超巨大手裏剣!?

作者:baron

 彼方から手裏剣が飛んで来た。
 遥か先だと言うのに、ノーマルサイズに見える。
 と言うことは……。
『斬!』
 7mサイズの手裏剣が家屋を分断する。
 そのまま近くの家を両断し、あるいはアパートに大きな傷をつける。
 何度も攻撃すればアパートすら打ちこわし……。
『抹殺!』
 無数の手裏剣に分身すると、もっと大きなマンションや周囲のスーパーなどを一気に薙ぎ払ったのである。
 そして何処かへ消えてしまった。


「先の大戦末期にオラトリオにより封印された巨大ロボ型ダモクレスが、復活して暴れだすという予知があった」
 ザイフリート王子が地図を手に説明を始めた。
「復活したばかりの巨大ロボ型ダモクレスは、グラビティ・チェインが枯渇している為、戦闘力が大きく低下している。だが、放っておけば、人が多くいる場所へと移動し、多くの人間を殺戮して、グラビティ・チェインを補給してしまうだろう」
 そういって避難勧告は既に終わっており、街を足場に戦えると告げた。
「敵の姿は巨大な手裏剣の形状をしている。あるいは円盤型と言っても良いが」
「八方手裏剣? いまどき珍しいな」
「それも7mとか……むしろアニメだな」
 あまりにも巨大過ぎてm、むしろ武器に見えない。
 どちらかといえばUFOといっても遜色ないくらいだ。
「攻撃方法は体当たり、分身しての攻撃、烈風を巻き起こしての攻撃だ」
「そこは普通なんだナ」
「いや、むしろビーム撃てば普通なんじゃないか? ダモクレスだし」
 そんな事を口にしながら、ケルベロス達は頷いた。
 そして全力攻撃が可能なことや、7分の時間制限があることを確認する。
「巨大ロボ型ダモクレスが回収されれば、ダモクレスの戦力強化を許すことになってしまう。そんなことはさせられない。だが精鋭であるケルベロスならば問題あるまい。任せたぞ」
「おう!」
 王子が出発の準備に向かう中、ケルベロス達は相談を始めたのである。


参加者
シェミア・アトック(悪夢の刈り手・e00237)
アップル・ウィナー(キューティーバニー・e04569)
ルティアーナ・アキツモリ(秋津守之神薙・e05342)
八久弦・紫々彦(雪映しの雅客・e40443)
ユノー・ソスピタ(守護者・e44852)
終夜・帷(忍天狗・e46162)
リゼア・ライナ(雪の音色・e64875)
 

■リプレイ


「こんな大型武器のダモクレスまで存在するんだ……遠近感狂いそう……」
 シェミア・アトック(悪夢の刈り手・e00237)は彼方に見えるダモクレスに声を上げた。
 かなりの距離があるのに、普通のサイズに見える。
 つまり相当な大きさと言うことだ。
「本当に超巨大な手裏剣に見えるな。全長7メートルほどだったか?」
 ユノー・ソスピタ(守護者・e44852)は段々と大きくなる姿にゴクリと息を呑んだ。
 この距離でコレということは、間近に迫ればどうなる事か。
「手裏剣を使って戦うことは多いが、まさか手裏剣と戦う日が来るとは思わなかった」
「なぜ手裏剣なのかというツッコミはありマスガ、的が大きいのはありがたいデスネ」
 終夜・帷(忍天狗・e46162)は溜息をついて何とかしようと告げ、アップル・ウィナー(キューティーバニー・e04569)は苦笑気味ながら頷いた。
 ここで驚いても何にも鳴らない。
「ここは目には目を、手裏剣には手裏剣を……で行こうか」
 帷は最後にそう呟き、迎撃位置に向かうにつれ沈黙し始めた。

