運に恵まれた竜牙兵

作者:なちゅい

●竜牙兵の運勢は……
 石川県某所。
 2019年も明け、多くの人々が神社へと参拝にやってくる。
 合格、安産、家内安全、寿命長遠、子孫繁栄、病気平癒、商売繁盛……。
 新しい年に希望を抱き、皆八百万の神々へと祈りを捧げる。
 そんな神社の傍、町中に突如として4本の竜の牙が降ってきた。
 すぐに鎧兜を纏った姿へと変わったそいつらは竜牙兵だ。
「グラビティ・チェインダ……!」
 竜牙兵達はすぐに手近な人々へと襲い掛かり、手にする剣で切り裂いてしまう。
 4体のうち1体はその身にオウガメタルと呼ばれる金属生命体を纏っており、人々を殴りつけるだけでなく、黒太陽を具現化させて人々を照り付けて命を奪っていく。
 倒れ行く人々から集めるグラビティ・チェイン。竜牙兵達にとってはこれ以上ない至福のひと時なのだろう。
「「「グァァァハハハ、グアアアァァハハハハハ!!」」」
 心地よさげに笑う骨ばかりの外見をしたデウスエクス達。
 人々の遺体が折り重なる上を歩く敵にとっては、この状況は大吉と言える状況なのかもしれない……。

●参拝客を襲う竜牙兵の討伐を
 2019年。
 新たな年が始まり、ケルベロス達もデウスエクスの事件の解決にやる気を見せている。
「あけましておめでとう。今年もよろしく」
 ヘリポートを訪れるケルベロスへと、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)は挨拶しながらも、気合を入れるケルベロス達に頼もしさも覚えていたようだ。
「それはそうと、初詣に竜牙兵が現れるそうじゃな」
 そこで、話を持ち掛けたのは、キーリア・スコティニャ(老害童子・e04853)だ。
 竜牙兵にとっては大吉なのかもしれないという彼の言葉に、リーゼリットは少し唸って。
「どうだろうね。ともかく、参拝客を竜牙兵達から守ってほしい」
 その出現が確認されたのは、石川県のとある神社だ。
 町中に現れた4体の竜牙兵は人の集まる神社を目指して移動していく為、それを阻止したい。
 リーゼリットもこの説明の後、すぐにヘリオンを飛ばして現地を目指すそうだ。
「申し訳ないけれど、避難勧告は現地到着後、竜牙兵が出現してから始めてほしいんだ」
 早いタイミングで避難勧告を始めると、竜牙兵達も人がいないと判断して別の場所を襲撃してしまう。
 こうなると事件を阻止できなくなる為、避難勧告は竜牙兵の出現後に始めたい。
 また到着後は、駆けつけた警察隊などに人的避難を任せられるので、ケルベロスは竜牙兵の討伐に専念したいところだ。
「予知では、4体の襲撃を確認しているよ」
 ポジションは不明だが、ゾディアックソードを1本持ちが2体、2本持ちが1体、そして、オウガメタルを持つ個体が1体いる。
「竜牙兵達は状況を見て、戦闘開始時にそれぞれ布陣を決めるようだね」
 相手がどういう布陣であっても戦うことができるよう備えられれば、効率よく戦うことができるはずだ。
 また、ケルベロスと交戦を始めた竜牙兵は布陣の変更、撤退を行わない。
 この為、敵の登場直後から積極的に迎撃し、倒してしまいたい。
 説明を終えたリーゼリットは、初詣は済ませたかどうかとケルベロス達に尋ねる。
「もし良ければ、皆も参拝してくるといいよ」
 今年はどんな年になるだろうか。デウスエクスとの戦い、誰かとの幸せ、安全祈願。
 様々な願いがあるだろうが、ケルベロス達は何を願うだろうか。
「ともあれ、よろしく頼むよ。今年一年もそうだし、竜牙兵の討伐もね」
 真剣な表情で告げた彼女は、ヘリオンの離陸準備へと移っていったのだった。


