終末機巧大戦~突撃、機甲鯨!

作者:雷紋寺音弥

●終末の歯車
「東京六芒星決戦では、大活躍だったようだな。お前達の活躍により、儀式は失敗。死神の連中も撤退したようだが……安心するのは、まだ早いぜ」
 やはりというか、あの戦いを傍観していたダモクレスの軍勢が、儀式失敗によって行き場を失ったグラビティ・チェインを奪い、『終末機巧大戦』という大儀式を引き起こすために活動を始めたのだ。連戦に次ぐ連戦で申し訳ないが、大至急、儀式の阻止に向かって欲しいと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に、今回の作戦について語り始めた。
「この大作戦を率いるのは『五大巧』と呼ばれる五体の有力ダモクレスだ。連中はディザスター・キングの指揮により『六芒星決戦』に参戦する筈だった戦力を支配下に収めると、死神を裏切って儀式への増援を拒否したようだな」
 そうして戦力を温存し、今回の作戦を強行した。なかなか狡猾なやり口だが、だからこそ指を咥えて見ているわけにも行かない。
「既に、晴海埠頭は中央部に出現したバックヤードを中心に、周辺の機械や工場などを取り込んでダモクレス化してしまっている。連中の目的は、恐らく東京湾全体のマキナクロス化だ。爆殖核爆砕戦で攻性植物が行った、『はじまりの萌芽』を模した大儀式……『終末機巧大戦』……。核となる『6つの歯車』を利用した儀式を行う事で、爆発的に戦力を増殖させるつもりだろうな」
 クロートの話では、敵の作戦を阻止するためには『核となる歯車』の破壊が不可欠であるとのこと。だが、儀式は巨大な拠点型ダモクレスの内部で行われる為、破壊する為には拠点型ダモクレスの内部に潜入する必要があるのだとも。
「敵が儀式を行えるのは、晴海埠頭外縁部でなければならないらしい。儀式開始と同時に侵攻を開始するので、そこを急襲して敵の儀式を阻止してくれ」
 敵が侵攻を開始してから、儀式が発動するまでの時間は30分。それまでに敵拠点に潜入して護衛を排除し、儀式を行っている指揮官ダモクレスの撃破か、或いは、儀式の核となる歯車を破壊しなければならないというのだから、大変だ。
「今回、お前達に向かってもらいたいのは、第4の儀式場だな。巨大な鯨型の水陸両用要塞……『都市制圧型移動要塞アンドロケートス』と、その護衛部隊が相手になる」
 なお、こちらの部隊が担当すべきは突入班。アンドロケーロスの内部に突入し、内部に鎮座する指揮官型ダモクレスか、もしくは儀式に必要な歯車を破壊することが目的だ。
「艦内にいる指揮官型のダモクレスは、『終末機巧』カタストロフィ。それに加えて山之内冴子とナースドール『フローレンス』という、アンドロイド型のダモクレスが護衛についているぜ」
 その中でも山之内冴子は敵の弱点を見抜くことを得意とし、バランスの取れた強さを発揮する。両腕のガントレット状の部位には多彩なギミックが仕込まれており、武装として展開したり、修理を兼ねた改造を施して命中精度を高めたりできる。
 ナースドールは見た目通りに回復補助を得意としているが、攻撃能力がないわけではないので、こちらも油断はできないだろう。
 そして、五大巧の内の1体である『終末機巧』カタストロフィだが……先の2体と比べても、格段に強い。普段は椅子に座っているが、そこから立ち上がった際の強さは、護衛の2体とは比べ物にならない。光の剣や波動を使って攻撃して来る他、自らの周囲を念力に近い力で覆って壁を作り、本体の耐久力も極めて高い。
「儀式の核である歯車を破壊された『五大巧』は、強制的に本拠地であるバックヤードに転移させられるようだ。指揮官の撃破を狙う場合は、この点に注意して行動してくれ」
 儀式の阻止を最優先するか、それとも敵指揮官の撃破を狙うか。選択の結果次第では、これからの戦いにも影響が出る。
 また、先の戦いで敗れた死神の勢力も黙って引き下がるとは思えず、エインヘリアルの第二王女の軍勢が現れなかったのも気にかかる。加えて、先の戦いの様子から撤退するかに見えた竜十字島のドラゴン勢力も、撤退を止めて太平洋上で状況を伺っているらしい。
