新しい年明けに

作者:白鳥美鳥

●新しい年明けに
「みんな、年末の忙しい中、集まってくれてありがとう」
 デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、ケルベロス達に声をかける。
「実は、漆器が特産の場所で、デウスエクス達に湿気で使う漆の木々をやられてしまった所があってね、地元の人達から漆の木のヒールを依頼されたんだ。漆の木をヒールして貰って、今後の漆器生産が続けられる様にして欲しいんだ。漆は被れるから、心配ならヒールの種類を選んだ方が良いかな?」
 それから、とデュアルは続ける。
「それで、年始と言えばおせち料理だよね? ここは漆器生産が盛んだから、重箱なんかも作っているんだ。地元の人達がお礼に重箱を使っておせち料理を作ってみないかって言ってくれてるんだ。おせち料理に挑戦出来るよ! だから、みんな、漆をヒールして、素敵なおせち料理を作ってみないか? そして、良い年を迎えようよ!」


■リプレイ

●新しい年明けに
「みんな、来てくれてありがとう! 今日がみんなにとって、楽しい一日になると嬉しいな!」
 集まってくれたケルベロス達に、デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、感謝の言葉をかける。今日が楽しい一日になりますように、との願いを込めて。

●漆の木のヒーリング
「漆さん、元気になるの~! シフォンも頑張るのよ!」
 ミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)が、相棒のウイングキャットのシフォンと共に、楽しそうな声を上げながら、オーロラの光や雷の力、清らかなる風を用いて元気に漆の木へ次々とヒールしていく。
 喪黒・高宏(靡く轟音・e04156)は、ヒールドローンを使ってヒールを施していった。
(「デュアルさんにおせちを振る舞うチャンスです!」)
 声には出していないが、明らかに張り切り気合が入っているのはミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)。ヒールにも溢れるばかりの気合が入っていて癒しの雨に雷の光が輝き凄い事になっている。
「ほわ~、ミリアちゃん凄いの~」
 そんなミリアを見て感心しているミーミア。
 TCGのデッキを組んで皆の様子を見ていたアルテア・オールリンデ(無気力冥途・e67485)も、その手が止まってしまった。
「流石に少しは手伝いますか……」
 重い腰を上げると、アルテアも癒しの拳を漆の木々に叩き込んで癒していった。
「おせちを振る舞ってくれるとは奇特な方といいますか。いや、これもひとえにわたしの人徳という奴でしょうねえ。ホッホッホ」
「はい、僕、頑張って腕を振るいますね」
「まずは、漆のヒーリングですね」
 楽しそうな三人組は、宇原場・日出武(偽りの天才・e18180)、肥後守・鬼灯(毎日精進日々鍛錬・e66615)、カグヤ・ブリュンヒルデ(黄金の戦乙女・e60880)。どうやら日出武は、この後、鬼灯とカグヤからおせち料理を振る舞って貰う予定の様だ。
 日出武と鬼灯の二人は広範囲を癒しの雨で、カグヤはオーラを用いて癒していく。鬼灯は『祝福されし主の血脈』を使って癒しの力を高め、カグヤは守護星座の輝きを用いて抵抗力の向上もさせていった。
「あーたたたたたたた!」
 日出武は漆に対して次々と拳を繰り出して突いていく。その突きによって漆の木々は癒されていき……。
「漆よ! おまえはもう治っている!」
 そんな彼の言葉を区切りに、漆の木々のヒールは終わったのだった。

