巫女肌を狙う闇

作者:幾夜緋琉

●巫女肌を狙う闇
 東京都港区に殿を構えし、とある神社。
 正面の86段の石段は、空高くに続く天空の階段が如く連なり、出世の階段とも呼ばれる、ご利益のありそうな階段。
 ……そんな階段を上った先の神社境内では、正月という日がら、多くの参拝客達で賑わい、新たなる年に思いを馳せる。
 そして、そんな参拝客達に笑顔でお神籤やお守りを授けている、バイトの巫女さん達。
 ……巫女装束に身を包んだ下、緋袴の脇からちらりと見える肌、白衣から覗くうなじ等。
 勿論、性的な目線で見ている人はいない筈。
 しかし……時刻も夕方の頃となり、時刻も夕方頃となると……巫女さん達も一息をつき、社務所内で着替えたりし始めている。
『……グフゥ……』
 そんな社務所内の着替え部屋に、不浄な煩悩と共に、時空回廊から渡ってきたのは……オーク。
『え……キャアアア!!』
 気付いた一人の女性が悲鳴を上げるも、時空回廊から次から次へと姿を現すオーク共。
 そして、彼らは着替え中で、足がもつれた巫女さん達を、罰当たりに凌辱し始めるのであった。
「ケルベロスの皆さん、年明け早々、集まって頂き申し訳ありません」
 と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロス達に一礼しつつ。
「……この正月という時を利用し、不浄なオーク達が神社を襲うという事件が予知されたのです」
 と、地図からその神社を指さしながら、綾辻・翡翠(戦銃士・e56530)に視線を配す。
 東京都のど真ん中に存在するその神社、時刻は17時頃。
「丁度社務所も年越しのお勤めが終わる頃、巫女さん達が着替えている社務所内の部屋に時空回廊を繋げ、凌辱しようという魂胆の様です」
「着替えている巫女さん達は14人。一方、姿を現したオークは20人程と、数の面ではオークの方が多い様です……しかし、先に巫女さん達に告げて逃がす、という事は出来ません」
「オーク達は、襲える女性がいるかどうかを察知出来るようで、襲える女性がいないと分かると、別の所に時空回廊を繋げてしまいます。そうなれば、むしろ被害は大きくなってしまう事でしょう……ですから、オークが現れてから、巫女さん達を落ち着かせた上で、その場から避難させる、という事が必要になります」
 更にセリカは続ける。
「巫女さん達の着替えている部屋は、社務所内の大部屋の一つです。いつもは説法会などで使われる部屋の様で、30人位までが適正人数と言える部屋です」
「幸い、出入り口は掛け軸のある奥側を除き、全方位に襖があり、そこから逃げる事は可能です。ただオークは、掛け軸とは反対側に出現し、女性達を掛け軸の方へと追い込む様にしてくる様なので、実質逃げれる方向は左右のどちらか、という事になるでしょう」
「女性達は丁度着替えていた所の様ですので、急いで苦そうとすると、袴などに足が引っかかって、逆に時間が掛かる結果となりかねません。巫女さん達を落ち着かせつつ、オークの侵攻を食い止め、逃がした上で徹底的に撃破……という事になるでしょう」
「勿論オークは、その汚らしい触手で巫女さんを始め、女性陣に襲いかかる事と思います。手足を拘束し、集団で凌辱するタイプの様で、チームワークを取れる知能はある様なので、その辺りには注意する様にして下さい」
 そして、最後にセリカが。
「年の初めから、この様な罰当たりなことをするオーク達を決して許す事等出来ません。ケルベロスの皆さん……一匹残らず、仕留めてきて頂ける様、御願いします」
 と、再び一礼するのであった。


参加者
アリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659)
バジル・ハーバルガーデン(薔薇庭園の守り人・e05462)
天城・千歳(天城型巡洋戦艦・e20326)
天司・桜子(桜花絢爛・e20368)
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)
綾辻・翡翠(戦銃士・e56530)
鹿之戸・九十九(快楽の落とし子・e72629)
旗楽・嘉内(魔導鎧装騎兵・e72630)

