ブルマ指定

作者:大丁

 顔はけっこうカッコいいのではないか。
 その体育教師の評価は、一致していた。冬の運動場に、上下ジャージで立っている。
「みんな、もう知ってると思うが、サユリ先生が病欠になったので、臨時でオレが指導する」
 女子生徒が30人整列し、注目している。彼は心もとない調子でたずねた。
「夏服で集合、とは指示してないんだけど……」
 全員が、半袖に紺のブルマであった。
 一度は廃止になったブルマだが、この高校では近年また採用されていた。
「わたしたち、ぜんぜん寒くないので、大丈夫でーす」
「そ、そうか。では、準備体操、はじめ」
 男性教員がピッと笛を鳴らすと、体操から柔軟運動まで、とどこおりなく進行していった。
 しかし、太腿をギリギリラインで締めるショーツ型の運動着は、脚を開くたびに内股のラインを強調し、前後の屈伸を繰り返せば尻たぶをハミ出させた。
 そんな光景の前に、ジャージで出てくるなど、失敗である。
 体育教師は用事を工面して、すぐに戻るからと、運動場トラックのランニングを指示して、自分は校舎に駆けていった。
 彼が去ったあと、女子高生たちは大笑いだ。
 どんくらい膨らんでいたか、見たか見なかったかと、あけすけに騒いでいる。
「やだもー♪」
「フルだよ、フル! きっと中はこんなで……」
 なぜか、本物のこわばりが、すぐそばに。
「うわ、ナニ出してんの?!」
「オ、オークじゃん!」
 バッキバキにさせた奴らが、グラウンドの地面から、女子のあいだに次々と浮上してくる。
 柔らかな触手は、ブルマの裾口から入り込むと、妙な丁寧さで下着ごとひっぱり剥がす。
 豚の顔には、カッコつけなどなく、脱がしたそれらを頭にかぶった。
「ぶひひひひ♪」

 打合せの部屋には、クリーニング店のビニールに入った衣類が積まれていた。各サイズが用意してあるらしい。
 軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)は、いつもビニール製の服、すなわちポンチョ型のレインコートを着ているわけだが、説明にはもうひとり、苫北・舞火(ミサイルガール・e44710)も加わっている。
 予知の内容が知らされたのち、冬美は体操服を手に取った。
「というわけで、オークたちが女性を略奪しに魔空回廊からやって来ちゃうのぉ。それで今回は、女子高生たちの列に、変装して加わってねぇ」
 ふたりの説明によれば、体育の授業は3クラス合同で、知らない顔が列に混ざっていても見破られない。
 女子高生からすれば、夏服で体育教師をからかうという計略に参加している時点で共謀者、いずれかのクラスの子と思われるのだ。舞火はブルマを掲げる。
「男の人が依頼に参加する場合でも、がんばって変装し、ブルマを着用してほしいんだ。変装潜入以外の現地入りもできなくはないけど、戦場に駆け付けるのはどうしても遅くなるんだよね」
 戦場は学校の運動場の真ん中で、広い。オークの攻撃は、触手で服を脱がすというものだ。
 オークは、女子高生の列のあいだに出現するので、開戦時から乱戦となる。出現後のなりゆきは、状況によるという。
「わたしはねぇ、複数のオークを引き付けられるひとがいるのなら、囮役をたてるのは有効と思うのお。誘導役をつくって被害者をまとめて避難させられるかもしれないしぃ、被害者が捕らわれるたびに、そのオークを攻撃して救助できるかもしれないしぃ」
「あとねっ! ボクの調査では、このオーク、ブルマの獲得を優先するようなんだ。作戦をたてる参考にしてくれると、嬉しいなっ!」
 ふたりは、ケルベロスたちにむかってペコリと頭をさげた。
「学校関係で出没するオークが急増してるねぇ。解決にはみんなの力が必要だよう。がんばっていこう! レッツゴー! ブルマ!」
「サイズあわせしようねっ」