●おせち料理を作ろう!
「日本のおせち料理というのは……」
 ヴァルキュリアであるカグヤに説明しながら、鬼灯は彼女と共におせち料理にとりかかる。カグヤにとって、こういうおせち作りは新鮮な体験だと思うから、一つ一つ丁寧に教えていく。
「成程……。おせち料理というものは奥が深いものですわね」
「ええ。お正月の縁起物ですから」
 楽しそうにおせち料理を作る鬼灯とカグヤ。
「こうして誰かと一緒におせち料理なんて久しぶりです!」
 笑顔でそう微笑む鬼灯を見て、カグヤの心に嬉しそうな彼の様子が刻まれていく。
「宇原場さん、おせち料理が完成しましたよ」
 鬼灯とカグヤの合作であるおせち料理が日出武の前に出される。
「おおお、早速戴きましょう!」
「はい!」
「どうぞ召し上がってくださいませ」
 目を輝かせる日出武に、鬼灯とカグヤは微笑む。そして、おせち料理を戴きながら、旅団でいつも楽しく過ごしている事に感謝をするのだった。

 カトレア・ベルローズ(紅薔薇の魔術師・e00568)と武田・克己(雷凰・e02613)は婚約者同士だ。
「御節は正月の定番だからな。俺も作り方は知ってるが、作るのは初めてなんだ」
 克己は母親の手伝いで作った事はあるのだが、実際に作るのは初めてだ。とはいえ、作り方の手順は何となく覚えているので何とかなりそうだ。
「おせち料理と言えば、黒豆に、カズノコに、海老に、昆布巻き、色々とありますわね。今回は手軽な感じで伊達巻にチャレンジしてみますわ」
 カトレアは伊達巻にチャレンジするようだ。実は、カトレアは料理を作るのは久しぶりで、ちょっと緊張していたりする。
「味付けは、こんな感じでよろしいでしょうか?」
「うん、良いんじゃないか?」
 カトレアの作る伊達巻の味を見ながら、克己は頷く。それにカトレアは胸を撫で下ろした。
「指切らないよう気をつけろよ?」
 カトレアが伊達巻を切りそろえようとすると、心配そうに克己が声をかけてくる。それに、カトレアはにっこりと微笑んだ。
「包丁はあまり扱ったことはないですけど、手先の器用さには自信がありますので大丈夫ですわ」
 そんなやり取りを交わしながら、カトレアと克己は完成した伊達巻を戴く事にする。
「新しい年を、克己と過ごせて幸せですわ。今年も一年、宜しくお願いしますわね♪」
 新しい年の始まりに感謝しながら、二人は今年の幸せを願ったのだった。

 差深月・紫音(変わり行く者・e36172)、真田・結城(銀色の幻想・e36342)、朧・遊鬼(火車・e36891)の三人もおせち作りに挑戦している。
 三人の中で一番危なっかしいのは遊鬼。彼が作ろうとしているのは伊達巻だ。
「まぁ……なんとなく作り方は分かる。ようは焼けば良いのだろう?」
 作業工程も危ない感じの遊鬼に、紫音はアドバイスをするのだが……ちょっと残念な仕上がりだ。
「……ふむ、これはこれで良いのではないか?」
「うん、良いんじゃない?」
 視線をそらせつつ、そう言う遊鬼。そんな遊鬼に紫音は微笑んだ。そんな紫音が作るのは煮付けだ。程良く甘めの味付けに、添え物で塩気を強めにしてバランスを取る。それから、もう一つ、昆布巻きも。昆布を一口大で丸めて、干瓢でしばって完成だ。
「シオンは手慣れておるな。彩りも落ち着いていて、とても旨そうだ。ユウキも上手いな。して、何を作っておるのだ?」
 遊鬼は結城の作っているものを不思議そうに見る。
「鯛の子や、紅白なます等の料理ですよ。お二人が作らない物を作ろうと思いまして」
「お、何だか豪華になったな」
 伊達巻、煮付け、昆布巻き、鯛の子、紅白なます等……中々の品揃えだ。
「では、皆で戴きましょうか」
「ああ!」
「うむ」
 皆で作ったおせち料理。それは、とても楽しくて新しい年にふさわしいものだった。

