「東京六芒星決戦、お疲れ様でした。全ての儀式を阻止し、ネレイデスの死神を多く討ち取った戦果は、とても素晴らしいと思います」
ケルベロスを労う都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)だが、その表情は厳しいまま。
「『堕神計画』と呼称されていたようですが……十二創神のサルベージという、ネレイデスの野望は皆さんの尽力で潰えました。しかし、安心するにはまだ早いようです」
『ヘキサグラム』の儀式失敗によって、行き場を失ったグラビティ・チェインを奪ったのは――東京六芒星決戦に参戦しなかったダモクレスの軍勢。彼らも又、『終末機巧大戦』という大儀式を成就させんと動き出したのだ。
「この大作戦を率いるのは『五大巧』と呼ばれる5体もの有力ダモクレスです。彼らはディザスター・キング亡き後、死神を裏切って『六芒星決戦』への増援を拒否。温存した戦力を以て、今回の作戦を強行したようです」
既に、晴海ふ頭は中央部に出現したバックヤードを中心に、周辺の工場を取り込んでしまっている。
「『終末機巧大戦』は、かつて爆殖核爆砕戦で攻性植物が執り行った『はじまりの萌芽』を模倣しています。核となる『6つの歯車』を利用した儀式で爆発的に増殖し、東京湾全体をマキナクロス化させるのが目的と思われます」
漁夫の利を得んとするダモクレスの企みは、何としても阻止せねばならない。
「『終末機巧大戦』を阻止する為には、『核となる歯車』を破壊しなければなりません。儀式は巨大な拠点型ダモクレスの内部で行われる為、歯車の破壊には拠点型ダモクレスの内部に潜入する必要があります」
終末機巧大戦の儀式は、晴海ふ頭外縁部で行わなければならないようだ。ダモクレスは儀式開始と同時に侵攻も開始する。そこを急襲して儀式を阻止する事になる。
「敵が侵攻を開始してから儀式が発動するまで30分。30分以内に、敵拠点に潜入して護衛を排除し、儀式中の指揮官ダモクレスを撃破、或いは、儀式の核となる歯車を破壊しなければなりません」
儀式の破壊に成功した分だけ、終末機巧大戦の被害を抑える事が出来るだろう。
「儀式が全て成就してしまうと東京湾全体がダモクレスの手に落ちてしまいますが、全て阻止出来れば被害は最小限、晴海ふ頭中心部のみで抑えられる訳です」
状況は厳しいが、総てはケルベロスの活躍に懸っている。
「皆さんに向かって戴くのは、『第二の儀式場』。拠点型ダモクレス『アースイーター・ブロークン』は晴海ふ頭から勝鬨橋を侵食し、晴海通りに侵攻します」
アースイーター・ブロークンは無限増殖を繰り返す液体金属型のダモクレスで、既に隅田川沿いのビル群を喰らっている。
「内部は迷宮化しており、その迷宮も成長を続けています。素早く中心部に向かわなければ、中枢までの距離は広がる一方です」
儀式を司る指揮官は「『終末機巧』アルマゲドン」。常に『枷』で力を封じているが、生命の危機に瀕すると枷を外し「最終戦争」の名に恥じぬ力を振るうという。
「アルマゲドンを護衛する『ミス・リージョン』は、蟲型ダモクレス『メックカスト』を生産する能力を持ちます」
ミス・リージョンは、このメックカストを増殖する迷宮の防衛に充てている。
「作戦の流れとしましては……まず、同じ儀式場を攻撃する5チームが協力して強襲し、拠点型ダモクレス内部に突入します」
2チームが先行して突撃して拠点型ダモクレスと戦闘を行い、その間に残り3チームが『突入口を開く為の攻撃』を行うのだ。
「突破口が開きましたら、今度は3チームが先に突入。先行の2チームは後方を守って下さい」
アースイーター・ブロークン内部では、メックカストがケルベロスの侵入を阻まんと集まってくる。戦って突破せねばならないが、続々と集まってくる増援の足止めが先行2チームの役割だ。
「皆さんは、拠点ダモクレスに突撃して突破口を開く援護をし、防衛ダモクレスの足止めを担う『先行班』です」
突入班3チームが中枢の儀式を阻止するまで、防衛ダモクレスの『防壁』となり続けなければならない。
「つまり、皆さんの相手は『拠点型ダモクレスアースイーター・ブロークン』と『メックカスト』となります」
