もふもふましーん

作者:天枷由良

●すごく流行った頃もあったとかなんとか
 ペットが飼えないお宅でも。これならだいじょぶ、電子ペット。
 餌は電池で、散歩不要。臭わない。だが可愛らしい。
 機械だからと侮るなかれ。もふもふの毛も生えている。
 ああ素晴らしい。電子ペット。電子ペット。万歳、電子ペット。

 しかしながら。それもある種、死すべき定めの中にあるもの。
 壊れるし、飽きられる。不要となれば捨てられる。
 そして終わりまでもが素晴らしいとは限らない。
 機械仕掛けの愛玩動物に墓場を選ぶ権利はない。

 それを嘆く心がないからこそ“彼ら”は“彼ら”であるのだが。
 何の因果か。“彼ら”――ダモクレスの小さな個体が一匹、枯葉に埋もれる犬とも猫とも鳥ともつかない謎の獣型電子ペットへと憐れむように寄り添い、一つの新たな生命となった。
 庇護欲掻き立てる鳴き声を響かせ、電子ペットダモクレスは短い脚で山を駆けていく。
 ともすれば無邪気にも見える彼の行く先に、もう素晴らしいことなどありはしないのに。

●駐機中のヘリオンにて
「――そしてこの電子ペットと鳴き声は“ぶるすこ”とか“もるすぁ”だとかなんとか……」
 予知を締めくくる一節に微妙な緩さを感じて、ケルベロス達はどっと腰砕けになった。
 電子ペットのモフモフなダモクレスが出るのではと、ミィルに情報を寄せたピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)も示すべき表情に困っている。
 主の心中を反映して、テレビウム“マギー”も何だか言い表し難い動画を流していた。
「……ともかくだ。被害が出る前に対処しないといけないよねぇ」
 ピジョンの言に、ミィルは頷く。
 電子ペットを悼みシリアスな雰囲気で挑むも、寒さ厳しいこの時期に和気藹々と“もふもふ”を堪能するも自由だが、何れにしても討たねばならない“敵”であることに違いはない。

 敵は山中から町に向かって、一直線で進んでいる。
「飛んでくるかもなんて言ったけれど、飛行能力はないわ」
 広げた地図に直線と丸を記した後、ミィルは一同を見回して言う。
「なだらかで開けたところがあるから、此処を迎撃地点にしましょう」
 待っていれば敵はとたとたと駆けてくる。いざ遭遇すれば、ケルベロスとてグラビティ・チェインを保有する獲物であるのだから、ダモクレスが此方を無視していくことはない。
 迎え撃ち、叩き潰す。簡単であるかはさておき、単純な任務だ。
「敵は……そうね、ブラッドさんの半分くらいのサイズで――」
「結構大きいんだねぇ」
「ええ。それで、主にもっふもふの身体を武器とした体当たり攻撃を仕掛けてくるの。他にも謎の言語による歌、或いはこれまた謎の踊りなんかも繰り出してくるわ。どちらにも催眠効果があるようだから、気をつけてちょうだいね」
「……ところで。これって結局“何の動物を模している”のかな?」
「……さあ。なんなんでしょうね。とりあえず哺乳類っぽいことは確かなのだけれど……」
 ミィルは眉間に皺を寄せた後、断言できる情報はないと説明を終わらせた。


参加者
ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)
フォン・エンペリウス(生粋の動物好き・e07703)
クララ・リンドヴァル(本の魔女・e18856)
筐・恭志郎(白鞘・e19690)
鉄・冬真(雪狼・e23499)
アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)
霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)
御春野・こみち(シャドウエルフの刀剣士・e37204)

