リザレクト・ジェネシス追撃戦~傍らの死、ジエストル

作者:ふじもりみきや

 城ケ島……。
 過半の軍勢が竜十字島に帰還した今、島は本来の静けさを取り戻しつつあった。
 しかし……、
「まだだ。まだ終わるわけにはいかぬ」
 帰還したのは未だ『過半』。島に残ったドラゴンの一竜、ジエストルは静かに足元に広がる陣を見下ろした。文様は淡く輝き、徐々にその光の量を増している。それは徐々に光の柱となり、天に昇っていった。
「『固定型魔空回廊』。これさえあれば、われわれは自由に竜十字島よりこの場へと現れることができる。この島を拠点とし、新たにその牙を……!」
 言い、かけて。その巨体から血が噴出した。攻撃を受けたわけではない。その内側がこぶの様に膨れ上がり、そして破裂したのだ。
 その血を吸いあげるようにして、さらに陣は光を溜める。よくよく見なくとも、同じような傷が既にジエストルの体にいくつも存在することが見て取れるであろう。
 消耗はかなりのものだ。吐く息は苦しげに。しかしその目は明らかな決意が伺えた。
「退くわけにはいかぬ。同胞のために散っていった者たちのためにも。その死を無駄にせぬために、なんとしてもやり遂げる。……そうであろう?」
 重く、苦しく。ゆっくりと、ジエストルは顔を上げる。遠くに輝く二つの柱に目をやった。儀式を行っているのはジエストルだけではない。仲間の二竜が、同じように苦しみながらも儀式を行っていると信じているのだ。
「……『獄混死龍ノゥテウーム』よ」
 故に、ここを落とされるわけにはいかない。ジエストルは重い体を何とか支え、振り絞るようにして命じる。
「同胞のためにその道を選んだ誇り高き者たちよ。もう一度お前たちと共に往く。必ず、ケルベロスたちの侵入を阻止せよ。儀式を完遂させ、固定型魔空回廊を完成させるのだ……!」


「『リザレクト・ジェネシス』ではお疲れさまだったな。大変だったろうに。怪我は無かっただろうか?」
 浅櫻・月子(朧月夜のヘリオライダー・en0036)が開口一番そういった。珍しく気遣わしげな口調であったのは、それだけ激戦であった、ということの証拠であった。まあ、と彼女は肩をすくめる。
「気の聞いた旅行の話でもしたいところだが、悪いがそうもいかない。そんな戦いの後に忙しない話だが、今回の戦いでは多数のデウスエクスが戦場に未だ残されている、という結果になった」
 勿論、勝利であることにはかわりがないのだが……。と、月子はいって少々考え込む。それから悩むような間の後で、
「故に、追撃戦を行う運びになった。戦い続きで大変だとは思うが、諸君らの力を貸して欲しい」
 と、静かな口調でそう告げるのであった。
「まず、今回戦いに赴くのは城ヶ島だ。諸君らが担当する場所は……」
 月子は地図を示す。徐に指をさしたその先は、
「洲乃御前神社。相対する敵はドラゴン勢力がジエストル」
 と。そこで一呼吸おいて、
「何をしているのか。気になるだろう?」
 なんて言った。その後で、
「ジエストルは、堕落の魔王、と魔竜ヘルムート・レイロードと組んで城ケ島に残り、『固定型魔空回廊』を作ろうとしているんだ。固定型魔空回廊というのは、特別な魔空回廊で、それによって竜十字島の戦力がいつでも、城ケ島に現れる事ができるようになるらしい」
 そういって、月子はちょっと考え込む。
「これは敵に奪われると『本星へのゲートの場所が特定されてしまう』というある種危険な代物だが、ドラゴンに関しては既に竜十字島の場所は発見されている。つまり、そのデメリットはないに等しい。故にこのような儀式に打って出たのだろうな」
 なお、固定型魔空回廊が完成次第彼らは撤退し、竜十字島の戦力を新たに城ケ島の防衛部隊として配置するように動くだろう。と月子は言った。
「このドラゴンは強力だ。通常ならば勝ち目はない。……ただ、儀式のためにかなり消耗しているらしい。倒すなら今しかない」
 ひねり潰されずに済む数少ない自体だと、月子は言って。そしてどこか、苦々しさの残る顔で笑った。
「それでも、厳しい戦いになる。だから気をつけて言ってきて欲しい。そして本件に関しては……」
 と、そこで月子は顔を上げる。
「やつが配下として複数置いている強化型、『獄混死龍ノゥテウーム』は相当な難敵だ。故にノゥテウームを倒す別部隊が結成されている。降下は同時に行うので、諸君らはノゥテウームには構わずわき目もふらずにジエストルを目指して欲しい。……いいわね。何があっても、絶対に振り返っちゃだめよ」
 最後の言葉はどこか愁いを帯びたように聞えた。しかし次に口を開く頃には、いつもの口調に戻っていて、
「儀式が完成させられてしまえば、元も子もないからな。とにかく場にたどり着き、諸君らはジエストルの撃破もしくは儀式場の破壊を目指して欲しい。また、ほかの二竜のどれか一竜でも撃破されれば、儀式の阻止は成功となる。……だが」
 それでも相当難しい戦いとなるだろう。と、月子は伝えた。
「戦いで疲れた諸君らを、さらに厳しい戦いへ誘うことはわたしたちにとっても心苦しい。……けれど」
 そう、彼女は言って微笑んだ。
「それでも、戦わなければいけないときもある。わたしは見送ることしか出来ないけれど……。気をつけて、行ってきてね」