参加者
ママ・グリード(強欲・e02848)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
フォルティ・レオナール(桃色キツネ・e29345)
雁・藍奈(ハートビートスタンピード・e31002)
ヴィクトリカ・ブランロワ(碧緑の竜姫・e32130)
カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)
苫北・舞火(ミサイルガール・e44710)
クィート・カトー(北へ南へ東へ西へ・e61580)

■リプレイ


 校舎の昇降口を出たところには、2段の緩やかなステップがあって、腰を下ろせばコンクリートの冷たさが、ジーンとしみ込んでくるみたいだった。
 学校指定のジャージで、ヴィクトリカ・ブランロワ(碧緑の竜姫・e32130)は貧乏ゆすりしている。
「我の本能が訴えておる。オークをのさばらせては危険なのじゃ」
「さよう、あのブルマとやらを狙っての狼藉を、斬り捨ていたそう。オークはあれが大好物なのでござろう。ぶっちゃけ厚手のパンツみたいでござるが」
 カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)はその身に、やや不完全ながら、指定と似せたセーラー服とスカートを纏い、隣り合って座っていた。
 ヴィクトリカとカテリーナは、アノ日にでもして体育を見学していた。校舎なら避難誘導先として適しているし、うまい具合に昇降口からは運動場が見渡せる。オーク出現のきっかけでもある男性教師の動きも監視できた。
 彼の鳴らす笛が聞こえてきて、女子たちの準備運動が始まった。
 教師はすでに、本人からみて右に寄った状態で、先端の膨らみが浮いている。
 その現象を、苫北・舞火(ミサイルガール・e44710)は凝視している。腕を振る運動のさなかでも、顔は真正面。目線はやや下。
 逃れるには真後ろにでもむかなければ。ママ・グリード(強欲・e02848)は、子供のしわざとはいえ、少し気の毒に思っていた。
 しかし、彼女の割れ目も形がでているのだ。食い込みをよくするよう、股ぐりを狭く改造し、下着もつけてこなかった。チラ見だけの男性を加速させる。
 右斜めへの棒状の伸びに、ママは小さく感嘆の声を漏らした。
 そこまで男を駆り立てるロマンがブルマにはあるのかと、マロン・ビネガー(六花流転・e17169)も、オークのことを忘れかけて注目する。
 笛がなって、体操から柔軟運動にかわる。組になった女子の顔は、すましたものだ。ゆえに、計略を隠蔽していると思える。
 開脚から、上体を伏せたフォルティ・レオナール(桃色キツネ・e29345)の体操服が捲れて、背中がでた。
 浅履きのブルマから、尻の上半分がはみ出す。
 職務でも、もう限界。テント状に押し上がった。
「き、記録かく板、忘れた。すぐにもどるから、う、運動場トラック、ランニング!」
 テントのポールが、校舎側にくるりと向いて去っていった。甲高い笑いがおこる。
 男性の状態もだが、舞火たちも取りざたされた。
「あんたら、見すぎでしょ!」
「や、あれすっごくおっきいし!」
 舞火たちは会話を盛り上げながら、こっそり並びを変えていた。オーク出現地点の詳細はわからないが、仲間と連携しやすい位置取りにする。
「あなたのモコモコしてる。寒いの? それとも恥ずかしいの?」
「あたしの秘策だったんだよー」
 雁・藍奈(ハートビートスタンピード・e31002)は、分厚いおしりを向ける。マロンが、足をよじり合わせて。
「やっぱり、寒いのです。ジャージは偉大でした……」
 頷く女子もいる。いたずらは面白かったけど、寒いよ、と。クィート・カトー(北へ南へ東へ西へ・e61580)は、裾をつまんで、わずかばかりでも腿を隠すようにしていた。
「なんだか下着みたいで、私はちょーっと恥ずかしいかな。地キュゥ……地域では履かなきゃだけどね」
 それは夏の話、と補足を入れかけたフォルティの、半ケツにヌルリと感触があった。
 紺色の内でうごめき、前まですべりこんでくる。
 フォルティは、女子たちの騒がしさに負けない大声をだした。
「みんな、逃げて~! オークが出たよ~!」
 事態を知らしめるため、触手に侵されつつあるブルマを、ガニ股になって提示するのだった。


