リザレクト・ジェネシス追撃戦~ミス・インビンシブル

作者:鹿崎シーカー

 東京湾近郊、品川埠頭。ここから城南島海浜公園にかけての一帯に立つ巨大な機械城壁の上、高所から東京湾を見下ろす巨影あり。赤褐色の海老めいた造形のダモクレス、ミス・リージョンは、海を一望できる壁上で硬直していた。点滅するマシンアイには、マキナクロスの陥落と無数の『Error!』メッセージ。エラーは城壁の外周で、混乱した蟻の群れじみて右往左往するメックカスト達のもの。ケルベロス進撃、『終末機巧』ラグナロク、並びにアルマゲドン、エスカトロジー撃沈。大量の情報が頭脳に雪崩れ込む。
 ミス・リージョンは彫像めいて凍りついたまま、両目を忙しなく点滅させる。そして、判断しかねて首を傾げた。


「ぃようし! 戦争お疲れ様! 金星だったね!」
 ガッツポーズを決めた跳鹿・穫は、いそいそと資料をめくり始めた。
 先日のリザレクト・ジェネシス大戦において、デウスエクス達の恐るべき計略は阻止された。しかし、代わりに多くの敵がケルベロス・ウォー内で討ち果たされることなく永らえているのもまた事実。
 彼らのみで今回のような大規模作戦は難しいと思われる。ただ、それでも一体一体は強大な力を持つ存在であり、今後何かしらの行動を起こし、地球に災禍をもたらす可能性がある。
 これより、リザレクト・ジェネシス追撃作戦を開始する。皆には敗戦直後で混乱している有力敵を排除し、後顧の憂いを断ってほしいのだ。
 当班のターゲットは品川城壁の『ミス・リージョン』。終末機巧大戦において、アースイーター・ブロークンの防衛を行っていた大型ダモクレスである。ケルベロスの攻撃さえ易々と跳ね返す外殻を持ち、巨体や両腕のドリル、酸を吐く攻撃を駆使して戦う強敵だ。
 現在、ミス・リージョンは、自ら生産した虫人間型ダモクレス『メックカスト』の群れと共に鎮座している。とはいえ、行動を起こしているわけではなく、単に状況判断できずフリーズしている状態だ。
 メックカストは弱いダモクレスだが、数の暴力を武器とする。大勢で弾幕を張り、相手の動きを止めながら一気に押し込んでいくのが主戦法だ。品川城壁には今だ大量のメックカストが存在し、闇雲に突っ込んではミス・リージョンに近づくことすら出来ず蜂の巣にされるだろう。
 メックカストの軍勢をどうにかして突破し、ミス・リージョンを打倒。その後、頭目を失い混乱するメックカスト達を蹴散らして脱出というのが大まかな流れだ。
「ミス・リージョンはすっごい硬くて、生半可な攻撃じゃ倒せない。メックカストの群れまでいるし、しっかり作戦立てないとやられるよ。……リザレクト・ジェネシスの完全勝利まであとちょっと! 頑張って!」


参加者
繰空・千歳(すずあめ・e00639)
シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する人形娘・e00858)
流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)
館花・詩月(咲杜の巫女・e03451)
エリシエル・モノファイユ(銀閃華・e03672)
旋堂・竜華(華炎の竜姫・e12108)
ハンナ・カレン(トランスポーター・e16754)

■リプレイ

 廃墟と化した地区をメックカストの軍勢が走る。地を揺るがし、金属の軋む音を合唱めいてかき鳴らす彼らの、先頭を走る個体の視界に複数の断片映像が映り込んだ。
 一枚目、極彩色の打ち上げ花火。二枚目、赤・白・緑の信号弾。三枚目、百発の爆裂。四枚目、黒いフーデッドローブを着たシャドウエルフ! 『Re:SCANING』の文字と共にシーキングバーが伸び、『KERBEROS』の文字に変化した。情報を同期された軍勢全機は四ツ腕の銃をスタンバイして加速する。