液体金属である「アースイーター・ブロークン」は、自らを自在に変形させる。鞭状にして周囲を薙ぎ倒したり、粘液弾で弾幕を張ったり。そして、あらゆる物を飲み込み、増殖の糧にしてしまう。
「内部の迷宮探索にも備えておくべきでしょう」
その流体金属の迷宮を守るメックカストは、個体の戦闘力は低いが兎に角数が多い。
「レプリカント、ガトリングガン、バスターライフルのグラビティを使うようです」
突入班が儀式の阻止に専念出来るよう、援護するのが先行班の役割だ。最大30分の継戦力が求められる。
「東京六芒星決戦にダモクレスの軍勢が現れなかった理由が、これで判明しました。死神を裏切っての大儀式、デウスエクスとは言え、卑劣な行動に出たものです」
嫌悪感を滲ませ、ヘリオライダーは小さく溜息を吐く。
「死神のネレイデスも、このまま引き下がるとは思えませんし……竜十字島のドラゴン勢力も、太平洋上で状況を窺っているようです」
そう言えば、今も尚、レインボーブリッジに残留するエインヘリアルは第4王女の軍勢だ。第2王女の戦力が現れなかったのにも、何か理由があるのかもしれない。
「情勢はまだまだ混沌としていますが、1つ1つ出来る事から片付けていきましょう。まずは『終末機巧大戦』です。皆さんの武運を、お祈りしています」
参加者 | |
---|---|
寺本・蓮(幻装士・e00154) |
水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393) |
シアライラ・ミゼリコルディア(天翔けるフィリアレーギス・e00736) |
ドールィ・ガモウ(焦脚の業・e03847) |
フォン・エンペリウス(生粋の動物好き・e07703) |
機理原・真理(フォートレスガール・e08508) |
巽・清士朗(町長・e22683) |
葵原・風流(蒼翠の五祝刀・e28315) |
●第二の儀式場「アースイーター・ブロークン」
終末機巧大戦「第二の儀式場」――拠点型ダモクレスの呼称は「アースイーター・ブロークン」。巨大なスライムにも見える流体金属の異様は、常に収縮と膨張を繰り返して触れるもの総てを飲み込み、無限に増殖を繰り返す。
「あんな状態でも機械として扱われるんですね……あれはあれが大きいだけですから、そうあれが大きいだけです」
ダモクレスの許容範囲の広さに、何処か呆れた風情の葵原・風流(蒼翠の五祝刀・e28315)。後半の呟きは自分に言い聞かせているような、複雑なお年頃の身長144.5cm。
「此処まで敵が大きいと圧巻というか」
既に隅田川沿いのビル群が喰われてしまっている。巨体からニョキニョキと高層ビルが突き出す様相に、水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)は大きく碧眼を見開いている。
(「凄く欲しい、かっこいい!! 生きる拠点とか、凄く面白い!」)
ファンタジー感満載の敵に、少年の好奇心が大いに擽られた様子。
「あっ……でも強いよね。真面目に頑張るね!」
「ええ。東京の大事な憩いの場、奪われる訳には参りません……」
ボクスドラゴンのシグナスを抱くシアライラ・ミゼリコルディア(天翔けるフィリアレーギス・e00736)の視線に、蒼月もグッと拳を握って応じれば真摯に頷き返された。
「うむ、月島のもんじゃは大事な東京名物。飲まれるわけにはいかんな」
対照的に、巽・清士朗(町長・e22683)は飄然として。アースイーター・ブロークンは晴海通りに侵攻しつつある。儀式の成就の数が多くなれば、被害は晴海ふ頭に留まるまい。
「ここでどれだけの儀式を潰せるか……後の戦いに大きく影響するとなると、確実に潰さないとね」
日本刀「千景」を構え、敵影を眼鏡越しに見据える寺本・蓮(幻装士・e00154)は、キリッと表情を引き締める。
「デカブツが……すぐに風穴空けてやろうぜ」
「ん。がんばるの」
やはり眼光鋭く巨影を睨み付けるドールィ・ガモウ(焦脚の業・e03847)の呟きに、フォン・エンペリウス(生粋の動物好き・e07703)もこっくりと。厳ついドラゴニアンに続く華奢な少女は背丈も彼の3分の2程度だが、互いに何処か気安い空気だ。更にフォンの後をトコトコとついて行くボクスドラゴンのクルルが微笑ましい。