 藍奈が校舎の反対側、運動場の奥にむかって逃げる、フリをする。
「きゃあー。あたしのブルマを盗らないでー」
 モコモコのおしりが効果テキメンで、半数ちかくの8匹が、追いかけてきた。
 駆けてる足からブルマが抜かれるが、重ね履きしてきたので、次がある。藍奈の秘策だ。
「まさか……底無しブヒ?!」
 んなわきゃない。頭に何枚もかぶって囲む数匹にパンツ姿にされ、それも脱がされた。
 オークたちは、本物の女子生徒を襲いにいかず、藍奈を運動場の奥に引き倒す。囮は成功だ。
「お、おしりに入れなひで、ひ、ひぎぃい!」
「今度は底無しに入るブヒ?」
「64本しかないブヒ」
 受け持ちが減ったので、一方的にヤラれる役目も減った。舞火は、女生徒のブルマを掴む触手を、鋭い蹴りで分断する。
 ママも炎の蹴りを、改造ブルマに引き寄せられたオークにかましたあと、襲われそうな女生徒をかばった。
「さぁて、妾の股ぐらにナニを突っ込みたいと思うモノから、かかってまいれ♪」
 挑発も入れながら、助けた女生徒を誘導役のクィートに引き渡す。
「私たちはケルベロスだから安心して」
 正体を話しても、きょとんとされる。体操服の下には、未発達で幼い感じがある。
「キミたちを助けに来たんだ」
 女子はなんとか頷いて背中に守られた。実は22歳という情報こそ、クィートの正体なのかもしれない。
 マロンの年少さは本物だ。隙のある素振りをしてみたが、オークはまったくなびかない。14歳ではまだまだ。クィートのそばで壁役になる。
 ケルベロス側の初動が良かったおかげで、大半の女生徒が捕らわれずにすんでいた。それら解放されている被害者を、カテリーナが呼びこむ。
「校舎が安全でござる。急いで入られよ!」
 セーラー服にしておいたので、オークの対象からは外れるはずだ。
 ヴィクトリカは、ジャージの上下でとことこ走り、被害者を迎えに出た。オークの陣営には、クィートとマロンを迂回して、横からブルマに襲いかかろうとする輩もいる。
「ええい。我の姿を見るのじゃー!」
 ドラゴニアンの翼を広げ、空中で18歳に変身すると、キラキラ光ったまま、ジャージのズボンを下げる。
 ちゃんとブルマを履いていた。滑空しながら、オークを運動場がわに誘い出すつもりだ。ところが。
「はうう、男子と目が合いそうになったのじゃ……」
 高度を上げたら、二階の教室にとどいて、窓から授業風景が覗けた。
 すぐに頭を引っ込めたし、窓はきっちり閉まっている。幸いにも戦闘に注意がむいた気配はない。
 なにより、ジャージが膝に引っかかって脱げかけなのだ。かっこ悪い。
 ヴィクトリカの飛び方の不自然さに、ケルベロスたちも懸念を抱いた。
 生徒に顔を出されたら収拾がつかない。
 ということを、差し置いても、舞火には刺激的だった。
「はひゃ、校舎の窓から、たくさん。ボクのアソコが観られてりゅ」
 すでにブルマも下着も脱がされ、下半身裸を厭わずに、キックを繰り出していた。その股間からプシュッと漏れて、足腰が立たなくなる。
 校舎からの視線は妄想だ。だが、そそり立つオークの茎をあてがわれたとき、あの男性教師の根が想起されて、ぬるりと受け入れてしまった。
 ムキ身の突部をなぶられ、ジョボジョボと土に湿りをまき散らされる。
「感度いいブヒよ? 同族のしるしブヒ」
 ブルマ頭のオークは、舞火の頭にも彼女のショーツを被せた。
 キック主体だったママも、ブルマの股を掴まれると、とたんに弱くなる。細く改造した部分がずれ、下着のない陰部から粘液が糸をひいた。
「立派なナニのせいじゃ」
 彼女も男子教師を想ううちに、ふやけた陰裂と、その後ろへ。
「はぁっ……入って……んぉ……おほぉぉぉっ」
 ママは前後から2匹に、舞火は膝抱えで、それぞれ抱かれるあいだ、フォルティは数体同時からの触手を受けていた。
 体操服も破られた素っ裸の四つん這い。
「ひんっ! あっ! あっ!」
 大きな嬌声に、絶頂が近い。3人は、お互いの顔を確認しあってしまった。どうしたことか、オークらも頷きあい、無言の了解がなされる。
 触手も含めた数十本が、同時に発射した。
「観てる、観られてる……ううっ!」
「ぉぉぉぉっ……中に……出てるのじゃぁ……」
「ひんっ! あああっ! あーッ!」
 内外にぶちまけられ、あふれた白濁液が地面にまで垂れていった。