 城壁直上、情報同期を得たミス・リージョンは、離れていくメックカスト達を見下ろした。足元に十数体のメックカストを侍らせ、演算開始。視界に流れる無数の文字列。黙して両目を点滅させ、情報同期と予測を繰り返す彼女からやや離れた場所で暴風が炸裂! 吹き荒ぶ風に振り向くミス・リージョンの視界、高く跳躍した旋堂・竜華(華炎の竜姫・e12108)が微笑した。
「ごきげんよう。終末機巧大戦の雪辱を果たさせて頂きに参りました。さぁ、この再演の舞台、再び楽しみましょう!」
 竜華が右腕を振ると共に八本の赤鎖が飛翔し、メックカスト達の胸を貫通し、爆発炎上! 同時、竜華の後方で弾け飛んだ風の残滓から七人と二体の影が飛び出す。繰空・千歳(すずあめ・e00639)とハンナ・カレン(トランスポーター・e16754)はミス・リージョンの点滅する両目を見据えた。
「奇襲成功っと。さぁて、気合を入れていきましょうか」
「ああ。行くぜ、畳んじまえ!」
 直後、初撃を免れたメックカスト達が爆炎を斬り裂いて飛び出で、四ツ腕の銃を一斉掃射! 鉛弾と光線の弾幕をにらんだソールロッド・エギル(々・e45970)は魔導書を開き、突き出した片手に魔法陣を展開!
「私の命を糧に開くのです、聖護の門!」
 弾幕の前に魔法陣型に編まれた光鎖が出現、全ての攻撃を受けて星空めいた光を放つ。鎖の陣を飛び越えたエリシエル・モノファイユ(銀閃華・e03672)は銃撃を続けるメックカスト達の後方に着地、ブレイクダンスめいた回転蹴りで全機をまとめて蹴り飛ばした!
 ミス・リージョンは演算中断。『BACK』指令を飛ばして後方回転跳躍で距離を取る。巨体が宙に描いた黒く点々とした軌跡。空中に投げ出された新規メックカスト達は空から全火力射出! ケルベロス達が立つ城壁を激しい火花と光線の爆発が包む中、爆発を駆け抜けた館花・詩月(咲杜の巫女・e03451)が大口径レーザー突撃砲を構える。
「炎熱収束、照準良し。熾炎業炎砲、発射」
 銃口から伸びる熱線が着地したミス・リージョンの眉間に直撃して爆発! だが爆炎を突っ切った無傷のミス・リージョンは両腕のドリルを駆動させて突進をかけてくる。詩月を追い越した流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)は片手を天高く掲げて叫んだ。
「防御パーツ射出! 超合金合体!」
 どこからか飛んできたドローン群が清和の前に積み上がって合体し、巨大な十字架を形成。迷わず突っ込んで来るミス・リージョンめがけ、清和は掲げた腕を引き絞る!
「行くぞ必殺、プラチナクロ――――スッ!」
 清和の掌底に合わせ、ジェット噴射して加速した十字架は二本のドリルの間をすり抜け、ミス・リージョンの顔面に命中! 十字架の後方では瞳を金に変色させた竜華が空中のメックカストを見つめ、炎上・崩壊させていく。銃創を作ったソールロッドが黒いロザリオを握りしめ、祈るように唱える。
「光を!」
 彼の背後に後光じみて現れた鎖の陣が、まばゆい閃光を放つ。体の各所に出来た銃創を癒やされながら、ハンナと千歳は十字架と張り合うミス・リージョンへ駆けていく。そろって跳躍し、十字架の越しに飛び蹴りを繰り出した! 十字架をメキメキと軋ませながら、ハンナは蹴り足に力を込めた。
「千歳、うっかり足折るなよ!」
「ハンナこそ!」
 十字架の勢いが増し、ミス・リージョンが後ろに押される。特攻を諦めバックジャンプする機体の真上、背中に蜂じみた子竜をくっつけて飛翔したシエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する人形娘・e00858)がタコ足めいて植物のツタを複数伸ばす。咲き乱れる赤い薔薇八輪。その花弁中央から飛び出す緑のチェーンソー!