「死神を裏切ったダモクレスの大儀式か……。心を持たぬ連中からすれば、卑劣ではなく合理化ということなんだろうが……」
 どちらにせよ、この事態を放ってはおけない。
 終末機巧大戦を抑え込み、卑劣なダモクレスに鉄槌を。そう締めくくり、クロートは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
モモ・ライジング(神薙画竜・e01721)
葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)
山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918)
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)
バジル・ハーバルガーデン(薔薇庭園の守り人・e05462)
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)
キーア・フラム(憎悪の黒炎竜・e27514)
オニキス・ヴェルミリオン(疾鬼怒濤・e50949)

■リプレイ

●吠える巨鯨
 晴海埠頭外縁部。潮風の漂う副都心を背に、ケルベロス達は巨大な鯨と対峙していた。
 都市制圧型移動要塞アンドロケートス。巨大な砲塔と多数の艦載機を備えた、五大匠の誇る切り札の1つ。
「東京湾のマキナクロス化なんか、絶対阻止しないとね!」
 そう言って、山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918)が決意を固めたところで、他の者達も一斉に飛び出した。見れば、既に先行の部隊は早くもアンドロケートスとの戦いに突入しており、激しい砲火が晴海の街を焼いていた。
「……ダモクレスは思い切った作戦に出たわね。けど私達がいる限り、東京湾を好きにはさせないよ」
「隙あらば儀式をしようとするな、デウスエクスという連中は……。だがまあ、何度やろうと吾らが阻止するだけよ。さあ、恐れずしてかかってこい!」
 モモ・ライジング(神薙画竜・e01721)とオニキス・ヴェルミリオン(疾鬼怒濤・e50949)の二人が、散開しながら銃弾や気弾を撃ち込んで行く。しかし、敵も伊達に巨体を誇っているわけではないようだ。
「見た目通り、タフな相手ね。即死級の火力を持ってない分だけ、戦艦竜なんかよりはマシだけど……」
 炎を纏ったキーア・フラム(憎悪の黒炎竜・e27514)の槍先が巨鯨の装甲を切り裂いたが、それでも外装に少しばかりの傷を負わせただけに過ぎない。巨体故に動きこそ鈍いが、この頑丈さだけは如何ともし難い。
「火砲を掻い潜って敵艦へ突入しろ、か……。さて、運命の女神はどちらに微笑む?」
 意味深な笑みを浮かべ、卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)がコインを投げた。
 出たのは表。普通に考えれば、勝利や成功を意味する結果だが。
「おっと、待ちな」
 思わず飛び出そうとした葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)や若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)を、泰孝は咄嗟に制止した。
「おいおい? 攻めに出るチャンスじゃねぇのか……って、げぇっ!?」
「……あのまま出ていたら、めぐみ達もやられていました……」
 先行した部隊が、敵艦の上に位置する女性の像から強烈な攻撃を受けているのを目の当たりにし、唯奈とめぐみの足が止まった。
 一ヶ所に固まらず、散開しながら行動していたのが幸いしたのだろう。味方の被害はそこまで甚大ではないが、しかしあれを食らい続ければ、突入前の消耗は必至だ。
「今、考えていることの反対が、正解ってこともあるんだぜ?」
「へぇ……。あなた、勝負師の心得、解ってるじゃない」