 運動場での乱戦のさなかで、救出した女生徒たちを庇っていたクィートは、オークを後ろから殴って突き飛ばす。
「こう見えて結構、力強いんだよね、私」
 伏したそいつの背中にも触手がうねる。先端はやはり、女生徒の脱げかけブルマにつながっていて、丁寧にほどいてやった。
「さ、慌てずこっちにおいで」
 視線はマロンを探す。彼女に脱出を伝えると、校舎に向かって生徒たちを連れ出す。
 追おうとするオークも数体いた。
 囮役のケルベロスは、定員オーバー。あぶれた奴らはまだブルマをかぶっておらず、欲していた。その眼前をヴィクトリカが、横切っての低空飛行。注意を引き付ける。
「ジャージが邪魔なのじゃー!」
 ブルマよりなにより、膝に引っかかったままのズボンに、触手が大量に絡みついてくる。もはや、トカゲのしっぽ切りとも行かず、ドラゴニアンの翼を精一杯に羽ばたいた。
 引きずり降ろされたなら、どこまでも墜ちてしまう。
 ヴィクトリカの焦りは、マロンの言葉と、触手をぶっち斬る蹴りに解消された。
「生徒さんたちの避難、完了しましたです!」
 ケルベロス陣営の手加減が解除される。
「あ……と……もう済んだみたいだね……」
 宣言を聞いて、フォルティは精子の池から身を起こした。
「ありがと、気持ちよかったよ?」
 しかし、四つん這いは、そのまま。
 獣のような踏みつけで、オークを圧した。
 陰部に埋まった触手も、ぶらんと下がったまま。次の獲物に飛び掛かる。
 戦闘への凶暴性を取り戻したのは、オーク陣営も同様だ。ブルマ以外への攻撃がマロンにのびる。
 それをいなすように、むきだしの足が、触手と交差した。
 真剣な打ち合いのさなかでも、オークの頭にはブルマが被せられている。よく見れば、足用の穴から耳が出ていて、ちょっとかわいい。
「それもロマン、性的趣向に含まれるです?」
 呪怨のこもった蹴りが、オークをのけぞらせた。その首に、オウガナックルと日本刀が振り下ろされる。
「ただいま、参上」
「不埒な豚くんは片付けちゃおうか」
 避難誘導を終えた、カテリーナとクィートが戦線に復帰する。やはり、オークの狙いはブルマに限らない。カテリーナのセーラー服が、縦に切り裂かれた。
 豊満な胸の弾力に、布地が解放されるかと思いきや、日本刀『まんぷく丸』の煌めきが眩しく、光に隠されている。
「ええい! 寄るな寄るな! 寄らば叩き斬る!」
 光を透かそうと目を細めたオークの顔を、真一文字に斬り捨てる。予告通りだ。
 クィートは、体操服のえり首にさし架かった触手に、前面の布地を剥ぎ取られてしまう。
 未成熟なふくらみが露わになり、薄桃色の頂点をふたつ、わずかに震えさせた。
「キ、キミ。不埒すぎるよ!」
 ポカポカと豚の頭部を叩く。カテリーナほど、着衣を気にせずとはいかなかった。
 舞火が意識する視線は架空のものだ。下着を頭に被ったまま、陵辱した相手を屠ると、運動場に漏らした円形の湿りの中に立つ。
 あの体育教師の男性も、ジャージの上からこすりながら、この土の色を見ているかもしれない。
「あふっ、あん……!」
 異様な興奮に襲われ、校舎を背にすると、オークを殴り散らした。ケルベロス全体も、運動場の奥に向かって、進軍する。
「ヴァルキュリャー! 回転……!!」
 藍奈が、加勢を受け、反撃にでる。前方宙返りを3度きめ、おしりから排除された精液が、美しいループを重ねる。
「……フルキック!!!」
 両足での蹴り。くらったオークは爆発四散した。藍奈はスッキリしたような笑顔だ。
 カテリーナが思い出したように触手拘束を受けていた。
「参戦したとたん、やたら狙われ……あ、拙者16になったからでござるか!?」
 だが、惑わされ捕らわれているのは、オークのほうであって、自軍すべて片付けられた後に、ブタは孤立を悟った。
「卑怯ブヒ、オレが本当はセーラー服派と知っての計略……」
「さような趣味は存じませぬ。されど、『卑怯』はNINJAにとっては褒め言葉にて候」
 斬撃が戒めとともに、オークを両断する。カテリーナは、片膝に着地した。
「ありがたく頂戴つかまつった」


