終末機巧大戦~アンドロケートス強襲戦

作者:のずみりん

「皆の尽力のおかげで、東京六芒星決戦は人類の勝利に終わった。おつかれさま……といいたいのだが、事態がまた動き出している」
 デウスエクスの危機はまだ終わっていないとリリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)は事態を説明する。
 死神の野望は砕かれ、十二創神のサルベージという最悪の事態は防がれたが、その陰で動き出したものがいる。ダモクレスだ。
「どうやらこれは『五大巧』の仕業のようだ。得られた情報からの推測だが、ダモクレスも死神たちと『六芒星決戦』に参戦する予定だったのを、ディザスター・キングが撃破されたことで方針を変更したらしい」
 死神への協力を裏切り、戦力を温存したダモクレスたちは『ヘキサグラムの儀式』の失敗に行動を開始。六体もの拠点型ダモクレスと搭載戦力を投入して、儀式失敗によって行き場を失ったグラビティ・チェインを奪った大儀式、『終末機巧大戦』を引き起こそうとしているという。
「『終末機巧大戦』は爆殖核爆砕戦で攻性植物が行った『はじまりの萌芽』を模したものだ。核となる『6つの歯車』を利用した儀式を行う事で、爆発的に増殖させ、東京湾全体をマキナクロス化させるのが最終的な目的と思われる」
 既に、晴海ふ頭は中央部に出現したバックヤードを中心に、周辺の機械や工場などを取り込んでダモクレス化してしまっている。
 これを阻止するには『核となる歯車』の破壊が必要なのだが、儀式は巨大な拠点型ダモクレスの内部で行われており、破壊する為には拠点型ダモクレスの内部に潜入する必要がある。
「事態は非常にまずい。儀式は中心である晴海ふ頭の外縁部で行われなければいけないようで、攻撃自体は苦ではないが、儀式発動までの猶予は三十分だけだ」
 三十分以内に、敵拠点に潜入し護衛を排除し、儀式を行っている指揮官ダモクレスの撃破、或いは儀式の核となる歯車を破壊しなければならない。
「全て阻止すれば、晴海ふ頭中心部のみの被害で抑える事はできるだろう。また一部だけでも、儀式の破壊に成功した分だけ終末機巧大戦の被害を抑える事ができるはずだ」
 厳しい状況だが……と、言葉を切るリリエ。彼女でもいい躊躇う苦境、だがやらなければなるまい。

「私たちの担当は隅田川から人形町方面に侵攻する都市制圧型移動要塞アンドロケートスを中心とした『第四の儀式場』、要塞内部へと侵入し儀式の破壊を目指す『突入班』となる」
 儀式を指揮するのは指揮官型ダモクレス『『終末機巧』カタストロフィ』。
 アンドロケートス内部には更に護衛であり要塞型ダモクレスの開発者でもある『山之内冴子』、強力な治癒能力を有する『ナースドール「フローレンス」』、更に無数の『キャプチャドール「ファティマ・マーノ」』が控えており、儀式の防衛を担っている。
「アンドロケートス内部への突入、破壊は我々を含め三班で協力して行う。流れとしては先行班が拠点型ダモクレスを食い止める間に内部へ潜入、護衛を突破して歯車核の破壊もしくは指揮官型ダモクレスの撃破を目指すことになる」
 アンドロケートス本体とキャプチャドールは先行班2チームが引き受けることとなるため、戦闘は主に護衛と指揮官型の三体が相手となるだろう。
 第一目標は歯車核の破壊、可能なら指揮官型ダモクレスの撃破も……となる。
 1チームが護衛を引き付ける間に2チームで指揮官型を強襲して速攻、あるいは全員で護衛を倒して指揮官型に向かうか……いくつかパターンは考えられるが、全体の猶予も三十分しかないのは留意が必要だろう。
「それと第四の儀式場の歯車核だが……『終末機巧』カタストロフィの座る玉座だ。通常、歯車核を狙うのは部位狙いで命中が低下するが、この戦場に限っては命中率は変わらない。つまり弱点だ」
『終末機巧』カタストロフィはきわめて強力なダモクレスだが、この一点は突破口になるかもしれない。

「戦うことになるだろうダモクレスについても、わかっている範囲で解説しよう。まず指揮官型ダモクレス『『終末機巧』カタストロフィ』だが、身長3mの老人型ダモクレスで、老獪な戦士といった様相だ」
 通常は玉座を守護しているが、戦闘になれば光線や光剣を使いこなす戦士として立ちはだかる。意表を突くような技やグラビティはないが、技と地力で圧倒してくるタイプだろう。
「『山之内冴子』は研究者タイプだが、戦闘時は両腕の籠手状の武装を主に使う格闘家と推測される……戦闘力はカタストロフィには劣るようだが、研究職だけに技の引き出しは多く、粘り強い」
 その真価は強力な回復グラビティを有する『ナースドール「フローレンス」』と連携した時に発揮される……護衛ダモクレスが十全に能力を発揮された場合、三十分内の決着は難しいだろう。