「機理原とは淡路島で迷宮攻略したな。今回も頼りにしてるぞ」
「大丈夫です。私が、何もかも守れる盾になってみせるですよ……!」
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)が淡々と請け合えば、低くエンジン音を吹かし、ライドキャリバーのプライド・ワンはヘッドライトを黄色く明滅させる。どちらも臨戦態勢だ。
晴海通りで迎撃するケルベロスは5チーム。内、2チームは先行して突撃し、拠点型ダモクレスを引き付ける。
「やぁ、久しぶり……。ぶっ壊れたボク」
何らかの縁があるのか――もう一方のチームから聞こえた台詞に反応したか、敵影へ駆け寄るケルベロス達の眼前に、ボコボコと小型のスライムの塊が出現する。あたかも土塁の如く、ケルベロスの侵攻を防がんとするかのように。
土塁スライムの範囲も広ければ、もう一方のチームと距離を置き、違う方向から突撃するケルベロス達。連携すれば、少なくとも前衛と後衛の列減衰は避けられない。味方の列ヒールの非効率を避けた形だ。
「……よーし! 『突っ込んで巻き込まれて引っ掻き回す』陣で!」
九尾扇振り振り、即行で仲間の陣形を見出す蒼月。それ自分の事だろ、というツッコミは受け付ける。
ノリノリの少年を横目に、ちょっと困った表情でシアライラは守護星座の聖域を敷いた。シグナスは自らに属性をインストールして戦いに備える。
減衰なくとも、列の強化は付与率が半減する。更にシアライラはシグナスと魂を分け合う為、前衛なら2名に効を発すれば重畳だ。故にフォンも森王弓「エルク」の弦を引き、清士朗に祝福の矢を射掛ける。同時に、クルルはフォンに属性をインストールする。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」
6割5分の幸運を実感しながら、刀印を結び九字を切る清士朗。上下左右から、刀が土塁スライムに次々と突き刺さる。息を合わせた風流も、同じく死天剣戟陣を解放した。
(「私達と死神の戦いから漁夫の利を狙うとは、ダモクレスらしい作戦ですね」)
六芒星決戦に続き、終末機巧大戦も必ず阻止してみせる――斬霊刀・日本刀・ゾディアックソード・チェーンソー剣・喰霊刀と、風流が召喚したあらゆる刀剣がスライム群地を席巻する。
「さて、頑張りますかねっと」
一気に接近した蓮より、達人も斯くやの斬撃が奔る。鮮やかにスライム1つが斬り払われた。
「歯ァ喰いしばれェ!」
両脚の『地獄』の火力を上げ、スライムを打ち砕かんばかりに蹴り上げるドールィ。猛烈な勢いのまま、宙返りを決める。
――――!!
派手にエンジンの爆音を上げ、プライド・ワンは炎を纏って突撃。相棒に搭乗したまま、改造チェーンソー剣を振るう真理は、ズタズタにスライムを切り裂いた。
●生ける迷宮
忽ち、土塁スライム群を平らげたケルベロス達。確実に切り込んでくる武威に埒が明かぬと断じたか。更に大きなスライム防壁が立ち塞がる。
気が付けば、先行班2チームは土塁スライムによって分断され、ほぼ両サイドから攻める状況。アースイーター・ブロークンは頭上から粘液弾を浴びせ掛け、液体金属の鞭を振るってくる。
「共闘は……厳しいか」
顔を顰める風流。共闘は可能ながら、列減衰を被らない距離で戦う――言うは易く行うは難し。寧ろアースイーター・ブロークンは列攻撃主体であり、減衰を逆手に取って被ダメージを軽減する作戦も可能であったろうに。
だが、巨影の圧に屈するケルベロスはいない。次々と、スライム防壁へ放たれるグラビティ。
刃渡り八寸二分の鎧通し――「大磨上無銘 相州伝宗正」が流体金属の飛沫を散らす。油断なく、息を整える清士朗。
「……む」
絶空斬の構えで、蓮は眉を顰める。巨大相手でも強敵ならば、眼力が報せる命中率はシビアだ。だが、単体足止め技の用意は風流しかない。
「大丈夫、行けます」
だが、風流は冷静に、為すべきを成さんと冪根喰霊刀『累除餓』を構える。
「あなたの動きは見切っています。そして、あなたは一寸先に広がる疑心の闇から抜け出せるでしょうか?」
一寸先闇――狙い澄ました喰霊剣技が奔る。スライム、その実、液体金属のダモクレスにすら回避への恐怖心を植え付けんと。
