一年の総決算! グランプリレースと人々を守り抜け!

作者:ハル


 千葉県船橋市……その競馬場には、今年も十万人を越える観客達が詰めかけている。
 やがて時刻は15時を回り、待ち望んだレースが近づくにつれて、観客達のボルテージも増幅していく。
 しかし――それは人々の夢を背に乗せたジョッキーと競走馬たちが、返し馬に姿を現した時に起こった。
「ざぁ~んね~ん! レースは見られないぜ、永遠になぁ!?」
 夢と希望に心躍らせる観客達に浴びせられたのは、殺意と冷や水。煽るような口調でそれらを発したのは、人の倍に達する巨躯のエインヘリアルであった。
「よっと!」
 エインヘリアルはスタンドの天井部分から軽々と跳躍すると、返し馬中のジョッキーを、馬諸共細断してしまう。
 そこからはもう……地獄絵図……。
「「「ひぃいいいいいい、ぎゃあああああああああああ!!」」」
 人数の多さから、人々が容易に身動きできない状況をこれ幸いと、エインヘリアルはジョッキーに続いて、力任せに観客までをも惨殺していく。
「人の楽しみをぶち壊すのは最高だぜっ!」
 年末の競馬場が血の海に沈む中で、エインヘリアルの笑い声だけが轟くのであった……。


「アンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715)さんの報告もあって、エインヘリアルによる人々の虐殺を事前に予知する事ができました」
 集まったケルベロスに、山栄・桔梗(シャドウエルフのヘリオライダー・en0233)が説明する。
 すると、自然とアンジェラに視線が吸い寄せられた。彼女の格好が原因である。
「初めはテニスの試合が狙われていると思ったのですが、よくよく調べて見るとお馬さんのレースだったみたい、です」
 意気込んでテニスウェアを着込んでみたものの……アンジェラはラケットを背に隠すと、恥ずかしがるように僅かに頰を染め、俯く。
 だが、事態は急を要する。苦笑を浮かべた桔梗が、説明を再開する。
「まぁ、『ブラッドスポーツ』とも呼ばれる競技のようですからね。この時期で一番盛り上がるイベントの一つでもあります。――ともかく、エインヘリアルです。このエインヘリアルは、過去にアスガルドで重罪を犯した凶悪犯罪者らしく、放置すれば当然ながら相当数の人々の命が奪われる事となるでしょう。人々に恐怖と憎悪を植え付け、私達のよく知るエインヘリアルさん達の定命化にも影響が出るかもしれません」
 ケルベロスには、急ぎ現場に向かって欲しい。

「続いて、敵エインヘリアルの詳細についてお知らせします。エインヘリアルの周囲に配下はなく、一体で出現するようです。出現の時間については、皆さんの到着から数分ではありますが、猶予があると推測されていますね。その性格から、敵の撤退を考慮に入れる必要はないでしょう。……とはいえ、現場に存在する十万人を越える人々を考えれば、今からでは十分な避難は到底望めません。ですが幸いな事に、競馬場には一般の人々の立ち入れない空間が存在します」
 それこそが、競馬が行われる馬場だ。
「どうにか、エインヘリアルを馬場の内側に誘導する事ができれば……。その間に、待機している警察と消防が、人々の避難を勧める事も可能なのですが」
 出現したエインヘリアルは、人々の楽しみを壊す事を至上の喜びとしているようだ。
「やはり狙われ易いのは、実際に観客の皆さんの夢を背負うジョッキーさん達でしょうか。例えば、皆さんがジョッキーの方々に変わり、お馬さんに跨がって返し馬を行う事ができれば……っ! 行動の際は、こちらからも協力の要請を行っておきます。一案として御一考ください。他にも良い案があれば……判断はケルベロスの皆さんにお任せします」
 仮に成功すれば、余裕のある空間で戦闘が行え、人的被害が出る可能性も飛躍的に減少するだろう。
「一歩間違えれば、夥しい数の犠牲者が出てしまいます。こんな危険なエインヘリアルは、絶対に許すわけにはいきません! どうか、確実な撃破をお願いします!」


