クリスマスの電飾まだ片付けないのは絶対許せないッ!

作者:芦原クロ

 クリスマスはとっくに終わったが、三が日を過ぎてもまだイルミネーションが残っている、とある駅前。
 電球は大体13万個ほどの小規模のものだが、暗い駅前を明るく照らすには充分だ。
『いつまで片づけねーんだ!? 眩しいからやめろや! あと、ぼっちだったクリスマス思い出して嫌になんだよぉおおお!』
 現れた異形の者が、イルミネーションごとターミナルを破壊した。

「霊ヶ峰・ソーニャさんの推理から、事件が予知されました。個人的な主義主張により、ビルシャナ化してしまった人間が、この駅前を狙います。この駅前はクリスマスの電飾を片付けるのが、かなり遅いことでそこそこ有名なようです。その為、襲撃対象となったのでしょう。事件が起こる前にビルシャナを倒してください」
「クリスマス、の電飾、眩しい、から、やめろって、いうより、ぼっちを、嘆いて、る?」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)の説明の後に、霊ヶ峰・ソーニャ(コンセントレイト・e61788)が疑問符を浮かべる。
「このビルシャナは、クリスマスの電飾がまだ残っていることが、許せないようですね。配下は、まだ居ません。駅付近の一般人の人数が、正確には分からないのと、時間が掛かる為、避難誘導は不可能です。駅から2百メートルほど離れた場所に、人通りの少ない路地が有ります。ビルシャナはここを通って来るので、皆さんは路地付近で待機、ビルシャナが現れたら、インパクトの有る言動を開始してください。人払いも行なっていれば、完璧ですね」
 地図を示し、正確な位置や周辺の状況を詳しく説明する、セリカ。
「なるべく多くの人数で、イルミネーションの良さやクリスマスの楽しい思い出について語ったりしていれば、ビルシャナはインパクトを受けて戦意を消失し、一気に攻撃が出来るようになるハズです」
 ぼっちなビルシャナに対し、多人数での語りは効果バツグンだろう。
「ビルシャナ化してしまった人は残念ながら救うことは出来ません。被害が大きくなる前に、撃破をお願いします」


参加者
アリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659)
セルリアン・エクレール(スターリヴォア・e01686)
ルティアーナ・アキツモリ(秋津守之神薙・e05342)
安藤・優(名も無き誰かの代表者・e13674)
風戸・文香(エレクトリカ・e22917)
シノ・テイラー(星屑集め・e32660)
横星・亮登(百万回失恋した煩悩・e44125)
霊ヶ峰・ソーニャ(コンセントレイト・e61788)

■リプレイ


「吾は九つなんじゃが本当にいいんじゃろうな!?」
 ルティアーナ・アキツモリ(秋津守之神薙・e05342)が横星・亮登(百万回失恋した煩悩・e44125)に、何度も確認する。
 どうやら、恋人のフリをしてくれる女性を亮登が募集した結果、ルティアーナが応えたようだ。
「やってあげても良かったけど、恋する気持ちが分からないので……すみません」
「うん、がんばる」
 心配げなシノ・テイラー(星屑集め・e32660)の発言に、亮登は心中で血涙を流しながら、なんの問題も無いことを2人に伝える。
(「……一先ず、人々に危害が行く前に対処しきらないとな」)
 無表情で冷静に思案する、霊ヶ峰・ソーニャ(コンセントレイト・e61788)。
『まだクリスマスのイルミネーションが残っているとか、有り得ねえ! ぼっちだったクリスマス思い出して嫌になんだよ!』
 不意に、ギャアギャアとわめき散らしながら、敵がどんどん近づいて来る。
 すかさずセルリアン・エクレール(スターリヴォア・e01686)が殺界形成を展開し、風戸・文香(エレクトリカ・e22917)はそのタイミングに合わせて人払いを済ませる。
(「クリスマスの電飾ですか……見る方じゃ無くて、作る方ですが、何か?」)
 黒い笑みをうっすら浮かべる、文香。
『いつまで片づけねえつもりだ!? 眩しいからやめろっつーんだよ!』
(「よくわからない事言ってるな。眩しいなら避ければいいということに気づかないのだろうか」)
 ソーニャが敵のゆく手を阻むように立ちはだかると、敵は歩行をピタリととめる。
「とりあえず説得かな」
 アリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659)も前に出て、敵の進行を阻む。
「電飾ってクリスマスシーズンから開始だったっけ? 有名なところだと、秋から春までやってるよ?」
「秋から冬にかけてはイベント事が沢山あるから、その都度イルミネーションを片付けて飾り直すなんてしてたら時間とお金と人件費がかかり過ぎると思うんだよ」
 敵を囲むような配置につきながら、セルリアンと安藤・優(名も無き誰かの代表者・e13674)がそれぞれ言葉を投げる。
『秋や冬や春ってあれか! ハロウィンやバレンタインか!? くっそ! イルミネーションってリア充のイベントばっかりじゃねえかー!』
 敵は嫉妬に満ちた声で、大きく叫んだ。


