リザレクト・ジェネシス追撃戦~産み出づるは骸の龍

作者:鬼騎

 12月23日に行われた『リザレクト・ジェネシス』によって、敗残した死神勢力、ネレイデスの幹部達は千葉県館山湾に出現した巨大な神殿——ネレイデスパレスに集結した。
 透き通る大理石の如き白の列柱が否が応でも目につくネレイデスパレスは、巨大な柱や梁の意匠からギリシャ建築におけるドーリア様式を連想させる。
 その最奥では、『輪廻の死神』オーピス・ネレイデスが祈りを捧げている。
 彼女の祈りが妨げられる事の無いよう、他の死神達はパレスの守りを固めていた。

「まだ研究は未完成……とはいえここで引くわけには参りませんか……」
 『先見の死神』プロノエーは軽いため息をつく。
 リザレクト・ジェネシスの時には神奈川県の三浦市に位置する三浦海岸海水浴場に現れていたプロノエーだが、戦力の分散によりケルベロスたちは彼女を追い詰めることができなかった。
 プロノエーは自らが推し進めていた獄混死龍ノゥテウーム計画の遂行をすべく、ドラゴンのサルベージを進めたい意向だが、今優先すべきはオーピスの祈りの警護だ。
 先の戦で使われなかったノゥテウームを数体引き連れ、パレス内部の護衛へと当たる。
 プロノエーが不気味な骸の龍を従え歩む姿は死神そのものであった。

「みんな、リザレクト・ジェネシスではお疲れ様でした!」
 籏本・杏鶴(ドワーフのヘリオライダー・en0198)は拍手とともにケルベロスたちを迎えた。
「みんなの大活躍でリザレクト・ジェネシスはケルベロスたちの勝利で終えれたね。なんとかなって本当によかったよ」
 しかしその喜びも束の間、リザレクト・ジェネシスでは問題点も浮き彫りになっていた。
「なんとか勝てたのは良かったんだけど、今回けっこうな数のデウスエクスを撃破することができなかったんだよね」
 戦力の分散によるものか、あるいは戦力そのものが足りなかったのか。幸い今回すぐに居場所が判明した者たちがいる。死神勢力だ。
 日本百景の一つとして知られる千葉県館山湾に出現した、ネレイデスの本拠地、ネレイデスパレスに死神の幹部が集結しているという。
 判明している幹部は『名誉の死神』クレイオー、『暗礁の死神』ケートー、『先見の死神』プロノエー、『黒雨の死神』ドーリス、『輪廻の死神』オーピス・ネレイデスの面々だ。
「ここに集まったみんなには先見の死神プロノエーを担当してもらうことになってるよ」
 他の幹部はまた別のチームが対応するため今は気にしなくて良いという。
「プロノエーは獄混死龍ノゥテウーム計画の首謀者でね、今回あの龍と一緒になってパレス内部を巡回する形で護衛にあたってるよ。ノゥテウームは相変わらず戦闘開始から8分で自壊するみたい。とはいえ数が多い上に直接指示するプロノエーも一緒に居るものだから相当な強敵であることは間違いないよ」
 ノゥテウームは以前ケルベロスたちと相見えた時と同じく、骨の腕で周囲を薙ぎ払いながら、地獄の炎と混沌の水を振り撒いて攻撃してくる。そしてプロノエーだが、ノゥテウームたちを前線に出し、自身は後方から全体に向け攻撃を仕掛けてくるようだ。
 この強敵に1部隊だけで挑んだところで、ノゥテウームとプロノエーの攻撃を凌ぐことで精一杯といった形だ。プロノエーの撃破を目指すのならば、プロノエーと対峙する部隊とは別に、数体いるノゥテウームをプロノエー撃破まで引きつけるための仲間が必要となることだろう。
「リザレクト・ジェネシスが終わったばかりだけど、ケルベロスみんなの力が必要なの。プロノエーは何かの研究を行なっているようだから、ここで倒せればその企ても阻止できるかもしれないよ」
 杏鶴は集まったケルベロスたちを鼓舞する。
「今回は私も同行いたします。ノゥテウームだけみても日本各地に現れ街を破壊しようとした強敵です。侮らずに参りましょう」
 杏鶴の横に控えていたヴォルフ・ローゼンハイム(オラトリオのウィッチドクター・en0099)からも声がかかる。
 いざ、リザレクト・ジェネシスのより確実な成果を求め。