 にやりと笑う泰孝に、モモが感心したような表情で頷いた。
「敢えて分の悪い方に賭けた方が、道を開けることもある。それだけさ……」
 苦笑しつつ、泰孝も返す。勝利を焦り、敗北を恐れ、安牌を狙えば却って落とし穴に嵌まることもある。元より、勝率の低い戦いであれば尚更のこと。引き際と勝負所を見誤らず、瞬間の判断を極めることこそが、勝利の女神を引き寄せることに繋がるのだ。
「後ろは僕が守ります! 皆さんは、早く敵艦に取り付くための突破口を!」
 銀色の粒子を散布しながら、バジル・ハーバルガーデン(薔薇庭園の守り人・e05462)が叫んだ。こんなところで、いつまでも時間を掛けているわけにも行かない。本当に倒すべき相手は、あの戦艦の中にこそ存在しているのだから。
「火力で負けてるなら、肉薄して攻撃を叩き込むまでよ!」
 弾幕を掻い潜って敵の下方に回り、キーアは自らの駆る攻性植物を蔦状に変化させて絡み付かせた。途端に、敵のパワーに引き摺られてしまうが、それもまた計算の内だ。このまま引っ張り上げてくれるなら、むしろ都合が良いというもの。
「牽制は、めぐみがやります。今の内に、近づいて下さい」
 ナノナノのらぶりんに回復を任せ、めぐみもまた不可視の爆弾を一斉に炸裂させて、巨鯨の動きを止めて行く。何も知らぬ者からすれば、まるで空爆を受けているようにも見えただろう。
「起点は、ボク達で作ります!」
「他の者達とも足並みを揃えるのだ。装甲の弱った個所へ集中砲火しろ!」
 涼子の拳が、オニキスのチェーンソー剣が、それぞれに戦艦の装甲を凹ませ、斬り裂いた。そこに狙いを定め、持てる火力を一斉に集中すれば。
「行けるか、二人とも?」
「これだけ大きな的なら、狙うまでもないわね」
「左に同じくだぜ。真正面から、叩き込んでやろうじゃん!」
 泰孝の問いに、モモと唯奈が顔を見合せたまま銃を構えた。
 一点突破。ただ、それだけを考えて引き金を引けば、リボルバー銃と大型ライフルが同時に火を噴き弾を放つ。矢継ぎ早にして放たれた銃弾と、全ての力を奪うエネルギー弾が、空中で収束して着弾する。
 やがて、激戦の末に巨鯨の体がぐらりと傾き、そのまま静かに歩を止めた。
「あっ! あれを見て下さい!」
 バジルの指差した先に、巨大な穴が空いている。どうやら、あそこから内部に侵入できそうだ。
「甲板にいる女が残ってるけど、仕方ないわね。後は他の人達に任せて、こっちは先に突っ込むわよ!」
 蔦を伸ばして破損した装甲に絡み付け、キーアが真っ先に穴の奥へと消えた。他の者達も、それを追う。巨鯨の侵攻は止まったが、しかし戦いはまだ、始まったばかりだ。

●ネコ娘包囲網
 街を丸ごと焼き尽くさんばかりの砲撃を掻い潜り、艦内に潜入したケルベロス達。だが、そんな彼らを待っていたのは、無数のネコ娘型ダモクレスによる、数の暴力を生かした強固な防衛ラインだった。
「……ったく。倒しても、倒しても、次から次へと湧いてくるぜ!」
「このままだと、先に進めませんね。1体の強さは、そこまでではないのが幸いですけど……」
 悪態を吐く唯奈に、バジルもまた額の汗を拭って頷いた。
 キャプチャドール「ファティマ・マーノ」。巨大な腕型のユニットを背負った彼女達は、その見た目に反し、大した戦闘力は持っていない。上手くやれば、纏めて一斉に薙ぎ払えるレベル。だが、それでも次々に湧いて来る数の暴力を前にしては、さすがに疲弊もするというもの。
「面倒臭いわね。一気に叩くから、討ち漏らしたのはよろしく!」
 個別に相手をしていてはきりがないと、モモは複数の敵に狙いを定め、拡散させるようにして、銃弾を周囲に撒き散らす。これで少しは、敵の頭数を減らせたか。そう、安堵の溜息を吐いた時だった。
「おぅコラ、てめーらの相手はこっちだ」
 突然、後ろから駆け込んで来た影が、キャプチャドールの腹を蹴飛ばした。
「ここはわたし達に任せてください!」
 不躾に飛び込んで来た男に代わり、桃色の髪の少女が敵の前に立ちはだかる。こちらの増援に気を取られ、敵の防衛ラインに穴の開いた今こそが、この包囲網を突破するチャンスだ。