参加者
相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889)
キーリア・スコティニャ(老害童子・e04853)
ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)
鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)
九十九屋・幻(紅雷の戦鬼・e50360)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)
リリベル・ホワイトレイン(堕落天・e66820)

■リプレイ

●竜牙兵に大凶をつきつけよう
 石川県某所。
 とある神社の付近へとすでに到着していたケルベロス達は、直にやってくる敵の出現を警戒して待機することになる。
 長身で屈強な体を持つ人派ドラゴニアンの鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)は邪魔にならぬようと建物の壁に背を預け、腕組みして周囲に視線を走らせる。
「新年早々神社に初詣たぁ、お気楽なモンだ。テメエらの立場ってのを分かってねえらしい」
 まだ現れていない敵を、眼光鋭い三白眼の相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889)は揶揄する。
「ezだよ、こんなん」
 その知人であるリリベル・ホワイトレイン(堕落天・e66820)が小さな体躯で胸を張った。
 ez……つまりイージー、楽勝だということ。俗に言うネットスラングというやつだ。
「くひひ」
 頭に角を生やすオウガ、九十九屋・幻(紅雷の戦鬼・e50360)も知人の1人。仲間のやり取りに、彼女は特徴的な笑いを浮かべていた。
「年末年始の上に戦後処理で忙しい時に、本当に迷惑です」
 青い短髪のシャドウエルフ、ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)もあちらこちらの戦いに出向いているのだろう。
 それだけに「何が大吉ですか」と、彼女は今回の襲撃を心底迷惑がっていたようだ。
「予知の光景では竜牙兵の大吉。しかして、運はわしらが介入することで反転するのじゃ」
 ローブを羽織る少年の容姿をしたキーリア・スコティニャ(老害童子・e04853)がそう語ると、ジュスティシアが大きく頷いて。
「デウスエクスにあるのは只、大凶のみ!」
 ちょうどその時、町に竜の牙が降り注ぐ。
「ストレス解消に、射的の的になってもらいます」
「うむ、新年初竜牙兵に大凶を叩き付けてやるかの」
 2人はすぐさま動き出し、仲間と合流しつつ現地へと急行していくのである。

 現地はすでに、デウスエクスの出現で混乱し始めていた。
 丁度、牙の形態から鎧兜を纏った人型へと変わったばかりの竜牙兵に向け、竜人が有無を言わさずに蹴りかかっていく。
「ナ、ナンダ……!?」
 竜牙兵は奇襲の迎撃こそ防いではいたが、やや態勢に乱れがあった様子だ。
 ただ、竜人もこの地点でのダメージなど二の次で、一般人から意識をそらすことができれば思惑通りと言えた。
 ややぶっきらぼうな態度のリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)が新年早々、性懲りもなく現れた竜牙兵へと呼びかける。
「リリ達の目の前で、そんなのさせないよ!」
 そんなの、とは予知での惨劇のこと。
 この街を新しい年の初めから血の海にさせるわけにはいかないと、彼女は相手の足元目掛けて弾丸を発射する。
 足止めができればと考えた射撃だったが、相手は奇襲にはしっかり対応しており、彼女のグラビティに対処していたようだ。
「早く、ここから避難を!」
 ジュスティシアは敵を抑えるべく飛び込み、周囲の人々へと叫びかける。
「オノレ、ケルベロス……!」
 相手が万全な状態となるのを、一行も悠長に待ちはしない。
 赤目白髪喪服姿のファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)は翼猫のフレイヤを敵に向かわせ、自身はダイナマイトモードとなってこの場の人々を励ます。
 このまま避難誘導も考えたファルゼンだったが、程なく警察も駆け付けてきたこともあって戦線に加わることにしていたようだ。
 幻は人々が逃げる方向などを見て、相手のグラビティがそちらに及ばないよう立ち回りを気遣い、程よく距離をとって布陣していく。
 リリベルも緩く相手を小馬鹿にするような笑みを浮かべ、敵の注意を引き付ける。
「ふん、リリ達にすぐ倒されるんだから、竜牙兵にとっては大凶だよ」
 無表情なままリリエッタも相手を煽り、竜牙兵達の気を引いていたようだ。
「ウンがイイ、すぐグラビティ・チェインがアツマリソウダ」
「俺達に倒されるとはなんて幸運なのでしょう、ってか?」
 武器を構えながら布陣を整える敵へ、道弘が鼻で笑う。
「生憎と、テメエらの手にあるのは大凶だよ。生きてここを出れると思わねえことだ」
 竜人が髑髏の仮面を被って表情を隠すと、関節を鳴らしていた道弘は戦籠手装着の上でチェーンソー剣を握って。
「とっとと失せろってんだ!」
 仲間に合わせて、彼は本格的な攻撃を開始していくのだった。

