー！！！」
　ぴょんぴょんと飛び跳ね、全身で喜びを表現する和。
　ちょこまかとした動きに、堪らず可愛い、と口走ってしまいそうになるのをぐっと堪えつつ。
「さて、と……取りあえずエインヘリアルは倒した。後は後始末もしとかねえとな」
　髪をぽりぽりと掻きながら呟く泰地。
　それに豊が。
「他者回復のヒールは持ってきていないんだ。任せていいかな？」
　と言うと、和が両手を腰に当てて自慢する様に。
「もっちろん！！　ヒールするまでがお仕事ですよー……なんてねー！」
　満面の笑顔で、色々と壊れてしまった箇所を一つ一つ修復……を指示する和。
　和の指示に従って、豊と沙耶を除いた仲間達が壊れた箇所に一つ一つヒールグラビティを掛けて、修復。
　一方、沙耶は避難した一般人達の元へと向かい、無事に終わったことと共に、救急箱を手に、傷の応急手当を施す。
　……そして、一通りの建物の修復と、手当を終えると……時間は9時を超えていて、通勤ラッシュも落ち着き始める刻。
「取りあえず……無事に終わりましたね」
「ええ……取りあえずは一安心、と言った所でしょうか？　まぁ……また第二第三のエインヘリアルが出て来ないとも限りませんが……」
「そうですね……」
　ミラと紫の言葉、それに和は。
「だいじょうぶだよっ、出て来たら、また倒せばいいんだからっ！　一般人を傷付けるのは、誰でも許さないんだからっ！！」
　えいえいおー、と拳を振り上げる和、それに刃蓙理はくすっ、と笑いながら。
「そうですね……頑張りましょう……」
　と、和に頷くのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2019年1月22日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 1／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 3
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