妖精の剣士は狂気に囚われて

作者:青葉桂都

●エインヘリアルを狙う者
『太陽の騎士団』の宿舎へ向かって、シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)は道を歩いていた。
 小さな胸をはり、まっすぐ前を見て進む彼女の髪では、冬の寒さにも負けずにヒマワリの花が咲き誇っている。
 もうしばらく行けば、宿舎の周りに広がるヒマワリ畑の柵が見えてくるはずだ。歩きなれた場所だが、残念ながら今日は知った顔が通ることもない。
「……? 知らない顔も、今日は見かけんな」
 シヴィル本人以外、誰も通っていない。
 一瞬首をかしげたが、そんな日もあるかと彼女はすぐに結論づけた。
「別にこの道を通らねばならぬ法があるわけでもないからな」
 だが、呟いた次の瞬間、シヴィルはこれが異変だとはっきり理解した。
 強い殺気を背後から感じたのだ。
「誰だ!」
 迷うことなく武器を構えたシヴィルの前に、褐色の肌を惜しげもなく冬の空気にさらした女が現れる。
 下着と見間違えそうな、エキゾチックな装飾を体にまとわせた女。
 閉じた片目には赤い傷跡が走っている。
 彼女もまた、すでに幅広の片刃剣を構えていた。
「見つけたぞ、エインヘリアル……」
「な……私のどこがエインヘリアルに見える! ふざけたことを言うな!」
 誰がどう見ても、シヴィルが2mを超す体格の戦闘種族には見えないはずだが、女は気にする様子もない。
「エインヘリアルは……すべて斬る!」
 狂った目をした女には、シヴィルの言葉は届かないらしい。
 薄紅色をした布を炎のごとく舞わせながら、女は斬りかかってきた。

●救援要請
 集まったケルベロスたちに、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)はケルベロス襲撃事件が起こることを告げた。
「今回狙われるのはシヴィル・カジャスさんです。現場は旅団の宿舎へと向かう途中の路上になります。敵はカーリナという名のシャイターンのようです」
 いかなる理由かはわからないが、カーリナはエインヘリアルを狙っているらしい。
「デウスエクス同士で勝手に倒しあってくれるならむしろ望ましいとも言えるのですが、困ったことにカーリナはカジャスさんをエインヘリアルと勘違いしているようなのです」
 もちろん、シヴィルはどこからどう見てもエインヘリアルには見えないはずだ。もしかすると、人型の生物はすべてエインヘリアルに見えているのかもしれない。
「なんにしても、ケルベロスが襲撃されることを見過ごすわけにはいきません」
 すぐに連絡を取ろうとしたが、残念ながらシヴィルにはつながらなかったという。
 彼女が無事なうちに、助けて欲しいと芹架は言った。
 ヘリオライダーは戦場と敵について詳しく語り始めた。
「現場は『太陽の騎士団』宿舎から少し離れた場所にある路上です」
 敵は単独で行動しており、配下は連れていない。
 また、周囲に人影はないので誰かを巻き込む心配もない。
「シャイターンのカーリナは、主に手にした曲刀による攻撃を行うようです」
 血の華を咲かせるような激しい連続攻撃は、追撃を伴って大きなダメージを与えてくる。
 また、切り裂くと同時に刃の摩擦で炎を起こす技も使えるようだ。
 これらはいずれも近接攻撃だが、ならば離れていれば安全かというとそうでもない。装飾品に結びつけた布を陽炎のごとく揺らめかせ、見た者たちを眩惑して催眠状態にする技も使ってくるからだ。
「眩惑の技は複数の対象に有効なので注意してください」
 芹架は最後にそう告げた。
「カジャスさんを助けなければいけないのはもちろんですが、もしすべての生き物がエインヘリアルに見えているのだとしたら、被害はさらに広がることになります」
 必ずここで止めて欲しいと、芹架は言った。


参加者
シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)
大神・凛(ちねり剣客・e01645)
大粟・還(クッキーの人・e02487)
ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)
クーゼ・ヴァリアス(竜狩り・e08881)
ベルーカ・バケット(チョコレートの魔術師・e46515)
村崎・優(未熟な妖刀使い・e61387)
ライスリ・ワイバーン(外温動物料理人・e61408)