 テキパキとおせちを作っているのはアルテアだ。彼女はメイドをしているので、こういうものは得意なのだ。黒豆に田作りといった定番おせちに、持ち込んだ牛ランプ肉で作ったローストビーフ、ポテトサラダや焼き枝豆などの料理。最後に彼女のお嬢様の好きな栗きんとんを仕上げる。それを中心に多めにお重に詰め込んで完了。お嬢様の笑顔を思い浮かべると、自然と微笑みが湧いてくる。
「アルテアちゃんは食べないの?」
 お重の蓋を閉めた所で、小さいオラトリオがアルテアを不思議そうに見上げていた。
「このおせち料理はお嬢様の為に作ったものです故」
「じゃあ、アルテアちゃんは、ここでは食べないの?」
「はい、そうなりますね」
「じゃあ、ミーミアと一緒に食べましょうなの! えっと、デュアルちゃんから貰った伊達巻と、ミーミアお手製の栗きんとんと黒豆……」
 甘いものばかりが出てくるのはミーミアの仕様だ。でも、本来は面倒なものが嫌いなアルテアとしては、作ったものが出てくるのは嬉しい訳で。
「では、ご馳走になりましょう」

 高宏が作るのは田作り。あやめの花の振袖を着ている彼は可愛い女性のようだが、れっきとした男性である。可愛い容姿に女性ものの服装をしているので、余計にそう見えてしまうのだ。
 振り袖姿の彼は、袖をたすきで縛って動きやすい様にする。
 おせち料理を入れる重箱の漆器を見て、思わずため息が出た。この重箱だけで、もう美味しそうに感じてしまう。
 やけどに気を付けながら、田作りを炒っていく。中々の出来だ。
「へえ、田作りかあ。ねえ、これも重箱に入れて良い?」
 声がした方を見ると、背の高いウェアライダーの青年がいる。その手には出来立ての伊達巻がお重に詰められていた。
「勿論です。ありがとうございます」
 微笑む高宏にデュアルもにっこりと笑う。
「高宏ちゃーん! こっちに栗きんとんとかもあるの! 一緒に食べましょうなの!」
 向こうからは、ミーミアが手を振って誘ってくる。
「はい。では、お邪魔させて戴きますね」
 田作りと、デュアルから貰った伊達巻をお重に詰めて、高宏はミーミア達の所に向かっていったのだった。

「デュアルさん、デュアルさん!」
 キラキラした瞳でデュアルに声をかけてくるのはミリアだ。
「ああ、ミリアも来てくれたんだ。ありがと……」
「デュアルさんの為に、腕によりをかけて、おせちを作りました!」
 デュアルが言い終わる前に、ミリアの言葉が重なる。凄い勢いだ。
「俺の為に……?」
「はい! 見てください!」
 ミリアのおせちは、鶏肉とイノシシ肉をじっくりローストしたものと鯛の素焼きに伊達巻代わりの卵焼き。何故か猫用のレシピらしい。他にも、紅白なますに昆布巻き等。
「……あの。俺、確かに猫のウェアライダーだけど、食べ物は普通に食べられるよ?」
「……はっ! 確かに……!」
「でも、ロース肉や鯛は美味しそうだし……俺も伊達巻を作って来たからどうぞ」
「わあ、ありがとうございます。では、一緒に戴いても……?」
「うん、良いよ?」
 半分ミリアの勢いに押されながらも、一緒におせちを食べる事になったミリアとデュアル。
(「……でも、わざわざ猫用を持って来たって事は……」)
 ふと、ミリアを見て見ると、おせちの他にもブラッシング等の用意もしてあって……。いや、今までも狙われて来た訳なのだが。
(「……新年だし、今年もみんなにお世話になる訳だし……」)
「……今日だけ、特別、ね?」
 そう言うとデュアルは動物変身でサイベリアンの姿に変わる。オレンジ色の長毛種のふさふさの猫。
 やりました! そんな表情でミリアは猫のデュアルをブラッシングするのだった。

 新年の始まり。今年も素敵な一年になりますように――。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年1月16日
難度:易しい
参加:11人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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