巨大花の襲撃

作者:零風堂

「な、なんだアレはー!?」
 魔空回廊から出現した巨大な攻性植物が、大阪市の商店街に襲いかかる。
 ふわふわと浮かんだ肉厚の花びらからは無数の根が触手のように伸びており、ナイフのように鋭い先端がいとも容易く逃げ惑う人々を刺し殺し、吸収していく。
「……」
 攻性植物は屋外に居た人や、逃げようと飛び出してきた者を一通り殺しきると、アーケードの屋根を破壊しながら進み、商店の窓や壁を破壊し、中の人々をひとり、またひとりと殺害していった。
 こうしてその商店街に居た人々は、無残にも殺し尽くされてしまうのだった。

「大阪城周辺に抑え込まれていた攻性植物達が動き出し、大阪市内への攻撃を開始したようです」
 既に話を聞いていたり、実際に関連する依頼に出向いた方もいるかもしれませんが、と前置きして、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は集まったケルベロスたちに話し始める。
「敵はおそらく、大阪市内で多数の事件を発生させて、一般人を追い出してしまおうと考えているのでしょう。そうして大阪市内を拠点の中心として少しずつその規模を広げていこうという動きのようです。速さのある大規模な侵攻ではありませんが、このままでは敵の拠点が広がり、ゲート破壊の成功率も、徐々に下がってしまうことでしょう」
 それを防ぐためにも、敵の侵攻を確実に潰していきたいとセリカは言う。
「今回現れる敵は、サキュレント・エンブリオと呼ばれる巨大な攻性植物で、魔空回廊を通じて大阪市内のとある商店街に出現する事が予知されています。買い物客や商店の皆さんに被害が出る前に、この敵の撃破をお願いします」
 セリカはそう言って、詳しい状況についての説明を始めた。
「撃破目標であるサキュレント・エンブリオは1体のみで、配下はいません。出現する位置はハッキリと確認できていますので、周辺住民と商店街の方々の避難は事前に行えることになっています」
 それは助かると、話を聞いていた何人かのケルベロスが、ホッとした表情で胸を撫で下ろしていた。
「ですが、巨大な敵との戦闘になりますので、商店街の屋根や看板、商店の建物そのものへの被害はどうしても出てしまうでしょう。それを抑えるためには、短期決戦での撃破が望ましいと思います。商店の壁や屋上、或いは周辺の電柱などを利用して戦場を立体的に使うことが出来れば、有利に戦えるかもしれません。建物の被害は、最終的にはヒールで回復することになりますが、素早く撃破し、損傷を減らすのは良いことでしょう」
 ならば出来るだけ迅速に倒してやろうと、ケルベロスたちも意気込みを見せる。
「多くのケルベロスの皆さんが、この大阪城周辺の攻性植物の動きを警戒してきたお陰で、敵の動きを事前に察知することができました。この成果を無駄にしないためにも、敵の撃破を、どうかよろしくお願いします」
 セリカはそう言って一礼し、ケルベロスたちを激励するのだった。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
暮葉・守人(迅雷の刃・e12145)
ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)
アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)
篠村・鈴音(焔剣・e28705)
時雨・バルバトス(居場所を求める戦鬼・e33394)
風陽射・錆次郎(戦うロボメディックさん・e34376)
鷹崎・愛奈(死の紅色カブト虫・e44629)