参加者
カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)
レミリア・インタルジア(咲き誇る一輪の蒼薔薇・e22518)
桜庭・萌花(蜜色ドーリー・e22767)
岡崎・真幸(花想鳥・e30330)
野々宮・くるる(紅葉舞・e38038)

■リプレイ


 竜は天を仰いだ。
 本来ならば他を見下ろす存在であるはずの者、ジエストルは天を仰ぎ、そしてあまつさえ憎憎しげに睨み付けた。
「……来たか」
 現れたのは彼よりもはるかに小さい人の子ら。
 そして何よりの障害となる、ケルベロスたちであった。

「ジエストル……。あなたの思うようには、させないわよ」
 アリエータ・イルオート(戦藤・e00199)がそういって、ドラゴニックハンマーを砲撃形態へと変化させた。
「始めましょう」
 淡紅藤の髪波立たせ、まっすぐに竜を見据えてアリエータは撃つ。砲撃がジエストルの身を掠る。呻くように唸り、ジエストルは彼らを見た。
「来たか。やはり見逃すそなたらではないと思っていた」
 既にジエストルの姿は己の術で傷つき血で溢れている。その上術を行使しながらの戦いとなる。本来なら避けるべき戦いだ。……だが、
「……良かろう。相手になろう」
 そう、ジエストルは言ってひときわ大きく咆哮を上げた。光の柱が輝きを増し、ジエストルの体が内側から弾け血が溢れていく。
「前……出るよ!」
 これ以上待ってはいられない。野々宮・くるる(紅葉舞・e38038)が一歩踏み出す。守護星座を描き出すのと、ジエストルの尾が振られるのは同時であった。
「……っ」
「大丈夫だ。俺も出るぞ」
 声が空気を震わせる。その圧力だけでもものすごいものになる。岡崎・真幸(花想鳥・e30330)が前に出るくるるに心持合わせるように、声をかけて前に出た。ボクスドラゴンのチビもそれに続いた。
「ああ。頼んだぞチビ」
 部下に言うようにそう言って、真幸は前を向く。それと同時に尾が振られる。広範囲をなぎ倒すようにして振られたそれに、
「あなたが命を賭してくるとしても……、私たちも負けるわけにはいかないのです」
 レミリア・インタルジア(咲き誇る一輪の蒼薔薇・e22518)もまた前に出た。コルセスカを使って軌道をそらすようにかばうようにして受けようとする。もちろんそんな程度でこの勢いは止まらない、けれど、
「願わくは皆で無事に帰還できますように。そのためにも……守りきります」
 衝撃が重い。数歩下がりながら何とか耐えてレミリアはそう言い切った。
「はいはーい。大丈夫。みーんなあたしが治すから! だーかーら」
 桜庭・萌花(蜜色ドーリー・e22767)が声だけは気楽な口調で言いながら。手を挙げるとオウガ粒子を散布させる。そこに、
「ああ。任せろ。私は闘い続ける。奴らを滅するまで!」
 ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)が己のドラゴニックハンマーを砲撃体勢へと変形させて撃ち込んでいく。
「お互い後には退けねえようだな……。だったら『覚悟』を決めてやらあッ!!」
 ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)もまた流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りをドラゴンの巨体に叩き付ける。血を流しながらジエストルは彼らを見据えた。その強い力を持った目を、
「魔空回廊を作らせるわけにもいきませんし、頑張っていきましょうか。強敵ですが、相手に取って不足はありません」
 いっそ丁寧な口調でカルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)がそういって受け止めた。臆することなく一歩踏み出し、オウガ粒子を放出する。感覚を研ぎ澄ますような空間を作り出した。
「ノゥテウーム……。あれを考えたのはあなたですか」
 アームドフォートの砲身をグラビティ・チェインの光に包み込み、アリエータも前を見据える。
「享楽の行いではないのは分かりますが、あれを完成させる訳にはいきません。無論この儀式も。……ですから、いざ」
 その言葉にジエストルが咆哮で応える。
 そして……。戦闘が始まった。


