ミッション破壊作戦～死神の戦力増強を止める為に

■リプレイ

●死神支配からの解放を
　ケルベロスが攻略を決めた地へと向かうヘリオン機内。
『長期占領地区だし、早く解放したいな』
　その想いは、すでに戦闘モードとなっている罪咎・憂女（刻む者・e03355）だけではない。
「愛知県豊橋市の街と人々を脅かしている死神の魔空回廊、破壊させて貰うわ」
「……今度こそ、な」
　マキナ・アルカディア（蒼銀の鋼乙女・e00701）の一言に、チーム唯一の男性、水無月・鬼人（重力の鬼・e00414）が強い口調で告げる。
　彼が婚約者のヴィヴィアン・ローゼット（色彩の聖歌・e02608）と、この地の破壊作戦に臨むのは２度目。
　３ヶ月ほど前に決行された１度目の作戦時、彼らは破壊できぬ悔しさを抱いてこの地を離脱した。
　それだけに、鬼人も気合を入れて地図で状況を確認し、ヴィヴィアンも情報収集を行う最中で左腕の指輪、そして、この地に救う死神の宿敵主であるシェリーの懐中時計に視線を落とす。
　――今度こそ、彼女に胸を張れる成果を。
「大切な人たちの思いと一緒に、全力で頑張る……！」
　そんな仲間達の様子を目にしながら、憂女が質問を投げかける。
『しかし、死神とは一体……』
　死んだ存在が落ちる場所、そこに生き物が生まれたのだろうか。
　――もしそうなら、そもそもデウスエクスとは何なのか……。
　憂女の疑問に答えられる者はいない。
　しばしの沈黙の後、ミッション攻略中のケルベロスと連絡を取っていたジュスティシア・ファーレル（エルフの砲撃騎士・e63719）が通信を終えて。
「最近の情勢で、死神にはかなり思うところがあります」
　敢えて、ジュスティシアは口に出したが、やはり皆感じていたところ。
「サルベージも手当たり次第な印象を受けるわね……」
　対象が十二創神になっても、その対象を絞ることが出来てないとマキナは指摘する。
「とはいえ、サルベージを放置すれば、無限回の試行で効率化と強大な力を得かねないわね……」
　それを聞いて、脱出経路の確認をしていたシェミア・アトック（悪夢の刈り手・e00237）は死神の暗躍に歯止めをかけたいと主張する。
「そう何もかも上手くはやらせない……。ここでその手足の一つを刈り取ってやる……！」
「レッツ、ロック！　今日の歌は凱旋パレードに決定なのデスよ！　戦勝ライブを決めるのデス！！」
　シィカ・セィカ（デッドオアライブ・e00612）も今回の一撃で決着をと意気込み、最善を尽くすべく喉の調子を整える。
　丁度、現場到着のアナウンスがあり、メンバー達はグラディウスを手に降下準備へと入る。
「頼むよ、グラディウス……悪夢を一つ終わらせる為に……」
　次々と仲間達が降下する中、シェミアは手にする小剣に想いを込めて最後に宙へと踏み出したのだった。

