くノ一に、網タイツは至高である！

■リプレイ

●教会前
「くノ一に網タイツは至高……のう」
　ルティアーナ・アキツモリ（秋津守之神薙・e05342）は仲間達と共に、ビルシャナが拠点にしている教会の前にやって来た。
　ビルシャナは信者達を前にして、くノ一に網タイツが至高であると訴え、何やら妄想を膨らませてハアハアしているようである。
「くっ、くノ一に網タイツなんて……なんて恐ろしい教義なの！？　もう、エロ過ぎて、完全に否定なんてできないわね！！　でもアタシは違うわ！　妄想だけでだなんて、終わらせない！！」
　イーリス・ステンノ（オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16412）が色々な意味で危機感を覚え、網タイツ姿で叫ぶ。
　普段は黒ニーソだったりするのだが、信者達を説得するため、覚悟を決めた。
　それ故に、失敗は許されない。
　例え、どんな事があったとしても……！
「……くのいちって、大体デウスエクスかケルベロスじゃねーのか、今。そういう意味じゃ危険、なのかも知れねーが……」
　アンナ・シドー（ストレイドッグス・e20379）が、複雑な気持ちになった。
　確かに、そういった意味では危険だが、ビルシャナ的にも危険な感じがするのは、気のせいだろうか……？
　そんな疑問が脳裏に過ぎったものの、ビルシャナ的にはそれすらもハアハアするのだろう。
「それにしても、なんでくのいち＝網タイツなんでしょうかね？　そもそも、くのいちとは……（薀蓄省略）。まあ、鍛えた女性の足と網タイツのコントラストが素晴らしいって事なんでしょうけど……」
　リチャード・ツァオ（異端英国紳士・e32732）が、くノ一についての蘊蓄を語り、小さくコホンと咳をした。
　何から話の途中で仲間達から冷ややかな視線が浴びせられている事に気づき、何とか我に返ったようである。
　そのおかげで、何とかくノ一の暗黒面に魅入られる事が無かったものの、仲間達の視線は冷ややかなままだ。
「村雨チャンはハジメマシテデスネ。写真でハイケンしたときから、その丸出しの尻には言いたいことが沢山ありマシタ。『螺旋忍者って、そうなんだ』ってなった記憶がありマース」
　そんな中、パトリシア・バラン（ヴァンプ不撓・e03793）が、村雨・ビアンカ（地球人の螺旋忍者・en0020）に話しかけた。
「オゥ！　これは丸出しではありマセーン。チラ見せでーす。そもそも、丸出しと言うモノは……おっと、ここから先は円盤ゲットでヨロシクデェース！」
　ビアンカが尻を出そうとした瞬間、ハッとした表情を浮かべ、カメラ目線でウインクした。
　それに何の意味があるのか分からないが、どうやら間違った知識を教え込まれた影響のようである。
「正直よく分りませんでしたが、何となく分かった気がします」
　それを目の当たりにしたソールロッド・エギル（々・e45970）が、ゴクリと唾を飲み込んだ。
　何やら違う気もいるのだが、とにかく網タイツ姿のくノ一が可愛い事だけは間違いないだろう。
「もうこれ、網タイツくノ一姿で説得すれば言う事聞いてくれるんじゃない？」
　因幡・白兎（因幡のゲス兎・e05145）が、仲間達に視線を送る。
　少なくとも、ここにいる仲間達が説得すれば、心がグラつく信者がいてもおかしくない。
「とりあえず、試してみる価値はありそうだね」
　そう言って黒木・市邨（蔓に歯車・e13181）が仲間達を連れて、教会の中に入っていった。

●教会内
「いいか、お前ら！　くノ一こそ至高ッ！　至高なのだ！　その証拠に、これを見てみろ！　これが正しい、くノ一の姿だァ！」
　教会の中にはビルシャナがおり、ホワイトボードにくノ一のも写真を貼りつけ、興奮した様子で叫び声を上げていた。