■リプレイ

●騎士団参上!
 シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)とシャイターンのカーリナが対峙している場所は宿舎からさほど離れてはいなかった。
 けれども、助けを求めに行くことはできそうにない。
 長いようで短い沈黙の対峙を破ったのは、1人の女性だった。
「人が丹精こめて世話をしているヒマワリ畑で暴れているのは誰ですか? ここでの狼藉はこの私が許しません!」
 颯爽と現れたのはロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)。
 だが騎士の威風をまといつつ、彼女が身につけているのは鎧ではなかった。
 動きやすそうな野良着を着たロベリアは、背負った大きな籠から大輪のヒマワリを取り出して、二刀流の構えを取る。
「ロベリア!」
「また団長が騒ぎを起こしたようですね」
 シヴィルに呼びかけられたロベリアが嘆息する。
 カーリナが後方へと跳躍した。
「助けに来たよ! 団長!」
 横合いから飛び込んできた長身の男は、飛び蹴りをかわされたことを気にするよりもまず、シヴィルの無事を確かめた。
「大丈夫か? 団長。ここは我々も加勢する! 先ずは一旦立て直しを!」
 さらに後方からモノトーンのドレスを着た女性も駆け寄ってくる。
「クーゼ! ベルーカ! 他のみんなも、来てくれたのか。ありがたい!」
 太陽の騎士団のメンバーであるクーゼ・ヴァリアス(竜狩り・e08881)やベルーカ・バケット(チョコレートの魔術師・e46515)、さらに数人がシヴィルを守って周りを囲む。
「礼には及びません。シヴィルさんには何度か助けていただいていますし、今度は私がお助けする番ですね」
 大粟・還(クッキーの人・e02487)もロベリア同様動きやすそうな格好をしたままでシヴィルに言う。
「エインヘリアルどもめ……何人来ようが、私は負けはしない……!」
 集まってきたケルベロスたちを見て、カーリナが言う。
「エインヘリアルに恨みがある、か……その気持ち、よくわかっているよ。だが、復讐すべき対象さえ見分けられないなら、ただのボケだ」
 村崎・優(未熟な妖刀使い・e61387)は両手に喰霊刀と我零刀を構えると、その刀身をこすりあわせた。
「貴様の宿願僕達が果たすから、大人しく斬り伏せられるがよい」
 シャイターンと同じく、優もまたエインヘリアルに恨みを抱いている。手にした刀はその恨みの証でもある。
 そんな想いを知ることなく、敵は『エインヘリアル』たちに向かって刃を振り上げた。
「狂ってしまったの者は、しょうがないな。せめて、私たちの仲間に危害を加えるのであれば容赦はしない。いくぞ!」
 同じく二刀流の剣士である大神・凛(ちねり剣客・e01645)がカーリナを迎え撃つべく前進する。
「装甲の調子は……完璧! よしーライスリ、出撃!」
 巨漢のドラゴニアン、ライスリ・ワイバーン(外温動物料理人・e61408)は大きく翼を広げて跳躍する。
 そして、戦いが始まった。