●解放の為の魂の叫びを！
　すでに、シャッター街となった地にある強襲型魔空回廊。
　そこを目掛け、８人のケルベロスが光る小剣を手に飛び込んでいく。
「ここはもうずっと長い間、苦しんできたのデス！」
　先陣を切ったのはシィカ。今日こそ解放してこの地を元の姿に戻すと大声を上げる。
「ここに居る死神の企みも、リザレクト・ジェネシスと一緒にぶっ潰してやるのデス！」
　また、自称ロックミュージシャンのシィカにとって、この地の死神の姿は『ロックでない』そうで。
「ロックになって出直してきやがれデェェェス！！　レッツ、ケルベロスライブ！　スタートデス！！」
　叫びと共に、シィカはナイフでバリアを切り裂き、さらに魔空回廊へと光る刃を突き入れる。
　周囲に眩い閃光が放たれた瞬間、目面・真（たてよみマジメちゃん・e01011）が続けて魔空回廊を強襲していく。
「サルベージするだけに止まらず自分の身とするとは、何とおぞましいコトだろうか」
　これ以上強大化される前に真としてはデスバレスにお帰り願いたいところだが、敵にその気がない以上、自分達の手でこの地を取り戻すしかない。
「豊橋の地に安寧をもたらすためにも、さっさと消えてもらおう。グラディウスよ、行くぞ！」
　真の手の小剣も光り輝き、魔空回廊を切りつけると同時に更なる光がこの場を支配する。
『人々の生活を取り戻すため、この地から去ってもらおう！　そして、死者への冒涜もここで断ち切らせていただく！』
「人の命と心を弄ぶ死神はオークの次に下劣な種族！」
　死神が動揺する様子が感じられる中、男性口調の憂女、そして、元軍人のジュスティシアが飛び込んでくる。
　この地の死神は本性が外見に現れている分、ジュスティシアにとっては、ネレイデスよりはマシという印象らしいが、いずれも人に害する存在なのは変わらない。
『相容れなくとも、死者には敬意を。生存競争の敗者を踏みにじることは許さない！』
「死神死すべし慈悲はない。まずは豊橋市の人々が安心して暮らせるようにします！」
　２人の刃は強く輝き、さらに魔空回廊へと疵を増やす。
　大きく巻き起こる爆炎が死神達の身体を焼き、さらに場は混乱する。
　次に、ヴィヴィアンが鬼人と共に仕掛けていく。
「何度でも来るよ。ここを解放するためなら……！」
　これ以上、彼を、そしてシェリーを、この地の皆を苦しめないでと強い想いをヴィヴィアンは小剣に込める。
「正直よ、前は心の何処かに、暗い思いが有ったぜ」
　鬼人にとって、この地は故郷。
　もっとも、良い思い出は無いようで、どこかそれが前回の襲撃の際に出てしまったかもしれないと彼は考える。
「今回は、違う！　俺はよ、共に歩む伴侶と、自分の故郷を見て回りたい！」
「ここはあなたの縄張りなんかじゃない。地球のみんなが未来を生きていくための場所なの！」
　自分達の今後の為。子供ができた時、安心して学校に通わせられる平和な明日の為。この魔空回廊は邪魔なのだ。
「これは、その、第一歩だ！」
　鬼人の叫びに応じ、ヴィヴィアンの刃と共に光が一層強くなって。
「刀の極意、その名、無拍子！　今の俺に、斬れない物は、ない！」
「今度こそ、出て行ってもらうから！！」
　魔空回廊へと更なる疵が刻まれ、そこから濃いスモークが周囲へと噴き出す。
　そして、最後にマキナとシェミアがグラディウスを手に上空から迫る。
「死神との戦いは死者の尊厳との戦い」
　穏やかに眠る死者を、己が存在と欲望の為に姿を弄ぶ死神達。
　力を盗み取るは、不死のデウスエクスならではの所業だとマキナは告げる。
「死者を甦らせ、あまつさえそれを取り込んで、どこまで命を愚弄するのか……！」
　シェミアもまたその行いは自身の嫌うドラゴン並みに……、いや、それ以上に許しがたいと断じる。
　――この世は万物流転、盛者必衰。
　世の理を冒涜する死神に、この世界に存在する視覚はない。
　シェミアの言葉に、マキナも大いに頷いて。
　――生がある死があり、死を畏れるからこそ敬う。
「それは人であろうとデウスエクスであろうと同じこと。なればこそ、ケルベロスの牙を以って食い破らん！」
　マキナが刃を握りしめたのと同時に、叫びが重要と聞いていたシェミアは普段以上に気合を入れて。
「悪夢の刈り手の名に懸けて……、悪夢の続きを見せ続ける事は許さない……！」
　２人の手にする刃が、直視できるほど強烈な光を放つ。
「尊厳を破りし死神の跋扈を！」
「この身ただ一振りの刃となりて……千地に千切れて霧散しろ……！」
　マキナとシェミアのグラディウスが魔空回廊へと突き刺さった直後、全体に亀裂が入り、大きな音を立てて瓦解していく。
　長らくこの地に留まり続けた強襲型魔空回廊は完全に破壊され、跡形もなく消え去ったのだった。

