クリスマスを間近に控え、繁華街では今日もクリスマス商戦を繰り広げている。
あちらこちらからクリスマスに因んだ曲が流され、サンタの格好をしている店員の姿も見られる。
賑やかさに誘われたのか、大きな足音をたてながら、身長3mもある大男が姿を現した。
大男――エインヘリアルは逃げ惑う人々を見つけると、大声を出して笑いだす。
「フフフ、ハハハハハッ!」
罪人として囚われていたエインヘリアル。今こうして再び暴れられると思うと笑いが止まらない。
ひとしきり笑うと、人々を叩き潰そうと右腕を振り上げた。
「エインヘリアルによる、人々の虐殺事件が予知されました」
「忙しい時に限って、悪い予感って当たるのよね」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)の言葉に、今回の事件を予想していたレティシア・アークライト(月燈・e22396)が呟く。
このエインヘリアルは、過去にアスガルドで重罪を犯した凶悪犯罪者らしく、放置すれば多くの人々の命が無残に奪われるばかりか、人々に恐怖と憎悪をもたらし、地球で活動するエインヘリアルの定命化を遅らせることも考えられる。
「皆さんは現場に向かい、このエインヘリアルの撃破をお願いします」
セリカは集まったメンバーへと説明するべく、資料を開いた。
「現場は昼過ぎの繁華街で、クリスマスセールで人が大勢訪れています」
一般人を事前に避難させてしまうと、襲撃場所が変わってしまう。それを避ける為には、エインヘリアルが出現してから避難させることになる。
「幸い、皆さんの姿を見つけない限りは、予知通りしばらくは笑っていると思われます。その隙に避難を済ませてしまうのがいいでしょう」
如何にパニックになった人々を誘導できるかが鍵になりそうだ。
「出現するエインヘリアルは1体です。3mもある屈強な大男で、バトルオーラを纏い攻撃してきます」
このエインヘリアルは使い捨ての戦力として送り込まれているため、戦闘で不利な状況になっても撤退することはないと、セリカは説明を付け足した。
「クリスマス前に家族を失う。そんな悲しい事、何としても食い止めてください」
参加者 | |
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楠・牡丹(スプリングバンク・e00060) |
倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552) |
蛇荷・カイリ(暗夜切り裂く雷光となりて・e00608) |
翡翠寺・ロビン(駒鳥・e00814) |
多留戸・タタン(知恵の実食べた・e14518) |
レティシア・アークライト(月燈・e22396) |
天羽生・詩乃(夜明け色のリンクス・e26722) |
ルチル・アルコル(天の瞳・e33675) |
●
エインヘリアルの襲撃があると、予知があった繁華街へと到着したケルベロス達。
辺りを見渡すと、どこのお店も親子連れ、カップル、様々な人が楽しそうに商品を眺めている。
後数分もすれば、悲鳴と共に逃げ惑う人々で溢れると思うと、胸が痛む。
「罪人エインへリアルの事件も絶える気配がありませんね。皆さんが幸せなクリスマスを過ごせるように解決しましょう」
倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552)の言葉に一同頷くと、各々準備を始める。
「クリスマスにやってくるサンタクロースにしては血生臭いよねー。年末は平和に過ごすべきだよ。うん」
そう呟くのは、相棒のテレビウムであるブローラを潜伏させる場所を探しながら歩いている、楠・牡丹(スプリングバンク・e00060)。
逃げ惑う人々の中にサーヴァントが混じっていたら、どうしても目立つとメンバーで話し合った結果、避難が終わるまでエインヘリアルの目に付かないように、隠れて貰う事にしたのだ。
「師走の忙しい時期にもやってくるとは、本当に空気を読んでくれないものですね」
「ほんっと、空気読めないわよね! こんな忙しい時期に……いや、あんな奴らは年中出てこられても困るわね!」
レティシア・アークライト(月燈・e22396)と蛇荷・カイリ(暗夜切り裂く雷光となりて・e00608)が話をしている中、天羽生・詩乃(夜明け色のリンクス・e26722)はちょうどいい場所を見つけ、ライドキャリバーのジゼルカを建物の陰へと待機させる。
一緒に行動していたルチル・アルコル(天の瞳・e33675)は、ミミックのルービィをジゼルカの座席に乗せる。
