千手菊の絶望

作者:皆川皐月

 目に焼き付いて離れない参列する黒。耳の奥で響き続ける啜り泣き。
 その全てが“これ”を動かす原動力。
『やめて』
 震えたビルシャナの喉が女のような高い声を出す。ついで紡いだ“おねがい”の言葉は、強く吹いた秋風に掻き消され、誰の耳にも届かない。
 過去、女だったものは炎が嫌いだ。何もかにも消そうとするから。
 過去、女だったものは炎が嫌いだ。いつも思い出ばかりを奪い去る。
 現在、ビルシャナになった女は思った。大切で大好きな、私のあの人を焼いた炎をどうにか掻き消せないかと。願い願って強く強く強く、ただ請うた。そしていくつもの朝を越えたある日、女は女でなくなった。
『葬儀なんていらない!必要ない!』
 血を吐くように叫ぶ女だったものは声だけを残し今、鳥の様相。
 白かったであろう肌の上には我が物顔で生えた羽が揺れる。腕を、胸を、頬を。女だったものの全てを包むのは灰の色。伸びた鍵爪は光り通さぬ黒く、尾に揺れた鐘は嫌という程に艶やかな銀で。
 女だったものの体で秋風に棚引く淡いグレイは女にとって忌まわしき灰の色。
 爛々と輝く瞳は何ともつかぬ絶望の空洞。
『引き離すそれは悪!火葬なんて許さない!許さない!私はっ、絶対に許さない!!』

 高らかに声を上げ、火葬場の扉を引き裂いた。

●烟の
 静かに礼をした漣白・潤(滄海のヘリオライダー・en0270)の髪飾りが揺れる。
 ゆっくり顔を上げたその目尻が僅かに赤いが、揺らぎはない。集まった全員の顔を見た後、一言。
「ビルシャナが火葬場を襲撃しようとしています。必ず、阻止して下さい」
 酷く簡潔な言葉。
 賛同者という名の配下が5名います、と告げたところで満月色の瞳が資料に落ちた。
「ビルシャナは、威圧的な閃光、心の傷を起こす鐘の音。刺々しい氷輪の三つを扱います」
 静かな部屋は静かなまま、淡々と説明が進む。
 なぞるように潤の声が資料を読み上げ補足を付けて、淡々と。
「5名の配下は簡潔に言えばサーヴァントのような存在ではありますが、あくまで一般人。こちらが戦闘的な行為を行えば、死は免れません」
 曰く、一般人はビルシャナが叫び続ける通り火葬など馬鹿げている、火葬は引き離す行為だと声高に叫ぶのだという。“どうか説得を、”と伏せられた瞳がぎゅっと瞑られたのは一瞬だけ。
「ビルシャナはもう、救えません。ですが……信者はまだ、戻れます」
 どうかお願い致しますと、潤が深々と頭を下げた。


参加者
鉋原・ヒノト(焔廻・e00023)
落内・眠堂(指切り・e01178)
エリオット・シャルトリュー(イカロス・e01740)
アウィス・ノクテ(ルスキニア・e03311)
レスター・ヴェルナッザ(凪ぐ銀濤・e11206)
彩瑠・天音(スイッチ・e13039)
ウィルマ・ゴールドクレスト(地球人の降魔拳士・e23007)
月井・未明(彼誰時・e30287)