●竜牙兵に新年の挨拶はいらない
 警察による人的避難が進む石川の町。
 そこに現れた竜牙兵は4体で、うち3体はよく見かけるゾディアックソードを操る個体だが、1体はオウガメタルを持つ珍しい敵だ。
 一般人の避難誘導を警察に託したケルベロスへ、態勢を整えた敵が刃や拳を振るって攻撃を仕掛けてくるが、その布陣は状況によって異なるという。
 この為、ケルベロス達はまず相手の立ち回りを見極め、戦うことになる。
 相手の斬撃、オーラを受けたキーリアは蹴撃で反撃して、その布陣を確認していく。
 それにしても。
 新年から人様の迷惑も考えずに暴れ回る竜牙兵の図々しさに、竜人は辟易として。
「よし殺す」
 もはや言いがかりレベルの理由ではあるが、相手もグラビティ・チェインを得るために人命を奪う鬼畜どもだ。
 竜人は前線で剣を両手に振るう敵をやり過ごし、中央にいるオウガメタルを纏う敵へと蹴りかかっていく。
 その敵は一度攻撃を受けた後、頭上にオウガメタルを集めて「黒太陽」を具現化し、絶望の黒光を照り付けてくる。
 まるで、今年の初日の出は絶望に染まると言わんばかりに。
「グァァァハハハ、ワレラのチカラをミルガヨイ!」
 この場は、ファルゼンや箱竜フレイヤがそれに耐えていた。
 僅かに足を竦ませながらも、この場でステップを踏み始めたファルゼンは花びらのオーラを舞わせる。
 同じ前線の仲間が万全に戦えるように。
 見とれてしまいそうになる彼女の舞いは、仲間達を心身共に癒していく。
 フレイヤもそんな主の役に立とうと、属性注入によってメンバー達に耐える力を与えてくれていた。
 相手の攻撃をチーム中央で見ていた道弘は、オウガメタルを使ったその攻撃に苛立っていたようで。
「牙に黒太陽とか、見た目からして不釣り合いなんだよ」
 率直に怒りをむき出す彼は、敵に向かって豪快にチェーンソー剣でオウガメタル持ちへと斬りかかっていく。
 能力的にも、この敵がジャマーである以上、服破り、足止めとこちらの能力を大きく減退させられることとなる。
 それを避けるべく、メンバー達はこの1体の討伐に尽力していく。
 翼猫シロハにも狙撃役を頼むリリベルだが、序盤は力任せに攻め来る敵の攻撃が痛い。
 そこで、シロハに翼を羽ばたかせて回復を頼み、リリベル自身は翼を広げてオラトリオの力をその手のひらに集める。
「絶望とかww 子供かってのww」
 『w』は『(笑)』から派生し、草を生やすなどとも言われるネットスラングだ。
 仲間の影に隠れながらリリベルは時空を凍結させる弾丸を発射し、相手の体を氷漬けにしていく。
 少しでも竜牙兵の体が凍れば、大きく衝撃が通るようになる。
 次の瞬間、幻がそのオウガメタル持ち目掛けて『修羅のブーツ』で蹴りかかり、ダメージと共に強く動きを止めようとしていく。
「グワアッッ」
「くひひ」
 相手が痛みで怯めば、幻は八重歯を見せて楽しげに笑う。
 さらに、彼女は卒ない動きで立ち回り、仲間と攻撃対象を合わせて攻勢を強めていた。
 その幻が肩を貸していたのは、リリエッタだ。
 二人ともさほど身長は高くないが、協力することで相手よりも高く跳び上がることができる。
「空っぽの頭なんて、吹っ飛んじゃえ!」
 そして、リリエッタは思いっきり相手の頭を蹴り飛ばす。
 電光石火の一撃に、オウガメタル持ちは体に痺れを覚えていたようだ。
 だが、残りのゾディアックソード持ちは猛然と刃を振るって攻め立ててくる。
 盾となってくれる仲間の後ろから、ジュスティシアは回復手として『特殊医療キット』を手にしつつ癒しに、そして仲間に力を与えていたようだ。
 とはいえ、ジュスティシアも竜牙兵に思うことはあったのか、自らのガトリングガン『Mk-63』の砲口を向け、射撃のタイミングをはかっていた。
 そのジュスティシアに、癒しを受けていた前線のキーリア。
 彼はミミックの千罠箱が偽物の財宝をバラ撒くのに合わせ、掌に竜の幻影を出現させて。
「竜牙兵に新年の挨拶は要るまい。日の出の太陽の如く、燃え盛るがよい」
 これぞ本当の太陽だと言わんばかりの炎をキーリアは放ち、オウガメタル持ちの体を炎に包む。
 そいつはなんとか耐えてはいたが、全身をボロボロにしており、かなり息が荒くなってきていたようだった。

