リザレクト・ジェネシス追撃戦~城壁を築くモノ

作者:なちゅい

●壁となり続ける拠点ダモクレス
 リザレクト・ジェネシス。
 ダモクレス五大巧の『東京湾マキナクロス』、エインヘリアル第二王女ハールの星霊甲冑オーディン創造、死神集団ネレイデスの『関東平野水没』……。
 それらのデウスエクス達の作戦に対し、ケルベロス達は全世界決戦体制(ケルベロス・ウォー)による決戦を挑み、勝利を収めた。
 ……しかし、依然として戦地には複数のデウスエクスが残り続けている。
 例えば、ダモクレスが画策した『終末機巧大戦』において、第二儀式場に配備されていた拠点ダモクレス、アースイーター・ブロークン。
 こいつは、戦争時に築地へと移動しており、城壁を築いて晴海埠頭要塞への接近を阻み続けている。
 もっとも、そこにいた五大巧の一体である『終末機巧』ラグナロクは倒れ、すでに晴海埠頭要塞はケルベロスが制圧に成功しているが……。
 ビル街を飲み込み続けて肥大化したこの敵は、強固な壁となって築地に鎮座し続けている。近づくだけで球状の分裂体が襲い掛かってくる為、生半可な戦力で撃破も難しい。
 防衛網すらまるで機能しない規格外の敵。ケルベロス達は早急に、この敵の完全撃破を目指すのである。

 ヘリポートを訪れたケルベロス達は、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)の元へと向かう。
「皆、来てくれてありがとう」
 彼女もケルベロスの姿を認め、表情を綻ばせる。
「『リザレクト・ジェネシス』はお疲れ様。勝利は喜ばしいけれど、まだ気を抜くことはできない状況だよ」
 まだ、戦場となった東京湾近辺には、多数のデウスエクスが残ったままとなっているのだ。
「今回、多数のチームによる追撃戦を行うことになったよ」
 この戦いで可能な限り敵を叩き、デウスエクスを撃破しておきたい。

 リーゼリットが示す討伐対象は、『終末機巧大戦』において第二儀式場に配備された拠点型ダモクレス、アースイーター・ブロークンだ。
 ビル街を飲み込み肥大化したこのスライム状の敵は先の戦争において、晴海埠頭要塞を守る為の壁として築地に配備された。
 以前のこいつとの戦いでは、体内にある儀式場へと向かうことが最優先だった為、突入を防ぐ壁を為したアースイーター・ブロークンに対して一点突破を行ったのみだった。
「今回も同様の戦略をとることになるよ」
 まず、この追撃戦においては、戦力を集めて確実に撃破する戦術を取る。
 参加メンバー達は、分裂体の妨害をかいくぐる形で本体へと接敵。
 体内突入阻止の為の外壁を展開する本体と交戦し、外壁を撃破する。
 直後、本体が怯んだタイミングで作った突入口から体内へと入り、素早く核を探し出してその撃破を目指す。核の撃破が主にメインチームの役割となるだろう。
「核に近づけば、危険を察した本体がまた猛攻撃を始めるはずだよ」
 核を撃破出来れば、アースイーター・ブロークンは分裂体ともどもその活動を止めてしまう。そうなれば、築地や晴海埠頭に巣食っていた他のダモクレス達も敗走を始めるはずだ。
 かなり苦しい戦いとなるはずだが、この巨大なスライム状の敵を撃破しなければ、この地に安寧は訪れない。
 状況説明を終えたリーゼリットは、参加を決めたケルベロス達を1人ずつ見詰める。
 その中には、少しでも助力をと参戦したユリア・フランチェスカ(慈愛の癒し手・en0009)の姿もあった。
「リザレクト・ジェネシスの勝利をより完璧なものにする為にも、皆の力を貸して欲しい」
 それぞれ、決意の言葉を告げたケルベロス達を乗せ、リーゼリットのヘリオンは東京湾へと向かう……。


参加者
不知火・梓(酔虎・e00528)
四乃森・沙雪(陰陽師・e00645)
山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)
北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)
魅黒・神影(闇夜を駆ける星に願いを・e39259)
園城寺・藍励(深淵の闇と約束の光の猫・e39538)