■リプレイ

●赤い実の記憶
 吐いても吐き切れない心の、体の奥底の悲しみを何と呼ぼうか。
 悲しみと言うにはあまりにも深く、苦しみよりも尚のこと苦い。
 微かな声で鳴き続ける、自分のような形の癖に時折あの人のような顔をする、これを。
『引き離すそれは悪!』
 灰色の羽を広げる。
『火葬なんて許さない!許さない!』
 声高に告げる。
 叫ぶほど輝く光背は眩く、人目を焼いて。
『私はっ、絶対に許さない!!』
「そこまで、です。葬儀は……必要です」
 怒りにも悲しみにも似たビルシャナの叫びを否定したのは淡々としたウィルマ・ゴールドクレスト(地球人の降魔拳士・e23007)の一言。
 すれば、ビルシャナと信者五人の首がぐるりと一斉に向き、場が静まり返る。
『今、なんと、言ったの』
「火葬はお別れする、引き離すだけじゃない」
 ウィルマの言葉を継いだアウィス・ノクテ(ルスキニア・e03311)が、湖面のように澄んだ瞳で信者達を見た。
 アウィスも、この別れが何時如何なる時も哀しく遣る瀬無いことを知っている。しかしてこの葬儀を、火葬という一つの送る形を否定することは、違うと思うのだ。これはきっと、一つの区切り。
「火葬は、引き離すんじゃなくて……肉体の形を少し変えて、側に居てくれる方法の一つだと、思う」
「側に居てくれる方法の、ひとつ?」
 無意識に指を握ったアウィスの瞳が瞬いた時、目が合ったのは一人の老婦人。
 老眼鏡越しに揺れる瞳は涙に溢れ、黒一色を身に纏った細い手が血の滲むほど強い力で白いハンカチを握りしめていて。
『そんなわけが……!』
「あの人も、あの子も、私の側に……まだ、いるの?」
 ハッとしたビルシャナが否定しようとした時、老婦人は一歩進み出てアウィスに問うた。
 しぃんと静まった空気が、揺れる。
 ゆらゆら、波紋落ちた空気の中いくつもの心が揺れている。
「うん。そのままじゃ一緒にいられない、けど……火葬することで側に居られる姿に変わる」
「―――このままじゃ、どうして駄目なのかしら。どうしても、駄目なのかしら」
 ぐっと、きつく目を閉じた老婦人が声を絞り出す。
 火はいやよ、と囁いた老婦人の過去を、アウィスは知らない。だが今、目の前で悲しみに沈みゆこうとする老婦人へ近付いたアウィスのヒールがカツリと鳴って。
「火で、全く消滅するわけじゃない。想いも、残ってる」
「そうね……大切な人との時間も、生きていた頃の笑顔も、奪われていないわ」
 眉を下げた彩瑠・天音(スイッチ・e13039)が穏やかに言葉を重ねた瞬間、老婦人が唇を噛みしめる。小さな体を震わせながら、そっと。
「……夫はね、林檎が大好きで。晴れた日には、……林檎狩りに行った事が、あるのよ」
「あら、素敵ね。沢山採ったら何を作るのかしら」
 息衝く思い出を一つ、振り返る。天音の穏やかな問いに老婦人は涙の張り付く喉を震わせて、また一つ。
 息子はアップルパイにしたがるの、と僅かに上がった老婦人の口角が温かな思い出の証。深い皺刻まれた頬滑る涙だけが、止めどなく。
 頷く度、話す度に歩み進める老婦人の、細く皺深い手を取って。アウィスはそっと、優しい声音で囁き、天音がゆるりと瞳を伏せて。
「いつか。いつか――……同じ形になって、ずっと一緒にいることもできる」
「でも今は、生きている人と共にあるための儀式として、葬儀をしましょう」
 泣きながら頷いた老婦人。その背を撫でたアウィスの手。頽れそうな細い体を支えた天音。
 一人の信者が灰の輪を抜けた。