●狂気の剣戟
 カーリナの動きは、狂っているにも関わらず、踊るような華麗なものだった。
「死ねぇぇぇっ!」
 華麗で、しかし殺意に満ちた剣はケルベロスたちに襲いかかる。
「待たれよ! シヴィル団長が、貴殿に話したいことがあるというぞ?」
 ベルーカが必死に呼びかけるが、聞く耳を持っている様子はない。
「もう少々、待ってはいただけぬか? 我々は、敵では無い! 聴いてはいただけまいか?」
「話すことなどない!」
 迷いのない言葉でカーリナはベルーカの言葉を切り捨てた。
「この様子……エインヘリアルを恨んでいるというのは、どうやら本当のようだな」
 シヴィルはかばってくれたクーゼの後ろから、カーリナへと近づいていく。
 侵略者同士である他のデウスエクスをこれほどまでに憎む敵は、そういない。
「エインヘリアルを恨む者同士、共に手を取り合って戦うということはできないのか?」
 だから、シヴィルは思わず普段なら考えもしないような提案をしてしまった。
 答えの代わりに、刃が飛んでくる。
 鎧の上で刃が火花を散らし、シヴィルの体が炎に包まれた。
「やっぱりな。狂った人には話は通じないだろう……」
 ライスリの一言を聞いて、彼女は息を吐いて頷いた。
「そうだな……聞く耳持たない、か。ライスリ、君の言うとおりだ。ならば、仕方がない。仲間たちのためだ。斬り捨てる!」
 人々を守る騎士として、凶行を見過ごすわけにはいかない。
 決意を込めて、シヴィルは太陽の黒点をイメージした大剣を構えた。
「それじゃ支援するよ、シヴィルさん」
「私もです。黄金の果実を受け取ってください、団長」
 ロベリアの手にしたヒマワリから果実が生み出されて、前衛たちに加護が与えられた。
 それにあわせ、ベルーカも星座の結界を展開し、還が癒しの時間を提供してシヴィルの体を覆う炎を消している。
 回復を行う間に他の仲間がカーリナへと攻撃を行う。
「我が九重流双剣術、見切れるかな?」
 クーゼと凛の手にしている刀が、それぞれ雷を帯びた。クーゼの攻撃は敵を貫いたものの、続く凜の刺突はカーリナの羽衣に絡めとられてかわされてしまう。
 刺さったその傷跡を、シヴィルが惨殺ナイフでジグザグに切り裂いた。
「厄介な相手みたいだな……でも相手も剣士なら、うん……優、お前の出番だ、しっかりやれよ」
 ライスリは中距離から攻撃する機を図りながら優へと告げた。
「ああ……言われるまでもないっ! っ゛ら゛ぁん゛うぅけ゛えええええええっ!!!」
 叫ぶような言葉の前半はなんとか聞き取ることができたが、後半は無理だった。
 右眼に紫の炎を宿し、優が喰霊刀を突き出す。切っ先が防ごうとしたカーリナの刃と一瞬触れ合うが、それでも彼の刀は彼女の肩に突き刺さった。
 十分に命中したとは言い難いが、それでもダメージは与えたはずだ。
 その間にライスリは皮膜の翼を広げて宙へと舞い上がっていた。
「狩りの時間だ! 急上昇、急降下爆撃機に如く! ゼロ距離の全力ファイヤー!」
 空中で反転すると、ライスリはカーリナめがけて一気に降下した。
 その間に彼は大きく息を吸う。
 褐色の顔を間近に睨みつけ、全力で業炎を吐き出した。
 爆発的な炎に乗って再度上昇したライスリは、再び敵から距離を取った。
 カーリナはケルベロスたちの間を炎のごとく踊りながら曲刀を振るう。
「目を覚ませ!」
 そう告げて殴りつけたライスリの拳を受けても変化はない。
 幾度目か、シヴィルへとカーリナの剣が放たれる。
 ロベリアは盾を構えて2人の間に割り込んだ。
「団長を傷つけさせはしません!」
 軽妙な動きから放たれるその一撃が、非常に重たいことをロベリアはもう知っていた。
 防ぎきれなかった刃が肌に食い込んで、周囲に血の華を作り出す。
 だが、仲間たちを、そしてシヴィルを守るのが彼女の役目だ。そう簡単に倒れるわけにはいかない。
 大輪の向日葵を支えにロベリアは全力で敵と向き合い続けた。
 紋章が刻印された大盾を持つ手に力を込める。
「吹き飛べ!」
 愚直に前進する盾が曲刀でいなされそうになるが、力づくで無理やり押しつける。衝撃を受けたカーリヤが一瞬だけよろめいたが、直撃したとは言い難い。
「いいぞ、ロベリア。そのまま抑えていてくれ! カジャス流奥義、サン・ブレイク!」
 だが、続くシヴィルの攻撃が痛烈に敵を切り裂いた。
 傷口から吹き出す太陽のごときエネルギーに押される形でロベリアは少し距離をとる。
 敵の攻撃は確実にケルベロスを捉え、しかし反撃は3度か4度に1度は外れている。
 クーゼやロベリア、そしてクーゼのウイングキャットであるシュバルツが戦線を支えているが、それもいつまで保つことか。
 非物質化した凜の得物が霊体を汚染破壊するが、敵は毒に侵されても手を止めない。
 また振るわれた曲刀で炎に巻かれ、クーゼが一歩後ずさる。
「っと、流石と言うべきかな? けど、こんな程度じゃあ俺一人倒せやしないぞ」
 強がって見せるが、余裕がないことは間違いない。
 還は敵の攻撃をひきうけている仲間たちを回復していた。
 身につけたオウガメタルに力を込める。
「来さまい、来さまい、彼の者を護りたまえ、百歳を生きさせたまえ」
 無数の銀の蝶が金属生命体より現れる。
 蝶はクーゼの長身を包んで、癒していく。
「助かるぜ、還」
「礼は不要です。今日は団長への恩返しのつもりで来ておりますから。るーさんも、回復に回ってくれる?」
 敵を狙い撃っていたウイングキャットに声をかけると、翼を広げて癒しの風を起こす。
 戦いはまだ終わりそうになかった。

