水炊き以外認めない!

作者:三ノ木咲紀

 木枯らしが吹き、寒さが厳しくなるこの季節。
 美味しくなるのは鍋料理。古今東西様々な鍋料理を楽しめるとして人気のその店に、ビルシャナが現れた。
 店の空気が硬直する。八人の信者を従えたビルシャナは、一番大きく書かれたメニューを読み上げた。
「名物! 豆乳黒ごま味噌坦々トマト鍋! 〆はパスタがオススメ! ……なによこれ」
「こ、これは店主が試行錯誤を重ねてようやく見つけ出した配合のスープで……」
「そんなこと聞いてるんじゃないわ!」
 羽毛を広げたビルシャナは、極太マジックを羽毛に取るとメニューに大きくバツを書いた。
「こんな、和風だか中華風だか洋風だか分かんない変な鍋は邪道よ外道よ! 本当の鍋はこっち!」
 比較的小さく書かれた水炊きの欄に、大きくマルをつけて高らかに掲げる。
「水炊きよ水炊き! 水炊きが一番なのよ!」
「で、でも水炊きはさっぱり過ぎて好きじゃな……」
「そんなアナタにはこっち! 博多風水炊き! これなら文句ないでしょ!」
 博多風水炊きにマルをつけたビルシャナは、キムチ鍋を食べていた客の土鍋をひっくり返す。
「こんな辛いだけの食べてちゃダメ! 水炊きよ水炊き!」
 客の鍋を次々に水炊きへ変えてしばし。
 水炊き専門店と化した店に、割烹着姿のビルシャナが店主気取りで君臨していた。


「水炊きはおいしいのよ。でもそればっかりじゃ飽きちゃうの」
 モニ・ブランデッド(おばあちゃんを尋ねて三千里・e47974) の声に、セリカは大きく頷いた。
「最近寒くなったからでしょうか。鍋料理店を襲うビルシャナが予知されました」
 ビルシャナが現れたのは、多種多様な鍋料理が楽しめる鍋料理店。夏場は創作料理の店だが、冬場は創作鍋料理を出している。
 それが気に入らなかったのか、鍋料理は水炊きしか認めないビルシャナが襲撃を仕掛けるのだ。
 ビルシャナには配下が七名いる。皆水炊きが好きという程度で手下にされてしまった一般人だ。
 彼らはインパクトのある説得をすれば、正気に戻る。水炊き以外にも美味しい鍋があるというのを思い出させればいいだろう。
 正気に戻らなかった場合、手下として戦闘に参加してくる。
 水炊きのビルシャナのポジションはクラッシャー。
 鍋料理屋らしく個室がメインだがテーブル席もある。一般人の客も数組いて、それぞれ個室で鍋を楽しんでいる。
 騒ぎを聞きつけて出てくる危険性があるので、何か対策をするといいだろう。
「ビルシャナを撃退すれば、店主が美味しい鍋料理を振る舞ってくれるでしょう。せっかくなので、美味しい鍋料理であったまってきてくださいね」
 セリカは微笑むと、ファイルを閉じた。


参加者
マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)
朔望・月(桜月・e03199)
朝倉・くしな(鬼龍の求道者・e06286)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
筐・恭志郎(白鞘・e19690)
櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)
六・鹵(術者・e27523)
モニ・ブランデッド(おばあちゃんを尋ねて三千里・e47974)