●記念日くまと髪飾り
『あなたたちが葬儀を……引き離すこれを押し付けるなら、私達だって!!』
「避けられん死別があってはじめて、葬儀がある」
 エリオット・シャルトリュー(イカロス・e01740)のトレンチコートの裾をはためかせ、左手をポケットに収めたまま言葉をつづけ。
「ずっと故人を側に置いても、もう会えないって事実で潰れそうになるだけだ」
『それはっ……そ、れはっ!いいえ、でも大体、葬儀だって、火葬だって――!』
「引き離したのは葬儀じゃない」
 動揺するままビルシャナが声を荒げようとした時、一歩歩み出たレスター・ヴェルナッザ(凪ぐ銀濤・e11206)の耳心地良い低い声が、ビルシャナと信者達の耳を通る。
 今日、レスターは己が右手で燃える地獄を押し留め、愛刀に留守を預けてきた。義骸で左腕と変わらず“人の手”に見える右手はモッズコートの右ポケットに収めたまま、淡々と。
「死、そのもの。……あんたらと故人を引き離したのは、死だ」
「ママがいないのは、死んじゃったから……なの?」
「死んじゃっても、燃やしちゃったら二度とお姉ちゃんと会えないじゃん!」
 レスターに返ってきたのは、新品に近いランドセルを背負った小学生の確認するような言葉と女子高生らしい少女の八つ当たりにも似た言葉。二人とも、泣いていた。
 隠したままの右手を掌に爪が食い込むほど握り締めながら、それでもレスターの声は変わらず淡々と子供と少女へ向いて。
「あんたらが愛しかったのは、故人の体だけだったのか。その想いは、亡骸と一緒に燃えて無くなっちまう程度のもんだったのか?」
「ちがうもん……ママ、だいすき」
「っ、! んなわけないだろうが!」
 返された囁きと叫び。この問いが、酷だとレスターは知っている。何故なら過去、己は今自身がこの子らに問うた事に頷けなかったのだから。
 黙し並び立っていたエリオットが左手で恩師の遺品のロザリオを握り締めたまま、幼い小学生と目線を合わせるようにしゃがむと柔らかく微笑み。
「そう。体を無くしたとて、物や記憶に“その人”は残る。ママも、お姉ちゃんもだ」
 ぎゅうっとクマの人形抱きしめた小学生。無意識かヘアピンに触れた女子高生。
 その胸の内が、少しだけエリオットにも分かる――だからこそ言葉を向けて。
「しかもさ、もう会えないって時に限って思い出とか鮮明なんだ。けど……それはな、」
 途中で区切られた言葉に二人が顔を上げれば、エリオットが眦緩め。
「ママもお姉ちゃんも居場所を移して、そのクマやヘアピン、そして思い出から二人を見守る……そのために、葬儀をするんだ」
「ママ、いる?」
「……っ、そんなユーレーなんてっ、あたしはっ!」
 いるよ、と酷く優しく呟いたエリオットに、小学生はクマを強く抱きしめ頷いて。それでも抗うように叫んだ女子高生を、レスターは見た。
「火葬は一つの区切りだ。――亡骸と、いつまでも一緒にはいられねえからな」
 二人はまた下を向く。好機と見たビルシャナが口を開こうとした時――腰を落としたレスターの真剣な瞳が二人を射抜く。
「灰になりゃ、朽ちない。あんたらの中に燃え残ったもんと共にずっと在り続ける」
 淡々と告げられたそれに女子高生は目を見開いた。
 声音は違えどエリオットとレスターは二人にとって今まで出会ったどの大人より真摯で――とうとう子供達の顔がくしゃりと泣いてしまう。
 縋り付く幼さに、エリオットもレスターもあやす様に小さな背を叩き。
「君達の心が潰れないように、ちゃんと送ってあげよう」
「……何も奪われちゃいねえ。が、それは離すなよ」
 幼い二人が灰の輪を後にする。