「よっし、ここはおばあちゃんに任せときなさい。思いっきり歯車をぶっ叩いてきなさい!」
 戦列の中に孫の姿を見たのだろう。ミミックを連れたオラトリオが、縛霊手でキャプチャドールを殴り飛ばす。その隙に、続々と奥へ続く通路へ抜けて行く仲間達の姿を見て、他の者達も後を追った。
「すみません。ここは、お願いします」
「我らも行くぞ! 遅れるな!」
 めぐみが軽く頭を下げ、オニキスが残る者達へと檄を飛ばす。後ろでは、未だ戦いが続いているようだが、決して振り返ることはしなかった。
 ここで歩みを止めることは、敵を引き受けてくれた者達への不義理になる。誰も口には出さなかったが、そう、頭では理解していたから。

●母の幻影
 ネコ娘達の群れを抜けると、そこに待っていたのは意外な人物だった。
「嘘……。本当に、母さんなの……?」
 涼子の口から、思わずそんな言葉が零れた。数体のキャプチャドールを引き連れ、彼女達の前に現れた敵の内の一人。それは他でもない涼子の母親、山之内・冴子に瓜二つだったのだから。
「なんだい、お前は? アンタみたいな子、アタシは知らないねぇ」
 もっとも、当の冴子からすれば、今の涼子は敵でしかなかった。動揺させようと、敢えて知らない素振りをしているのか、それとも本当に知らないのか。どちらにせよ、彼女の考えていることまでは読めそうにない。
 それでは、自分の姉妹機について知らないかと誰かが尋ねたが、やはり冴子は首を縦にも横にも振らず。
「シュネールイーツ、と言えばおわかりでしょうか?」
「おやおや、アタシはいつから、お前達の仲間になったんだい? 知っていたとしても、敵の質問に対して馬鹿正直に答える義理なんてないねぇ」
 それだけ言って、腕のギミックを展開すると、一方的に攻撃を仕掛けて来た。
「来るぞ! 奴らのペースに飲まれるな!」
 オニキスが叫ぶと同時に、他の者達も散開し、それぞれ攻撃の体勢に入る。まずは一発、お返しとばかりに冴子を巻き込む形で、バジルやモモが茨と弾を撒き散らし。
「青き薔薇よ、その神秘なる茨よ、辺りを取り巻き敵を拘束せよ」
「雑魚護衛には構わないで。ターゲットは、あくまで敵の主力。分かるよね?」
 そのままキャプチャドール達を始末しつつも、他の仲間達へと目配せした。
「めぐみが追い風を送ります。その間に、突破してください」
 相棒のらぶりんと共に、めぐみもまた極彩色の爆風で味方を鼓舞し、完全に短期決戦の構えだ。それを受け、他の者達はもう1体の敵、機械の看護師へと狙いを定めて集中砲火。
 この奥には、きっとカタストロフィが待ち構えているはず。ならば、ここで下手に手間取って、消耗しては話にならない。
「させません! 時よ凍って! テロス・クロノス! デュアル……バーストっ!」
「「ぎにゃぁぁぁっ!!」」
 機装を纏った少女の一斉射撃が、敵の一角を吹き飛ばす。その穴をすり抜ける形で、8人のケルベロス達が、破滅の王を倒すべく先行する。
「心苦しいですが、後はお願いします」
「早く来ないと、喰ってしまうゾ」
 そんな言葉を残し、最奥へと去って行く仲間達。敵の頭数が減った今、彼らを止める者は誰もいない。
 これで残すは、機械の看護師と冴子のみ。先の攻撃で、冴子の身体が早くも燃え始めていた。その一方で、機械の看護師、ナースドール「フローレンス」もまた、その回復能力を阻害されていたが。
「どうした? 相方を回復しなけりゃ、動けぬまま火達磨になっちまうぞ?」
 敢えて挑発することで、泰孝はフローレンスの回復の先を、彼女自身から冴子へ向くように誘導する。
 回復役に自己回復で粘られる程、面倒なことはないだろう。連戦ともなれば、尚更だ。その分、冴子が自由に動けてしまうが、そこは手際よく分散し、一気呵成に叩けば問題ない……はずだった。
「どうしたんだい? 威勢のいいのは、最初だけなのかねぇ?」
 冴子の問いに、涼子は何も返せなかった。明らかに、勢いが鈍っている。母親と見紛う姿の敵を前にすれば無理もないが、しかし相手はダモクレス。人の子を産める存在でない以上、彼女の母親である可能性は……。