■リプレイ

●出世の影に
 東京都港区の、とある神社。
 正面に聳えし86段の石段は、空高くへと続いており、天空の階段の如く。
 そしてそれは、出世の階段とも呼ばれていた。
 その謂われは、寛永十一年から続くという……つまり、400年近く前に遡るという、由緒正しき急階段。
 その階段を上り、23区内の一番の標高にある神社へ初詣する人達……そして、その対応に追われる、アルバイトの巫女さん達。
 ……そんな巫女さん達の柔肌を侵さんと、姿を現わすはオーク。
「うーん、巫女さんか。オークは女であればシチュエーションに拘らないと考えていたんだけど、間違いだったかな?」
 と、鹿之戸・九十九(快楽の落とし子・e72629)がが肩をすくめると、バジル・ハーバルガーデン(薔薇庭園の守り人・e05462)と、綾辻・翡翠(戦銃士・e56530)が。
「今度のオークの狙いは巫女さんですか。オークは女性とあらば見境無しに襲ってくるのですね……」
「うん、そうだね……まぁオークの本能に変わりはないみたいだけど。でもボクが危惧していた事件が本当に起こるなんてね」
 と、幾分申し訳なさそうな翡翠。
 もちろん、これは翡翠が悪い訳ではないのだが……何にせよ、オークのこの行為、許す訳には行かない。
 天城・千歳(天城型巡洋戦艦・e20326)とアリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659)、天司・桜子(桜花絢爛・e20368)に七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)らも更に。
「全く、新年早々変態オークですか……巫女さんを狙うという……」
「そうだね。久しぶりの依頼が新年早々不届き者の成敗とはね……」
「正月と言うのに、オークは寒い中でも元気に活動しているんだねー。寒いんだから、ゆっくりと冬眠しておいて欲しいけど」
「全くです。神聖なる神社で、そんな淫らな事はさせられません。必ずオークたちを殲滅しましょう」
「そうだね。正月だからと言って、悠長なことは言ってられないね。オークの脅威がやってくるなら、撥ね除けるのみだよ」
「ええ……不浄の魂は、さっさと片付けてしまいましょう」
 と、秘めた怒りと共に呟く。
 そして、旗楽・嘉内(魔導鎧装騎兵・e72630)が。
「まぁ、巫女さん達に罪は無いですし、彼女達の心にトラウマを植え付けない様に未然に対処しないといけませんね……事前に避難させる事が可能なら、もっと楽なのでしょうが……」
 嘉内の言う通り、事前に避難させれれば楽。
 しかしオークは、女性達の気配を感じ取り、目的となる場所に居なければ別の場所に出現してしまう訳で……。
「本当。ま、オークの欲望のままにさせはしないよ。という訳で、千歳さん、宜しく頼むね」
「ええ。最近まで住み込みの巫女として努めさせて頂きましたので、その経験を元にさせて頂きますわ」
 微笑む千歳も、巫女服に身を包んでおり……彼女は先行し、神社の社務所へ。
 そして他のケルベロス達は、少し時間を空けた後にまだまだ忙しい神社に続く、出世の階段を上がって行くのであった。