「後で写真でも撮ろうかな」
ジゼルカの上に乗ったルービィを見つめながらルチルはボソリと呟いた。
ここなら大丈夫だろうと、牡丹がブローラを隠したのは、不透明なゴミ箱の中。
「ブローラはゴミ箱の中ね。動いちゃダメだよ! あ、出てきてもダメだよ! 呼ぶまでじっとしててね!」
レティシアは近くのおもちゃ屋、ぬいぐるみの並ぶ棚へとルーチェを待機させる。
レティシアが離れてから少しして、小さな女の子が、ルーチェをじっと見つめている。ぬいぐるみだと思っている女の子を驚かさないようにじっとしているルーチェ。
伸ばされた女の子の手がもうすぐ触れようかという瞬間。店の外から悲鳴が聞こえる。
「フフフ、ハハハハハッ!」
悲鳴に続いて響くのはエインヘリアルの笑い声。暴れられるのが余程嬉しいのだろう。3mもある大男が空を見上げ笑う。笑う。笑う――。
エインヘリアルが足元への注意が散漫になっている。その隙を利用しない手はない。パニックを起こしている周囲の人々を『ラブフェロモン』を振りまき魅了し、誘導していく柚子。
「あっちに逃げれば大丈夫よ」
目立ちすぎないよう注意を払いつつ、カイリは逃げる人達に声をかけ誘導していく。
「向こうまで行けばきっと安全よ!」
一般人に紛れ『隠密気流』を身に纏った翡翠寺・ロビン(駒鳥・e00814)が一言。
「皆あっちへ逃げよう、警察の人が来てくれるよ!」
「あちらに警官がいます、助けてもらいましょう」
ばらばらの方向に逃げようとする人たちを詩乃とレティシアが誘導する。
ばらばらだった逃げる人々はすぐに、川の様に一方向への流れへと変わる。その最後尾、逃げ遅れてしまう人が居ないか注意してついていく、多留戸・タタン(知恵の実食べた・e14518)。
ルチルは転んで泣きそうになっている子供の手を取り立ち上がらせると、手をつないだまま人の流れの中を一緒に走った。
「ハハハハハハ……ハハハ……フゥ。むむっ俺の獲物はどこへ消えた!」
ひとしきり笑って落ち着いたエインヘリアルは、先程までたくさんいた人が居なくなっていることに驚き、叫ぶ。
「いつまでも危険な場所に居させるわけがないでしょう」
タタンが呆れ顔で告げる。
身を潜めていたサーヴァントも合流し、エインヘリアルへと対峙する。
「ああっ! ブローラごめんね。後で洗ってあげるから」
ゴミ箱の中に居たせいで何かのソースにジュース、色々な汚れに塗れたブローラの姿に申し訳なさそうに謝る牡丹。
「悪のサンタクロースには退場してもらいましょう。そもそもトナカイ乗ってないし! ソリもないし!」
「さあ、私たちが引導を渡して、クリスマスを楽しく皆で過ごすんだから!」
「さて、じゃあちょっと、暴れてやりましょうか」
ケルベロス達は武器を構え、エインヘリアル目掛けて飛び出した。
●
「クリスマス前に惨劇は必要ありません、消えていただきましょう」
即座に地面を蹴るレティシア。空中で一回転し、落下の勢いを乗せた飛び蹴りを放つ。攻撃を援護するように、ルーチェが尻尾の輪を視界に入るようにエインヘリアルの顔目掛け放つ。エインヘリアルが輪を避けるのに気を取られた瞬間、レティシアの蹴りがエインヘリアルの肩を撃つ。
「レティシアちゃんの言う通りね」
カイリが刀を構え、神速の一突き。反撃を警戒し、すぐさま距離を取る。
しゃがみ込んで力を溜めていたタタン。ドリルの様に回転しながらの頭突きをエインヘリアル目掛け放つ。
「ちょ、ちょっとー! あ……あっー!」
攻撃を避けられ、タタンは勢いを殺すことが出来ず、店の中へと突っ込む。
「なにやってるの」
タタンへの追撃を封じるように、ロビンがフォローに入る。ドラゴニックハンマーを構え、エインヘリアルの脛目掛け、フルスイング。
「グアアアアアアアッ!」
脛を抑え片足で跳ねるエインヘリアル。その一歩一歩で地面が揺れる。
「痛そうね……っと今のうちに」
柚子とウイングキャットのカイロがこの隙に、支援を展開する。
「その足狙ったら転んだりしてくれないかなぁ」
狙いすましたような牡丹の一撃が、もう片方の足の脛を直撃する。
「ウオォォォオオ!?」
バランスを崩したエインヘリアルはズシンと大きな音を立て、尻もちをついた。
「これはチャンスかな? ジゼルカ!」
詩乃の音速の拳がエインヘリアルの腹へとめり込む。続いて詩乃の呼びかけに合わせ、ジゼルカが炎を纏い突撃。
「このっ! なめやがってー!」
「うっ!」
エインヘリアルの反撃を受け詩乃が宙を舞い、地面へと叩きつけられる。