「世話が焼けるわね、もう! あんな女が、本当にあなたの母親なわけないでしょ!」
「それとも、あなたのお母さんは、一千万都民を嬉々として鯨の戦艦で踏み潰せるような、血も涙もない人だったの?」
 堪らず見兼ね、キーアやモモが檄を飛ばす。その間にも一進一退の攻防は続き、見ればとうとう隣では、ナースドールが力尽き果て倒されていた。
「いや、違う! そんな事言うのは母さんじゃない!」
 このまま足手纏いになるつもりはない。迷いを振り切り、涼子もついに本気で冴子と対峙した。
 あれが本当に母ならば、自分のことを『涼子をちゃん』と呼んだはず。しかし、目の前のダモクレスは、そんなことよりもアンドロケートスで都市を破壊し、カタストロフィを守ることを優先している。
 そう、あれは決して母などではない。姿形こそ似ているが、母の皮を被った何かだ。
「よく決心したな。だが、それでいい」
「援護するから、後はそっちでぶっ飛ばしてやれ!」
 泰孝のライフルと唯奈の拳銃が、同時に火を噴き冴子を追い詰める。それでも粘る冴子だったが、ここで彼女を逃がす道理などなく。
「あれは本物の母さんじゃない……」
 自分に言い聞かせるようにして、最後は戦籠手を纏った涼子の拳が、真正面から冴子の身体を粉砕した。
「やったわね。さあ、先を急ぐわよ!」
 敵の残骸を足蹴に先行するキーアを筆頭に、他の者達も一斉に奥へと進んで行く。
 取り巻きも片づけ、残るは最奥に鎮座するカタストロフィのみ。破滅の王との戦いは、いよいよ佳境へと突入していた。

●破滅王の終焉
 無数のキャプチャドール達と、彼女達を従える護衛の二人。それら全ての敵を倒して進んだ先に待つカタストロフィは、さすがに今までの敵とは違っていた。
 伊達に五大巧を名乗っているわけではないのだろう。先行した8人を纏めて相手してもなお、未だ余裕を保っているのは恐ろしい。
 だが、それもここまでだ。全ての護衛を倒した以上、今、この場には20名以上のケルベロスが集結している。
「……貴方の名前もカタストロフィとは奇遇ね。ドラゴン共を滅ぼす為に編み出したこの技……メギド・カタストロフで貴方にも終末を届けてあげるわ……!」
 それだけ言って、開幕一番にキーアは自慢の黒炎を叩き付けた。
 強敵相手に、出し惜しみは厳禁。数の差で上回っているとはいえ、油断をすれば真っ先に命を奪われる。
「変幻自在の”魔法の弾丸”……避けるのはちーっと骨だぜ?」
「私の本当の切り札、その身に刻みなさい!」
 変幻自在に動き回る唯奈の銃弾が翻弄し、その隙に切り込んだモモが、銃身で斬り付けるような殴打を叩き込む。矢継ぎ早に必殺技を浴びせられ、さすがのカタストロフィも、これにはもはや成す術もなく。
「終焉に頭を垂れよ……驕れる巧者の不遜を、焔で禊ぎ祓うは今。天に輝く七の星を見よ……オマエに死を告げる赫赫たる星こそが我!」
 黒曜石の鱗を持ったドラゴニアンの青年が、自らの分身と共にカタストロフィへ殺到する。圧倒的な、数の暴力。もはや抵抗は無意味であると悟ったのか、カタストロフィは嗄れた声で呟きながら、静かのその場で力尽き。
「皆、済まぬ。あとは、任せたぞ。動き出した歯車を止めてはならぬのだ……」
 そう、最後に残し、それきり二度と動くことはなかった。
「終わりましたね。さあ、早く歯車を壊しちゃいましょう」
 残された時間は少ないと、めぐみが仲間達に促し言った。他の者達も、それは解っていたのだろう。
 儀式発動までは、もはや2分も残されていない。玉座でもあった歯車を破壊し、ケルベロス達は脱出を急ぐ。巨鯨戦艦を率いた破滅の王による忌まわしき儀式は、ここに制圧されたのだった。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年12月7日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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