 そしてだれも待望しない存在が目の前に現れる。
 呼ばなくても出現し、謎めいていてもいなくても脅威なのは確かだ。
 風よりも早い翼を持つ……というか、そのものの。
「本当に……空飛ぶ円盤じゃな。ダモクレスってもうちょっと機械成分多くないとそれっぽくならんのう?」
「何ともシュールな光景ですね。なんで手裏剣が空を飛んでいるのでしょうか?」
 ルティアーナ・アキツモリ(秋津守之神薙・e05342)が先行して走り出すと、リゼア・ライナ(雪の音色・e64875)はアラームのスイッチを入れてから続く。
 見れば仲間達は既に行動を開始していた。
「タイムリミットがありますし、最初からガンガンいきマショウ」
「了解だ。……っ!」
 アップルの言葉に頷こうとして、仲間を庇う為にユノーは飛び出した。
『斬!』
「くう!」
 強烈なダモクレスの体当たり……というか、居だな手裏剣攻撃。肩口から腹まで引き裂かれそうになり、とっさに腕を挟んで急所は避ける。
 そして刃を滑らせ跳ねあげることで切り刻まれる運命を防ぐ。
「さすがに速いでデスネ。でも、これなら幻兎変身、ブレイズモードで!」
 危うい所をカバーしてもらったアップルは街を飛び跳ねながら変身。
 猛る情熱の炎を身に纏いパワーアップだ。
「幻兎変身、ブレイズモード!」
 カウンター気味に豪兎槌(ゴットハンマー)で愛の力を叩き付ける!
 そして彼女の周囲にはケルベロス達が集い簡易的な包囲網で取り囲む。
「いまの、どうみても手裏剣じゃろ! もうちょっと機械分というか、メカ分を増やさぬかっ!? どちらかというと付喪神か悪霊の類いじゃぞ、おぬし!」
 ルティアーナはツッコミを入れながら反撃。
 連続ジャンプで移動しながら、怨霊に誘導させて高速の移動に追いついた。
「……これ、誰かが装備することを考えて作られたものなのかな……? これが扱えるとしたら、すごい脅威になるけれど……」
(「確かに大型の忍者だと思えば想像はつき易いか」)
 シェミアは見知った挙動だけに驚いていたが、帷はむしろ利用する事にした。
 動きの先を読んで機先を制し、その場に留める為だ。
 投げつけた手裏剣は影と相手の動きを連動させ、グラビティで敵の動きを鈍らせる。
 こうしてダモクレスとの戦いが始まった。


「でかいな……壮観だ、と入っていられんな」
 八久弦・紫々彦(雪映しの雅客・e40443)は秘密結社のメンバーの中で、こういうのが好きなを思い浮かべた。
 そして首を振って、大首領の落ち着きを見習って欲しい物だと思い直す。
「被害が出る前に片づけようか……この香気に身を委ねて」
 紫々彦の呟きと共に、周囲へ水仙の花と甘く澄んだ香気が漂う。
 花から零れる滴はユノーに癒しを与えるが、同時に前衛全体へ眩暈がするほどの香気は闘争心を煽る。
「考えても仕方無いか。ひとまず、これはここで始末して、悪夢の到来を防ぐことを考えよう……!」
 シェミアも気合いを入れ直して攻撃に参加。
 蒼い鎌を時計の針の如くに回転させると、グラビティを集めながら停止させる。
 その瞬間にダモクレスの動きが止まり、無理やり動き出させることで熱量を奪いながらダメージを与えるのだ。
「手強いが、復活したばかりで本調子ではないはず。調子を戻す前に撃破しよう」
「はっ、はい。僕も頑張ります」
 ユノーの声に答えてリゼアは懸命に走り出した。
 その姿を見てユノーは僅かに微笑む。
「神々の女王よ、勇壮なる戦士たちに祝福を!」
 この力はリゼアではないが、ケルベロス達を祝福する力だ。
 彼への援護はカバーすることに変えさせてもらおうと言いながら、天より光を呼び込んだ。
 その力で自らの傷を癒し、敵の力を跳ねのける防壁を張って行く。
「……まずはその素早い動きを、封じてあげるよ……この蹴りを食らえー!」
 リゼアはカカト落とし気味に蹴りを放った。
 というより手裏剣に正面から蹴りつける気がしなかったので、平面部分を蹴り飛ばしたのだ。
 そして仲間を支援すべく、意識を集中させ始めた所で周囲の動きは加速して居た。

