クッキー、ロールケーキ、河童巻きの共通点

作者:質種剰


「それは、積み上げるとクリスマスツリーになる事であります♪」
 小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が何食わぬ顔で説明を始めた。
「クッキーは、星型を大小バラバラの大きさで沢山用意して、一番大きいのを土台にしてそれより僅かに小さい星を少しずつ回転させつつ積み上げると、それはもう可愛いであります!!」
 天辺に一番小さい星を立てればよりツリーらしく見えるだろう。
 全体に粉砂糖をまぶして雪化粧させるのもお奨めだ。
「ロールケーキの方は、細巻きぐらいの細さと短さに切ったロールケーキ複数本で円形に土台を作って、その上に本数を少しずつ減らして小さくした円を2段3段と……」
 天辺が1本になるまで繰り返せば、こちらもクリスマスツリー型のロールケーキの完成だ。
「何でも今年の流行りらしいでありますよ。いかがでしょう皆さん、今年のクリスマスは、ツリーを模したケーキやクッキーを手作りして、一緒にパーティーしませんか?」
 丁度、12月4日が草臥・衣(神棚・en0234)の誕生日である為、それを口実に皆で集まって楽しくケーキを食べよう——というのが今回の趣旨である。
「クリスマスパーティーでありますから、普通のホールケーキやご馳走、プレゼント交換を満喫なさるのも勿論アリです」
 注意事項は未成年者やドワーフの飲酒喫煙の禁止のみ。
「ではでは、皆さんのご参加楽しみにお待ちしてるでありますよ~♪」
 さっさと説目を済ませるかけらへ、今まで黙っていた衣がツッコむ。
「——で、河童巻きは?」
「ロールケーキと同じ要領でクリスマスツリーができるでありますよ♪」


■リプレイ


「衣、誕生日おめでとうだ……大したものじゃないが、プレゼントのマフラーだ……」
 セイヤがくれたプレゼントは、御衣櫃と共用で使える長さのマフラー。
「かけらやガイバーンと違って衣は好きなものがわかり難かったので実用品で選んだが……」
「ありがとう、寒いから助かる」
 そんな気遣いの人であるセイヤは、もう一つ贈り物を用意していた。
「あ、後、胃薬だ……例によって頑張れ……」
「………………助かる」
 衣の表情が強張る。ガイバーンが目を逸らし、小檻は笑いを噛み殺した。
「衣さん、誕生日おめでとう……」
 すると、皆の間に流れた微妙な空気へ気づかないリーナは、微かに弾んだ声で衣を祝った。
「誕生日ケーキ、また焼いてきた……」
 言うや否や召喚・混沌料宴の六芒星魔法陣から溢れ出るケーキを見て、衣がこちらも無表情を繕う裏で恐れ慄いた。
「ん……折角だからサンタ衣装で来たけど……かけら、変じゃないかな……?」
 そんな心中を知らないリーナは、着用したミニスカサンタ衣装が似合うか、小檻へ無邪気に尋ねている。
 胸の谷間を露出したデザインのケープとチューブトップワンピースが色っぽくも、縁を飾る白いファーのお陰で可愛さを両立させている。
「変じゃありませんとも。とてもお似合いであります♪」
 小檻は心より断言できた。
 一方。
「パーティーか……クリスマスには早いが、料理の方は任せろ……」
 セイヤは持参した袋からずるりと今夜のメイン食材を出してみせた。
「現地行って鳥一羽狩って来たからな……張り切って作るぞ……」
 そう。それは体長1.5mにもなろうかという鳥。ちゃんと血抜き済み。
「ガイバーンも手伝ってくれ……火入れとか見て貰えると助かる……」
「うむ」
 他方。
「ん……にいさんがいつも以上に張り切ってる……わたしも何か作りたいけど……」
 リーナは多少思案した後、かっぱ巻きを見て何か閃いたのか、
「……少しクリスマスには合わないかもだけど、手巻き寿司でタワー作ろう、かな……いろんな具材使って……斬るのは得意だし……」
 ひょいひょいマグロやらサーモンやら放り投げては、あっという間に空中で解体していく。
「かけらも手伝って……かっぱ巻きタワーならぬ手巻き寿司タワー……」
「了解」
 リーナ渾身の作たる手巻き寿司タワーが高さを増していくのを見て、
「後はケーキ……ロールケーキタワーも良いが、クリスマスらしくブッシュドノエルにするのも良いな……」
 セイヤも触発されたのか、クリスマスケーキは何を作ろうかと思案する。
「ふむ……折角だから最大サイズに挑戦するのも良いか……」
 兄妹がそれぞれ力を入れたディナーは、相当豪華になりそうだ。