シアライラの禁縄禁縛呪も厄の発動こそ稀ながら、ジャマーの手なれば掛かれば重いのだ。
「っ!」
食らい付かんとする応酬の顎から、シアライラを押し退けるように庇う真理。咀嚼され、吐き出された細身が小さくバウンドする。
「ん、癒しの力……あ!?」
すぐさまフォンの狐尾が青く光り――唐突に消える。白狐の癒尾は肩並べる者しか癒せない。やむを得ず、祝福の矢を番え直した。
「痛いの痛いの飛んでけ~♪」
蒼月も気力を注げば、真理はメディック達に感謝の視線を投げ、再びスライム防壁へ向かっていく。
「さっさと潰れやがれェ!」
次々と突撃するサーヴァントらに続き、増殖を図らんとする巨影に竜爪を振るう。荒々しい気炎を上げるドールィ。
役目の全うに専心して9分――事態はいよいよ動く。突入班の一斉攻撃で銀鋼の壁が爆散。突入口が拓いたのだ。
「残り時間は20と1分。このまま中枢目指して突入するよ」
突入チームの本番はこれから。成長する迷宮に抗い中枢を目指す3チームに続き、内部に侵入したケルベロス達は、1分を費やし体勢を整える――真理と蒼月がポジションを交替した形だ。
「10分経過……じっくり迷宮探索の時間はないな、走るか!」
清士朗の言葉に否やはなく、急ぎ突入チームの後を追った。
目の前の銀の光景がジワリと滲んでいく。溶解し、浸蝕し、融合する――正しく、今いる場所は生けるものの内だ。
「急ぎます」
凝視する内に狂気に侵されそうな様相から目を逸らし、真理は足早に進む。
幸い、アースイーター・ブロークン自体が侵入者を中まで攻撃する事はなかった。突入班が残したシグナルボタンや塗料が速攻で無くなる程、ダモクレスの消化速度も速くない。
「しっかり捕まってろよ」
「ん。ありがとうなの」
半数が飛行可能であるので、高低差の移動もさして苦にならない。竜翼を一打ち、ドールィがフォンを軽々と運ぶ一幕もあった。
尤も、総ての策が上首尾とは言い難い。じわじわと変化する只中で「既存の地図と周囲の照し合せ」や「方眼紙を用いた精確なマッピング」、「如意棒を曲がり角の先に出して様子見」等、20分を切ったダンジョンタイムアタックでは悠長に過ぎる。
それでも、増殖が古い方向へと進むように心掛ければ、先を征くチームを追うのは難しくなかった。
合流して程なく――5チームの先頭に立っていた女性が警戒の声を上げる。
「……どうやら近付いてるのは間違いなさそうね。ここから先が、本番よ」
果たして、群がり現れるのは虫人間のような形状のダモクレス――メックカスト。
この先に中枢部があるのだろう。となれば、ケルベロス達の選択は唯一。力づくで突破し、最奥部に突き進むのみ。
「新手です!」
だが、蓮はすぐさま声を張る。中枢部に至る三叉路、残りの通路にもメックカストの群れを見て取ったのだ。
「ここは任せて!」
勢いよく駆け出す蒼月。蠢く虫型ダモクレスに、興味津々の面持ちだ。
「皆さんも、どうかご武運を――」
続々と現れるメックカストの増援を、先行の2チームが通路毎に分かれて引き受ける。
春くれば 星のくらいにかげみえて 雲居のはしに いづるたをやめ――。
深く長い呼吸で全身の感覚を研ぎ澄ます。中枢部へ切り込む突入班を一瞥。次いで、メックカストの群れ目掛けて、清士朗は突撃した。
●対メックカスト戦
(「やっぱり、遠いですね……」)
天の川の意匠が美しい長剣を掲げながら、シアライラはもう一方の先行チームとの距離を窺う。
それぞれが三叉路の一角の足止めを引き受けた。戦闘の音は文字通りの筒抜けながら、ヒールの援護は届くまい。
「ん。目の前に、集中なの」
爆破スイッチ改を押すや、色とりどりの爆発で仲間の士気を鼓舞するフォン。蒼月が勢い良く振りかぶり、氷結の螺旋を放てば――それが、足止め戦の始まり。
メックカストは戦闘力自体さして高くないが、如何せん数が多い。倒す端からスクラップを蹴散らし、続々と新手が開いた穴を埋めていく。
ケルベロスは1対多で強敵を打ち破るのが常なれど、今回は逆。圧倒的な手数を以て、メックカストの火器が重力を伴い火を噴く。各一撃は軽いかもしれない。だが、数は暴力も又真実。勢い、後衛への被弾も激増する。
「守り続ける事が、私の戦いなのです……!」