参加者
シルフィディア・サザンクロス(ピースフルキーパー・e01257)
リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)
クーゼ・ヴァリアス(竜狩り・e08881)
ヴァルカン・ソル(龍侠・e22558)
ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)
クローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)
朧・遊鬼(火車・e36891)
ヴィクトル・ヴェルマン(ネズミ機兵・e44135)

■リプレイ

●強き意思を持って
 そこは千葉県館山湾に出現したネレイデスの本拠地、ネレイデスパレス上空。ヘリオンからケルベロス達が一斉にその地に降り立つ。
 ある者は以前にも相見えた獄混死龍に思いを馳せ、ある者はこの地に降り立ち戦に向かう恋人の安全を願う。
 死神の幹部、先見の死神プロノエーとプロノエーが引き連れる獄混死龍ノゥテウームとの戦闘は一筋縄ではいかないだろう。面々の表情は険しく、この戦いにかける決死の思いが滲み出ているようだった。
 プロノエー撃破に向かうケルベロスは総勢21名とサーヴァント6体。当初懸念されていた人数不足は十二分に解消されたといって過言ではないだろう。死神幹部を逃してはならないという強い意思を持った者達がここに集結したのだ。
「いまね」
 タイミングを計り先陣を切るのはファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)だ。
 パレス中庭に降り立ったこのチームだが、冷静に状況を分析し、ネレイデスパレスの外側を固める他幹部と他チームのケルベロス達が衝突した隙を見てパレス内部へと侵入していく。
「ぶ、無事に、帰りましょうね……」
 そう言うのはシルフィディア・サザンクロス(ピースフルキーパー・e01257)だ。普段は気弱で臆病な彼女だが勇気を振り絞りこの地にやってきた。
 プロノエーはノゥテウームを引き連れながらパレス内部を巡回する形でパレスの護衛をしているとのことで、探すのは大きな通路。さして複雑ではないパレス内においてプロノエーとノゥテウームを見つけるのは容易いことだった。
「来ましたか」
「貴様は何を望む」
 リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)はケルベロス達の姿を捉えても平然としているプロノエーに対し嫌悪感を隠すことなく問いただす。
 その問いに真剣に耳を傾けるのはクーゼ・ヴァリアス(竜狩り・e08881)だ。彼らは竜に対し因縁をもち、プロノエーの研究に対し不快感を持っているのだ。
「それを答える義務はこちらにはございません」
 プロノエーは表情を変えず手にする杖を掲げる。するとプロノエーとケルベロスの間に5対のノゥテウームが割って入った。
「プロノエー、貴様は絶対に逃がさんぞ」
 朧・遊鬼(火車・e36891)は後方に下がるプロノエーに威嚇をするが、プロノエーは逃げる気など毛頭もないといった様子で杖を構え、ケルベロス達を見据える。
「新年早々、無様な姿を晒すわけにはいかぬな」
「そうだよ、ぼくたちには大切な人が、友達が、仲間が一緒だから!」
 ヴァルカン・ソル(龍侠・e22558)とクローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)はそう口にし、仲間を、そして自らを奮い立たせる。
 リザレクト・ジェネシスを生き延び、この地に集った仲間達の協力の元、ここを死神の死地とすべく、ケルベロス達もそれぞれの得物を手に構えた。
「ああそうだとも。お前さんの運命もここまでだ、覚悟するんだな! Vallop!!」
 ヴィクトル・ヴェルマン(ネズミ機兵・e44135)の掛け声でケルベロスと死神の戦いの幕が切って落とされた。