　まわりにいた信者達も、ビルシャナの教義に賛同するようにして、『ウォォォォォォォォォォ！』と叫び声を響かせた。
「……と言うか、それ……鎖かたびらだろ？」
　アンナが写真をマジマジと見つめ、ズバッとツッコミを入れる。
「いやあ、まあ……これは鎖かたびらだが、ほれ脚を見ろ、脚を！」
　ビルシャナが写真に写ったくノ一の脚を指差し、網タイツ姿である事を強調した。
「いやいや、時代背景的にくのいちが網タイツをはいている方がおかしいんですよ。だから鎖帷子なんです。こっちが正統派なんだからコッチにすべきですよ！　……ほら、鍛え抜かれた全身に絡みつく鎖帷子（下着無着用）って良いでしょ！　解るでしょ！　ほら、皆一度着てみるべきです！」
　リチャードが興奮した様子で、鎖帷子をビルシャナ達に薦めた。
「いや、駄目だ。鎖帷子は重いし、動きづらいだろ。そう言った意味で、くノ一には向かない！」
　ビルシャナがキリリとした表情を浮かべ、躊躇う事なくキッパリと言い放つ。
　どうやら、鎖帷子では萌えないらしく、あれこれ難癖をつけて拒否する選択をしたようだ。
　まわりにいた信者達も素肌に鎖帷子を身に着けるくノ一を想像し、『肉を挟んだら、痛そう……』と呟いた。
「昔のエライ人も言っていたわ。目には目を！　網タイツには網タイツをってね♪」
　その間に、イーリスがビアンカと一緒に並び、網タイツ姿でポーズを決めた。
「おおおー！」
　これには信者達も、釘付け。
　ビルシャナさえも、生唾ゴックンであった。
「お兄さん、お兄さん、向こうでくノ一達とイイコトしないかい？　おっと、他の人に気づかれたら順番待ちになっちゃうから、気付かれないようについてきてね」
　すぐさま、白兎が傍にいた信者に駆け寄り、接触テレパスで説得を試みた。
　その話を聞いた信者はニンマリとした笑みを浮かべ、何かに導かれるようにして奥の部屋に入っていく。
　続いてビアンカがイイ笑顔を浮かべ、指の関節を鳴らしながら、奥の部屋に入っていった。
「何やら妙な声が……ん？　悲鳴？」
　それに気づいたルティアーナが、不思議そうに首を傾げた。
　おそらく、後者。
　だが、信者達は何も知らずに奥の部屋に入っていき、再び同じような声を上げた。
「んあああ！　何が起こった！　あれ？　信者達は……？」
　そこでようやくビルシャナも気づく。
　信者達のうち、何人かいなくなっている事に……。
「逆にくノ一以外に網タイツはどう思うノ！？　何より、妄想よりホンモノデショ、皆さん！　語るだけの教祖と、ワタシたち実物の説得力はどっちが上カシラ♪　信じる方へ歩みナサーイ♪」
　そんな中、パトリシアが網タイツを穿き、ビルシャナ達の前に立つ。
「お……いやいやいや！」
　ビルシャナがいち早く反応した後、激しくブンブンと首を振る。
　危うく反応してしまいそうになったが、ギリギリのところで我慢ッ！
　信者達も激しく目を泳がせながら、同じように首を振った。
「いい加減、正直になったら、どうですか？　私はどれもエロスを感じますし、網タイツがなくても始められるでしょう」
　ソールロッドが知人に貸してもらったくノ一コスプレ写真と、大量のくノ一モノの薄い本を愛想良くばら撒いた。
「い、いや、網タイツでなければ……。網タイツでなければァァァァァァァァァァァァァァァァァ！」
　ビルシャナが写真と薄い本を受け取り、残念そうに首を振る。
　しかし、信者達は興味津々。
　ビルシャナの目があるせいで、ガン見する事は出来ないが、見たくて見たくて仕方がないようだった。
　だが、ソールロッドも違う意味で、ソワソワ。
　イーリスが上司の義理の娘なので、かなり視線を気にしているようだ。
「でも、信者達は違うようだけど……」
　市邨が色々と察した様子で、信者達に視線を送る。
「え……あ、いや、これは……違っ！」
　その視線に気づいた信者達が、慌てた様子で写真や、薄い本を後ろに隠れた。