 いや、思ったより敵も仲間も動きが早かったと言うべきか。
「金色の光よ、此処に集まり……」
『大烈風!』
 リゼアが唱え始めた処で、巨大な手裏剣が更に巨大になった。
 いや、旋風どころか烈風を巻き起こし、カマイタチを叩きつけて来たのだ。
「さっそくか!」
「防ぐよ!」
 ユノーとシェミアはその攻撃に割り込みながら、剣や拳を掲げる。
 だがその動きすら凌駕して、兎が跳ねるように飛び込んで来た。
「ヘーイ! スルーしたら寂しいデース!」
 アップルはコンビニの屋根を足場に走り込み、高速で突撃を掛けた。
 台風の目に突っ込む様に槍を抱えて飛び込んで行く。
「ふむ。メディック狙いとは流石、忍者汚ない! 馬鹿目! 今宵の我らにメディックなぞおらんのじゃ!」
(「……あれは忍者なのか?」)
 石化しようとするルティアーナの言葉に、帷は心の中で首を傾げながら手裏剣を放った。
 何しろ相手はダモクレス、いやそもそもNINJYAであるかもしれないが、己と同じ忍には見えない。
 とはいえツッコム気も無ければ、戦場で無用な口を開く気も無いので、そのまま黙っておいた。
「手裏剣が暴れるのは時代劇だけにしてくれよ」
 紫々彦も石化に参加しながら、誰かに聞いた言葉を思い出した。
 手裏剣はメジャーな四方手裏剣の他に、ダガーにもなる棒手裏剣や、複雑な回転の掛る卍があるという。
 その説明の中で、こいつは安定して飛ばせるフリスビーのような、八方手裏剣にあたるだろう。
「大き過ぎるのは勘弁願うよ。分身もやめてくれよ、面倒だ」
「……饅頭怖いにならんか?」
 そして紫々彦とルティアーナルは二人掛りで石化の呪いを掛けながら、苦笑するのであった。
「その胴体、バランスを崩してあげる……!」
 ここでシェミアは右腕の維持を停止。
 制御を失って肥大化する炎は、巨大な腕になって周囲のアスファルトにすら穴を開ける。
 そのまま走り出せば道路に爪痕が残り、叩きつければそれだけで引き裂くかのようだ。ダモクレスは回転する向きが変わったかのようにグルグルしている。
「今の内だ、放て!」
 ユノーは力任せに高速の剣を叩きつけて間合いをこじ開ける。
 その間に仲間が行動するのを手助けする為だ。
「はい! 光よ、……みなの力になってあげて下さい!」
 リゼアは空間を屈折させると黄金の光で仲間達を癒した。
 そして潜在能力を引き出すことで、戦いを有利にし始めたのである。


 それから暫くの時間が経ち、激戦が行われていた。
「まったく、忙しいな」
「助かる。あとちょっとだと思うんだけど」
 紫々彦は香気を周囲に振り撒きながら、治療と攻撃を繰り返していた。
 烈風を受けたシェミアは伝う血をぬぐうのではなく、鎌に滴らせて血の刃を作りあげ始める。
(「戦いはもはや、どちらが相手を倒すかと言う状況だな」)
 帷は手裏剣でダモクレスの影を縫い留めながら、戦いの趨勢を見守って居た。
 相手の攻撃も強烈だが、クラッシャー多目で更に火力を増強して居ることもあり、中々の削り合いだ。
「その刃……刈り取ってやる……!」
 シェミアは大鎌を杖代わりに立ちあがりながら軽く翼を広げて飛び上がる。
 そして身を翻してターンを掛けると、勢いを付けて降下。
 蒼い鎌に滴る血の刃でグラビティを吸収して行った。
「全力攻撃がいつか判らない。そろそろ仕留めないと危険だな」
 ユノーは同じ場所、それもブレードの鋭い部分を狙って切りつけることで、相手の刃に僅かずつ傷を付けていた。
 そうすることで火力を削ぎ、敵の攻撃に備えるためだ。
「四分終了……」
「いま5分デース!」
 その傷の周囲に攻撃を浴びせ、装甲を歪ませるリゼアはアラームに反応した。
 彼が時を告げるのと同時に、アップルもネットで調整した時間を確認する。