■リプレイ

●見上げんばかりの巨大な壁
 東京都中央区。
 そこには今、巨大なダモクレスが壁として築地一帯を占拠していた。
「戦争ん時も思ったが、近くで見ると一層デカく思えんなぁ」
 ややくたびれた中年男性といった容姿の不知火・梓(酔虎・e00528)はダモクレスには見えぬスライム状の敵に近づきつつ、感想を口にする。
「本来あるべき姿から切り離されたがために、こんな状態になっちゃったのかな」
 猫のウェアライダーである園城寺・藍励(深淵の闇と約束の光の猫・e39538)がちらりと見たのは、魅黒・神影(闇夜を駆ける星に願いを・e39259)。
「まだ生きてるみたいだね」
 彼女は液体金属レプリカントであるらしいが、目の前のダモクレス、アースイーター・ブロークンは彼女の……。
「ほんと……ぶっ壊れてても、なかなかしぶといや」
 その巨大な体躯を見据え、次々とケルベロス達が前に出て。
「これが最後の仕上げって事だよね……。他のみんな同様、頑張って終わらせようね!」
 他戦場でも、交戦が始まるはず。細身のボクッ娘、山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918)は拳に力を籠めて。
「これ以上、侵略者にみんなで護った築地の大地を好きにさせません」
「東京湾は、俺達が守る!」
 口元に短く刈り揃えた髭を生やすイッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)が力を入れて告げると、人々の笑顔を守る為にと、レプリカントかと思わせる容姿をした北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)もまた力強く叫ぶ。
「核の破壊に気合入れてくか」
 梓がくわえていた長楊枝を吐き捨てると、ややぼんやりした様子のリーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)が小さく頷いて音を立てずに相手へと駆けていく。
「全員無事で帰ることも忘れずに、ね」
「もちろんです」
 涼子の言葉にイッパイアッテナが応じ、気合を入れていた。
 後方からは、多数のサポーター達も駆け付けており、支援に当たってくれる。
「……さ、踊ろうか、ぶっ壊れたボク。アースイーター、起動」
 神影の声に反応してか、敵も分裂体を飛ばしてケルベロス達を迎撃し始めたのだった。

●外壁の撃破を!
 邪魔な分裂体を蹴散らしながら、ケルベロスが近づくはダモクレス、アースイーター・ブロークンの外壁。
 このダモクレスの撃破には体内への侵入が必須だが、それを防ごうと守りを固める敵の防御を砕かねばならない。
 この場を死守する為、そして己を守る為に、本体が液体金属のムチをしならせて叩きつけてくる。
 それに対し、イッパイアッテナが最愛の相棒であるミミック『相箱のザラキ』やサポーターと共に盾となり、ドローンを展開しつつ仲間達の庇いへと当たっていく。
「まずは、これだなぁ」
 外壁へは梓が斬霊刀で切りかかり、相手の反応を窺う。
「続くよ」
 さらに刃を切り上げる梓の横、藍励が呪詛をのせた妖刀で斬撃を見舞う。
「デウスエクスってだけでも放ってはおけないのに、この大きさだからね」
 確かに傷はついているが、藍励が効果的なダメージになっていない気がしたのはその巨体ゆえだろう。
 また、群がってくる分裂体も厄介なところ。
 サポーターのコールは前線のイッパイアッテナを助ける為、火力役となる分裂体へと蹴りかかり、神影へと納得のいく終わりをつけるよう呼びかけた。
 しなるムチに飛んでくる粘液弾はケルベロス達をしたたかに打ち付け、さらに撃ち付けてくる。
 巫術服を着用する四乃森・沙雪(陰陽師・e00645)は鎖を這わせ、描いた魔法陣で前衛陣の守りを固めていく。
 しっかり守りを固め、仲間を支える沙雪に支援を頼まれたユリアも翼を広げて極光を放ち、メンバー達の傷を癒していたようだ。

 アースイーター・ブロークンが展開する外壁に、ケルベロス達の攻撃が次々と繰り出される。
 敵の攻勢は激しい。無尽蔵に現れる分裂体がメンバー達の攻撃の手を止めてしまう。
 前線の盾となるライドキャリバー、こがらす丸が外壁目掛けて激しくスピンを仕掛けると、その主である計都が外壁目掛けて強く蹴りかかる。
 さらに、身軽さを活かしたリーナが飛び込み、素早く刀で切りかかった。
 かなり、傷が増えてきていた外壁周囲に敵は分裂体を集めて力を集中し、抵抗を強める。
 まだ、ここは前哨戦。御業を操る神影は完全に狂ってしまった目の前の相手を鷲掴みにしようとするが、すり抜けてからしっかりと粘液弾で反撃してきた。
「………………!」
 相手が攻撃に動いた隙をつき、接近戦で仕掛ける涼子が一気に拳と蹴りを打ちこんでいく。
 すると、ダメージが重なる外壁へと遂に穴が穿たれ、同時にダモクレスが態勢を崩す。
 依然として分裂体は襲ってきてはいたが、本体は大きく怯んで動きを止めてしまっている。
「さあ……、行こう!」
 涼子の声に応じ、メンバー達はその体内へと突入していく。