参加者
チーディ・ロックビル(天上天下唯我独走・e01385)
ミツキ・キサラギ(剣客殺し・e02213)
アンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715)
空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709)
レスター・ヴェルナッザ(凪ぐ銀濤・e11206)
唯織・雅(告死天使・e25132)
植田・碧(紅き髪の戦女神・e27093)
豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)

■リプレイ


「ちょっと怖いかもしれませんけど、よろしくお願いします、です♪」
 テニスウェアから、競馬の勝負服に着替えたアンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715)は、馬の頭をポンポンッと軽く撫でてやる。
「できれば、似たような別のお馬さんを借りられたら……」
 さすがに、そこは急を要する事案。仕方が無い。
「俺の万馬券……いや! 億馬券のためだ! 俺様の相馬眼が見込んだお前は、俺が命には代えないが守ってやる……!!」
 代わりに、ケルベロスが守ってやるのだ。最も、チーディ・ロックビル(天上天下唯我独走・e01385)のそれは下心満載のものではあるが……。
 騎乗する者は馬の動きに合わせるように、身体を上下動させる。
 馬と呼吸を合わせていると、地下馬道の先に光が見えた。
「私たちが囮となり、必ず皆様をお守り致します」
「た、頼みます。どうか!」
 これから起こる事態に緊張を隠せない競馬場職員に、空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709)は言った。彼女は誘導馬である芦毛馬に跨がると、一度後ろを振り返る。
「十万人規模で観客が集まる緑のステージを赤い血で汚させる訳にはいかない! 準備はいいか?」
 そんなモカの視線に応えるように、
「なんとしても止めるぜ、こんなもん誰が許すか!」
「ああ、総決算がおじゃんになりゃ、一年を締めた気にもなれねえ」
 声を上げるミツキ・キサラギ(剣客殺し・e02213)やレスター・ヴェルナッザ(凪ぐ銀濤・e11206)に続き、他のケルベロスも力強く頷いた。
 レースの発走を待ち侘びザワつく観衆、そして鳴り響く本馬場入場曲の只中を突っ切るように、モカを先頭に主役となる馬とケルベロス達が姿を現す。
 瞬間――。
「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!」」」」」」
「わっ!」
 広大なスタンドを埋め尽くす観衆から怒号にも似た歓声が発され、厩務員の代わりとして馬の手綱を引く植田・碧(紅き髪の戦女神・e27093)は、身震いと共に瞠目した。
「……競馬場って、すごい所なのね」
 実感を込めて、碧は呟く。
 そして、これ程の歓声が向けられる選ばれた16頭の競走馬を任されているという責任を感じた。
「流石、一年で一番。お金の動くレース、ですね……もの凄い、熱気です……」
 同じく馬を引く唯織・雅(告死天使・e25132)も呟いた。今日のレースはかつて875億円を売り上げ、ギネスブックにも掲載されている。雅の傍で目立たぬように隠れているセクメトも、表面上は無愛想な表情を形作っているが、場の雰囲気や主人の興奮に呼応するように、尻尾をピョコピョコと動かしている。
「……キミは最低人気らしいね。新聞で、ピークは過ぎた……なんて書かれているのを見たよ」
 出走馬中、最低人気の牝馬に跨がった豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)が、どこか不敵な笑みを浮かべて馬に語りかける。
「だけど、経験でキミに勝る馬はこの舞台に一頭もいない。キミなら、この状況も乗り切れるはずさ」
 衰えたと言われつつも、姶玖亜の乗る馬はこの歓声の中でも泰然自若。
「少し我慢してくれ」
 レスターは身体を小さく丸めるようにして、馬を駆る。体重のためか、馬のスピードはあまり出ないが、そう距離を走る訳ではないので問題はない。時折、「あの騎手、誰だ?」「でかくね?」などという声が観衆の間から出るが、今日の競走は一年に一度だけ馬券を買うというビギナー層も多いため、それほど注目は集めなかった。
「なんだよ! レスターが乗れるなら、俺だって乗れたじゃねぇか! 俺様の華麗な馬術を養分共に披露するチャンスだったってのにッ!!」
 そして、チーディの文句を背に、ケルベロスを乗せた馬達がユッタリと馬場へ。バラけないように、足並みを揃えながら。
(「――返し馬ってなんだろ……」)
 そんな中、最後尾を馬と共に走るミツキは、内心に疑問符を。それでも、ミツキは前の馬達に習ってユッタリと、解すように馬を走らせた。
「……乗馬経験があって助かったぜ」
 通常のジョッキーとは違い、ミツキ達ケルベロスは馬よりも力が強い。そのため、あまり力任せに手綱で馬を抑え込みすぎると、馬が口端を切ってしまう懸念がある。その点、ミツキの騎乗フォームや力加減などは、他の乗馬経験のないケルベロスに比べて自然だ。
 やがて、隊列を保ったまま、ケルベロス達は予知で襲撃のあったポイントに到着する。
 アンジェラがスタンドの上を見上げると――。
「観客のみなさんに、手出しはさせません、です!」
 ルーンアックスを振り上げ、ジョッキー扮するケルベロスに向かって跳躍するエインヘリアルを捕捉するのであった。