■リプレイ

「でっけー攻性植物だな」
 魔空回廊から出現した巨大な攻性植物が、大阪市の商店街に襲いかかる。
 だがそれを待ち受けていたのは無力な大阪市民ではなく、時雨・バルバトス(居場所を求める戦鬼・e33394)を始めとする武装したケルベロスたちだった。
「ぬぅ、人々を先に避難出来たのは良いが……」
 アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)が光の翼を羽ばたかせ、商店街のアーケードの上に立つ。
 そこから見える巨大な攻性植物――サキュレント・エンブリオは、ふわふわと浮かんだ肉厚の花びらから無数の根を触手のように伸ばしており、ナイフのように鋭い先端が、獲物を探すかのようにうねうねと蠢いていた。
「ここをそのままにしては邪悪な奴らの思う壺よ。なんとしても取り返さなくては!」
 アデレードは手にした大鎌に炎を宿らせ、巨大な花びらに攻撃を開始する。叩き付けた一撃と共に炎が広がるが、その巨体には大きな影響は無いように見えた。
「射殺せ――」
 暮葉・守人(迅雷の刃・e12145)は黒塗りの鞘に小太刀を納め、気を濃縮させていく。地上の少し上をふよふよと漂う敵の根が、間合いに入るまであと少し……。
「雷光!」
 敵が刃の間合いに入った瞬間に、気と雷光が爆発するように解き放たれた。威圧感すらある斬撃が何本もの根を裂き、ばらばらと地面に散らしていく。
「…………」
 フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)の様子が変わっていく。前頭葉の地獄を活性化させつつ、金色の瞳が開かれる。狂気すら感じる笑みと共に、額からは地獄の炎が迸って見えた。
 ――っどん!
 フラッタリーの狂気は空間を歪め、サイコフォースの力となって炸裂する。触手の先端を灼き焦がされ、サキュレント・エンブリオは微かに触手をうねうねと蠢かせた。
(「これだけの質量……、でも!」)
 篠村・鈴音(焔剣・e28705)が商店の屋上から飛び出し、足を振り上げる。
「動くなッ!」
 無数の弾丸を蹴り飛ばし、ショットガンのように拡散させて撃ち出した。ばら撒かれた弾丸が敵の花びらや触手を穿ち、無数の傷を刻んでいく。
 ふわりと着地し、鈴音は素早く壁を蹴ってジャンプする。まだ攻撃の効果は大したことが無いだろう。しかし積み重ねれば、必ずその成果が現れるはずだと、強い意志を胸に抱いて鈴音は駆ける。
「むむ……、邪魔なのですよ!」
 ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)は玩具のようなハンマーを変形させ、砲撃体勢を取っていた。狙いを付け、力を込めて撃ち出そうとするが……、まだだ。まだ撃たない。
「まだ出てくるんだね、サキュレント・エンブリオ!」
 ヒマラヤンの視界には、空を駆ける赤い閃光、鷹崎・愛奈(死の紅色カブト虫・e44629)が映っていたのだ。空中から炎を蹴り出す愛奈だが、敵は触手を立ててこれを防御しようとする。
 どぉん!
 そこにヒマラヤンの轟竜砲が炸裂した!
 防御に立てられた触手を根元からぶち砕いて、愛奈のグラインドファイアが花びらを襲う。サキュレント・エンブリオは苦しそうに巨体を震わせて……。
 ががががががっ!
 商店街のアーケードや商店の屋根ごと、愛奈はじめ前衛陣を巻き込んでぶちかましを仕掛けてくる!
「もう寒い時期なのに、元気なもんだよね」
 風陽射・錆次郎(戦うロボメディックさん・e34376)は瓦礫と共に地面に落ちた仲間たちに向けて、急ぎ取り出した黄金の果実の輝きを振り撒き、その傷を癒していった。
「まぁ、この方が潰し甲斐があるか。簡単に壊れねぇでくれよ」
 バルバトスは不敵な笑みと共に斧を構え、触手の攻撃を気にすることなく接近を開始する。無数の触手が鞭のように振り下ろされるが、バルバトスは斧の柄で弾き、刃で受け弾いて突き進む。しかし触手の数は圧倒的で、何発かは捌き切れずに先端の刃がバルバトスの身体を裂いていくのだった。