「クッキーでクリスマスツリーとか作っちゃおうかしらね」
 さて。ソフィアは珍しく縛霊手やヒガシバへ任せきりにせず、自力でお菓子作りに挑む。
 本人曰く、『家事としての料理は面倒だが自分の作りたいものを作るのなら割と好き』だそうな。
「凝る際はかなり凝っちゃうわよ~」
 その宣言通り、完成したクッキーツリーは、とてもクッキーを積んだだけとは呼べない手の込んだ代物だった。
「コロモくん、お誕生日おめでとうね~」
「有難う。ソフィアは手先が器用だな」
 衣も、本物のツリーに負けないぐらい繊細なツリーへ驚きを隠せない。
 まず、クッキーの大部分は抹茶を混ぜてもみの木カラーを表現。
 加えて等間隔に違う色のクッキーを積む事でモールを巻いだツリーをイメージ。
 あまつさえオーナメントは飴細工製。リンゴやベル、キャンディケインなど緻密に作り、周りへ散りばめてみせた。
「これは食べるのが勿体ない……」
 衣はクッキーツリーの写真を撮らせて貰って、味だけでなく見た目も堪能した。


「草臥さんはお誕生日おめでとうございますー」
 と、ビニール製の月桂樹の冠を乗せたのはミリア。
「……生花の冠がよかったんですが……こっちにします?」
 更に造花の冠とクリスマスリースも手にして問うものだから、
「造花の冠はミリアが被ったらどうだ? クリスマスリースは御衣櫃に被せてみるとか」
 銘々へ冠が行き渡っても、ミリアの天然ボケは留まるところを知らない。
「あと草臥さん、干瓢巻のロールケーキは美味しくないと思いますよ……?」
「干瓢巻きじゃなく河童巻きだし、ロールケーキに魔改造はしないし」
 思わず無口な衣がツッコミに回ってしまうほどだ。
「普通のロールケーキ持ってきましたから、こっちで我慢してください……?」
 ともあれ、ミリアは切り分けたロールケーキと淹れたての紅茶を出して、優雅なお茶会を開始。
(「普通のロールケーキで草臥さんの気を逸らしてる間に、クリスマスツリーを作りましょう……」)
 どうやら彼女なりに算段があるようで、円錐に焼いたクッキーを何段か重ね、チョコペンでデコった。
「……柏餅のツリーも作ったほうがいいでしょうか」
 ふと、ミリアは通りかかったガイバーンのつけヒゲから着想を得て、
「……あとは、マジパンも乗せたほうがいいですかね?」
 円錐クッキーツリーは賑やかに飾りつけされるのだった。