●死神、死塊
　喜びに表情が緩みかけるケルベロス達だが、周囲にはまだ死神の姿があるはずだ。
　雷光と爆炎で混乱し、スモークに包まれている状況の中、まずはこの場から離脱せねばならない。
　鬼人、ジュスティシア、憂女は腰のベルトにグラディウスを固定、ヴィヴィアンは懐に、シェミアは腰につけたポーチへとしまう。
　手早く離脱準備を進めるメンバー達の前に、ゆらりと現れる影。
『……ただ肥大するだけの存在か』
　憂女がそれに気付き、構えを取る。
　それはサルベージを繰り返したモノを、自らに取り込み続けた成れの果て。
　あまりに醜悪な見た目に、マキナは目をしかめる。
「幾度相対しても、嫌悪感が拭えないわ。これが生理的嫌悪というものかしら」
「今回の相手、生理的にものすごく気持ち悪い……」
　シェミアもまた触りたくなく、出来れば近寄りたくもない様子。
「だから……、ここで完膚なきまでに仕留めて消し去っちゃう他ないね……！」
　異形となった右腕で、シェミアは蒼い地獄の炎が刃状になった大鎌を振り上げるのだった。

　不気味に蠢く死神、死塊は死肉を鞭とし、ケルベロス達へと襲い掛かってくる。
　そいつの攻撃を箱竜、翔之助が抑える間に、真が仕掛けていく。
「そこは危ないぞ」
　死塊を牽制する為、真は硬貨型のスイッチ『Medalia』を使い、死神の身体を起爆する。
　さらに、高く跳び上がったジュスティシアが相手の頭上目掛けて……といっても、頭すらどこか判別できぬ敵だが……流星の一蹴を叩き込む。
「レッツ、ドラゴンライブ……スタート！！」
　その間に、シィカはワイルドスペースからドラゴニアンの仲間達を呼び、激しいロックを響かせ始める。
　――天高らかに。その響きが世界を変えるのだと願いを込めて。
　シィカ達の歌によって、力を得た前衛陣。
　ヴィヴィアンも箱竜アネリーに仲間の盾と攻撃を任せ、自らはエアシューズで疾走して勢いをつけ、身体を醜く膨れ上がらせた敵に一撃を叩き込む。
　それに、ジュスティシアも続き、コンバットブーツで相手を強く蹴りつける。
　直後、アネリーも属性ブレスで援護し、さらにシェミアが魔力を研ぎ澄ませながら斬りこんだ。
「心を空に、鋭き刃に……ただ一振りの刃となれ……！」
　その魔力を炎の刃……『蒼き炎獄の裁首』に乗せ、魂ごとその斬撃を繰り出す。
　だが、相手もしっかりと肉を膨張させて致命傷を避けている。
　自我すらない相手と憂女は見ているが、仮にそうでも本能で動き続けている以上油断はならない。
『……確実に進めていこう。…………疾ッ！』
　憂女は惨殺ナイフ『憂』で、斬り落としと斬り上げを一動作で行ってみせる。
　自身の翼や尻尾を使い、重心移動、姿勢制御を行うドラゴニアンの彼女ならではの攻撃だ。
　相手が僅かに怯んだところへ、怒りを燃やすマキナが肉薄して。
「死者に静かな眠りを。死神には死を……」
　尊厳を弄ぶ死神を許しはしないと、レプリカントである彼女は自らの体の一部を発射口とし、エネルギー光線を発射する。
　身体を穿たれた死塊だったが、そいつはその傷口から尖端を槍と化した死骨を突き出す。
　それに身体を貫かれた鬼人はすでに、全身を地獄の炎で包んでいた。
　日本刀『越後守国儔』を抜き、踏み込む彼は緩やかな弧を描いた斬撃を浴びせかけていく。
「…………」
　奇妙な動きを見せる死神は声すら上げることなく、なおも死肉を武器として襲ってくるのである。