「……む? お金と人件費って同じだったっけ? まぁいいか……つまりあのイルミネーションがクリスマスだけの為の物とは言い難い訳で……」
 一瞬疑問を抱く優だったが、すぐに考えることを放棄し、ぼんやりしている。
「片付けろとか言ってるけどそれ以前に公共の物壊すとか何考えてんの? それ自体1番やっちゃいけない事じゃないかなー? そのこと分かってるの?」
『う、うるせー! あんなもん、クリスマスの想い出と共にブッ壊して消したほうが、スッキリすんだよ!』
 アリアのストレートな正論に地味にインパクトを受けて怯みつつ、敵は大声で返す。
(「今回はとびっきりのやつあたりぼっちシャナじゃないか。ぼっちが嫌ならぼっちを避ける努力をすればいいんじゃないかな……」)
 今は敵の習性などの情報収集をメインとしているセルリアンは、考えるだけにする。
「あにうえさま、あのおかしなトリもどきは何なのでしょうか?」
 見せつけるように、ルティアーナのほうから亮登にピッタリとくっつく。
(「偽装でこういう事は初めてではないが、いつもながら緊張する。ガチガチになる気がせんでもない。しかし9歳の前でそんな情けない恰好するわけにもいかん」)
 亮登は頑張って、ルティアーナと手を繋ぐ。
『みょうにベタベタしてる兄妹だな』
「兄妹じゃなくて恋人なの!」
 ルティアーナが主張すると、恋人という単語にインパクトを受けたのか、敵は一歩後ずさる。
『恋人か、ちくしょうリア充! ……いや、待てよ? おい、どう見てもロリコンじゃねーかあああ!』
(「本当は年上のせくすぃ~で、ちちしりふともも~なオネーサンが好みなんだ! ロリコンじゃないんだ! でもアキツモリさんの前では到底言えない!」)
 亮登は歯を食いしばり、心の中で拳を握りながら、血の涙を流している。
「昨年のクリスマスから付き合い始めてらぶらぶだぞ~」
「あにうえさまと結ばれたのはクリスマスなのー。だからイルミネーションは、ずっと残っててくれると嬉しいなー?」
 頑張って亮登がルティアーナの肩を抱くと、ルティアーナはぴったりと寄り添い、ラブラブ感を更に出して見せる。
 恐るべし、魔性の9歳。
『ううっ、事案カップルの癖にぃ……』
(「ビルシャナも本当にくだらないよね」)
 インパクトを受けて苦しんでいる敵を、見ていたアリアの瞳が、冷ややかなものに変わる。
「そう、言えば、ボッチ、思い、出して、嫌に、なる、言って、たな? 友、や、家族、すら、居ない、のか」
「ぼっちこじらせた悪い例がこちらのぼっちシャナですね」
『ぼっちぼっちうるせー! ぼっちを馬鹿にしてんだろ!?』
 ソーニャの言葉にセルリアンが続くと、敵は怒りで地団太を踏む。
「私はクリぼっちでした」
 シノは堂々と、去年のクリスマスはぼっちだったことを明かす。
『は!? うそだろ、あんたみたいな美人がぼっちなんて!?』
「私はホテルで働いていて、皆さんのお休みが私の稼ぎ時なので、年末年始もお休みは無かったです。家族にも会ってません。でも電飾を飾るのは、楽しかったですよ」
 ホテルマンの制服姿で、シノは嬉しそうに語る。
「お客様が喜ぶ姿を見て、私も疲れが吹き飛びました。この間いらしたお爺様お婆様は、生きているうちにこんな物が見れるなんてと冗談を言いながらお帰りになりました。綺麗なものっていいですよね、それだけで人を幸せにするから」
『うう、電飾みたいに眩しい……ちくしょう、やっぱり電飾なんて早く無くなっちまえばいいんだ……』
 同じぼっちでも、シノの場合は人の為を想い、人の幸せを喜べる美しさが有る。
 それが分かり、敵は大きなインパクトを受け、力無く叫ぶ。
「ちょっと待って! 電気屋の気持ちにもなってくださいよ~」
 泣きそうな目をしながら、文香がストップをかけた。
 電気屋の気持ちという、新しさに、敵は興味を抱く。
「私の家は電気屋なんですが、クリスマスが終わっても、暮れやお正月でも、やれ電気がトラブっただの何だので、呼び出されるんですよ~」
『それは大変だな! だったらイルミネーションは無いほうが良いよな!?』
「いいえ、バレンタインまでおいておけば、カップルも来るかも知れませんし……その後に頃合を見て撤去ということに、させてくださいよ~」
『なんでだよ!?』
 大変そうな文香の為にも、と案を出した敵だが、見事に裏切られた気になってダメージを受け、苦しみつつツッコミを入れた。