「レースを永遠に見られない無念と共に、死に晒――!!?」
 無力な羊達を、希望や楽しみ諸共に蹂躙する……エインヘリアルの表情は、そんな愉悦に満ちていた。
 しかし――モカの放つ氷結の螺旋が、その表情を文字通りに凍らせる。
「ここまでは予定通りね! さぁ、被害が出ないように頑張りましょう!」
 犠牲者を出さないための第一条件をクリアし、碧はグッと拳を握ると、スノーの羽ばたきと合わせて戦乙女の歌を奏でる。
「ありがとうございました、です。ここは危なくなります。逃げていてください、です!」
 さらに、馬を気遣いながら飛び降りたアンジェラが、攻性植物から聖なる光を。
「この程度で……告死天使が、止められると……お思いですか?」
 すかさず雅がカラフルな爆風を発生させながら、鎧を盾にルーンアックスを受け止める。
「な、にィッ!?」
 攻撃が受け止められたという事実に、エインヘリアルはその醜悪な表情を歪めた。
 エンチャントの補助を受け、前に出たのはレスターとミツキだ。
「被害は出させん」
「凄惨な……それも俺にとって腸が煮えくりかえるような内容の予知を聞かせやがって! お前だけはぜってー殺す!」
 レスターは瞳に銀光を、ミツキは憤怒を灯し、「まさか!?」という間抜け面を晒すエインヘリアルへ、立て続けに煌めきと重力を宿した蹴りを放つ。
「さあ、踊ってくれないかい? と言っても、踊るのはキミだけだけどね!」
 加え、後方から姶玖亜によって銃弾が絶え間なく撃ち込まれると――藻掻きながらそれら一連の攻撃の直撃を受け、エインヘリアルは内ラチを破壊しつつ、観衆から遠ざかるようにダート馬場に向けて高速で吹き飛んでいく。それは、エインヘリアルが一旦ケルベロスから距離を取るために、自分で後方に飛んだという意図もあったのだろう。
「俺様の億万長者人生の為に!! ここでテメェを……ツブすッ!! 逃げようとしても無駄だ、こっちのが千兆億倍はええってなぁ!!!」
 だが、地獄の炎を両脚に纏い、爆発的な推進力を得たチーディは、吹き飛ぶ敵にすら追い縋る。瞬く間に距離を詰めたチーディの蹴りによって、エインヘリアルは地面に叩き付けられた。
「エインヘリアルの楽しみをぶち壊すのは最高だな」
 ダートに半身を埋めるように倒れ伏すエインヘリアルに、モカの不敵な笑みと嘲笑が。
「おや。戦力の拮抗する、相手とは……渡り合うのが、恐いのですか?」
 トドメとばかりに、雅の挑発をエインヘリアルが耳にすると、
「……いい度胸だ、群れねぇと何もできない雑魚共が!」
 屈辱からか全身をワナワナと震わせながら立ち上がり、ルーンアックスに呪力を帯びさせ吼え猛る。
「やれるものならやってみろ」
 対しレスターは、右腕の銀の獄炎を骸にまで纏わせると――。
「番犬の力、その身に刻み込んでやるよ」
 接近するルーンアックスに向け、骸を交差させる。
「か……勘違いさせられたうっぷん、あなたで晴らさせてもらいます、です!!」
 レスターを援護しようと、頰を赤く染めたアンジェラの急降下蹴りが、エインヘリアルの脳天目掛けて振り下ろされるのであった。