■リプレイ

 鍋料理店の個室のドアを、朔望・月(桜月・e03199)はノックした。
「少し騒がしくしてしまうのですが、外に出ないようご協力お願いします」
 にっこり笑って隣人力を発揮。サービスですと出されるアイスやシャーベットに、二人組の男性は快く頷いた。
 隣の部屋のドアをノックしたモニ・ブランデッド(おばあちゃんを尋ねて三千里・e47974)は、対応した老夫婦にぺこりと頭を下げた。
「今、危ない鳥さんが来るのよ。危ないからモニ達が良いって言うまで、そのままお鍋を楽しんでいてね」
「あらそうなの。偉いわね」
 頭を撫でてくれる老婦人に微笑んだモニは、トレイに乗せたアイスを畳に滑らせた。
「これはモニ(千梨さん)からのサービスなのよ」
 アイスを受け取った老夫婦が和やかに話をする隣の部屋で、空気が動いた。
 隠密気流を纏い、そっと部屋へと入り込んだ櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)は、そろそろ帰ろうと立ち上がりかけた女性に声を掛けた。
「御免」
「な、何?」
 突然現れたように見えた千梨に、女性客が驚きの声を上げる。淡々と事情を説明する千梨に、女性客が頷く。
「此れはケルベロスの奢りだ。食べて寛いでいて欲しい……」
 千梨の声に視線を落とした女性客が顔を上げた時には、既にそこに千梨の姿はない。
「甘味の妖精……さん?」
 アイスや胡麻団子を受け取った女性客は、甘味の妖精さんの話に盛り上がった。
 その時、大きな音を立てて入り口の引き戸が開いた。
 のしのしと店内に入ってくるビルシャナと信者達は、メニューの文字を読み上げる。
「名物! 豆乳黒ご……」
「いらっしゃい!」
 読み上げるビルシャナの声を遮った朝倉・くしな(鬼龍の求道者・e06286)は、薄着の上に纏ったエプロンを翻すとビルシャナ御一行を店内に誘った。
 同時に「準備中」の看板を下ろし、他のお客さんが入らないようにする。
 ビルシャナの姿に空気が凍りつくテーブル席に、それをぶち壊す勢いで明るい声が響いた。
「あー、大丈夫です。ムエタイカフェとかムエタイレストランとかあんな感じと思っていただければ」
 くしなと同じくプラチナチケットで店員に扮したロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)は、メニューから目を離すと客に笑顔を向けた。
「タイじゃなくてトリよトリの鍋よ!」
「トリ鍋じゃなくてねこ鍋でどうだ!」
 ウイングキャットのネコキャットが丸まって入っている土鍋を高らかに掲げたマサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)に、ビルシャナはビシッと羽毛の親指を立てた。
「ネコの水炊きとは新基軸ね!」
「それは冗談!」
 いい笑顔でねこ鍋を取り下げたマサムネは、調理していたすき焼きを器によそった。
「ビルシャナは水炊き推しみたいだけど、水炊き以外にも色々鍋あるよ! たまには違う味楽しまない?」
 ほどよく調理されたすき焼きの良い匂いが、信者たちの鼻孔をくすぐる。信者たちの視線を集めるすき焼きの器に、ビルシャナは苛立ったように手を上げた。
「何がすき焼きよ! 焼きなんだから鍋じゃないわ!」
 叩き落とそうとする羽毛を、マサムネはひらりと避ける。すき焼きを台無しにしようとするビルシャナに、筐・恭志郎(白鞘・e19690)は一歩前へ出た。
「好みじゃないからって人のお鍋ひっくり返すなんて、食べ物を粗末にする人に、食べ物の好みについて語る資格はありません。例えばその白菜ひとつ育てるのにどれだけ手間暇がかかっているか……」
「水炊き以外に白菜入れたら、白菜が可愛そうだって思わないの?」
「うるさい黙れ」
 笑みと共に反論を叩き落とす恭志郎の腕を叩いて、六・鹵(術者・e27523)は一歩歩み出た。
「水炊き美味しい、よね、分かる分かる。っていうか、鍋が美味しい。この少しずつ寒くなってくる、季節に、囲んで皆でつつくのが、最高」
 大きく頷いた鹵は、水炊きの良さを説こうとした中年男性の言葉を遮った。
「この間僕が食べたのがね、クリームチーズ鍋」
「クリームチーズ鍋? なんだそれ?」
 興味津々なロディに、鹵は嬉しそうに説明した。
「名前だけ聞くとぎょっとするけど、出汁とチーズが意外なくらい、マッチしてて、すごい美味しかった。特にほっくほくのブロッコリーを豚肉と一緒に食べる、のが美味しかった、な。で、この締めにね、パスタを入れると、カルボナーラになるの。すごくない? 鍋も食べてさらに絶品カルボナーラ」
「カルボナーラ……」
 実体験に基づいた美味しい鍋話に、信者の若い女性が喉を鳴らす。
 揺れる信者に、ビルシャナは羽毛を広げた。