■リプレイ


 真冬の山の、寒空の下。
「風が身に応えます……」
 クララ・リンドヴァル(本の魔女・e18856)は如何にも魔女らしい帽子を押さえて、ぽつりと呟く。
 そのまま思い起こすは、今朝方、大釜に放り込んだ薬の材料。
 もふもふの、うぞうぞ。そう、あれはもふもふではなく“もふもふのうぞうぞ”だ。
 クララ曰く。
 元が魅力的であればこそ、もふもふはもふもふ。
 そしてもふもふカワイイは自立自存し得ない。
「即ち、海のものとも山のものとも知れぬ正体不明のもふもふに、ケルベロスがもふもふされる道理はないのです」
 もふ。
 自論を語り終えて一息つき、クララは彼方を見やった。
 なだらかに上っていく山頂の方だ。
 そこから――走ってくる。
 でっかい毛の塊が走ってくる。
 効果音をつけるなら『とたとた』がやっとの速度だが、多分全力だ。
 あれは鳥か? 猫か? カモノハシか?
 いや、違う。あれは――。
「ファ【ピー】」
 ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)が何かを言おうとした瞬間、鉄・冬真(雪狼・e23499)が思いっきりホイッスルを吹き鳴らした。
 乾いた空気に心地よい高音が響き渡る。
「……なんだい、急に」
「……いや、そうしなくちゃいけないような気がして」
 自身でさえ判然としない行動に、冬真の瞳が揺らぐ。
 らしくない。
「どうしたんですか冬真兄さん、あのファ【ピー】」
 迫り来る毛玉を無言で見つめていた筐・恭志郎(白鞘・e19690)が問えば、またもホイッスルが邪魔をした。
「……ファ?【ピー】」
 意味を理解できずにいる霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)の疑問形にさえ、冬真の身体は反応する。
 なるほど。今日の戦場ではファーにピーが返るらしい。
 ファーにピー。Pでよかった。Bだったら今頃どうなっていたことか。
「その、あの、なにか関わってはいけない大きな意思を感じたりも――あ!」
 困惑気味の御春野・こみち(シャドウエルフの刀剣士・e37204)は自ら地雷原に踏み込んだと思ったのか、明後日の方向に「し、しません! えへへ、大丈夫です! えへへへ!」と作り笑いを浮かべた。
 そんなに焦らなくても。何を言ったところで、いきなり熊のぬいぐるみに置き換えられたりしませんって。ねえ?
「まあ、迂闊にファ【ピー】とは言わない方が良さそうだねぇ」
「そうですね。あまりファ【ピー】って繰り返すと、冬真兄さんが過呼吸になってしまいそうです」
「……ファ?【ピー】」
「君達実はわざとやってるんじゃないだろうね?」
 ピジョンから恭志郎、和希までを流れるように見やって言う冬真は、早くも息を切らしていた。
 呼吸のタイミングが乱されるというのは、かくも苦しいものなのだろう。
「気をつけましょう」
 クララが真面目に呼び掛ける。
「ん、わかったの」
 フォン・エンペリウス(生粋の動物好き・e07703)がこくりと頷けば、彼女に付き従うボクスドラゴン“クルル”も、真似するように首を振った。
「あーっ……かわいい……もふもふ……あーっ……ああーっ……!」
 アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)さんの状態は発言からお察しください。