「そなたらのような邪悪なものに、この美しきチキュウは過ぎたるものよ!」
 サキュレント・エンブリオは次々に商店や看板を破壊していく。アデレードはまだ壊されていない商店の屋上に降り立つと、ライトニングロッドを振り上げた。
「早々に立ち去るが良い!」
 杖からほとばしる雷を、撃ち落とすように敵へと叩き付ける。ばちばちと雷の余波が広がる中で、サキュレント・エンブリオは触手を振り回し始める。
「ぬっ!?」
 触手はまるで刃の嵐のように駆け巡り、ケルベロスたちを薙ぎ払っていく。
「い、急がないと~」
 錆次郎は急いで次の黄金の果実を生成し、仲間たちの治療に駆け回る。建物が崩れ、仲間たちも攻撃しやすい位置に移動しているので、自分もそれに合わせて動かなければうまくいかないのだ。錆次郎は焦る思考を必死に落ち着かせながら、敵と味方、それぞれの陣形の位置を把握しながら戦場となった街を走る。
「……っ」
 落ちて来たうどん屋の看板を蹴飛ばして、守人は敵に肉薄する。乱れ波紋の美しい刃が描くは月光の煌めきの如く、鋭い斬撃で触手の根元を薙ぎ払っていった。
「――!」
 そこへフラッタリーが、狂った言葉と共に降ってきた。どこをどう跳ねたのか、素早い動きでサキュレント・エンブリオに迫り、黒檀の巨腕で思い切り殴りつけていた。
 ずしん。と敵の巨体が僅かに揺らいだような、そんな風に感じる程に強烈な一撃だった。
 その間に鈴音が壁を蹴り、まだ崩れていないアーケードの上に飛び上がる。足を止めずに踏み切って更に跳び、敵の頭上からオーバーヘッド気味に、旋刃脚を浴びせかける。
 べりっと花びらの一枚を裂き千切り、鈴音は地面に着地する。
 着地の瞬間を狙って何本かの触手が伸びてきたが、それはキャットリングがぶつかって弾いた。
 ヒマラヤンのウイングキャット『ヴィー・エフト』が、援護してくれたらしい。ヒマラヤンは相棒の活躍に、小さく頷き――。
「冷式誘導機全機準備完了。さあ、突撃するのですよ!」
 グラビティ製の小型ミサイルを連続で突撃させていった。猫の模様が入った愛らしい飛行機のようなそれは、サキュレント・エンブリオにぶつかっても爆発はせずに、その部分から凍りついていく。
「おばあちゃんが言っていた。『美味しい料理は下準備と手際の良さが大切』ってね」
 愛奈が武器から光の刃を射出して、サキュレント・エンブリオを縫い留めるように突き刺していく。
「これだけでかいと当て放題だな。まぁ、その分タフそうだが!」
 そうして生まれた隙にバルバトスが、斧を全力でぶつけて攻撃を開始していた。

 巨体が暴れ回るせいで、どうしても建物に被害が出てしまうが……、戦闘はケルベロスの優位に進んでいた。
「これでも喰らうがよい!」
 アデレードが大鎌に炎を纏わせ、自身の落下スピードも乗せた一撃を叩き込む。
 地上では守人が影の刃を生み出して、密やかに触手を薙いでいた。
「こいつでどうだ!」
 バルバトスは超至近距離から地獄の炎弾をぶち込んで、迫り来る触手を焼き尽くしていく。自身に刺さるのが早いか、触手が焼け落ちるのが早いかの勝負だが、辛うじて敵の攻撃が収まるまで炎を撃ちまくることができた様子だった。
 フラッタリーは黒炎の双腕を顕在させ、周囲を駆けまわりながらあるものを探していた。
 敵が胞子をばら撒く場所……、胞子嚢のようなものが無いかどうかだ。
 戦闘中に可能な限り、様々な角度から見てみたものの、どれがその器官に当たるかは分からない。
 ならば――。
「――!」
 サキュレント・エンブリオに獄炎の縄を飛ばして絡みつかせ、空間に縛りつけていく。
 しかしそれでも敵はもがき、鋭い触手を愛奈に突き刺してきた。
「いけない!」
 錆次郎がFIRST AIDを展開し、腕に仕込まれた機械で適切な処置を施していく。それは見た目は幾らか怪しかったものの、愛奈に再び力を取り戻させる。
 何とか傷口を塞いで立ち上がった愛奈は、両手を挙げて武器を掲げた。
「いくら敵が大きかろうが、こっちも大きくなれば関係ないよ!」
 そしてなんと、愛奈が光の巨人に変身する!
 何を隠そう、マインドインフィニティの効果である。光を纏った愛奈が突撃し、サキュレント・エンブリオの花びらがぶちぶちと打ち砕かれていった。
「もうひと押しなのですよ!」
 ヒマラヤンが石化の魔力を展開し、ペトリフィケイションを発動させる。根元からパキパキと、石化していくサキュレント・エンブリオ。
「これで終わりだ!」
 鈴音が地を蹴り、紅き刃の『緋焔』を振り上げる。刃に霊力を込めて振り下ろした一撃が、サキュレント・エンブリオを断ち――。
 その躯から、無数の胞子を放出させたのだった。

 フラッタリーは植木鉢を取り出して、植物を胞子に触れて確保を試みる。
 錆次郎も攻性植物に捕食させ、様子を見ようとした。
「…………!?」
 しかし胞子は触れると消えてしまい、採取できたかどうかは見ただけでは分からなかった。こればかりは、事後の調査でないと判別できないだろう。
「ふう、これで何とか終わったのですかね?」
 それでも、戦いを経て人々の被害を防ぐことができた。ヒマラヤンはそのことに安堵し、小さく息を吐き出すのであった。

作者:零風堂 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年12月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。