 相手の布陣に盾役はいない。
 いたとしても、ケルベロスの撃破優先度は中といった程度だったが、相手を直接狙えるのは煩わしくなくて済む。
 しかし、後方2体の剣1本持ちの片割れが回復役らしく、仲間の傷を塞いでくるのが面倒なところ。
 回復といえば、剣2本持ちがクラッシャーということもあり、癒しの手が必要となる場面も多い。
 道弘は相手ジャマーの使うオウガメタルでの攻撃も合わせ、花びらのオーラで仲間の状態回復にも当たっていたようだ。
「後は任せたぜ」
 次なる敵へと道弘が向かった後、リリベルはオウガメタル使いに止めをとルーンアックス『朔雷』を勢いに任せて振り下ろす。
「ざっこww」
 彼女の嘲笑の後ろ、オウガメタル使いは脳天を裂かれて崩れ落ちていった。
 前線のファルゼンは自分や仲間の回復を続け、盾となり続ける。
 とりわけ、相手の振るう超重力の十字斬りは威力もさることながら、痺れを与えてくる為こちらの行動を大きく阻害する。
「落ち着け。合わせろ。呼吸を。意識を」
 ファルゼンは傷つく仲間とシャウトを同調させて、大きく治癒を促進させることで傷を塞いでいた。
 戦線が持っている間に、攻めるメンバーが徐々に竜牙兵の布陣を切り崩す。
「……捉えたッ!」
 霞の構えを取る幻が神速の突進で距離を詰め、日本刀『紅光』で相手の喉元を突き刺した。
 手応えは十分。
 幻が刃を抜き去ると、その勢いで竜牙兵は後方へと倒れていった。
 残る敵は、後方の剣1本持ち2体。
 高火力を持つ相手がいなくなったからか、ジュスティシアは回復の合間にガトリングガン『Mk-63』をフルオートで連射していく。
 相手の状態異常など細かいことを考えず、ただ思いっきり銃弾を飛ばすことで、ジュスティシアは溜まったストレスを解消していたようだ。
 剣1本持ちの片割れ、回復役となる竜牙兵は地面に守護星座を描き続けていたが、ケルベロスの攻撃に圧倒されて。
 両腕を黒竜のそれに変化させ、グラビティによって強化させた竜人は、両腕で相手を左右から喰らっていく。まるで古竜の咢のように。
「いいからさっさと死んどけや、なぁッッ!!」
 噛みつかれたような傷跡を残し、その竜牙兵は体を砕かれて果てていく。
 残る狙撃役は星座のオーラを飛ばし、自分だけになっても攻撃を続けてくる。
 そいつへ、リリエッタはリボルバー銃『LC-75 Type HANDGUN』から魔力を込めた弾丸を相手の足元へと撃ちこんでいく。
「地より這い上る闇の鎖よ、リリの敵を締め上げろ!」
 その弾丸は相手を撃ち抜くものではない。
 地中を通した魔力によって、8本の闇鎖を具現化して相手を締めあげる為のものだ。
 動けぬ敵へ、キーリアは魔力によって巨大な槍型の雷を創造して。
「雷速を以て貫かん!」
 それを敵目掛け、投擲していく。
 コントロールが難しいグラビティではあるが、仲間が相手の動きを止めてくれていることもあって、命中させるのは難しくない。
 胸部を貫かれ、全身に雷を駆け巡らせた竜牙兵。
 口から煙を吐いたそいつは目から光を失い、ただの骨の残骸へとなり果てていったのだった。