●柔肌の侵略者
 そして、先行した千歳は、巫女経験者のバイトとして先行し、潜入。
 元々経験があるが故、千歳の仕事ぶりは、巫女さんとして素晴らしい仕事ぶり。
 なので……後から入ってきたと言うのに、周りのバイトの巫女さん達の信頼を直ぐに得る事になる。
 そして、途中の休憩時間で、ちょっと疲れてきたバイトの子へ軽く肩を叩きながら。
「お疲れ様……大丈夫、疲れてないですか?」
『あ……えっと、ちょっと』
「ふふ……長時間ですものね。でも、あともうひと頑張りですよ。ああ、もし宜しければ、仕事が終わった後に懇親会を兼ねて、皆で食事にでも行きませんか? ちょっと早上がりしてもいい、って聞いたら、問題無いって事でしたから」
『え、いいんですか! 勿論です、それじゃ皆にも伝えてきますね!』
 と嬉しそうに、言われたバイトの巫女さんは、自分だけでなく、他のバイト仲間達も懇親会へ誘う。
 その一方で嘉内は、隣人力とプラチナチケットの効果をフル活用し、神社の経理担当者の元へと赴く。
 ……ちょっと偉い立場を装い、バイト代の受け渡しをちょっと早く渡せるように指示を与え、準備して貰う。
 残るケルベロス達は、隠密気流などを纏った上で、巫女さん達が着替える部屋の近くで待機する。
 時は経過し……16時半頃。
 多少参詣客の方が落ち着き始め、バイトの人達も少しずつ、早上がりに着替え始める頃。
 ……その着替え部屋こそ、社務所内の大部屋。
 勿論、男子禁制な訳で……男性陣四人は、決して着替えを覗かない様注意。
 そして女性陣が近くで待ち伏せ、千歳も着替えながら、オークの気配を常にチェックする。
 ……一人、また一人と大部屋に着替えに入ってきて、ワイワイと騒いだりしながら……緋袴を脱いで、白衣を脱ぐ……。
 そんな巫女さん達の着替え現場に、そっと近づいてくる……オーク。
 襖の一角に時空回廊を開き……ポトン、と一匹。
『え……キャアアアアア!!』
 と悲鳴を上げる巫女さん達。
 そんな巫女さん達を守る様に、千歳が立ち塞がって。
「みんな、落ち着いて、部屋の両脇からなら直ぐに外に出られるわ!」
 と、強い口調で指示。
 その声を聞いて、一気に桜子、綴、翡翠が左右の襖をパタン、と開く。
「みんな、袴が足に引っかからない様に、注意して逃げてね。大丈夫だよ、落ち着いて!」
「大丈夫、私たちはケルベロスですよ。貴女達の安全は必ず保障します!」
「桜子達はケルベロスだよ! 皆、安心して逃げてね!」
 と、女性ケルベロス達が力強く声を掛け、大部屋から逃げる様に誘導しつつ……中に潜入、オークとの間に立ち塞がっていく。
 ……そんなケルベロス達の動きに、オークは。
『クソ……邪魔シヤガッテ』
『シャラクセエ。コイツラヲオカセバイイ!!』
『ソレガイイナ!! ヨシ、イコウゼ!!』
 と下品に笑い合いながら、触手を次々と伸ばし始めるオーク。
 ……そんなオークの触手を、更にインターセプトするは、アリア、バジル、九十九に嘉内。
 伸びた触手を一刀両断に斬り伏せた上で、逃げ遅れた巫女さんに手を差し伸べ。
「オークたちは僕たちが何とかしますから、皆さん逃げて下さい!」
「大丈夫、皆落ち着いて。奥の方に逃げれば大丈夫。ボクが守ってあげる」
 九十九がラブフェロモンで巫女さん達を魅了し、避難誘導。
 ……そして、オーク達が次々と時空回廊からこぼれ落ち、大部屋に20匹が集結。
「さあ、早速だけど仕掛けるよ。穿て、雷よ」
 『ヴォルトアロー』を、オークの群れに撃ち抜くアリア。
 更に嘉内が。
「いいか貴様等! 巫女を触手で凌辱なんてしていいのは薄い本の中だけだ! それを現実でやろうなどうらやまし……いや違った! 許されん! そんなことをする汚物は消毒だ!!」
 と己の欲望混じりの叫びで、ドラゴニックミラージュで攻撃すると、更に九十九もフォートレスキャノンで、一匹に集中砲火。
 そして、バジルが。
「青き薔薇よ、その神秘なる茨よ、辺りを取り巻き敵を拘束せよ」
 と『青薔薇の棘』で、敵陣にパラライズ効果を更に付与していく。
 そして、対するオークの、更なる反攻。
 女性陣に向けて、次々と触手を飛ばし、手足に巻き付けていくが……力尽くで振りほどく。
 でも、上手く振りほどけない所には、翡翠が。
「魔法の木の葉よ、仲間に纏い、その身を守れ!」
 と翡翠がステルスリーフを飛ばし、回復とキュアで解放。
 そして、拘束が解かれた後で、千歳、桜子、綴のディフェンダー陣の攻撃開始。
 周囲にもう巫女さん達が居ない事を確認した上で。
「大丈夫そうですね。誰かをもう巻き込む心配もありません。全力で行きますよ!」
 と千歳の宣言に頷き。
「うん! 桜の花々よ、紅き炎となりて、かの者を焼き尽くせ!」
「こんな私でも、やれば出来るのです!」
 桜子の紅蓮桜と、綴の大器晩成撃。そして千歳も。
「照準よし! 全砲門斉射!!」
 『全門斉射!!』による一斉掃射で、敵の前衛、後衛含めて全体掃射。
 ……次々と千歳の射撃により、避けきれないオーク達の胸や頭に風穴が開く。
『ウグゥオオオ……!!』
 と、激しい苦痛に苦悶するオークの顔。
 ……でも、そんな顔に一切同情する事は無い。
 次の刻、アリアが旋刃脚にて一蹴すると、九十九のデスバイハンギング、嘉内のフォートレスキャノン。
 そしてバジルが。
「この蹴りを、見切れますか?」
 とスターゲイザーを仕掛け、そして千歳のフォートレスキャノン。
 流石にダメージが蓄積し、一体のオークが崩れ墜ちる。
 早々に崩れ墜ちた仲間の姿に、驚愕の表情を浮かべる。
 だが、その驚愕をしているオークへ更に。
「すばしっこい動き、封じてあげますよ!」
「それ、必殺のエネルギー光線だよ、焼豚にしてあげるよー!」
 と、スターゲイザーに、コアブラスター。
 更にまた一匹を消し炭へ。
 ……瞬く間に二匹仕留め、勢いは明らかにケルベロス達に向いている。
 そして、その後も次々とオークを仕留めていき……十数分で、20匹居たオークも、残るは後1匹。
『……ウウ……』
 周りを見て、唇を噛みしめるオーク。
 そんなオークの退路を完全に封鎖し。
「さてと……そろそろ終わりにしようか」
 と九十九の宣告。
 その宣告と共に放たれたフォートレスキャノンが、オークの目前で炸裂し……そして嘉内のドラゴニックミラージュも炸裂。
 そして……バジルが。
「このナイフを御覧なさい。貴方のトラウマを想起させてあげます!」
 と、惨劇の鏡像を放ち……最後のオークも、その惨劇の中、恐怖の表情と共に崩れ墜ちるのであった。