「やめやめ! カルボナーラを鍋にするなんて邪道よ!」
 信者たちの気を引こうとするビルシャナに、キープアウトテープを張り終えたモニが目を輝かせた。
「モニのオススメはフォンデュシノワーズなのよ」
 厨房で用意してもらった鍋をテーブルに出して貰ったモニは、湯気の立つブイヨンにおばあちゃんを思い出した。
 冬になると、おばあちゃんと一緒に食べたフォンデュシノワーズ。薄く切ったお肉を熱々のブイヨンにさっとくぐらせて、色々なソースをつけて食べるスイスの中国風お鍋だ。
 思い出に目を細めたモニは、お肉を口に運んだ。
「水炊きは水から材料を煮込んで、良くおダシが出たスープの味を楽しむもの。ブイヨンもおダシだから水炊きなのよ。世界中のお鍋は水炊きなのよ」
 モニの脳裏に、世界中の鍋料理が駆け巡る。両手を広げたモニは、信者達を受け入れるように微笑んだ。
「全てのお鍋は水炊きであり、水炊きはまた全てのお鍋なのよ。辛いのがダメとか国籍が良くわからないとかで、味の可能性を狭めるのは良くないのよ」
「水炊きは……全てのお鍋……」
 放心したように呟く信者に、フォンデュシノワーズを味わい深く頷いた月は更に続けた。
「水炊き、奥が深くて美味しいです。でも、料理ってそれこそ無限の可能性ですよね? 鍋に種類の差別なし、なのですよ。すき焼きもしゃぶしゃぶも時に恋しくなっちゃいますし、鍋の可能性閉じたらもったいないのです」
「鍋の無限の……可能性……」
 だんだん大きくなる話には気づかない様子で、信者たちは目を見開く。降りる沈黙にビルシャナが何か言う前に、フォンデュシノワーズを頬張っていた鹵は店の人が運んできた土鍋に目を輝かせた。
「え、今日は豆乳黒ごま味噌坦々トマト鍋が食べられる、の? ここのおすすめ?」
 鍋のスープはまだぬるく、赤っぽいスープが具材が煮えるのを待っている。味の予想がつかないが、それもまた鍋の醍醐味だろう。
「締めは何にしようか、ご飯入れて、リゾット風にして、餅も入れよう」
「豆乳黒ごま(略)が煮えるまでの間、オレはすき焼きを推したいね。シャキシャキした春菊に熱々豆腐に、プレミアム牛肉が煮えれば卵をとろーり! ごはんもお酒も進む、これでしょ!」
 火を落とし、絶妙なタイミングを維持した牛肉を引き上げたマサムネは、卵をさっと潜らせると一口食べる。
 二種類の鍋を囲んだケルベロス達は、唖然とするビルシャナ達を尻目にパーティーを始めた。
「水炊きも良いが、俺は今猛烈にすき焼きの気分だ。そして偶然こんな所にすき焼き鍋が」
 ワクワクしながらすき焼き鍋に箸を入れた千梨は、煮えた牛肉を口に含んだ。
 甘辛いすき焼きのたれに、柔らかい牛肉の味や歯ざわりが口の中で調和する。
 高級牛肉のすき焼きに、千梨は思わず拝んだ。
「凄いな……プレミアムな牛肉入ってた。実家では主に豚だった」
「えっ、あっ、千梨さんちのすきやき豚肉だったんスか。なら尚更ここは牛肉だ、食べて貰わなきゃ」
 何かを察したマサムネは、菜箸を手に取ると千梨の器に牛肉をよそった。
 割烹着姿のまま牛肉をよそうマサムネに、千梨は目を細めた。
「マサムネの姿……お袋の味感が増すな。因みに実家で豚だった理由は、単に牛肉は高いからだ」
 何せお値段の差は倍以上。実家のすき焼きを思い出した千梨は、口元に笑みを浮かべた。
「……それでも、馳走だったし出て来ると嬉しかったな。すき焼きにはそんな家庭的な温かさもあると思う。皆、近い記憶は無いか?」
「……俺の故郷では味噌鍋で根菜多めだったな。農作業が忙しい時期でも手早くいっぱい作れてあったまって美味しい。締めはおっきりこみうどん投入が常だったけど、たまにばあちゃんが雑炊がいいって言って爺ちゃんとじゃんけんしてたなぁ」
 フォンデュシノワーズを食べた恭志郎は、脳裏によぎる祖父母の思い出に目を細めた。
「……お鍋は地域性が出るから、大事な故郷の思い出でもあるんだ。水炊き好きはえーが他許さねぇとかそーじゃねんべな?」
「そんな道理が通るなら、ビルシャナになってないわ!」
 大変ごもっともなことを言ったビルシャナは、羽根をバッサバッサと振り回した。
「ご家庭の味を語るなら、まずは水炊き! そうでしょう皆!」
 振り返ったビルシャナの剣幕に、信者たちは顔を見合わせる。水炊きに対する信念が揺らぎかける信者たちに、くしなは勢いよく立ち上がった。
「鍋うまし。水炊きもうまし。水炊きは鳥のダシとか出て美味しいですよね」
「分かってるじゃない!」
「しかし飽きる。女子高生の飽きっぽさを舐めて貰っては困ります。2口目には飽きが来ます」
 ばっさり斬って捨てるくしなは、腰に手を当て反対の手の指を折った。
「見た目が普通。匂いが普通。具材が普通。普通とは、他の鍋を食べてこそ。普通が美味しいと感じるのです」
「確かに子供の頃は毎日水炊きで飽きたような……」
 頷く中年男性に、くしなは頷き返した。
「他の鍋は水炊きの引き立て役と言えず、拒否するのは負けを認めている証左では!?」
 負った指で拳を握ったくしなは、ビシッと信者たちに拳を突きつける。
 動揺する信者たちに、千梨はすき焼きの器を差し出した。
「うむ、良し、一緒に囲もう。どんな鍋も皆で和やかに食ってこそだからな」
 湯気を立てるすき焼きの魅力に、信者たちはフラフラと吸い寄せられる。その時。
 すぱーん! と音を立てて千梨の手を払ったビルシャナの動きに合わせて、器と肉と野菜が宙を舞う。
「囲む鍋は、水炊きだけで十分よ!」
 甲高い音を立てて割れる器と床に落ちる白菜に、恭志郎は目を見開く。
 戦闘態勢に入る恭志郎に、ロディは目の覚めた信者たちの手を取った。
「こっちへ! 大丈夫、オレ達が必ず守るから!」
 隣人力を駆使して元信者達を避難させた直後、浄罪の鐘が鳴った。