●邪魔者は消し飛ばせ
 総勢21名とサーヴァント6体、それに対するはプロノエーと先見の死神率いるノゥテウーム5体。壮絶な戦いが始まった。
 ケルベロス全体の方針としてメインメンバーとサポートメンバーの総力をもって敵に当たりし、ノゥテウームを速やかに撃破。その後プロノエーへ集中攻撃を仕掛ける算段となっている。
 ノゥテウームを撃破するまでプロノエーの攻撃を阻害すべくまず動いたのはシルフィディアだ。
「さあ喰らえっ!」
 先ほどまでとは打って変わり、デウスエクスに対する怒りと憎しみから冷徹な雰囲気に豹変した彼女は墜龍槌を砲撃形態に変形させ、竜砲弾をプロノエーに対して撃ち込む。
 現在ケルベロス達は前線に10人、中衛に7人、後方に10人といった具合に分かれており、それぞれ己達の作戦を最大限にい生かせる位置取りを確保する。
「長期戦になるのは目に見えてるから。これはそのための布石」
 ファルゼンとファルゼンのサーヴァント、ボクスドラゴンのフレイヤは動く。ファルゼンはレッドスライムメタルΩを用いメタリックバーストを、フレイヤは属性インストールをそれぞれの対象にかけていく。
 ケルベロス達は敵の攻撃を凌ぎつつ入れ代わり立ち代わり己の力を使い、長期戦にそなえあらゆる手段で味方の強化、そして敵の弱体化を図ってゆく。
 しかしそれは敵の攻撃も同じこと。
「このまま押しつぶされなさい」
 プロノエーが杖を振るうと敵に最も近いケルベロス達に強い重圧が襲いかかる。
 そのような状況下で真っ先に動いたのはリューデだ。彼は仲間に庇われ、攻撃の直撃を免れていた。
「プロノエー……貴様は絶対に倒すが、まずは獄混死龍だ。お前達の覚悟には敬意をもって、全力でいかせてもらう」
 攻撃を担うリューデはノゥテウームの一体に対し時空凍結弾を撃ち込んだ。それは定命化を免れた際に大きく損傷しているノゥテウームの肉塊を大きく削り取り、ノゥテウームは崩れ落ち、崩壊した。ここまで戦闘開始から約3分ほどの時間だ。
 時間にして短いが、当事者たちからすれば長い3分という時間。その間にノゥテウーム1体の撃破を完了し、残りは4体のノゥテウームとプロノエーになる。
 ここまでの戦闘でノゥテウームは2体が仲間を庇う行動を見せ、崩壊した1体は前線での攻撃、残り2体は炎や毒の効果を高めて攻撃を仕掛けてきている。そしてプロノエーは幾度の攻撃を見るに後衛で集中力を高め命中率を重視して行動しているようだ。
 この時点でケルベロス側は敵の攻撃が集中した中衛に被害が出始める。サポートとして駆け付けた2名が戦線離脱、メインメンバーもプロノエーの行動阻害を担当していた遊鬼とヴィクトルが体力をかなり削られていた。
「ぐぅうまだまだぁ!」
 遊鬼は自身に活を入れ態勢を立て直す。
「マグロとカツオ百体余り相手に8人対応はハードだったが……今回はそれよりハード、だな……」
 ヴィクトルはふとそんな事を思い返しつつ自分たちに対しスチームバリアを使用し、苦い顔をする。プロノエー阻害を連携して行っている遊鬼の身を案じているのだ。サーヴァント使いの遊鬼はヴィクトルより体力的に辛いのは明白なのだ。
「グォォオオオオ!」
「シュバルツ!」
 ノゥテウームの一体が大きく息を吸い込む動作を見てクーゼは自身のサーヴァント、ボクスドラゴンのシュバルツに声をかける。肺を焦がしながら地獄の炎を吐き出したノゥテウームの攻撃から仲間を身を挺して守り、シュバルツは身動きがとれぬ重症を負う。
 すかさず攻撃後の隙を見逃さず、クーゼはこのノゥテウームに猟狼吼牙を食らわせればその肉体が崩れ落ちた。
「くっ、俺がもっと早く攻撃できていればっ……」
「致し方なし、気を抜くなよクーゼ殿。敵の攻撃はどれも苛烈……しかしっ!!」
 仲間が、妻が共に戦っている。目があえば案じる気持ちが伝わってくる。踏ん張りどころだ。防衛を固めるノゥテウームに対し鋭い蹴りを繰り出せば3体目のノゥテウームが崩れ落ちた。
「皆、もう少しだよ、頑張ろう!」
 クローネも一緒に戦う恋人を見ればまだまだ頑張るための元気をもらう。クローネ、そして遊鬼のサーヴァントのナノナノのルーナが立て続けに回復に入るが、サポートの面々のおかげもあり傷は即座に回復していく。とはいえすでに回復しきれぬ負傷が重なってきているのが仲間全体に見て取れる。
「お師匠とどめだよ! いっけぇ!」
 クローネがそう叫ぶと彼女のサーヴァント、オルトロスのお師匠はノゥテウームに口に咥えた剣で切りつけ、4体目の敵を消滅させた。
 そんな中ファルゼンの声が響いた。
「7分よ」
 戦闘開始の時点でセットしていた携帯のアラームが鳴り戦闘開始から7分が経過したことを伝える。
 現在の戦況はケルベロス側はメインメンバーはサーヴァント一体戦線離脱、他メンバーは耐え忍んでいるものの、一部の負傷度が高い状態。サポートメンバーからも戦線離脱者が2名と2体となり、ケルベロス達の総数は17名と4体となった。
 残りノゥテウーム1体とプロノエーだが、ノゥテウームは8分で自壊するものの、すでにケルベロス達の攻撃で今にも崩れそうな状態だ。
 対してプロノエーも行動を阻害するケルベロス達の攻撃により目に見えるより多くのダメージを受けていた。
 ここまで来てもプロノエーからは逃亡の意思は見えない。ケルベロス達はプロノエーの攻撃を耐えきり、撃破することができるのだろか。ケルベロス達は得物を握り直し、再び気持ちを締めなおした。