●新年の風に
 そして……どうにか全てのオークを討ち倒したケルベロス達。
「……終わりましたね。取りあえず皆さん、お疲れ様でした。巫女さんたちは無事に逃げられたんでしょうか? 後で、無事を確認しに行かないといけませんね」
 と、バジルが心配そうに首を傾げると、アリアは頷いて。
「そうだね。取りあえず、オークの壊した襖やら、畳やらに応急処置をしておかないと……興奮してて、落ち着いて話しも聞いてくれないかもしれないしね」
「ええ……では、手分けして、オークの痕跡潰しを早々に終わらせましょう」
 と、二人で頷き合う。
 そして、男性陣で以て、オークによって壊された箇所を一つ一つ修復していく。
 一方、女性陣は、巫女さん達が避難した所へと向かい……無事に終わったことを告げる。
 更に、巫女さん達がこれをトラウマに感じない様、優しい声で話しかけ、心を癒すように話しかけていく。
 ……最初は戸惑い、泣いていた様な女性達も、千歳、翡翠、桜子と綴らの優しい言葉により、次第に落ち着きを取り戻していく。
 そうして、部屋の後片付けも大方終わった後。
 避難していた巫女さん達も戻って来た後……感謝の言葉を伝えられる。
 そして……大きく17時を過ぎ、終夜営業も終了。
 お努めを終えた巫女さん達もは、千歳が約束した通りに、懇親会へ。
 そして訪れる参詣客の数も、かなり少なくなる中。
「みんな、お疲れ様! 折角神社に来たんだから、初詣……してってもいいよね?」
 と、翡翠の言葉に皆も頷いて。
「勿論。私も折角だし、ご一緒していいかな?」
「あ、僕もご一緒させて下さい」
 と、ケルベロス達は次々と手を上げる。
 そして、すっかり周囲が夕闇に包まれつつある頃……身を清め、手を合わせ……この新年という年、思い思いの気持ちを込めて、祈りを捧げるのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年1月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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