 戦いは熾烈を極めた。もとよりドラゴン相手。儀式の消耗により何とか対抗できている、というところもあった。
 故に、戦いが進むにつれ傷は増えていき……、
「く……っ!!」
「ティーシャちゃん!」
 ジエストルの爪がティーシャへと走った。くるるが庇おうと手を伸ばす。……だが、間に合わない。腹を割かれて倒れ伏すティーシャに、ジエストルは、
「まずは、ひとり。その血も我が儀式にささげるがいい……!」
 目的は儀式の完遂。故に倒れたものには目もくれず。さらにジエストルは身を翻して爪を走らせる。
「……! そっちだね。今度、こそ……っ!」
 続けて狙われた萌花に、今度こそ間に合えとくるるが走る。
「くるるさん!」
 思わず萌花も声を上げた。彼女の前に立ち塞がるくるる。腹を割かれて肉がこそげた腹部にくるるは思わず手をやって、
「っ、だいじょーぶ、今、治すっ……!」
「わたしは、大丈夫だよう。それよりも、下がって……」
 言いかける。攻撃はまだ終わっていなかった。もう一度執拗にジエストルが手を伸ばそうとして、
「大地よ、地の底より沸き上がりその手を伸ばせ。大地を走る彼のもの脚に」
 レミリアが声を上げると動じにジエストルの足元がゆれた。その体を捉えようとする。体制を崩したその隙を、
「……今です」
 レミリアは見逃さない。声を上げて指をさす。次は回復に回らなければと、考えながら、
「時間が……」
 もうずいぶん、たった。飲み下すようにレミリアは呟く。……どうか間に合うようにと。戦いから目をそらさずに。けれども内心では祈る。同時に血の塊を飲み込むような味がした。彼女とて、無傷ではない。
「そうですね……。必ず、勝ちます!」
 言いたいことを察して。カルナはバスターライフルを構え、一度天を仰いだ。輝く光の柱を視界に納める。
 傷つくことを厭わぬカルナも、既にあちこち肉が裂け、そしてその傷口が焼け爛れていた。それでもしっかりと大地を踏みしめて、凍結光線をジエストルに叩き込む。
 ジエストルが口をあける。腐食のブレスが来る前兆だった。真幸が一歩前に出る。既にチビは消え去ってもういない。
「来るか。今度は俺の番だ」
「……小細工を……!」
 ブレスが吐き出された。体を腐らせていくそれに、即座に守り手たちも反応して動く。弾くことも、よけることも出来ない死の吐息は体を張るしかなく、
「あ……。あ。あ」
 くるるが声を上げる。覚悟はしていたが、さすがに生きながら傷口が腐っていくのを見るのは……。
「で、でも、大丈夫。大丈夫だよう」
 でないと萌花が気にしてしまう。精一杯の強がりもけれど、それで限界だった。
「華麗なる剣の舞、とまではいかないけど……」
 倒れ際にヒールドローンを飛ばし、くるるの意識はそれで落ちる。それを隣で目の当たりにして、レミリアがただれた己の右腕に目を落とし、それから真幸に目をやった。
「……ああ。これからは回復は不要だ」
 しても意味がないラインまで来たことを、真幸は暗に告げた。そして視線をジエストルへと戻す。
「もう誰も……暴走させん。自分は死んでも他は帰らせる」
「ちょっとー! 死なせるなんて、ぜーったいさせないんだから!」
 萌花が気丈に返答する。自分を守って倒れていく仲間たちに、心のうちを飲み込んで明るくそう声を上げる。そして休むことなく体を動かす。花びらのオーラを降らせるも、仲間たちはまっすぐにジエストルの下へと突っ込んでいく。
「……負けない」
 不安を堪えて、萌花は誰にも聞えないように呟いた。それだけ、敵の攻撃はすさまじかった。
「往生際の、悪いことだ……!」
「それは、お互い様ね。そして、それはお互いに強みですよ」
 ジエストルのはき捨てるような声に、アリエータは口の端をゆがめて笑う。
「庇っていただき、ありがとうございます。……私、恩は忘れません。……恨みも忘れませんが。だから」
 アームドフォートの砲身を、グラビティ・チェインの光に包み光剣と為す。ものすごい速度で脳内に繰り広げられる演算式の結果を的確な動作で彼女は実行に移す。すなわち美しい軌跡をもってして、その竜の体へと剣を叩き込んだ。
「参ります。絶対に……許しはしません」
「……は、気にするな。仕事だ」
「あら。仕事には敬意を表すべきでしょう?」
 真幸との声音だけは軽く。剣はジエストルの胸を貫こうとして、
「……っ!」