 ケルベロス達の挑発が功を奏し、競走馬たちは全頭が競馬場職員と厩務員達によって確保されたと放送が。
「ふぅ、一先ずは安心ね」
 カラフルな爆発を発生させ、碧がホッと息を吐く。見れば、スノーも彼女と同じように、肩を撫で下ろすような仕草を。
 スタンドでは、待機していた警察と消防が動き出している。
 そして、当のエインヘリアルといえば――。
「無様に死ねや、ケルベロスゥゥッッ!!」
 挑発が余程気に障ったのか、掲げた2本のルーンアックスを狂ったように振り回していた。
「モカさん。そっちに、矛先が向いて……います。私とセクメトでは……間に合い、ません!」
「雅さん、でしたらわたしがそっちに回ります、です!」
「すまない、アンジェラさん……雅さんも!」
「いえ、大丈夫、です! ですが――くぅぅ!? さすがに重い、です!!」」
 モカの両肩を執拗に狙う一撃に対し、雅と状況を見つつ、額から血を流したアンジェラが身を張る。
 セクメトらの付与した耐性により、バッドステータスは大きな問題にはなっていない。
 庇う態勢から攻撃に切り替え、ライフルのスコープを覗き込んだ雅が、エインヘリアルの構造的弱点を撃ち抜いて勢いを押しとどめようとするが、
「まるで、サラブレッドの群れに重種馬が混じったような光景だね。重種馬と違うのは、キミは単なる鼻つまみの脳筋だって事だけれど。キミは世に出るのは早いから、ゲート試験からやり直してきなよ」
 姶玖亜の言うように、耐性の上からであっても威力だけは一級品。姶玖亜は呆れたように溜息をつくと、目にも止まらぬ弾丸を放ち、攻撃力に制限を加える。
「まったく、俺様とは正反対だぜ!!」
 虚言を弄するチーディが日本刀を抜き放つと、緩やかな弧を描きながらエインヘリアルを切り裂いた。
「テメーが殺めてきた人の数だけ、呪詛は深まる。さあ、罪を数えてみろ!」
 霊体を憑依させた大太刀の暗き刀身を煌めかせながら先陣を切り、紅と蒼の喰霊刀が汚染を上塗りする。鬼の形相で振るわれたミツキの太刀筋は毒と化し、着々とエインヘリアルにダメージを蓄積させる。
「こ、このドチビがァ!!」
「――っ!? テメーッッ!!」
 苦痛のあまりにエインヘリアルの発した言葉は完全な悪手であり、「俺の本気は、ちょっと速いぞ?」ミツキは勢いを増し、音速を超えて全方位から攻め立てた。
 しかし、エインヘリアルも最後の抵抗を見せ、頭上から叩き割るようにルーンアックスを振り下ろす。
「ミツキくん、前に出すぎよっ! ……って、聞こえてないわね。まぁ、それを言うならロックビルさんもそうだし、今更ね」
 幸いエインヘリアルに戦術といった類いは皆無だ。ならば、後方から碧達が支援してやれば事足りる。スノーがキャットリングを放つ。碧はヤレヤレと肩を竦めながらも、人の為に怒るミツキにどこか好意的な笑みを向けながら、オーラを溜めて支援。
「仕留める」
 レスターが奥歯を噛みしめると、剣先で渦巻く地獄の火柱が、太古の梁龍を想起させるが如く首を撓らせた。渦を巻く火柱が、エインヘリアルの首を狙うように襲い掛かる。
 モカのスターゲイザーが、アンジェラの旋刃脚が迫る。二種の蹴り技の前に、エインヘリアルは堪えきれず呻きを上げた。