●銀環のうた
『騙されない。私も、彼らも、もう』
 ぎろりと燃えるような瞳でケルベロスを見るビルシャナは言葉に反し決して手を出そうなどとはしなかった。
 戦い方を知らぬわけでもあるまい。だが一人二人と離れゆく度、悲しげに遠いものでも見るようなあの瞳は何だと、月井・未明(彼誰時・e30287)は密やかに気にしていた。
 でも、この微妙に膠着したような空気感は一種の好機。崩さず壊さず細心の注意を払いながら、事前に話し合ったようにいつでも信者とビルシャナの間に割って入れる位置を取ったまま油断なくビルシャナの方を見た時――爪先赤くなる程強い力でシルバーリングを握る女性が目についた。
 黙して唇寄せたリングを見つめる様はやや病的。だが何故か、未明の胸に淡く沸いた感情が口をついて出る。
「火葬は、過去を燃やす訳ではない。たましいは、思い出は、燃えないよ」
「……本気で、言っているのかしら」
 振り向いた女の瞳は暗い。
 ただ、薄っすら眦の赤いその瞳の底に見える悲鳴と悲哀、そして愛が、未明の心の奥の奥の柔らかいところをちくりと刺す。
「おれは本気だよ。ずっと覚えていることが出来たなら、そのひとは永遠だ」
「えいえん……違うわ。私は嫌!わたしは、彼が、彼がいなきゃいやよ!」
 未明の少し高い声が説く。未明に何か感じるのか、女は決して未明を幼さで否定せず真っ向から向き合った。
 もう一度抱きしめて欲しかった。もう一度あの手と自分の手を重ねたかった。彼の声で、言葉で、もう一度。―――次から次へと零れる想いを余すことなく未明は聞いた。根気よく、丁寧に。だが言葉にすればするほど、女は愛しい人の死を心の内で実感したのだろう。目を背け続けた死に別たれた重さを覚えてしまった時、とうとう瞳の奥から雫が落ちた。ぼろぼろと次から次へ滑るように、堰を切った様に落ちゆく透明がつり目に描いた女の化粧を流していく。
「そのひとの永遠は、きみが生きている限り。限りある永遠は、きみと共にある」
「わたしだけの、えいえん……」
 喉を鳴らしたウイングキャットの梅太郎が女の頬を拭うように、頭を擦りつけた。
「んなぁうー」
「……ありがとう、猫ちゃん。うさぎさん」
「いいとも」
 女は自身の手を引く未明の手を弱々しく握り返しながら、灰の輪を抜けた。