●核はどこだ?
 液体金属で構成され、多数のビル群を飲み込んだアースイーター・ブロークンの体内をケルベロス達は歩く。
 頭上には飲み込んだモノが多数浮かび上がってはいるが、地面近くは普通に歩くことができるし、息もできる。
「まるで、巨大な内臓の中だ……ね」
 ただ、敵の腹の中へと意気揚々と飛び込んだ涼子は、その異様さを感じていたようだ。
 道は変形こそしていたが、ある程度前回突入時と同じ道を残していた。
 先導するのは神影。そして、事前に彼女の話から地図を作成した地図を手にする計都だ。リーナも前回侵入時のマップを重ねて情報を共有する。
 探索ルートでは、リーナが蛍光チョークで所々に印をつけていく。
 さらに、アリアドネの糸を使う藍励が突入経験のあるサポーターの戀に力を借り、途中の三叉路から儀式場への道を避けて折れることとなる。
「こちらです!」
 イッパイアッテナも地底に住むドワーフ、ダンジョンに住むミミックというコンビで最大限、探索力を発揮して見せていた。
 また、計都はユリアのウォンテッドによる助けも借り、先へと進む。
 ただ、敵は活動を休止しているが、時折少数の分裂体が飛び掛かってきていた。本能的に、外敵を駆除しようとしているのだろう。
 これをケルベロス一行は駆除しつつ、沙雪を始めとして皆が隠密気流を働かせ、できる限り気配を消して行動する。
 分裂体群の強襲を警戒し、夜目を働かせるイッパイアッテナがやや先行する形で斥候に当たっており、藍励も周囲に気を配りつつ先へと進む。
「警戒するに越したこたぁあるめぇ」
 梓もまた警戒を厳としていると、進行方向に分裂体の集団が。
 飛び掛かり、散弾を発する敵の攻撃をとイッパイアッテナが受け止める間に、メンバーはすぐさま攻撃態勢を整えて。
「速攻で終わらせるぜ」
「もたついているわけにもいかないですしね」
 救援を呼ばれぬようにと梓は抜いた刃で近づく個体から切り裂き、沙雪もここは速攻で終わらせるべく、神咒を飛ばす。
「阿梨、那梨、莵那梨、阿那盧、那履、狗那履……」
 それらを受けて、分裂体が弾け飛ぶ。
 泰地が天より刀剣を解き放ち、ディが巨大光弾を発して敵を殲滅していく。
 サポーターに負けじと、藍励も妖刀を一閃させる。
 消耗を抑えたいリーナも止む無く進路上の敵のみ切り伏せ、開けた場所へと踏み込む。
 所々にも赤い球体が浮いてはいたが、ここにあったのは巨大な球体。
 それに、神影の所持するコアの断片がピクリと反応する。
 危機を察したアースイーター・ブロークンの体内が急激に蠢く。
 活動を再開した敵は外と同様に核の周囲をムチのように変形させ、さらに粘液弾を発して核へと近寄らせぬように妨害をしてくる。
「ここが正念場! 一気に行くよ!」
「貴方はここで終わらせる……」
 敵の攻撃が激しくなってきたことを受けて涼子が叫ぶと、リーナがポツリと相手に告げて飛びかかっていくのだった。