「私の前に立ち塞がるならば、全力で斬り刻む!」
「グ、ググアアッッ!」
 それはまるで旋風のように、疾風のように……エインヘリアルの周囲をモカが駆け、小指球から伸ばした刃を叩き込む。
 すると、ついにエインヘリアルはその巨躯を折りたたむようにして屈み、悶絶した。
「今よ、仕上げといきましょうか!」
「往生しろやァ!!」
 モカの一撃を受け、パラライズの阻害の力が増幅したエインヘリアルが動きを止める。
 隙を見て、碧が重力を宿した飛び蹴りを、チーディが業火を纏う蹴りを炸裂させる。
「――脳筋ここに極まれり……ってね」
 ここに至って未だほぼ無傷の姶玖亜は、仲間の助けに感謝を。そして、最後まで愚かなエインヘリアルに侮蔑の瞳を向けた。
 周囲からは、避難途中の観衆達の視線が一心に向けられている。「頑張れ!」「助けて!」「勝ってくれ!」そんな応援の声に混じって、「差せ差せェ!」「交わせ!」そんな声が混じっているのは、競馬場ならではか。
 ともかく姶玖亜は、観衆達の応援の声が、本来向けられるべき馬へ送られるようにするために。
「脇役くん、キミの出番はもう終わりだよ!」
 オウガメタルに覆われ、「鋼の鬼」と化した拳で、エインヘリアルのコアを粉砕するのであった。


「誘ってくれてありがとね、ミツキくん」
「んー、あー、いや……暇だったし、競馬場まで来てレースを見ないのもアレだからな」
「それに、すっごく心配してくれてたみたいだし」
「……そりゃ友人で、仲間だからな」
 ミツキと碧は招待された馬主席で、肩を並べてレースの発走を待っていた。他意はないとそっぽを向くミツキの頰を、碧がからかうように指先でツンツンと突きながら。そうする事で若干赤くなった自分の頰をミツキに見られないよう隠す辺り、碧の方が一枚上手といった所か。
「こ、こんなに貰ってしまっていいの、です!?」
「好意は、受け取って、おきましょう」
 ケルベロスの戦い振りは、多くの観衆に目撃されている。競馬場内を散策していると、アンジェラと雅は競馬場グルメや馬のグッズなど、多岐にわたるたくさんの貢ぎ物――ならぬプレゼントを受け取った。
 大人組はといえば、メインレースの買い目を度々観衆に聞かれているようだ。
「折角だからな」
 レスターはそう言いつつも、真剣な表情で新聞と睨めっこした後、「よし、アイツの頭固定の3連単だな」自分の乗った馬中心の大金を賭けた馬券を公開し、それに対抗したチーディが「全財産を賭けるぜ!」と公言。
「俺様の予想は千パーセント、いや1億パーセント当たる!!」
 と主張し、馬券ビギナー達に自信満々の表情と態度で買い目を推奨していた。
「さて、そろそろ発走だろうか」
「さぁ、『終わったオンナ』の称号を返上する時だよ」
 モカは三番人気から1、2番人気を覗いた馬単を、姶玖亜は縁のあった最低人気の牝馬からの三連複馬券を握りしめ、レースを見守る。
 躍動する筋肉、飛び散る芝、実況の興奮……。16頭が第4コーナーを曲がり、今日一番の歓声が場内を支配する。
「やはり……生物同士で、一体になるレースは。独特の雰囲気、ありますね……」
 それは、競馬場以外では味わえないもの、雅とセクメトも視線を奪われる。
 16頭がゴール板を過ぎると、結果は直ぐに出た。8番――3歳馬の優勝である。モカの本命は見事1着であったが、相手がいない。馬券的には全滅だが、それ以上の得も言われぬ満足感がそこにはあった。
 ただ一人――。
「ふっざけんなアアッッ!!」
 全財産を失い、馬券の買い目をゴリ押しした結果、大勢に恨まれる事になったチーディ以外は……。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年1月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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