 ジエストルが、動いた。とっさに竜は頭を下げる。狙っていたのは胸だった。しかしタイミングがよかったか悪かったか。その右目に剣が激突する。
「……何と、してでも。儀式を止めるわけには、行かぬ」
 わずかでも。胸に当たる可能性を排除しようと。目から血を流しながらもジエストルはアリエータの顔を睨みつけた。
「それでも、邪魔させてもらうぜ、コッチも文字通り『必死』なんでな!」
 その後にランドルフが鋼の鬼と化したオウガメタルを身に纏い、続けるように拳を叩き込んだ。おぉぉ、と吼える様な悲鳴を上げる竜に、その腕は緩まない。
「そうね。そういうのは、嫌いじゃないけれど……。ここで、折れるわけにはいかないわ」
 アリエータもその視線を受けて、好戦的な色を瞳に覗かせてそういった。
「……楽しそう、ですね。僕も仲間に入れてくださいよ」
 カルナが軽口を叩きながら言った。言うと同時に背後に回りこもうと駆ける。
「させるか……!」
 ジエストルが再び爪を振るった。巨体を想像以上の速さで回転させて背後に向かうカルナへと走らせる。
「それは、こちらの台詞だ」
 しかし同時に真幸も回り込んでいた。その爪が真幸の体を抉る。
「ぐ、……っ」
「……っ、あたしが!」
「いい。もう必要ない……っ」
 萌花を片手で制して真幸はジエストルのその爪を掴む。触れるだけでその手にも傷がついていく。それでも、
「頼んだぞ……」
「そうですね。勿論……」
「この程度で……通ると思うな!」
 真幸の影からカルナが拳を叩き込もうとする。それすらも見据えてジエストルは腕を払った。真幸の体が爪から外れて吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。そしてそのままカルナのこともなぎ払う。地面に叩きつけられ、からだのどこかが嫌な音を立てて砕けた。だがぎりぎりのところでカルナは踏みとどまりながら、
「……うん。通ると思ってません」
 それすらも、二人の計算内だった。
「この白銀の拳を見よ! 畏れよ! そして砕け散れえッ!!」
 ランドルフが純粋な攻撃エネルギーとして形成する。そして咆哮と共に音波衝撃を纏わせ威力を大幅に増幅させたそれを両の拳で殴りつけた。
 ジエストルが声にならない叫び声をあげる。それと同時に再び彼の背中が裂けた。彼らの攻撃は確実にジエストルの命を削り、そして儀式もまた同時にその力を削っていく。
「もう、後……」
 すこし。とアリエータが言いかけた。そのとき、
「きゃ……!?」
 ひときわ強く背後の光が輝いた。
「お、オォォォォォォぉぉ!」
 それで。今度こそはっきりと。ジエストルは叫んだ。その声には歓喜の色が含まれていることをいち早くアリエータは察知した。即座に光の剣を構える。今ならまだ間に合うかと走りこむ。
「あぶないです!」
 あわせるようにレミリアが走りこんだ。歓喜に震えながらもジエストルは確実にその姿を捉えていた。アリエータがは肉薄するその一瞬前、爪が彼女の胸を襲う。負けじとレミリアはその前に割り込んだ。
「く……。うう。でも、私たちも、負けるわけにはいきませんから……!」
 爪はレミリアの右胸辺りをかすった。それだけで肉が裂けて血が吹き出した。口ではそういいながらも、体力は既に限界だった。血まみれの体で大地に膝をつく。アリエータが剣を握りこんで全てを覚悟した目でその姿を見上げ……、
「穿て、幻魔の剣よ」
 不可視の魔剣が、ジエストルの背後から放たれた。それは首の付け根辺りを貫通する。高密度な魔力の塊である一撃は固い竜の皮を裂き、そして致命傷を与えた。
「――」
 ジエストルは振り返る。カルナが静かに彼の目を見ていた。光り輝く柱の前で、一瞬の静寂があった。
 一歩。踏み出す。まだ動ける。まだ……、
「テメエに、テメエらに『終わり』をくれてやる! 砕けぇッ! シルヴァリオン!!」
 しかしランドルフの拳がその身を捉えた。ジエストルは体制を崩して倒れた。そして……、
「儀式は……止められませんでしたね。でも、あなたの目論見は必ず潰します」
「は。出来るものなら……」
 アリエータの呟きに、ジエストルの言葉は続かなかった。彼女自身の光の剣が、その竜の首に止めを刺したのだ。
 首が落ち、轟音と共にその体が倒れる。
「止めるよ。……何度でも。何度だって、止めてやるし。絶対」
 口惜しげに、萌花が言った。光の柱は消えずに天へと伸びていた。そして……、
「――!」
 まばゆい光は天をも貫かんと伸び、弾けた。