●決死の猛攻
 巨大に膨れ上がったアースイーター・ブロークンも、核にまで外敵の接近を許すまでに追い込まれている。
 それだけに集まる分裂体の数も多く、核の周囲からも攻撃させじと本体が変形させた液体金属がケルベロス達を襲う。
 本体からの攻撃をやり過ごしつつ、梓は接近して。
「斬り結ぶ 太刀の下こそ 地獄なれ 踏み込みゆかば 後は極楽、ってなぁ」
 外壁交戦時に梓は効きが良いグラビティは試しており、絶空斬をメインに攻撃を繰り出していく。
 計都はここでも、盾役を任せるライドキャリバーのこがらす丸に盾を任せる。
 激しくこがらす丸がスピンを仕掛けるタイミングで、計都は竜鎚より核に向けて砲弾を飛ばす。まずは相手の態勢を崩して、攻撃がうまく通るようしたいと彼は考えていたのだ。
「…………」
 分裂体を避け、リーナは前方へと跳んで奇襲をかける。
 日本刀の刃で描かれる孤は確実に敵の核を切りつけ、斬撃痕を残す。彼女はすぐさま伸びてくるムチに気づき、その場を離脱していく。
「何があっても身を粉にして……!」
 イッパイアッテナは仲間を、特に、神影、藍励、涼子を優先してカバーに当たる。
 ――神影さん命を大事に、沙雪さん柔和で快活、藍励さん素直……。
 向かい来る分裂体とバラ撒かれる粘液弾をミミック『相箱のザラキ』と共に、イッパイアッテナはしっかりと遮る。
 ――梓さん正直で聡明、涼子さん元気で強勢、リーナさんいい発想、悠乃さん気遣い屋さん……。
 救護の意気込みを漲らせ、彼はドローンと黄金の果実で仲間達の癒しに当たっていく。
 沙雪もまた、間断なく仕掛けてくるアースイーター・ブロークンに対する仲間の為、鎖による魔法陣と紙兵を展開させていた。
 視界には、分裂体と戦うシアの姿もあり、皆死力を尽くしている。沙雪もそれに応え、全力で支援に当たっていた。
 そして、イッパイアッテナが優先してカバーに当たる3人。
「軽く災害規模の被害もあり得る。それだけは避けないとね」
 前線メンバーが攻撃を受けてくれた直後に、藍励は飛び出して。
「仕掛けるよ!」
 妖刀を手に藍励が斬撃を核に見舞うと、飛び込む涼子が戦籠手でグラビティを込めた殴打を連続して打ち込む。
 そして、御業を使う神影が仕掛ける。
 多少、グラビティの編成に難もあったが、回復は仲間に任せて相手の動きを止めることを重視し、妖精靴から星型のオーラを飛ばして核の……アースイーターの動きを止めようとしていた。
 ――ここで必ず、終わらせる。
 自らの片割れとも言うべき存在を前に、神影はその身を投げ出すように攻めかかっていくのだった。