「Slash……ヴィオロンテ!」
 シエナの命に応じて薔薇咲くツタが眼下のミス・リージョンに嵐の如き斬撃を浴びせた。回転刃が褐色の装甲に触れるたび響く金属擦過音。だがミス・リージョンは一切構わずハンナと千歳が蹴とばした十字架に酸を吐く! 強酸放水をまともに食らった十字架は白煙を上げながら溶け始め、爆発四散! 続いて振り上げたドリルを動かしてシエナのツタをまとめて巻き取り、シエナ諸共振り下ろす。シエナを叩きつけられた床が陥没!
「かはっ……!」
 跳ねるシエナの上空で二本のドリルが猛回転! 緑髪めがけて降り来るドリルの真下に酒樽めいたミミックの鈴が滑り込み、蓋をふっ飛ばして琥珀色の大樹を吐き出す! 雨の如きドリルのラッシュはミミックの枝をことごとく粉砕し、ミミック諸共シエナを飲み込む。そこへハイジャンプし片足を振り上げる詩月!
「ふっ」
 渾身のかかと落としがミス・リージョンの脳天を打つ! 軋み、悲鳴を上げる蹴り足を押し込む詩月を跳ね上げ、ミス・リージョンは跳躍後方回転。弾丸めいてメックカストの群れを射出した。真っ直ぐ飛翔しながら火力掃射するメックカストの群れ。銃弾や光線が次々と着弾する中、清和が右手を掲げる。
「全パーツ射出! 超合金合体!」
 どこからか飛んできた巨大なパーツ達が積み上がり、メックカスト達の銃撃を阻害。火花散らす即席バリケードの後ろから白銀の巨大ロボが立ち上がり、肩からミサイルをバラまいてメックカストを殲滅! ソールロッドに助け起こされたシエナは、両足と右手を失い全身に裂傷を負いながらも告げる。
「La présentation……腕の、関節部分がもろくて……尾の裏側が、メックカストの、生産口……!」
 その時、バリケードを飛び越えた巨大ロボがスピードスケートじみた動きでミス・リージョンに肉迫! 手にした巨大な剣を引き絞る!
『いくぞ必殺、フォートレススラ――――ッシュ!』
 大剣の切っ先をミス・リージョンの口にねじ入れ、そのまま押し込む! 節足を立てて制動をかけたミス・リージョンは大剣を食い千切り、左のドリルで巨大ロボの腹を射抜いた。続いて右のドリルで胸を打ち抜く! 巨大ロボの背中から腹を貫かれた清和が飛び出すと同時、ロボの肩から千歳が跳んだ。見据えるはドリル右腕、僅かに切れ込みの入った肘関節!
「そこね。見えた!」
 左腕を弓状の銃口に変え、鎌型の光線を射出! 琥珀色の三日月が切れ込みに命中し、甲高い金属音を響かせる。が、切断まで至らぬ! 右腕を引き抜かんとするミス・リージョンの懐に、エリシエルが居合いの構えで踏み込んだ。
「片腕、もらい受ける」
 鯉口を斬り、跳躍して右肘を斬る! 右腕を分かたれ、後ろによろめくミス・リージョン。その真下に滑り込んだ竜華が燃える大剣を下段に振りかぶり、巨大な体躯を力任せに斬り上げた。わずかに浮いた巨体を爆炎の刺突で天高く打ち上げ、尻尾に六本の鎖を絡みつかせた。
「炎の華に呑まれ、舞い散りなさい……!」
 全身に炎をまとった竜華は鎖に引かれ、爆炎の矢めいてミス・リージョンへ飛翔。メックカストの頭部迫り出す尻尾の裏側に大剣の切っ先が突っ込んだ。生まれかけた者達は潰され焼かれ、鉄塊剣と尻尾を巻き込み爆発四散! 空に炎の大輪を残した竜華に、ミス・リージョンは空中でコマめいて回転。残った左ドリルを振り向く竜華の左脇腹に突き刺した! 肉を抉られ血飛沫が舞う!