●終わる狂気
 攻撃衝動のままに振るわれる刃だけでなく、それに紛れて踊る羽衣が悪意をもってケルベロスたちをとらえる。
 もっとも最初に付与した加護のおかげで味方に攻撃してしまう状況にはなっていない。
「さっさと死ね! エインヘリアル!」
 凜に向かって振り下ろされた刃をシュバルツがかばった。断ち切られたウイングキャットの姿が消え去る。
 ケルベロスたちが反撃に移る。
 優は黒影の刃と透明な刃をカーリナへと突き立てた。
 ライスリが時折散布するオウガメタル粒子が彼にも降り注いできて、感覚を高めてくれている。そのおかげで、電煌のごとく刃は深々と敵を貫く。
「頭を冷やせ! このマヌケがぁ!」
 叫びと共に、魂までも痺れさせる呪詛を優はぶち込む。
 幾度も仕掛けた呪詛はカーリナの体を蝕んでいるはずだが、止まる様子はない。
 ベルーカの与えた毒や氷も、徐々に敵の体力を削り取っていっていた。
 そのままさらに、中衛たちは攻撃を重ねていく。
「目を覚ませないっていうんなら、俺たちにできることは1つだけだぜ!」
 ライスリが尻尾を動かして敵を爆破し、彼のボクスドラゴンであるタービンがブレスを放って攻撃する。
 ベルーカは九尾扇の要をはずした。
「流星雨の名において……!」
 空中にばらした扇を投げあげると、その骨が雨のように降り注ぐ。
 すでに仲間たちがシャイターンに刻んでいた傷跡を貫いて広げ、呪詛や氷、敵を縛るすべての効果を増していく。
 ケルベロスたちの体力も危険な域に達していたが、カーリナも傷ついているのは同じ。
「まったく、書き込みが追いつきませんね」
 還が改造スマートフォンで心温まるエピソードを書き込み続け、守りを固めていたおかげでどうにかロベリアとクーゼは踏みとどまっていた。
 やがて、終焉の時は訪れる。
「エイン……ヘリアルゥゥゥ!」
 怒声と共に突きだした刃をロベリアが盾で受け止める……だが幾度も攻撃を受けていた大盾ごと、彼女は胸を貫かれた。野良着に血の染みが広がり、倒れる。
「すみません……団長。最後まで守り切れず……」
「気にするな! ……よくも仲間を!」
 シヴィルの怒りなど気にする様子もなく、カーリヤはそのままさらに彼女を狙う。
 クーゼはロベリアに続いて、曲刀の前に飛び出した。
「貴様から死にたいのか、エインヘリアル!」
「だからッ、俺はエインヘリアルじゃないって言ってるだろうがッ!」
 受け止めようとした斬霊刀をすり抜けてクーゼを切り裂く。だが、浅い。青年を倒すほどの威力はない。
「団長、合わせるよ! 解いて紡いだ雲霞よ映せ、出でよ煉獄!」
 縁から来た炎が、空を紡いで真紅の炎として顕現する。
 視界を遮るつもりで顔のあたりに放った炎が本当に目隠しになったかどうか、確かめている余裕はなかった。
 クーゼが攻撃をしている間に、シヴィルは黒天の切っ先にエネルギーを集めていた。
「感謝するぞ、クーゼ。エインヘリアルへの恨みは貴様に代わって私が晴らしてやる。だから、安心して逝くが良い!」
 振り下ろした剣から太陽の如きエネルギーが敵の体内へ注がれ、そして内部で弾けて痛打を与える。
「盲目もそろそろ目を閉ざす時間だ。むしろ、何も見えない方が幸せかもな?」
 無残な傷跡をさらすシャイターンへとクーゼは声をかけた。
「――黙れ!」
 それでもなおカーリナは剣を振り上げる。
 だが、再度の攻撃を行うだけの時間を与えるわけにはいかなかった。
 凜はほのかにピンク色に輝く二刀、白妖楼と黒楼丸を手に敵へ接近する。
「貴様の過ちはココで終わる! 双龍疾風!」
 大神家に伝わる剣術は神速でもってシャイターンへ襲いかかる。
 名のごとく疾風の速度で美しき刃がカーリヤを切り裂き、ついにその剣を止めていた。