 前衛の耳に鳴り響く鐘の音が、脳裏に響いて掻き鳴らす。
 そこ前衛に、清浄なる風が吹き抜けた。
「鍋は水炊きだけではないと知ると良い」
「お鍋は世界共通言語なのよ」
 千梨の声と共に吹き抜ける風に癒され、モニの声に勇気づけられたマサムネは、お玉杓子を手に歌い上げた。
「愛してあげる、骨の髄まで」
 マサムネの歌に狙いを定めた鹵は、口の中でブツブツと呪文を詠唱する。その直後、魔法陣が現れた。
「囁き、返す、異界の、使者、触れる、落ちる、腐り、たもう」
 異界から召喚されたおぞましい触手が、ビルシャナを捉える。
 動きを封じられたビルシャナに、月と夏雪の連続攻撃が放たれた。
「行くよ、夏雪!」
 月の声と共に、縛霊撃と神霊撃が交差する。
 くしなはビルシャナにドラゴンスリーパーで組付くと、落とされたすき焼きを口の中に突っ込む。
「愛が足りない!」
「食べ物を粗末にするな!」
 胴ががら空きになったビルシャナに、恭志郎は達人の一撃を叩き込む。
 ぐらりとよろける腹に、一発の銃声が響いた。
「持ってけ、ありったけ!」
 ビルシャナの腹には、数発の弾丸。神速の弾丸を受けたビルシャナはそのまま消えていった。