「鬱ゲー好きの草臥たんに、衝撃的なラストをお見せしようと思う」
 ルイスは、不穏な宣言と共に自ら黒毛布で簀巻き状態。
「巻き物なら何でも良いんじゃろ?」
 どや顔するだけあって『シナリオ作成・俺』だとか。
「次はアホどもに命じ、簀巻きがほどけない様、ロープを……」
 ちなみにアホどもとは、
「おたんじょうびだぁああああああやったぁああああああああ!」
「おたんじょうびだぁああああああやったぁああああああああ!」
 宴たけなわを待たずにスヤスヤ寝そうなくらい全力ではしゃぎ回っている、ルルとチロの事だ。
「よーし、サプライズ演出で簀巻きになったルイちゃんをロープでがんじがらめにするよ」
「サプライズ演出で簀巻きになったキノコを以下同文!」
 ルルとチロは、ルイ簀巻きを立たせて安定させるべくロープを持ち出した。
「なんかぐんにゃりして上手く立たないから、ロープを伸ばして天井から吊るしておこうっと!」
「ちょ……首!! 首絞まってる!! ほんとに首絞めるアホが居るか……グェッ」
「なんかカエルが潰れたみたいな声が聞こえたけど、細かいことは気にしねぇ!」
 気を失った黒オブジェを円陣の真ん中に鎮座させて、その存在を隠すようにロールケーキや河童巻きを周りへ積み上げていく2人。
「ヒャッハー!! 簀巻きは消毒だぁー!!」
 チロのテンションが最高潮に達したところで、
「だからどうしてお前らは目を離すと変な召喚儀式を始めるんだよ!!!」
 とうとうマリオンに見つかって雷が落ちた。
「可愛いクッキーでクリスマスツリー作ろうねって、さっきまで言ってたじゃないですか!! なんだよこの……この……」
 ともかくブチ切れた勢いで2人を正座させ、懇々とお説教する暗黒街の帝王だが、
「……ほんとに何だ!? これ!!?」
 ロールケーキと河童巻きに囲まれてど真ん中に聳えた、黒くてぐんにゃりした物体を目にすれば、驚くのも無理はなかった。
「つーか、申し訳程度に積んでいるかっぱ巻きとか、誰だよ中のキュウリだけ引っこ抜いて食べちゃった奴! これもうただの海苔巻きだろ!!」
 それでもすぐに立ち直ってキレの良いツッコミを入れる辺り、流石は姉弟漫才のツッコミ担当である。
「……ロールケーキの中のフルーツとクリームが美味しそうなので、むしゃむしゃしてやった。あとで丁寧に巻き直せば、ばれないと思った。正直、反省はしていない」
「反省を学べやちびっこぉぉぉ!!」
 ルルのいつものボケへも、愛用の釘バットもといClou de girofleをバンバン床へ叩きつけながら青筋立ててツッコんでいる。
「あと、ロールケーキのクリームとフルーツをこそげ落として食べちゃった奴!! ご丁寧に巻き直してるけど、これ、後でどうすんだよ!! ただのスポンジだろ!!」
「……キュウリが美味しそうなので、むしゃむしゃしてやった。ちょっとくらい風通しが良くなっても、ちくわですと言い張ればばれないと思った。今は反省している」
 そして、ルルの真似を試みて真似しきれていないチロの姿は、
「うんうん、チロの支離滅裂な真似っこを聞くと、12月って感じがするのう」
 ガイバーンを微笑ましい心地にさせていた。
「ちくわで誤魔化せるかこのわんこ!? 一万歩譲ってもきりたんぽだろ!!」
 マリオンはマリオンで、ツッコミの態を取りつつボケを重ねるという、芸人としてめざましい成長をみせていた。
「大体この真ん中の謎の……」
 そして、軽い気持ちで黒い物体をどついたら、
「ウワァアアアアアアアア人が入ってたぁあああああああ!」
 ごろんと死体よろしくルイスが転がり出てきた為、ガチの悲鳴を上げる羽目になった。
「お分かりいただけただろうか……これがほのぼの旅団を自称する、ララティア乳業の闇である……」
 ガクゥ、と落ちる演技も見事なルイス。
「うん、良いよな。事件が起きて疑心暗鬼に陥るのって」
「この後犯人探しが始まってルル殿チロ殿が否認なさるのね」
 鬱ゲー好きの衣や小檻を、本当に喜ばせたのだった。
「良いなぁ、かけらもララ乳遊びに行きたい……」
 と、ギャラリーが盛り上がる中、
「中身が無いロールケーキは、後で野良ちゃんが美味しく食べました」
 ルルはそんな事を言って、放心した野良ドリちゃ——マリオンの皿へ勝手に乗せている。
「中身が無いかっぱ巻きは、後でルイスが美味しく食べました」
 チロもやっぱりルルの真似をして、転がってるルイ簀巻きの前へスカスカの巻き寿司をお供えした。