遠目に様子を見ていたルチルは、一撃の重さを感じ、守りを固める為ドローンを展開する。
再び立ち上がったエインヘリアルへ、レティシアが斧を振り下ろす。ルーンの呪力が込められた一撃が敵を斬り裂く。それに続くカイリ。空の霊力を帯びた一撃が傷跡を更に斬り広げる。
「今度はしっかり当てますよー。ジョナ、合わせて!」
タタンの言葉にミミックのジョナ・ゴールドは慌てて林檎飴型こん棒を具現化し、タタンの背中を追いかける。
「でやああぁ!」
タタンとジョナ・ゴールドのハンマーがエインヘリアルを撃つ。
反撃に繰り出されるエインヘリアルの拳。
「タタンさん危ない」
拳がタタンへと届くより早く、柚子が割り込みそれを受け止める。
「ありがとうござます!」
●
「舐めないでちょうだい」
叫びと共に、自らを回復させるロビン。油断したつもりはない。しかし今まで前線で戦っていたケルベロス達を相手にしていたエインヘリアルが、ロビンに目掛けて急遽放った攻撃に反応しきれずに直撃を貰ってしまった。完全に癒えたわけではないが、動けないわけじゃない。一度距離を取りつつ様子を窺う。
牡丹の放った凍結光線がエインヘリアルの熱を奪い、ブローラが具現化した武器を手に飛びかかる。
続いて腕をドリルの様に回転させ、胴目掛け一撃を放つ詩乃。更にルービィが足に喰らいつく。
「ロビン大丈夫なのか?」
「わたしなら平気よ。そうたやすく吹き飛ぶほど、か弱くないって知ってるでしょ」
「そうは言うが、怪我は放っておけないだろう」
「まあ……そうね」
仲間達が休みなく攻撃を加えて注意を引いている隙に、ルチルのオーラがロビンを包み傷を癒していく。
「いい気になるなよっー!」
エインヘリアルの叫びが建物のガラスを震わせる。突然の事に一度距離を取るケルベロス達。エインヘリアルはその隙にオーラを身に纏うと、傷口が徐々に塞がっていく。
このタイミングでの回復行動。相当に追い詰められているに違いない。
「相手の限界が近いようよ。一気に決めましょう」
「分かった」
「まかせて」
レティシアの言葉に皆が頷く。
「霧よ、密やかに応えよ。恋毒を纏いて、彼の者の核を穿て」
真白な霧が辺りを包むと薔薇の香りが漂う。霧はやがて一か所へと集まり、一本の針へと姿を変えると、エインヘリアルを貫いた。
「我が身模するは神の雷ッ! 白光にッ、飲み込まれろぉッ!」
自らを雷とし、カイリがエインヘリアルを引き裂き爆ぜさせる。続いてタタンの回転頭突きがみぞおちに。更に柚子の放った星形のオーラがエインヘリアルに襲い掛かる。
「あなたの鼓動を、たべさせて」
火の玉を拳に纏い、ロビンが思い切りぶん殴る。離脱を確認し、牡丹がバスターライフルの引き金を引く。放たれた魔法光線がエインヘリアルを飲み込んでいく。
「機能展開、解析回路拡張――承認。シノ、わたしの機能をおすそ分けだ!」
「――ありがとう、ルチルさん!」
ルチルの支援を受け、詩乃が右腕を突き出す。
「兵装展開……魔術回路、および神経回路接続完了。ジェネレーターフル稼働、……これが私たちの、全力だよ! ムーンライト!!」
身の丈を超えるほどの巨大なエネルギーソード。構え、ブースト点火。一気にエインヘリアルの懐へ。
「ぐがぎゃあああぁあ!!」
超高出力の斬撃が叩き込まれ、エインヘリアルが断末魔の叫びをあげる。
剣の形を維持できなくなったエネルギーが空気中に霧散していく中、エインヘリアルの身体もまた光の粒子となって消滅したのだった。
●
警察の元へと事件の収束を報告しに行っている間、柚子は周囲の戦闘跡を修復していた。景観に影響が出ないように気を付けるが、どうしても幻想化してしまうのは仕方がない事。
「クリスマスですから、少しくらい幻想的な方がロマンティックでいいのかもしれませんね」
――開き直ることにした。
「これからどうしようかしら?」
事後処理を終え、あとは帰還するだけ。しかし折角集まったのだしもう少し何かしたいとカイリが皆に尋ねる。
「それなら、どこかお店に入って女子会なんてどうですか?」
『賛成ー』
レティシアの提案に、反対する者は居なかった。
ケルベロス達はまずはお店探しと、活気を取り戻した繁華街へと消えていった――。
作者:神無月シュン |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年12月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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