小型治療無人機の群れを操る真理。精密な指示と動作を要する為、効果は肩を並べる範囲に留まるが、あくまでも仲間を守り抜かんと。
「ん、癒しの力……飛んでくの!」
今度こそフォンの尻尾に宿った青い癒しの輝きは、スナイパーたる風流目掛けて放たれた。
メディック2人の回復専念が頼もしい。ディフェンダーもヒールは用意しているが、火力が回復に割かれては敵の勢いも増しかねない。
故に攻癒一体のドレイン技は、ケルベロス達の継戦力に大いに寄与したと言えよう。
「燃え盛る太陽よ、煌々と輝く月よ、夜空に瞬く無数の星よ。大いなる力を与えたまえ!」
Lumen de Purificatione――今は見えぬ天空に祈りを捧げるシアライラ。敵を浄化し自らを癒す光が降り注ぐ。
「さあ、次は何処を灼かれてェ!」
ダモクレスのエネルギーを奪う地獄の炎弾を叩き付け、ドールィは猛々しく吼える。同時に風流の喰霊刀が累乗の真逆を発揮すれば、斬りつけたメックカストのコアを啜る、呪われた斬撃が一閃した。
敵の列減衰の有無を見て取るや、蓮はネクロオーブを掲げ、おぞましき悪霊の群れを召喚する。
「足りないパワーは技量でカバーってね」
悪霊が啜るダモクレスのエネルギーで一息、そんな事はおくびにも出さず、不敵に呟く蓮。次は何処を仕留めるべきか、常に体勢と立ち位置の調整は怠らない。
清士朗に至っては、降魔真拳と血襖斬り、2種類を使い分けて体力管理を図る徹底ぶりだ。
「20分!」
アラームが鳴るや、残り10分を報せる清士朗。ここまで来れば、敵の戦術も見えてくる。居並ぶディフェンダーが庇い立てる間に、ジャマーが厄を振り撒き、狙い澄ました痛撃が後方より飛んでくる。清々しいまでの役割分担だが、手数の多さが脅威を増す。
ならば、1体1体確実に掃討するのみ。
シアライラが召喚した【氷結の槍騎兵】が斬り払った標的に攻撃を集中させるケルベロス達。ドールィのドラゴンサマーソルトBがメックカストの外骨格を砕き、風流の天秤星軌剣『獄炎沌水』が星座の重力を宿した斬撃を放つ度、ビキビキと凍り付いていく。サーヴァント達もそれぞれに奮闘している。
「いいよ、出てきて一緒に遊ぼうよ」
蒼月の影から大小様々な猫が這い出るや、メックカスト目掛けてまっしぐら! その名も幻術『狩猟解禁』――影を媒体にした幻術の一種。
「終焉を絶て、エンドブレイカー!」
異なる可能性の力を纏う幻装魔法は、蓮の取って置き。この期に及んで出し惜しみしない。一撃必殺を期して天地開闢の聖剣を召喚し、構え、振り下ろす。
「む、切りがないな……」
火遁の術印を組み、ドラゴンブレスで焼き払う清士朗は、微かに眉を顰めている。
定めた優先順位に基づき、ディフェンダーを叩き続けているが、メックカストは倒れる端から補充されてしまう。ポジション故の打たれ強さも相まって、際限ない潰し合いに自然に息も上がっていく。
「もう少し……」
それでも歯を食い縛り、真理が盾ならんとマインドシールドを創り出したその時。
作戦開始から24分――地鳴りと共に真白き光が儀式場を包み込む。
「ん。成功なの?」
フォンが小首を傾げて肩越しに奥を見やれば案の定。突入班の誇らしげな表情を認める。首尾よく、アルマゲドンの歯車を破壊出来たのだろう。
最後まで、足止めの任を全うしたケルベロス達も又、達成感を胸に撤退に転じる。
「うわぁ、来た来た来たぁ!」
いつの間にかメックカストは群れごと姿を消し、換って溢れ出る流体金属の怒涛に追われて脱出すれば――アースイーター・ブロークンの周囲が、凄い勢いで機械化していく。
「これは……まずかねェか?」
元より機械に疎いドールィは怪訝そうに腕を組む。
「でも、機械化の範囲はかなり狭いようです……きっと、皆さんの尽力の賜物ですね」
その見立ては恐らく正しい。シアライラは安堵の笑みを浮かべていた。
作者:柊透胡 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年12月7日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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