 ようやくフォルティは、ちぎれた触手を陰部から引っこ抜いた。
「ふう。みんな、おつかれ~」
 にこやかに振る手からも、粘液がピッピととぶ。全身、真っ白にべとついていた。
「わたしだけお先で悪いね。じゃ、あとはよろしく」
 触手の締め跡まで残るお尻が、校門のほうへ消える。
 たしか出撃するときのフォルティは、体操着だけだった気もするが、どこかに服があるのだろう。全裸に白濁液で、外は出歩けまい。皆がなんとなく見送ったところで、ヴィクトリカも場を離れる。
「我が、女子高生たちに伝えてくるのじゃ。オークの全滅と、平和の回復をのう」
 回復といえばと、マロンは現場へのヒールにとりかかる。
「ところでこのブルマはどうしますです?」
 無事に履かれている。とっくに破られてしまったママは。
「組織に返却かえ? からかいに使ってはならぬのじゃ」
 しばらくすると、事態を把握した様子で、男性体育教師がケルベロスたちのもとへ駆けてきた。
 ジャージの上着を腰に巻き、そのかわり上半身には長袖Tシャツを着ている。
 受け持ちの自分が、肝心なときに生徒たちから離れてしまっていたことを、男性教師は詫びた。
 ママが笑顔で応える。
「なに、子供らの安全が守られたなら一件落着じゃよ」
「これも地球への恩返しだからね」
 恐縮する男性に、クィートは顔を上げさせる。つい未発達な胸の、なだらかさを近づけてしまった。
「あ……」
「や、や、重ねがさね申し訳ありません!」
 視線をそらした先では、カテリーナが手当てを、藍奈と舞火に施している。教師はポンと手を打ち、校舎を指し示した。
「そうだ。保健室なら、運動場から入れるのです。ご案内しますから、いったんそちらで落ち着かれては」
「ほ、保険室?!」
 藍奈が、すっとんきょうな声をあげて、目を泳がせた。カテリーナは、セーラー服の前を合わせ直すと、提案を素直に受け入れる。
「かたじけない。こう野ざらしでは、無関係な生徒殿の目にもふれる心配がござって」
 治療の中断に舞火は、ふらりと立ち上がって、クィートとは逆側になるように、男性の身体に寄りかかる。太腿にしずくが垂れた。
「先生にも手伝ってもらえないかな。ボクに肩を貸してほしいの」
「は、はい」
 舞火の視線は、男の腰に巻かれた上着を、透かし見んばかりだった。

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年12月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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