「食べてばっかりいないでショーコも手伝ってよー!」
 せっせと星型のクッキーを積み上げつつ、傍らの梢子へ呼びかけるのはマヒナ。
「気が向いたらねー」
 生返事だけした梢子はどうやら手伝う気配皆無で、クリスマスディナーへ夢中になっている。
「んーお肉が柔らかくって、照り焼きソースとよく合うわーこの鶏肉」
 今ももぐもぐと上機嫌でローストチキンに齧りついていたかと思えば、
「まぁ、七面鳥なんて挿絵でしか見たことないわ……! 美味しそう」
 ハーブの詰め物が香ばしい七面鳥を前に、瞳をキラキラ輝かせている。
 元々スイーツ好きな梢子だけに、ケーキより料理優先する嗜好とも思えないが、ただ単にズボラでガサツな性格の為、手伝うのが面倒臭いのだろう。
「もーっ……リヤはどう?」
 それ以上言うのを諦めて、次は理弥の手元を覗き込むマヒナ。
「いやたしかにツリーっぽい形にはなるけどさ……」
 理弥が作っていたのは、河童巻きツリー。
「……なんか、ひたすら黒いな……海苔のせいで」
 甘い物が苦手だからと選んだらしいが、予想以上に寿司海苔の醸し出す威圧感が凄まじく、果たしてこれは祝いの席に相応しいのかと困り果てていた。
「サーモンとかエビとかタマゴ焼きとか散らすと可愛いかも」
 理弥の胸中を察して、マヒナが彩りを加えれば良いとアドバイスした。
「サーモンとか卵焼き散らすって……こういうことか?」
 それを聞いて、刺身や卵焼きをそのまま適当にべちゃっと載せる理弥。
「えぇっと……例えば、こういうふうに型抜きを使って」
 苦笑したマヒナは、卵焼きやサーモン等をクッキー型で抜いて、河童巻きの外壁の上へ立てかけてみせる。
「はぁ、クッキーの型で、ねぇ……」
 理弥は素直に感心するのが面白くないのか、
「いかにも女子だな。俺に女子力アピールされても困るけど」
 と、気の置けない間柄なればこその余計な一言を付け加えながら、見よう見まねで卵焼きを星型に抜いた。
 そして。
「コロモ、ハウオリ・ラ・ハナウ! 誕生日おめでとう!」
 結局ひとりでツリー作りをやり遂げたマヒナが、衣をお祝いする。
 だが。
「ココナッツ振りかけてちょっとハワイっぽくしたクッキーツリー作って……あれ、崩れてる!?」
 振り返ったマヒナが目にしたものは、無残にも倒れ伏したクッキーツリー。
 綺麗に振りかけたココナッツが、どことなく土砂崩れっぽいイメージを強めている。
「しかもなんかクッキー足りない!」
 倒れたからこそ目立たないものの、クッキーツリーの全長が何故だか縮んでいるのへ気づいて、軽く悲鳴をあげるマヒナ。
 何のことはない。理弥も呆れて推理しないほど明白な、ツリー殺害事件の犯人は梢子。
「そういえばマヒナ何か作ってたんだっけ? ……ふむふむ、ビスケットねどれどれ味見……」
 ひときしり宴会料理を食べて満足した彼女は、食後のデザート感覚でクッキーツリーに手を伸ばしたというのが真相だ。
「味見ならしておいたわ!」
 憤慨するマヒナへ向かって、梢子は何故かどや顔で白状する。
「味はまぁまぁね、上にかかってる白いのは美味しかったわ! ちょっと崩れたけど、腹に入れば同じだから大丈夫よ!」
「ショーコったら! もー、それは味見じゃなくてつまみ食いでしょ!」
「というか、食べたのは私だけじゃないわよ?」
「ちょっと、アロアロもなの!?」
 梢子に水を向けられたせいでマヒナから問い詰められたアロアロは、ビクッと肩を震わせるやそーっと顔を背けた。
「えーと……草臥、誕生日おめでとう?」
 2人だけでも姦しい女性陣を横目に、河童巻きツリーを差し出すのは理弥。
「うるさくてすまん……梢子姉、あれでもう三十路なんだぜ……俺らよりずっと年上なんだぜ……」
「気にするな。2人とも旨そうなツリーありがとな」
 家族の枠を離れても女性で苦労している理弥を見て、衣は面白がりつつ慰めた。