 しかし彼の平常運転っぷりには全くもって恐れ入る。
 至極冷静に戦いへと臨むつもりだった和希も、思わず溜息をつきそうになった。
「アンセルムさん……」
「ああーっ……! あ……え? どうしたの和希?」
「……いえ」
 もう何度となく見ているような姿であるし、こうでなければアンセルムはアンセルムと呼べないだろう。
 親友としては、その辺り引っくるめて受け止めざるを得ない。親友としては。
 だから後の事は和希君に任せるとして。それよりも、だ。
「あれ、何の動物なんだろう……?」
 どうにか息を整えた冬真が尋ねてみるも、その疑問に明確な答えを出せる者はいない。
 鳥か? 猫か? カモノハシか? いや、ファ【ピー】。
 この繰り返しになってしまう。さてどうしたものか。
「ん、見たことない生き物だけど……すっごくもふもふなの」
「……そうだねぇ。もう、もふもふって呼ぶしかないよねぇ。あのファ【ピー】」
 何処か嬉しそうに尻尾を振るフォンに、ピジョンが応える。
 決定。命名、もふもふ。
 そのもふもふをもふる、違う屠るべく、ケルベロス達は各々戦闘態勢を整えた。
 クルルも、それからピジョンのテレビウム“マギー”もやる気十分だ。
「もふもふですけど、ダモクレスですからね」
「……ええ。あれは敵です。そして敵ならば――」
 破壊するまで。
 恭志郎の言を継ぐ形で呟き、和希が僅かに腰を落とす。
 狙うはもふもふの動きを鈍らせる為の一蹴り。魔術強化も施された対デウスエクス戦用のコンバットブーツで踏みしめる地面に意識を集中させ、眼力が十分な値を示す相手にぶちかます一瞬を見定める。
 その傍らでは、クララが魔法陣を敷くべく長剣を抜き放ち――。
「“不変”のリンドヴァル、参りまふ――」
 まふ。……まふ?
「……あっ、あっ、ああーっ!」
 アンセルムの絶叫が木霊する。
 そして唖然とする一同の前で……一体どんな奇術を用いたのか、とてとてと緩やかに走ってくるばかりだったはずのもふもふは瞬間的に間合いを詰めて、クララの顔面にエグい体当たりを食らわせていた。
『ナデナデシテー』
 してー、と懇願の形をしてはいるものの、めりめりとめり込んでくるもふもふを引き剥がす為に伸びた手が自然と敵の身体を撫で回すような動きになる。
 息苦しさからか、はたまた心地良さからかクララが「もふ!?」と呻いた。やがて満足したもふもふが顔から離れると、不変の魔女様はぱたりと倒れ込み、うわ言のように「わたしの打ち立てたもふもふ方程式が……」と零す。
「え……あ……い、意外とやるみたいですよアレ!」
「ん、早く大人しくさせた方がよさそうなの」
 もふもふを全て受け止めて満喫、もとい仲間を守ろうとした矢先の出来事に、驚くこみちと言葉を交わしたフォンが自慢の大きな尻尾を逆立てる。
 ちらりと見やれば、クルルは主の意思に従ってクララへの属性インストール中。
「ん、じゃあびりびりにしてあげるの」
 もふもふに目を向け直してぴょんと跳ねるようにテイルアタック。
『ファー』
 間抜けな声と共に転がるもふもふ。
 瞬間、四人の人影が宙に舞い、もふもふの元へと落ちた。
 それを極めて事務的に表現するのであれば、要は四人ともスターゲイザーを繰り出しただけなのだが。
「見ただけじゃ分からないからね、こういうものは……」
 待望のもふもふとの邂逅、接触。己の足と拳でふかふか加減を確かめようと思案していたアンセルムは、四人の足で押さえつけられたダモクレスに手を伸ばす。
「ああーっ……あっ、あっ……ああーっ!」
 興奮が頂点に達した。もはや口から出るのは悲鳴ばかりだ。
 しかし、彼の気持ちも分からなくもない、かもしれない。
「これは……確かに」
 もふもふだ。ピジョンもぐいぐいと足を押し込みながら、もふもふをさすさす。
 日頃デウスエクスとの戦いでは真剣さばかりが滲む和希でさえ、無言ながらも一撫で。
「目はくりくりですけど、なんだか眠そうというか……底がしれないというか」
 いや、可愛いのは可愛いんですけどね? などと、こみちも間近でもふもふをしっかり吟味する。
 その光景がご当地キャラだとかの着包みに子供が群がる様にも見えて。冬真はふと妹であればあれに加わったのかもしれないなと心和ませつつ、さて恭志郎はどうだろうと目を向ければ。
「あのファ【ピー】……もふもふはダモクレス。ダモクレス……」
 彼は自らを律しながら、虹色を花咲かせる不思議な攻性植物に意識を注いでいた。
「恭志郎、先に謝っておくね」
「え?」
 何の話か。植物の操作に集中しながらも視線を向けてくる律儀な弟分に、冬真は親しい相手だからこそ見せる絶妙な微笑を浮かべつつ、親指を立てて言う。
「僕も、もふもふは、好き」
「兄さーん!?」
 この裏切り者ー、みたいなニュアンスの叫びが響く中、冬真は四本の脚に囚われたもふもふに近づいて掌で軽く触れる。
 それを極めて事務的に表現するのであれば、要は螺旋掌を打ち込んだだけなのだが。
「ああ……うん、もふもふだね」
 傍から見れば只々青年がデカい毛玉を撫で回しているだけにしか見えないのであった。