 目的は、アースイーター・ブロークンの核の破壊。
 端的に言えばそれだけなのだが、そう簡単にはいかない。
 まず、核が稼働し続ける限り、分裂達が無数に湧き出てしまう。
 液体金属が球体となったそれらは大きく変形し、ケルベロスの障害となる。
 大きく膨れ上がって相手を飲み込もうとしてくるそれらを、サポーター達が相手取ってくれていた。
 強固な盾となるコロッサスの横では、ドールィが積極的に分裂体へと肉弾戦を仕掛ける。
「デカブツ野郎が。今度こそブッ潰してやるぜ」
 ドールィの喧嘩殺法に続き、括が素早くバトルオーラの弾丸を発して支援攻撃を行う。
 回復支援に当たってくれるサポーターも多い。
 パトリックは地面に星座を描き、前線メンバーを包み込んで守護の力を強める。彼の箱竜ティターニアも属性注入でメインに戦うメンバーの傷を癒してくれていたようだ。
 そんな支援の手があってなお、ダモクレスの猛攻は留まることを知らない。
 核には着実に、傷が増えてきている。
 アースイーター・ブロークンが何を思って抵抗しているのかは、神影ですらも完全に理解できない。
 しかしながら敵はこの場で存在感を示し、さらに肥大化しようとしている。もはや、完全に壊れてしまった存在だ。
 その上で、防衛本能が極限にまで高まり、ケルベロスを排除しようとしてきている。
「だいぶ、氷が張ってきたみたいなだぁ」
 核の状態を見て立ち回りを変えた梓は不規則正しい歩法で、この場を動く。
 敵がどこでケルベロス達を知覚、視認しているのかはわからぬが、こちらに向いた相手の意識に空白の一時があれば、梓にとってしめたもの。
「お代は見てのお帰りよ、ってなぁ」
 斬霊刀『Gelegenheit』を手に、巨大な核目掛けて梓は一筋の光を放ち、斬撃を見舞う。
 藍励もまた、己の妖刀『天狂瀾』で刻んだ傷口から汚染した毒が核に回っていたのを見て、黒と白の入り乱れる光の尾を引きながら正八面体を描く。
「時解空封、陸之型『菱零』」
 対象が巨大なこともあり、必然的に正八面体も巨大化する。
(「人々が平和に暮らす場所。希望の未来の為に、脅かすような真似は絶対させない」)
 藍励はそんな強い思いを抱き、その内部に氷河期を思わせる極寒の環境を作り出して核をさらに凍り付かせていく。
 身の危険が高まり、アースイーター・ブロークンは分裂体をこの場へと集結させる。
 同時に、敵は滅茶苦茶に弾丸を発射し、広範囲にムチで殴りかかってくる。意地でも核を守ろうとしているのだろう。
 激しさを増す敵の攻撃に、イッパイアッテナは敵の飲み込みを受け、自らの体力の減少を察して気力を自らへと撃つ。
 彼のミミック『相箱のザラキ』は多少傷を負えども、積極的にエクトプラズムで作り出した武器で核へと切りかかり、殴りつけ、発砲していく。
 相手の攻撃の激しさを考えれば、回復の手を止めるわけにはいかない。
 沙雪は攻撃のタイミングをはかりながらも、液体金属に飲み込まれかけた仲間の傷を塞ぐべく、御業の鎧で包み込む。
 傍らには、翼を広げてオーロラの光を放つユリア。
 そして、悠乃やウメもまた回復支援に動いてくれており、倒れる者はこれまで誰一人として皆無だ。
 ピンチになれば、暴走という手段も頭の片隅に置いていた計都。
 しかしながら、皆が力の限り戦っており、サポーター達の助力も大きい。疲弊も大きいが、このまま奮闘を続ければ押し切れるかもしれない。
 ライドキャリバーのこがらす丸が大きく燃え上がって特攻し、核を僅かに燃え上がらせると、主の計都は戻ってきたこがらす丸を変形させていく。
 己の右足にライドキャリバーを合体させた計都はグラビティ・チェインを増幅させ、見上げるほどの大きさをした核目掛けて飛び掛かっていった。
「これが! 俺達の精一杯だッ!」
 鴉の脚を象った右足で、計都はそのまま核を強く蹴りつけていく。
 核が傷ついたことで増殖して己の維持に努める敵だが、核の動きが徐々に不安定になってきている。
「目覚めよ力……」
 とどめは近いと察したリーナは、自らの奥底に眠る暴走時の力を僅かの間だけ呼び起こす。
「わたしの刃は全てを断ち、全てに死を与え討ち滅ぼす……!」
 強引にその力を引き出した彼女は全ての魔力とグラビティを使い、手に黒光りする一振りの刃と背に4対の漆黒の翼を生成する。
 翼によって極限にまで加速したリーナは核へと飛び込み、魔力の刃を強く握りしめて。
「さぁ、終わりの刻だよ……」
 これまでにない大きな切り込みが核へと入り、切れ目から液体が零れ落ちる。
 同時に、アースイーター・ブロークンの体が大きく揺れ動き始めた。間違いなく、その崩壊の時は近い。
 それだけに、敵も最後の悪あがきとケルベロス達を消化しようと周囲から液体をぶちまけてくる。
 それを避けた涼子は躍りかかって。
「これで……終わり……!」
 流星の蹴りが核へと炸裂すると、さらに敵が苦しみ悶える。
 分裂体の挙動もおかしくなってきていたのを横目に、神影が呟く。
「『アースイーター』起動」
 分裂、増殖、変形。それらの機能を全力稼働させることで、自らの体に砲塔を作り出す。
「システム、オールグリーン。試製電磁誘導砲発射準備」
 その中心に高まる電圧。それは彼女自身を変形させるほどの弾頭だ。
「……発射」
 放たれる高エネルギーの奔流。
 空気の壁すら破る勢いで宙を駆け抜けた光がアースイーター・ブロークンの核を貫通する。
 それまで荒ぶっていたムチも粘液弾も、分裂体さえもピタリと動きを止める。
 そして、それらはどろりと地面に落下してしまった。
 核もまた震えるようにして崩壊を始め、徐々に己の液体金属内へとその身を溶かしてしまった。
「キミはボクが喰い尽くす。だから……安心して逝って」
 神影はその欠片を手にしながら、核が完全に消えていくのを見届けるのだった。

●達成感を胸に
 ここは敵、アースイーター・ブロークンの体内。
 核が破壊されれば、当然その巨躯は崩壊を始めることになる。
「お疲れ様! それじゃあ帰ろう、ね」
 疲れとこれ以上ない達成感を胸に、涼子が仲間へと呼びかけてから駆け出す。
 液体金属の中に閉じ込められてしまう前に。
 ケルベロス達は明るい表情を見せながら、予め藍励が張った糸をたどり、速やかにアースイーター・ブロークンの体内より脱出していくのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年1月11日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
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