「クッキーや河童巻きも良いけれど、私はロールケーキを積んでみようかしら?」
 みいは、三毛猫の綺麗な体色がよく判る耳をピンと立てて、自分もツリーケーキ作りへ取りかかった。
「沢山食べて頂けるなら、頑張って積めるだけ……可愛らしい抹茶の一口大ロールケーキをうず高く!」
 ロールケーキの中でも抹茶味、まして一口大を選んだのは、積み上げた時に一層クリスマスツリーらしく見えるよう考えての工夫だ。
 一方。
「俺は白のロールケーキを積もうか」
 アベルは、同じ一口大のロールケーキでも真っ白なスポンジのを選んだ。
「……案外、楽しいな」
 土台の1段目を広く作って、自分の背より高く積み上げる作業に新鮮みを覚えるアベル。
 しかも積み上げるのが強度に多大な不安のある柔らかいロールケーキというのだから、まるで木片の塔を高くするパーティーゲームのようなスリルに童心が擽られたようだ。
「デカいケーキってロマンだよなぁ」
 緑と白、2つのツリーケーキがどんどん積み上がっていく様を目の当たりにして、1人感嘆しているのはエリアス。
 彼とて、ただぼうっと完成を待っている訳ではなく、クリスマスでなければ食べられない宴会料理——特に肉系——を大量に抱えて食べていた。
「クリスマスってのは日本の祭りじゃないんだな。けどイルミネーションであちこち飾られて悪くねぇ雰囲気だし、何より旨いもんが食えるイベントは大歓迎!」
 と、七面鳥の丸焼きやローストビーフに舌鼓を打つ姿は妙に爽快感がある。
「兄さん、これをその2本の上にお願いね」
 みいは、手が届かない高さになると積み上げをビハインドの兄さんに任せて。
「いやいや……みいの手届かなくなるまで積むのか?」
 エリアスにツッコまれている。
「そうだよー」
 それでもみいはどこ吹く風で、ツリーのオーナメントに見立てたフルーツやクリームを、自ら飾りつけた。
 天辺に結んだリボンの両端を按配よくふわっと掛けたら完成だ。
「どうかな? 食べられるツリーですよ」
 和やかに微笑んで抹茶ツリーを皆へ披露するみい。
「真っ白なツリーでも星型のクッキーとフルーツで彩りゃ映えるだろ?」
 アベルも、白いロールケーキへ散りばめたクッキーと果物がお洒落な白雪ツリーをお披露目した。
「アベルもよ。いくらなんでもデカすぎだろ、誰が食うんだ……俺らだな!」
「そりゃそうだろ。まだまだ俺の胃袋は衰え知らずだからな」
「あらエリアスさんこそ、そんなにたくさん食べられるのかしら?」
「これくらいなら大丈夫、俺とアベルがいりゃ余裕で朝飯前だって」
 みいへ答えた通り、2本の超高層ツリーケーキをどんどん食べ進めるエリアスとアベル。
「……ふふ、食べちゃうに決まってるわね」
 みるみるうちに痩せ細っていくケーキ仕立てのモミの木を眺めて、自然と笑みの零れるみい。
「小さい頃はよく食べ物で遊んではダメ! なんて言われたけれど……残さず食べれば遊びでも悪戯でもないわ、ね? 兄さん」
 と、大食漢達には負けるものの、自分のペースで兄さんとロールケーキを分け合っているのが微笑ましい。
「……で、お前さん達二人に俺から贈りもんだ」
 ふと、アベルが見せたのは、揃いの小さなブッシュ・ド・ノエル2つ。
「好い日の礼に、な」
 2人は喜んで、満足行くまでゆっくり眺めてから、共にブッシュ・ド・ノエルを食べ始める。
「気付けばもう年の瀬も間近。激しい戦いも、和気藹々もたくさん経験した一年でしたね……」
「まだまだ、クリスマス前に激しい戦い残ってるだろ」
「図らずも、良い壮行会になったな」
「壮行会もクリスマスパーティー……祝勝会もクリスマスパーティー、ですね!」
 来るべき戦争に備えて英気を養い、楽しく談笑する鬼淵の面々であった。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年12月12日
難度:易しい
参加:14人
結果:成功!
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