 営業中、に看板を戻したくしなは、壊した場所をヒールするとエプロンを取った。
「さぁ、お待ちかね鍋パーティーだ!」
「ところで最初、割り勘のつもりで『ケルベロス』の奢りと言ったんだが……」
 口を濁した千梨に、月がありがたやと手を合わせた。
「櫟さん、ごちそうさまですー」
「ポケットマネー……!」
 大人の余裕を見せる千梨に、恭志郎もありがたやと手を合わせる。
 全員で合わせられる手に、千梨は徳利を手に取った。
「ハハハ、お兄さん今夜は飲むぞ。大人だから泣いてない。泣いてないぞ」
 ヤケ気味に差し出された徳利を、恭志郎はお猪口で受け取った。
「えっ大丈夫かな強くないやつです?」
「大丈夫だ多分。……飲めるか?」
「いただきます♪」
 嬉しそうに手にしたマサムネのお猪口に、熱燗が注がれる。美味しそうに飲むマサムネは、煮える水炊きを前に首を傾げる月に声を掛けた。
「どうした?」
「本格的な水炊きってどんな感じか気になりますし、一度食べてみたかったのですが……。僕、鍋歴浅くて勉強不足で、水炊きと普通の鶏肉入寄せ鍋の区別がつかないのです」
「水炊きはあっさりスープにポン酢で味付け、寄せ鍋はスープに味付けポン酢なし、ってところだな」
 マサムネの薀蓄に頷いた月は、口直しにもなるあっさりとした水炊きに、嬉しそうに箸を伸ばした。
 豆乳略鍋でこってりになった口の中が、さっぱりポン酢でリセットされてまたこってりが食べたくなる。
 始まる無限鍋に、くしなは隣のロディを肘でつついた。
「はい、あーん」
「え、ええ!?」
 差し出される白菜に、ロディは思わず狼狽える。顔を赤くするロディに、くしなはにっこり微笑んだ。
「あーん!」
 スナイパーの部位狙いで口元に白菜を鋭く持っていくくしなに、ロディはその場に倒れ込む。
 胸の上で馬乗りになったくしなは、目を細めると白菜を差し出した。
「はい、あーん」
「あーん」
 観念して口に運んだロディに、くしなは満足して座り直す。
「おのれ」
 お返しとばかりに箸を持ったロディは、くしなの口元に肉を運んだ。
 和やか鍋パーティーに、恭志郎は満足そうに舌鼓を打った。
「やっぱ皆でわいわい、好きに食べられるのがお鍋の醍醐味かな。……そろそろ〆だね」
 スープだけになった鍋に、〆のご飯やパスタを投入。どの鍋もモリモリ食べていた鹵は、空の器を差し出した。
「櫟、僕にもとって」
 差し出される器を受け取った千梨は、パスタをてんこ盛りにして返す。受け取った鹵は、美味しそうに頬張った。
「これだけ、てんこ盛りなの、初めて食べるけど。美味しい、ね。僕は、締め、ご飯のほうが好き、かな」
「そうか、六は食べ盛りか……大きくなれよ。アイスは要るかな?」
「いる」
「お鍋は温かな気持ちも食べるものなのよ。だから〆もアイスも温かな気持ちになるのよ」
 子どもたちへの甘味の妖精となった千梨は、アイスを食べながらも眠りの世界へ片足を入れるモニに上着を掛けた。
「ごちそうさま……おやすみなさいなのよ」
 それだけ言ったモニは、こてんと眠りにつく。
 幸せそうに眠るモニの姿に、自然と笑みがこぼれた。

作者:三ノ木咲紀 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年12月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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