 その時、敵の体が無数に分割。
 先ほどの様に高速移動に寄る分身では無く、本当に分裂したのである。
 数多くの手裏剣が四方に飛び散り、まさに剣電弾雨となって降り注ぐ。
『殲滅!』
「一つに、撃ち落とす……! 二つに、斬り払う……! 三つに、木端微塵に、刈り捨てる……! 三毒切り払え!!」
 迫りくる手裏剣をシェミアは薙ぎ払う。
 例え自らの体に突き刺さろうと構いはしない。
「ソスピタの名にかけて守って見せる……」
 全身ハリネズミのようになぎりながら、ユノーは仲間達を守った。
 力を入れると血が流れ、同時にパタパタとダモクレスの分体が落ちて行く。
「なるほど。耐えきれなくなって先に行動したのか。確かに高速型のダモクレス……無理のある構成だろうしな」
 紫々彦は治療を続けるか、それとも先に倒すか少しだけ悩んだ。
 相手が限界ならば治療で手を止めるよりは、倒してしまった方が早い。
 それに今のところはディフフェンダーがカバーに成功して居るので、体力上は問題なさそうなのだ。
「悩むよりも行動する方が早いネ! 燃え盛れ、私の愛! ゴッド・アイ・ラブ・ユー!」
 判断を変えさせたのは、アップルの攻撃だ。
 分割すれば弱くなると見た彼女は、通り道に在る物を壊す為、縦横無尽に跳ねまわりながら攻撃。
 最後にもっともパーツの大きな本体に向けて鉄槌を振り下ろしたのだ。
「いずれにせよ害獣である限りは駆除するが吾等の務めよ! 疾く現世より去り、常世へと堕ちるが良い!」
 怨敵退散!
 ルティアーナは呪力で作りあげた三鈷剣を握り、この世に降魔の利剣を顕現させた。
 その力は敵を切り裂く剣閃だけにあるのではない、悪の権化であれば当たるだけで魂すら切り裂くのだ。
(「ハズレ続け無い限り、この一分二分で倒せる。行くぞ」)
 帷は沈黙したまま冷静に相手の体力を見て取り、ハンドサインで攻勢を促した。
 続く言葉も動作も無く、後は攻撃あるのみと手裏剣を投げつける。
 躊躇は不用、全力攻撃を費やした敵にチャンスなど残っている訳はない。
「わたしならまだまだいけるよ。それに時間がないからね……鋭い一撃を持つのは誰か、教えてあげる……!」
「それもそうか。ならば倒してしまうまでだ」
 血だらけになったシェミアの言葉で紫々彦も態度を決めると、ハンマー握り締めて最も苛烈な攻撃に出る。
 例えこの一撃が外れようと、次の一撃が当たれば元が取れるとばかりだ。
 もっとも、これまで十分に負荷を掛けている。一回くらいならともかく、何度も外れることなどあるまい。
「あなたの魂、冥府へ送ってあげるよ。悪夢の裂創を、刻んで果てろ……!」
 シェミアの蒼く巨大な腕が強烈なアッパーを放った。
 打ち上げられたダモクレスは、錐揉みしながら落下。そこへ最後の一撃が見舞われたのである。
「トドメ!」
 ユノーの放つ高速剣がダモクレスの体を真っ二つにした。
 そのままバラバラの鋼片になり、大地に突き刺さって行ったのである。

「忍務完了だ」
 帷はダモクレスが動かなくなったことで、ようやく口を開いた。
 そして残骸を持ち上げ、一か所に集め始める。
「随分と散らかったね、さて、ヒール作業でも」
「最後までダモクレスらしくなかったのう」
 リゼアが修復を始めると、ルティアーナも協力しながら敵の残骸を眺める。
「中にICなり、ナノマシンでもあるんじゃないか? しかし酷い風だった……」
 紫々彦は一部の植物が持つ、機械の様な動きを説明した。
 やりようによっては簡単な仕掛けで機構が組めるだろうと言いながら、アスファルトやビルにヒールを掛けて行く。
「合図で自動で動く……か。そういう武装があっても良いかもね……」
 シェミアは籠手で右手を隠す気は無いが、空飛ぶガントレッドとか面白いかなと思った。
 あるいは無限に空を飛ぶブーメランとか、そういえば神話には一人手に切りつける剣もあったっけ。と思いだす。
「正義の勝利デース! 凱旋しましょウ」
 ヒールが完了し、あちこち見て回った後でアップルは変身を解く。
 そして一番高いマンションの上から街を見下ろした。
 避難から帰って来たのか、端の方から徐々に明かりが灯り……無事に年の瀬を迎えるのだろう。
 この光景を守ったのだと微笑みながら、仲間達と共に帰還して行く。

作者:baron 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年12月31日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。