●最期の時
「勝てる気でいるようですね」
 プロノエーが杖を振れば空気が凍り後方のケルベロス達に襲い掛かる。その言葉通り、プロノエーの力を誇示すような攻撃は範囲が広がり威力が多少減衰しているものの、多大な猛威を振るう。
「ぐっ!」
「くぅ、キツイんだよ……」
 思わずクーゼとクローネの口から言葉が漏れる。クローネは母なる大地の協奏曲を奏で自分の傷を癒す。広範囲の回復では間に合わないほどの傷。サポートからも攻撃を受けた面々に続々と回復が飛んでくるが、完全に傷が癒えきることはない。
「……あぁ、だがこれで」
 ヴィクトルはガジェットを大型のバスターライフルのような形状に変形させ、ノゥテウームに向け電撃を撃ちだした。その電撃はノゥテウームの躰を貫き、その巨体が自壊しきるまえにとどめを刺した。
「残るはプロノエーだけかっ」
「その通りだなっ!」
 クーゼは絶空斬を放ち、攻撃を仕掛け、遊鬼はグラインドファイアで炎をばら撒く。あとはひたすら攻めるだけだ。
「……」
 度重なる攻撃に自らの身が蝕まれていくのを感じプロノエーの表情が曇る。口にはしないものの、自らの劣勢を悟る。しかしプロノエーはここで引くわけにはいかない。引く先もないのだ。
 プロノエーはケルベロス達の攻撃前線に瘴気の霧を放つ。それによりサポートメンバーの前衛がメインメンバーを庇い、数人膝をつくが、ケルベロス達はその犠牲を無駄にはしない。
「いい加減倒れろ! 倒れろっ!!」
 シルフィディアは怒號雷撃を放ちながら叫ぶ。
「あぁ、そろそろ倒れるべきだ。そうだろう?」
「ええ、これで最後」
 ヴァルカンとファルゼンは前線全員に対し回復、そして攻撃の補助を施す。まだ気力の残るサポートメンバーが立ち代わりプロノエーに対し攻撃を仕掛けた。
「っう」
 プロノエーの眉をしかめ、苦し気な表情をする。
「堕ちろ」
 地獄化した心臓が齎す極限の集中状態によって放たれる研ぎ澄まされたリューデの斬撃は寸分の狂いもなくプロノエーの体を切り裂いた。
「私、も……ここまで、でした……か……」
 プロノエーの体はその言葉を最後に霧散し、消滅した。11分に及ぶケルベロス達の戦いは終わりを告げた。

●獄混死龍ノゥテウーム計画
「何も見つからない、か」
 プロノエー達との戦闘後、ヴァルカンはそう呟く。プロノエーの研究資料などがないか他の戦闘地域を回避しつつ探し回ったのだが、それらしき研究を行ったり資料が置いてあるような場所は見つからなかった。
「せっかく情報の妖精さんを使って何か持ち帰れないかと思ったんだけどね」
 そう言うのはクローネだ。妙案かとも思ったのだが、持ち帰るための元がない以上はどうのしようもない。
「思えばプロノエーはドラゴンなどと手を組んでいたようだけど、他の死神と行動を共にはあまりしてなかったかもしれない」
「だとしたら研究成果や資料は死神ではなく他のデウスエクスのもとにある可能性があるということか」
 ファルゼンと遊鬼はそう考察する。
「今後も何かが起こる可能性があるってことだな」
「面倒なことだ」
 ヴィクトルとリューデはため息を一つ吐く。
「でも今回は皆さん無事で、本当に良かったです」
「ああ、そうだね」
 プロノエーの計画が完全に潰えたとは言えないまでも、首謀者を倒し、全員無事に帰還できることにシルフィディアはそう微笑み、クーゼはそれに同意の言葉を述べる。
 負傷者は出たものの重篤な怪我人は無し。この戦、ケルベロス達の完勝である。

作者:鬼騎 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年1月11日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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