●心に刻む姿
 曲刀が道路に突き刺さり、もうカーリヤは動かなくなった。
「ふぅ……無事終った、ようではあるな」
 ベルーカが大きく息を吐く。
「狂わなかったらこいつは、どういうやつだったんだろうな? カジャス、無事で何によりだ」
 疑問を浮かべながらも、凜は刀を収めてシヴィルの無事を喜んでいた。
「ヒマワリにも被害が届かなかったようでなにより、と言いたいところですが……ロベリアさん、大丈夫ですか?」
 倒れたままのロベリアに還が歩み寄る。
 シヴィルをはじめ、他の者たちも心配げな表情で彼女の周りに集まった。
 手当てをしている間に、ライスリはカーリヤの死体に近づいていた。
「……よし、墓を作ろう」
 ドラゴニアンは装甲の中で呟く。
「ま、同情できるところもありそうだからね。いいんじゃない。僕はその間に、周りをヒールしておくよ」
 同じくエインヘリアルに恨みを抱いている優が頷く。
 刻むべき言葉は、『エインヘリアルとの戦争で戦死した妖精の剣士』……。
「それだけでいい……それだけで……うん……」
 ロベリアの手当てが終わるころ、墓も完成していた。
 ライスリは静かに黙祷をささげる。
「……あれ、ちゅ……え、まさか……ま、もう慣れた……いつものくあああああああああああ」
 爆音が背後から響く中で、ようやくロベリアも意識を取り戻した。
 戦闘不能になったが重傷には至っていないようだ。
「よーし、完全……とは言えんが勝利ッ! 皆、お疲れ様だ!」
 クーゼが仲間たちに呼びかけた。
「すみません、ご心配をかけて……」
「謝るとしたら私のほうだ。みんな、助けに来てくれて本当に助かった」
 詫びるロベリアにシヴィルが告げる。
「しかし、親しい者たちをデウスエクスに奪われた過去がある私も、一歩間違えればあのような狂った姿を晒していたのかもしれないな」
 ライスリが作った墓に目をやり、シヴィルが呟く。
「そうならなかったのは、心優しい仲間たちの存在に、地球というこの暖かい星に生まれたおかげだろうか」
「ならなくてよかったさ。戦うべき相手を見失い、ただただ戦い続けるだけなんて、死んでいるのと何ら変わりはしない」
 クーゼがシヴィルに声をかけた。
(「俺たちは、いつだって自分の意思で戦っている。願わくば、この目に偽りを移す日が来ないことを」)
 デウスエクスとの戦いがいかに苛烈でも狂気に陥り目的を見失ってはならないのだと、クーゼは……そして、仲間たちは心に刻んだ。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年12月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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