「くっ……ああああああああああああッ!」
 絶叫する竜華を、ミス・リージョンはドリルを振り抜いて墜落させた。くるくる回りながら着地し、エリシエルに飛びかかる! すんでのバックジャンプでかわされたドリルは城壁の床に突き刺さり、回転しながら根元まで潜る。ミス・リージョンは埋まったドリルを左右に動かして城壁の一部を取り出して持ち上げた。かかげられた巨大な瓦礫がケルベロス達に影を落とした。
「おいおい……冗談だろ?」
 頬に冷や汗を伝わせるハンナ。金属音じみた咆哮を上げたミス・リージョンが瓦礫を使って殴りかかる! ソールロッドが魔導書に手の平を推しつけ、詩月が手にした鈴を鳴らした。
「私の命を糧に、邪悪を阻め! 聖なる門よ!」
「我が心は花なり。花が心は祝ぎなり。なれば祝ぎに相応しからぬものを遠ざけ給え」
 白光の結界が瓦礫をガード! しかしミス・リージョンは再度咆哮して狂ったように結界を瓦礫で滅多打ちにする。連続するインパクトにヒビ割れる結界。植物のツルを駆使したワイヤーアクションで白い光を突破し、ドリルの下を潜り抜けたシエナは、背中に赤い薔薇を咲かせる。花弁中央から飛び出す、ワニめいた植物のアギト!
「Manger un morceau……ヴィオロンテ!」
 アギトを得た薔薇が垂直に伸び、ミス・リージョンの左腕に食らいつく。シエナはさらに数本のツタを足場に突き刺して固定。薔薇がしなり、ミス・リージョンの左腕を開かせた。
「Opportunité……エリシエルさん……!」
 左腕に跳んだエリシエルの刀が影めいて漆黒に染まる。無防備になった左肘関節を狙った黒い斬撃のラッシュ! 金属掘削音じみたサウンドを何度も響かせ、大上段からの一閃!
「はっ!」
 ミス・リージョンの左腕が斬られ、薔薇のアギトを離れて城壁の外側へ落下! 耳障りな咆哮を放つミス・リージョン。その背後から飛来した炎の鎖が巨体を雁字搦めに締め上げる。鎖の先、腹部から左肩にかけてを地獄の焔で覆い、失った左腕を鎖と炎で補った竜華がミス・リージョンを真横に振り回す!
「この舞台、私達の勝利で幕を引かせて頂きますッ!」
 竜華は空に引き上げたミス・リージョンを城壁屋上に叩き伏せる! 仰向けに倒れたミス・リージョンの真上に飛んだハンナは、ガントレットの拳を握り白い冷気をまとわせ急降下パンチ!
「だいぶスッキリしたじゃあないか……もう一発食らっていきな!」
 氷拳が機械の喉奥に打ち込まれ、強酸をあふれさせる機関を瞬間的に凍結させた。だが、素早く身を引きかけたハンナの腕を咥えたミス・リージョンは竜華の鎖を引き千切って跳ね起き、ハンナの腕を食い千切る! 腕を吐き捨て、咆哮するミス・リージョンは身を低くして突進攻撃! 直線状のエリシエルを跳ね飛ばし、シエナを後ろへ投げたラジンシーガンを捕食。なおも突っ走る甲殻の真上に飛び出した千歳が垂直落下ストンピングでミス・リージョンを地に叩きつけた。詩月はライフルを変形させる!