「お前等ァ！」
　それを目の当たりにしたビルシャナが、烈火の如く怒り狂い、ケモノの如く勢いで吠えた。
「いや、これには深い訳が……」
　信者達が慌てた様子で言い訳をしたものの、ビルシャナは御立腹。
「本当にそれでいいの？　ビルシャナ側にいるだけじゃ、所詮は妄想止まり。こっちに来たら、即日で、くノ一な黒ニーソとのギャップエロやくノ一な忍法の体験できるのよ！　さぁ、ホイホイといらっしゃい」
　イーリスが網タイツを強調しながら、再び信者達を奥の部屋に誘う。
　その誘いに乗った信者達に対して、ビアンカがポンポンンポーンと当て身を放ち、彼らの意識を奪うのだった。

●ビルシャナ
「……って、罠か！　やはり、罠だったのかァ！」
　ビルシャナが思わず二度見しながら、驚いた様子で声を上げる。
　何となく怪しいと思っていたが、禁欲状態に近い生活を続けていた信者達はホイホイ感覚で騙され、あっと言う間に夢の世界に旅立った。
「そう言いつつ、身体が奥の部屋に向いているのは……何故じゃ」
　ルティアーナがジト目で、ビルシャナをジロリと睨む。
「あ、いや、これは……たまたまだ」
　ビルシャナが愛想笑いを浮かべ、誤魔化し通そうとした。
「まあ、どうでもいい事だけどね」
　市邨が素っ気ない態度で、さらりと流す。
「おいおい、随分と冷たいじゃないか。それとも、ビビッているのか？　この俺に……！」
　ビルシャナがクールな表情を浮かべ、親指で自分に向けた。
「その割には両足がブルッているけど……」
　アンナが呆れた様子で、ビルシャナの両足に視線を落とす。
　ビルシャナの両足はガタガタとリズムを刻み、逃げ足脱兎モードになっていた。
「こ、これは……武者震いだ！　それじゃ、始めようか！　血で血を洗う宴って奴を！」
　ビルシャナが声を震わせ、必要以上に強がった。
　何やら妙なフラグを踏んでしまったような気もするが、いまさら引き下がる訳にも行かなかった。
「だったら、最後くらいサービスしようか」
　次の瞬間、白兎が仲間達の恰好を、くノ一姿に換装した。
「おお、これは……！」
　ビルシャナも、ドキリッ！
　網タイツ姿ではないものの、反射的に反応してしまい、身動きが取れなくなっていた。
「ワタシのモノにならないオスに用ナシ！」
　その間にパトリシアがゴミを見るような目でビルシャナを睨みつけ、容赦のない攻撃を繰り出していく。
　そのため、ビルシャナも反撃する事が出来ず、妙な呻き声を上げて血反吐を吐いた。
「―――狙った獲物は、逃がさないかな♪」
　それに合わせて、イーリスが己の羽を刃に変え、七色に輝く刃を纏った鳩を召喚すると、容赦なくビルシャナにトドメをさした。
　ビルシャナは為す術もなく断末魔を響かせ、血溜まりの中に沈んでいった。
「まあ、ああいう一種のフェチズム、解る気もしますけどね。それでも、忍者は永遠にヒーローですし、男性の九割は網タイツが好きなんですよ」
　そう言ってリチャードが色々と悟った様子で、何処か遠くを見つめる。
　だが、ビルシャナ達は、禁忌を犯した。
　フェチズムを制限し、他のフェチズムを否定する事で……。
　それ故に、最悪の末路を辿った。
　つまり、そう言う事である。
「こ、こんなに汚して……。これは借り物なのに……」
　ソールロッドが奥の部屋に落ちていた写真と、薄い本を拾っていく。
　どれも信者達の手垢と何かで汚れ、酷い状態になっていた。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年12月1日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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