 そんなこんなで。
 恭志郎だけが甘美なるもふもふを味わえずにいたのだが、その機会はすぐに到来。
『ナデナデシテー』
「そんなにして欲しいなら――!」
 思う存分撫で回してやろう。
 再びタックルの素振りを見せたもふもふに立ちはだかって、恭志郎はそれを正面から受け止める。
 やはり質量があるせいか、ぐっと下腹の辺りから襲い来る衝撃は中々のもの。
 しかし、それを補って余りある手触り。まるで子猫のような柔らかさ。
「このファ【ピー】……ファ【ピー】……」
 あくまで盾役の仕事を全うしただけと言い聞かせながら、撫で、撫で、撫で撫で――。
『ボクー、ウレシー』
「!?」
 突如発露した感情に思わず毛玉を突き飛ばす。
 恭志郎の元を離れてごろんと転がったもふもふは――回転の勢いで何とか起き上がると、瞬きを頻りに繰り返しながらケルベロス達に宣言した。
『ボークー、オドルノスキー』
「ああーっ!?」
 その台詞だけでもう耐えられない。
 アンセルムが膝を屈する。しかし彼を含めた前衛陣への試練はここから。
『イェイイェイ、イェイイェイ――』
「ファーッ! もふもファーッ!」
 もふもふが身体を揺さぶり始めた途端、ピジョンは抱きついて顔を埋める。
「ん、わたしもおどるの……」
 フォンはふらりふらりともふもふの動きをなぞらされ。
「……ふぁー」
 恭志郎は血迷った。
 催眠だ。全部催眠が悪いんだ。今のも催眠から逃れようと叫んだつもりだったんだ。
 などと心の中で言い訳するも、時既に遅し。
 何とも言いようのない生温い目で冬真が此方を見ていた。
 そして頭を撫でてきた。一年の終わりにとんでもない辱めだ。
「ふぁーじゃダメですよ! わー! って叫ばないと!」
 横からこみちが口を挟む。
「ふぁー」
 全然関係ないところからクララが鳴いた。
 え? そっちも? しかし目を向けたこみちが見る限り、彼女は錯乱しているように見えない。もしかしたら最初に倒れた時、打ちどころが悪かったのかもしれない。
「ふぁー」
 こみちの心配を余所に、クララはまた鳴く。
 すると大地に眠る惨劇の記憶から魔力が引き出されて、本当に正気を失いかけている仲間達をさくっと癒やした。
 どうやら魔女様のふぁーは詠唱にもなるらしい。或いは不変と宣うからには言葉が変わっても本質が変わっていないのか。
 ともかくふぁーふぁークララのお陰で前衛陣は――嗜好的に打ちのめされてどうにもならないアンセルムを除いて立ち直り、攻撃を再開。
 ああいや、アンセルムもちゃんとケルベロスとしての務めは果たしているのだ。ただ蹴りを打つための軽やかなステップが浮かれているようにしか見えなかったり、何かと敵に密着しては「なんか変な鳴き声あげてるけど、そんなところも最高だよ……」とか囁いているだけで。