　死神は言葉すら発さぬ肉塊でしかないが、魔空回廊を失ったことを感じてか、前のめりにケルベロス達を襲ってきていた。
　箱竜アネリー、ヴィヴィアンがそれを受け止める後ろ。
　メンバーの回復の合間に、シィカがルーンアックスを手に飛び込む。
「今、最高にロックデース！」
　ケルベロス達が今、勢いに乗っている状況なのは間違いない。テンションを高めたシィカが相手の肉片を切り裂き、その護りを打ち砕こうとしていく。
　のんびりしている時間はない。スモークが晴れれば、周囲の死神がこちらにやってきてしまう。そうなれば退路すら失ってしまいかねない。
　そう考えながらも、真が相手へと肉薄する。
「脆いのはココだね！」
　真は相手の肉質が柔らかい部分を見定め、オウガメタル『汞身南蛮胴具足』を纏って拳を打ち込む。
　直後、後方から、バスターライフル『J＆W2000 対物狙撃銃』を構えたジュスティシアが凍結光線を浴びせかけていく。
　アネリーの属性注入による癒しを受けながら、ヴィヴィアンは相手に幸運、博愛、希望の感情を込めて唄う。
「これから進む未来はきっと明るい光が差してる　新しい扉を今日も開けて進もう　笑顔の私を見せたいから……♪」
『この場所を返してもらうために眠っていただこう』
　浄化されてしまいそうなその曲にぐらつく敵へ、憂女がジグザグに変形させたナイフの刃で素早く斬りつけ、マキナも間髪入れずにエクスカリバールを投げつけていく。
　立て続けの攻撃にも、敵はほとんど自らの回復に執着せず、肉と骨での攻撃で応戦してくる。後がなくなって来ていることを自覚しているのだろう。
　箱竜の翔之助は属性注入でこの場のメンバーを１人ずつ癒し、さらにシィカがカラフルな爆発を巻き起こして仲間達を鼓舞する。
　彼らの支援を受けた鬼人が無名刀で死神の霊体を切りつけ、続けざまに相手の懐に真が潜り込む。
　同時に、敵の頭上からはシェミアが仕掛けていて。
「トドメだ。本体を蹴り裂いてやる……破ッ！」
「醜悪な化け物……冥府の海に沈んで還れ……！」
　そいつの腹部らしき場所に真が蹴剣を打ち込み、さらにシェミアが刃となった地獄の炎で相手の頭部らしき場所を斬り落とす。
「…………」
　身体を切り裂かれ、破壊された敵はバラバラに崩れ落ち、スモークの中へと消え去っていったのだった。

●今は後退を
　皆、改めて自身の管理するグラディウスの所在を確認し、離脱へと転じる。
　ミッション攻略中の別働隊と連絡を取ったマキナは、そちらに注意を引き付けてもらう様依頼して。
「物陰に隠れながら、移動するわ」
「ナビは私が。こちらです」
　ジュスティシアがキャプチャーインアイズで周囲を確認しつつ、仲間を誘導していく。
「出来れば、この場の捜索に当たりたかったが……」
　生存者の捜索、死者の弔い、この場のヒール。
　やりたいことはあったが、仲間に続いて退避することにした鬼人はロザリオに手を当ててから、ヴィヴィアンに笑顔を向ける。
「終わったな」
「よかった……！」
　安堵して泣きそうになるヴィヴィアンは、この場を離脱する前に犠牲者へと祈りを捧げていた。
　煙が徐々に晴れる中、メンバー達は最短距離を駆け抜けていく。
「この場所にも活気が戻るといいですね」
「……まずは、飯でも食わないか」
　戦闘区域から離脱したタイミング、憂女は普段の女性口調で本音を漏らすと、鬼人が仲間達に奢るからと食事に誘う。
　賛同したメンバーと共に彼は簡単な祝勝会を開くべく、近場の食事処へと向かっていくのだった。

作者：なちゅい	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年12月21日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 7／感動した 1／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 1
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