●雪梅の語り
 残る信者は一人。
『全部全部騙そうなんてそうはいかない。この世に火葬なんて要らないのよ!!』
 血を吐くように叫ぶビルシャナの姿は痛々しいほど。
 先、再会した父を己が炎で空へ送った鉋原・ヒノト(焔廻・e00023)は強く目を閉じる。と、頬に擦り寄った温もりが冷え切ったヒノトに熱を分けた。
「アカ……」
 じっと見つめる円らな瞳が、ゆるりと閉じられて。支えるように、分かち合うように幾度も幾度もヒノトへ頬擦りし。
「ありがとな、アカ」
 人差し指の腹で相棒の頭を擦れば、耳を擽った小さな鳴き声。この温もりも、隣に立つ凪いだ瞳でビルシャナを見つめる落内・眠堂(指切り・e01178)が凛と伸ばした背筋が今少し頼もしくて、とんとその背を軽く叩いた。
「眠堂、」
「ああ、分かっているさ」
 その時、羽織はためかせた眠堂と同じく遠目に見ても絹艶良い着物を纏う老人と眠堂の目が合った。中折れ帽を軽く上げて会釈する老人が、口を開く。
「坊や達は、僕がおかしいと思うかい」
「――それは」
 老人の漠然とした問いが透け見えた眠堂は一瞬言葉を呑む。すれば黒革で包んだ手を支える杖と下駄を鳴らした老人が、少し距離を詰め。再度。
「僕はどうにも、ねえ。おかしいみたいで」
「……俺は、葬儀が必要だなんて言わないぜ」
 まるで笑って流れ逃れてしまいそうな老人を引き留めたのはヒノトの言葉。
 分厚い雲間から差した薄日が琥珀色の瞳を凛然とさせ、老人から目を逸らさない。
「けど、死を受け入れるのは遺された人の務めなんだ……」
「ほう」
「アンタの――……貴方のなくしたひとへ、愛しいひとへ、死や火を憎む感情より想う気持ちを添えてやるのは、いけねえか」
 ヒノトの眠堂の言葉に老人は顎を擦った後、首を振り。
「僕はね、炎が嫌いだよ。何でもかんでも食って塵も残さず灰にして……ずっと痛む」
 するりと解かれた黒革手袋の下は酷い火傷の後だった。
 ヒノトと眠堂が目を見張るのは無理もないほどの、火傷。煤けた銀環が肌と融合した深い傷を撫でた老人は言葉を続け。
「彼女に痛い思いを、死して尚僕と同じ思いをさせたくはないんだよ」
「それをしたら一緒に過ごした時間ごと焼失したり、痛い思い出が刻まれるわけじゃないのに、か?」
 零す様にヒノトが問えば、答えは是。
 拳を握ったその肩を眠堂が軽く叩く。声無く落ち着けと伝えるそれに、微かにヒノトの強張りが緩み。
「そのひとを送るしるべは、いいのか。迷わず往くべき場所へ往けますようにと」
「死は、引き離しだ。でもそうやって目を背けて、大切な人を見送らなくて――……」
「坊や達は、優しいなあ……でも僕はね、二人で来年の梅を見たいのさ」
 ごめんよ、と笑った老人が剣吞と中折れ帽を深々かぶり直した瞬間、ぶみゃあと老人の足下で大猫が鳴いた。
「おや、猫」
「本当、に?そうすれば、そ、そばにはいられる、かも、しれない。で、でも……、」
 ウィルマだ。
 おずおずと、視線窺えない表情で適当に上げた口角を震わせながら小首を傾げ。
「――本当の望んでいることはその人たちが生きていることでしょう?」
 酷く平然と。
 温度もなく、至極当然と。
「ですがそれはどうやっても叶わないことです。だから区切りをつけなければいけない」
「……ハッハッハ!!いや。ああ、まさか捕まってしまうとは!」
 老人の笑いは治まらず。しかしその皺枯れた頬を一滴滑ったのを、ヒノト達は見た。
「そうだね、僕は、生きた彼女と見たかったさ。……白梅をもう一度、ね」
 僕の負けだと笑った老人は擦れ違い様、ありがとうと笑った。
 ヒノト、眠堂、ウィルマと順に肩を叩いて颯爽と。

●昇る
『裏切り者』
 瞬間、前衛を襲ったのは禍々しき氷輪。
「ああ……。本当に、本当に、どうしようもない、人」
 笑ったウィルマは隠す様に猟犬縛鎖を奔らせる。
『燃やすことを許容するあなた達を絶対に許さない!憎いっ憎い!!』
 ただ感情だけの叫び任せにビルシャナは力を揮い。
「……理解はできる、が」
 首振ったエリオットが遣わせた蒼炎の鵙が灰羽を灰へ。皆の傷をアウィスの歌声が優しく包めば、また即上書くように肉を抉っては壊れたようにビルシャナが笑う。
「またいつか出会うの、待てなかったの」
「弔いもされず、大切な人を置き朽ちればよかったとでもいうの?!」
『うるさい!!!』
 腹を貫いた天音の槍。肌裂くほど猛然と輝く閃光。眠堂の手中で尽きた符が呼び起こした、風威。
「アンタを、こんな」
 皆まで言えず。眠堂の招来した風が鋭く命を斬り祓えば、隣に寄り添ったヒノトが利き手に杖となったアカを携え詠う。
「――穢身斬り裂くは双の閃雷!」
『アァァアアアッッ!!!』
「お前はその姿でも何も奪われちゃいない……そうだろう」
 殴るように叩き下ろされた鐘がレスターの脳を揺らそうと、レスターは決して揺らがず。振るわれた縛霊撃の網にもがくほど赤染めの灰羽が散り。
 ひゅるり、ビルシャナの喉を空気が抜けた。
「おれは、きみがすこしだけ――――」
 未明の揮った竜の咆哮が、舞い散る灰羽を灰燼と帰す。

 手向けの千手菊一輪、凍雨に濡れた。

作者:皆川皐月 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年12月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 2/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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