●新年の祈願を
 町中での戦いということもあって、メンバー達は竜牙兵の討伐後にすぐ修復の為のヒールに当たる。
 キーリアは周囲に光の盾を展開し、リリベルは意欲、熱意といったものを燃え上がらせる炎を破壊痕にぶつけ、幻想交じりに塞いでいく。
 他者向けヒールの用意がないリリエッタは仲間達のサポートに当たっていった。
 ジュスティシアは神社周辺に応急処置のグラビティを施すと、早く帰って休息したいと一足先に帰っていたようだ。
「あと、初詣もついでにやっとこ」
「騒がせた詫びもあるかね。参拝しておこうか」
 仲間達の傷も手当てしていたリリベルはそのまま、この場に残る仲間と神社の境内へと向かうと、幻も同意して後についていたようだ。

 ケルベロス達はそれぞれの願い事を秘めつつ、参拝をする。
 奴隷として、飼育されていた過去を持つリリエッタ。
 彼女にとってはこれが初めての参拝とあって、皆の見様見真似で二礼二拍手一礼をしてお願い事をする。
「リリのことはいいので、友達が怪我しませんように……」
 その願い事は実に、けなげなものだった。
 そばでは、道弘も折り目正しく参拝を行う。
 彼は昨年同様、自身が講師をしている塾の生徒達が学業成就するよう祈ろうとしていたのだが。
(「けど、ケルベロスとしちゃ、武神に祈るべきなのかもな」)
 二心はもう1枚硬貨を投げることでごまかそうと、道弘は行動に移す。
 だが、それを見ていたリリエッタが真似しようとしていたのは、さすがに彼も止めていたようである。
「わしも歳じゃし、健康辺りがいいかのう」
 少年のような見た目でも、還暦を十分過ぎたキーリアだ。
「それにしても、ミミックは賽銭箱に似ておるな?」
 一通り参拝を終え、キーリアの声に反応する千罠箱が大きく口を開こうとしていたのを、彼はなんとか塞いでいた。
「特に祈ることも願うことも無いが……」
 そういえば、初詣に行ってなかったと、仲間に合わせて参拝していた竜人は適当に手を合わせて。
「終わったら甘酒だ。寒ぃったらねえ」
 冬の日本海側の風は冷たい。
 皆、出店で甘酒を振る舞う店を見つけ、そこで体をしばし温めることにしたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年1月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。