 そうやって一場面を切り取ると微妙に緊張感が欠けているようにも見えたが、ケルベロスともふもふは戯れているのでなく戦っている。いや、本気で。
 だから何かにつけて高ぶりを露わにしていた八人からは徐々に叫び声も聞こえなくなり、無邪気さを交えていた視線も鋭くなり、やがて戦場に響くのは電子ペットダモクレスが機械的に繰り返す『ナデナデシテー』だの『ウタウノスキー』だの『スゴーク、タノシー』だの、そんな言葉ばかりになった。
 そして、それも段々と発音が怪しくなってくる。
「ん、もうちょっとなの」
 自身の肩くらいまではあろうかという毛玉の突撃を受け止め、そのもっふり具合を今一度味わいつつもフォンは一時フェネックの形となった自身の拳に重力を込めて打ち込む。
 ぐらりと揺らいだ毛玉にピジョンがすかさず魔法光線を浴びせれば、敵の動きが一瞬ばかり止まった隙を突いて、こみちが目にも留まらぬ早さで切り抜ける。
 それを追うように現れたのはクララが喚び出した蜘蛛の群れ。まるで蝗害のように押し寄せる黒い波は、もふもふを蹂躙するとすぐに消えていく。
 あ、ちょっと毛並みが悪く……などと考えたのも束の間。今度は冬真が炎弾を放つのに合わせて、恭志郎が間近から地獄を叩き込む。
 途端、ぶわりと燃え上がった毛の塊に和希がオウガメタル“イクス”で作る無数の刃を差し向けて絡め取れば。
「和希、いくよ……!」
 至極真っ当にアンセルムが呼び掛けた瞬間、引っ込んだ刃の代わりに黒白の精霊と氷の楔がもふもふを襲う。
 寸分違わず、呼吸揃えて撃ち放たれる二つの魔術の威力たるや筆舌に尽くし難い。並び立ったままで腕を下ろすアンセルムと和希の、そしてケルベロスの前でもふもふでなくなったもふもふは立ち尽くし――。
「!」
 凶器の鋏を振りかぶったマギーが首元を横から思いっきりフルスイングすると、最期に「もるすぁ」と一言鳴いて爆発四散した。


「あれだけ動き回っていたんだから、何か残ってないかな……」
 抜け毛とか、抜けた毛玉の塊とか、ふかふかした塊とか。
 ……それって全部一緒じゃない? などとアンセルムに言う者もなく。
 戦い終わったケルベロス達は、戦場一帯を整えると共にダモクレスの残骸を探し求めた。
 電子ペットを不憫に思ってのことだろう。彼らの優しさが元の持ち主にも小さじ一杯ほどあれば、今日の事件は最初から起こらなかったのかもしれない。
 そして迅速な行動が幸いしたか、幾つかの破片を拾い集める事は出来た――が。
「……ダメ、かぁ」
 施したヒールの甲斐もなく、ピジョンの前でそれは砂のように崩れていった。
 仕方ない。それは“電子ペットと同化したダモクレスの遺骸”であって、電子ペットそのものではない。
「ダモクレスになる前に、ボクのお家に永住させたかったなあ……あのファ【ピー】」
 相変わらずの調子でアンセルムが嘆く。
 ただ――ダモクレスとなっても、あれの端々には電子ペットの残留思念じみた何かが滲んでいた……ような気がする。
 仮に、その何かを魂とでも定義するならば。
 彼らの優しさは、きっと届いていたであろう。
「誰かを傷つける前に止められて良かったと思おう」
 冬真が、萎れてしまった恭志郎の肩を軽く叩いて慰める。
 それに小さく返された「……もふもふが……」との囁きが伝播して、ケルベロス達は名残惜しげにあれの来た山頂を見やる。
「少し可哀そうな事をしましたね」
「確か、日本では神社やお寺で人形供養をするんだよねぇ? あれもそうしてやれればよかったかもな」
 長手袋をふわりと落として語るクララに、ピジョンも神妙な面持ちで言った。

作者:天枷由良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年12月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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