 天から光の雨が降り注ぐ。城ヶ島を横断するように落ちてくる。そして……。
 光が消えた後。次に空を覆ったのは、今までに無い魔竜の群れであった。
「……冗談のような、話ですね。どこからでしょうか」
 こんなときでも冷静にカルナが言うと、萌花が顔を上げて、
「島の中央! どんどんドラゴンが出現してるよ! これ、大丈夫かな……! いや、あたしたちもぜんっぜん大丈夫じゃないんだけど、みんな……」
 比較的余力があった萌花が、言いかけて。そして飲み込んで。
「……」
 苦悩する。撤退するみんなを支援したい。けれども癒し手としてはどう口に出せばいいのか。うちもぼろぼろで、壊滅寸前で。……でも、
「アリエータ姉様、萌花姉様っ、ご無事ですかっ?」
「華さん!?」
 泣きそうになる。その直前に声がかかって萌花も思わず顔を上げた。
 『獄混死龍ノゥテウーム』を抑えてくれていた仲間たちが、駆けつけてきたのであった。
「……中央が落ちるのは、より早いだろうな」
 情報交換の後、天を仰いでジゼルがぽつりといった。ランドルフが。
「そうだな。だが……」
 言いながら、仲間たちの顔を見る。お互いが無事ではないことは一目でわかる。けれどもその懐かしい声に、
「助けに……行けないかな。少しでも足止めできたら……」
 勿論自分たちの安全も優先したいが、仲間たちの安全も優先したいと萌花がぽつんと呟いた。
「で、でも、」
 フィーがためらうように言う。行きたくて。いけなくて。その目が揺れていた。
「では、何人かが負傷者を連れて撤退して、残りは援護にいく、でどうでしょう。勿論、危なくなったらすぐに引き返して」
 カルナの提案に、反対意見は無かった。
「ん……。わかった。じゃあ、ちょっと待って。あたしが無敵にかわいくしてあげる☆」
 萌花が回復をかけていく。
「だからね、だから……みんなで帰ってこよ」
 ぽつ、と、言った萌花に、仲間たちは笑って頷いた。
 余力があるものたちは中央を目指す。魔竜の群れを多少なりともひきつけて時間を稼ぐ。ささやかながらもそれが力になればと願って。
 しかしこれもまた始まりに過ぎないと。ソラを埋める魔竜たちは、言葉も無く語っていた……。

作者:ふじもりみきや 重傷:ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827) レミリア・インタルジア(咲き誇る一輪の蒼薔薇・e22518) 岡崎・真幸(花想鳥・e30330) 野々宮・くるる(紅葉舞・e38038) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年1月11日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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