「あ、でもビルシャナにとってはハロウィンもクリスマスもバレンタインも、同じようなものか……ひとりぼっちは寂しいもんな」
『ぼっちって言うなあああ!』
 優の言葉に、敵は過剰なほどに反応する。
「キミのは単純にぼっちこじらせてるだけだよね。妬み僻みで暴れまわる前に、もっと努力すればいいと思うんだが」
「寂しい、思う、なら、少し、は、自分、から、行動、したら、どう、だ?」
 セルリアンとソーニャが、ダブルでぐさぐさと刺さるインパクトを食らわせて来る。
「ソーニャの言う通りだよね。まぁ、ほら、なんだ、今では恋人もレンタルできたり二次元の嫁を作ったりする時代だろう? ぼっちが嫌ならさ、そーいうこともやってみたらどうかな?」
『恋人をレンタルなんて、それこそ負け組じゃねーか!』
 敵は、セルリアンの案を断固拒否。
「クリ、スマス、共に、過ごす、人、は、何、も、思い、人、だけ、では、ない、筈」
『まじで!?』
 喋るのは苦手なソーニャが、それでも頑張って言葉を並べると、敵が食いついた。
「サンタ、に、欲しい、もの、願い、ながら、家族、や、一緒、いたい、人、と、語らう、そんな、時間、は、あっと、いう間、聞く」
『家族は仲が悪いから無理だし、一緒にいたい人っつーのも親友ポジみたいなのだろ? そんな相手もいねーし』
 ソーニャの言葉を最後まで聞き終えてから、さらっとかなりのぼっち度を打ち明ける、敵。
 打ち明けてから自分のぼっち過ぎる立場に地味に傷つき、苦しそうにしている、敵。
 その上、視界のインパクトとばかりに、つねにカップルが見えている為、敵は相当ツラそうだ。
「これもビルシャナを弱らせるためだ、アキツモリさんも分かってくれるよね? ね?」
 肩を抱く亮登がひそひそと、小声でルティアーナに話し掛けている。
「分かっておる。じゃが、横星殿。もっと、ガバッとせんのか? こんな風に」
 ルティアーナが、これではまだ恋人度が足りないのではないかと、大胆にも亮登に抱きついた。
「羨ましさで血涙流して、冥府に落ちればいいんだよ?」
『ぬううっ! 事案カップルめぇ……』
 悪魔のような言葉を敵に、愛らしく投げかける、ルティアーナ。
 敵もだが、なぜか亮登まで心にダメージを負っている様子。
「秋は紅葉と、春は桜と一緒に見れて、自分は好きなんだが……加えて、電飾って大体夜の暗い時間にやってるから夜道が明るくなっていいじゃん? 道が暗いと気分も暗くなったり疑心暗鬼になって面倒だしさ」
『道が暗いと気分も暗く? 分かる気がする。が! それだけで電飾を認めるわけにはいかねー!』
 このまま説き伏せようとするセルリアンだが、敵も最後の抵抗とばかりに首をブンブンと横に振る。
「年に一回の家族旅行も、一世一代のプロポーズも、老後のささやかなお祝いも、みんな温かく盛り上げてくれる。そんなイルミネーションが、私は好きです」
「クリ、スマス、の、電飾、も、思い出、作り、の、1つの、場、なんだろう、な」
 シノのイルミネーションへの想いに、ソーニャが無表情で頷く。
「急いで撤去しないで、一緒に楽しみませんか」
『え? 一緒に? 俺と?』
 慈悲深く、シノは敵を誘う。
 驚いた敵はポカンとした表情でシノを見ていたが、やがて頷いて見せた。
『美人と一緒にイルミネーションを楽しめるなんて! ちくしょう、イルミネーション最高だぜ!』
 嬉しそうにはしゃぐ敵だったが、自分の主張がくつがえってしまったことに気づく。
 それは自分の存在理由を失くすことに、ひとしい。
 一気に力が抜け、敵はそれっきり動かなくなった。
「ぼっちの苦しみから解放してあげよう」
 刃に虚の力を纏い、黎紅鎌と蒼銀鎌の双鎌を振るって敵を激しく、斬りつけるセルリアン。
「BS対策をしておくよ」
 優はエクトプラズムで疑似肉体を作り、味方の外傷を塞ぐ。
「貴方の心にも、愛を」
 純粋な愛から出来た快楽エネルギーを、シノは敵に注ぎ込む。
「穿て、雷よ」
 連携したアリアが、鹵獲術を使って雷のエネルギーをまとわせた腕を、地面へ叩き付け、敵を麻痺させる。
「電飾を設置する方から言わさせていただきますと、ですね~。寒い思いや高所作業等々、辛い思いをしても、“うわ~綺麗だな~”と言っていただくのが、最高の報酬なんですよ! やっぱり綺麗な電飾を作りたいですし」
 敵にまだ聞く力が残っているか定かでは無いが、文香は語り掛けつつ、真に自由なる者のオーラで仲間1人を包み、癒しの時間を提供。
「炎よ、集え。風よ、集え。土よ、集え。沈黙させよ、殺戮せよ、討伐せよ。今この時、我の意思の元、その力を示せ」
 限界を超えても収束させ続けたソーニャの、全ての力が大爆発を引き起こし、大量の溶岩が敵に襲いかかる。
「今回のビルシャナは実に正しく非の打ちどころがなく、でも倒さなきゃいけないわけで。しっと戦士としての同志をせめて自分の手で楽にしてやろう……無式寂寞拳!」
 無の境地を拳に載せ、敵を殴る亮登は、血涙を流しているようにも見える。
「さて返り討ちじゃ! 哀れなるモノよ、せめてその苦しみを長引かせるまい。疾く常世へと去れ!」
 ルティアーナが神來儀 凶魂絶を使い、呪力で三鈷剣を顕現。
 三鈷剣の強力な一撃は、敵の肉体を斬り裂き、魂まで滅するほどの威力だ。
 敵は声を発する間も無く、完全に消滅した。