「そのまま止めてて。過収束モード、冷気充填」
 長大になったライフルが青白い光線を発射! 光は地面とミス・リージョンの接地面を撫で、褐色の甲殻を地面にぬい止める。しかし、ミス・リージョンは力尽くで氷を砕いて体勢復帰。金属音の咆哮が空気を震わせると共に、ケルベロス一同の背後に大量のメックカストが降り立った。四ツ腕の銃を構えて立つメックカストの軍勢を前に、腹の大穴をおさえて清和が立ち上がる。
「陽動に引っかかった連中が、戻ってきましたね……」
「……どうする?」
 銃を構えたまま、詩月が横目で目配せをする。
「主武装は全て奪った。メックカストの生産ももう出来ない。あと一手、何かあれば倒せそうだけど」
「一手か。……遠いね」
 竜華と並び立つエリシエルがメックカストの群れに刀を向けつつ呟く。その時、ソールロッドが胸を押さえて倒れ伏した。その顔色は紙めいて真っ白で、呼吸も浅い。そばに転がる魔導書から治癒の光が消え失せた。ハンナは喉を鳴らして笑う。
「全員ボロボロか。まぁそうだよな」
「……ハンナ?」
 借りた千歳の肩から腕を離したハンナは、足を肩幅に開き、だらんと下げた腕で拳を握る。
「けど、逃げる気はねぇよ。勝負は死ぬか、生きるかだ。そうだろう?」
「お付き合いします、ハンナ様。幕引きまで……共に愉しみましょう!」
 告げた竜華の瞳が金色になり鎖が紫光を放って脈動を始める。二人から赤と黒のオーラがあふれ出す中、植物に支えられたシエナが唇を噛んだ。
「……Regrettable……」
 ミス・リージョンとメックカスト達のキチキチと鳴く声が木霊し、響き、重なり合う。シエナの視界でミス・リージョンの姿が両目を残してぐにゃりと歪み、長い口吻と甲殻に包まれた前肢を持つ、虫めいた竜の姿に変化した。アラームの残響。誰かの嗚咽と、誰かの懺悔。
「二度と……あのようなことは……」
 握りしめ、震える隻腕を植物のツタが包み込む。
「あのような無様を、二度と繰り返すわけにはいかぬのじゃ!」
 直後、ミス・リージョンの腹が内から引き裂かれた! 絶叫するミス・リージョンの腹から突き出しす巨大な黄色い竜の顔! 驚愕する一同の前でシエナの身体が竜鱗めいた蕾に包まれ、その蕾から巨大な花が八つ開いた。八種八様の花弁の中心には……そろって巨大な爬虫類の頭部が生えている! 咲き乱れる禍々しい大輪の花の中心、蕾の中から迫り出したシエナは、ドラゴンの頭を生やして暴れるミス・リージョンを睨み、言い放った。
「控えよ、下郎。貴様が如き鉄屑……妾の肥しにもならぬわ!」
 大輪の爬虫類たちが吼え、八岐大蛇じみて首を伸ばす! 八つの頭がミス・リージョンの腹に食いつき、力任せに引き裂いていく。ノイズを発し、ガクガクと痙攣し始めるメックカスト達! 我に返った千歳は即座にハート形の飴細工を地面に打ちつけた。飴細工は膨れ上がって二組の兵士と女性の形に変化し、ハンナとソールロッド、清和を抱き上げる!
「おい!?」
「ごめんなさいハンナ! 竜華、エリシエル! 退路を開くわ!」
 千歳の声に叩かれた二人が飛び出し、ぎこちない動きで踊るメックカスト達を炎鎖の腕で叩き伏せては蹴り飛ばして薙ぎ払う! 蹂躙に抜刀して突撃していく千歳に三人を抱えた飴細工達が続く。こじ開けられた退路を見やった詩月は、シエナとミス・リージョンの方を振り向いた。
 蕾の上で泰然と構えるシエナは五体満足。彼女が座る蕾からは花の咲く尾が生え、ヒドラめいて生えた八つの首はミス・リージョンを無惨に引き裂き、残骸を貪り食らう。首の一本、薔薇から生えたティラノサウルスに食われるミス・リージョンの顔を見、詩月は平淡に言った。
「さようなら。……そして感謝を。貴方が作ってくれたから、僕は今ここにいる。そして……」
 背を向け、駆け出す詩月の後ろでミス・リージョンが噛み砕かれる。バラバラに食い荒らされたミス・リージョンを遠目に、邪竜と化したシエナは冷たく微笑んだ。

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する悩める人形娘・e00858) 
種類:
公開:2019年1月11日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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