「家族……か。ソーニャ、は、クリ、スマス、と、無縁、だが、そういう、一時、は、大事、に、したい、思う、な」
 ソーニャはクリスマスについて思うところが有るようで、ぽつぽつと言葉を並べた。
「まぁ色々あったけど、今年もいちねん、がんばっていこうと思いました」
 しめなのか、抱負なのか、どちらとも取れるセリフを口にする、優。
「……そういえば、去年も言ったような気がしますけど、婚活、頑張ります……」
 損傷個所にヒールを掛けながら、文香も抱負を告げる。
「周囲の被害状況の確認をしようかな。怪我した人がいたら大変だし」
 アリアがいちはやく、その場を去ってゆく。
(「休みの日はどうしよう」)
 スケジュール表を見ながら、無表情で真剣に考え込んでいる、シノ。
「脱ぼっちの努力をせずに、ものに当り散らすのはダメだよね」
 やれやれと、セルリアンはやや呆れたように呟く。
「さて、横星殿? 付き合ってやったのじゃからそれ相応の饗応を求めるぞ! 贅沢三昧してくれるわ! 躊躇したら蹴り飛ばーす!」
「俺が奢ればいいんだな! ゴハンとかケーキとかパフェとか?」
 ルティアーナの歳を考えて、年相応のものを並べる亮登だが、すべて却下される。
 高級なものばかりその場で要求された亮登は、自分の財布を抱えて、吐血したとかしなかったとか。

作者:芦原クロ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年1月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。