 状況は厳しく、敵は強大だ。だがここを落とせば人類の領域はまたも大きく失われることになる。
「決戦に敗れたとは言え、死神のネレイデス勢力もこのまま引き下がるとは思えない。また竜十字島のドラゴン勢力も太平洋上で状況を伺っていると情報があった」
 リリエの情報が告げる、ここ東京湾が人類の最終防衛ラインだと。
 生き残るには勝つしかないのだ。


参加者
ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)
暮葉・守人(浜辺の貴公子・e12145)
アーニャ・シュネールイーツ(時の理を壊す者・e16895)
空木・樒(病葉落とし・e19729)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)
龍造寺・隆也(邪神の器・e34017)
鷹崎・愛奈(死の紅色カブト虫・e44629)
フロッシュ・フロローセル(疾風スピードホリック・e66331)

■リプレイ

●強行突入
 鋼鉄の乙女を磔に背負った大鯨が隅田川へと突進する。
「なんて火力だ、人形町一帯を更地にする気かよ」
「ダモクレスの占領を考えると、恐らくは」
 先行した二班のケルベロスたちを向かえ撃つ圧倒的火力。思わず漏れた暮葉・守人(浜辺の貴公子・e12145)の声を、ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)は生真面目に肯定した。
『ユニットアンドロメダ』と名付けられた艦橋のような乙女型攻撃ユニットが放つ悲鳴のような波状砲撃は果敢に挟撃する仲間たちを容赦なく打ち落とし、接近を阻む。
 かわしたものには潮吹きの軌道で放たれる垂直発射ミサイルが追尾し、空に爆発を描いた。
 予想はしていたが、それにしても恐るべき火力。
「大丈夫! おばあちゃんたちが戦ってるんだよ、ダモクレスたちの思い通りになんて絶対ならないし。させない」
「あぁそうだ。止めるよ、あの機械どもを」
 見るからに劣勢、それでも鷹崎・愛奈(死の紅色カブト虫・e44629)は両親譲りの紅を背に髪に輝かせ、強く指を突きつける。
 そして愛らしくも勇ましい同胞の姿が炎なら、フロッシュ・フロローセル(疾風スピードホリック・e66331)は風だ。ガジェット『瞬走駆輪炉』と補填装具を回転させ、怒り逆巻く風は要塞型ダモクレス『アンドロケートス』めがけて疾走する。
 ユニットアンドロメダの火力は圧倒的だが、挟撃のフォーメーションが被害を散らしてくれる。あえて先行班は攻撃に専念した。攻撃は最大の防御であるし、時間は最大の敵だ。
「思いのほか被害は溜まってないな」
「えぇ、皆様の技量と挟撃が功を奏したようです」
 送られてくる諸元データを『R/D-1』戦術システムへと入力するマーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)に、空木・樒(病葉落とし・e19729)は自らの役割を果たすべく薬匙の雷杖『セミラミス』を抜く。
 壊す。癒す。
 どのような難敵を前にも、樒たちの『鋼の意志』は揺るがない。
「ご安心を。わたくしの前で、誰一人として倒れさせはしませんよ」
 先行班の仲間たちをねぎらい、樒は特に傷の深い者たちへと『エレキブースト』による治療を施す。戦いはまだこれからだ。
 壮絶な殴り合いの末に停止されたアンドロケートスの装甲に横穴をぶち開け、ケルベロスたちはそれぞれの思いと共に突入した。

「作戦開始から九分経過……残り二十分強です」
「少々押しているが予定内だ、このまま一気に抜けるぞ!」
 作戦開始時に時間合わせた『月光を収める懐中時計【桜金】』の金の文字盤を告げるアーニャ・シュネールイーツ(時の理を壊す者・e16895)に答えると同時、龍造寺・隆也(邪神の器・e34017)は『邪神功』の金を迫る敵影へと食らいつかせる。
 巨大な腕を背に、猫耳娘めいた配置のセンサーとプラグ。群れを成すレオタード姿の『キャプチャドール『ファティマ・マーノ』』たちはさながら要塞の抗体だ。その姿は似ても似つかないが、マークにはどことなく懐かしさをも感じさせた。
『敵群は拠点維持用の量産モデルと推測。火力による殲滅・突破を提案』
「SYSTEM……MODE ASSULT」
 だが撃つ。
 戦術システムAIの示す道程へ『XMAF-17A/9』アームドフォートのフォートレスキャノンが咆哮し、突入班と共に敵陣を粉砕する。敵は兵士で、彼もまた戦士だ。迷いはない。
「そこどけぇっ!」
 フロッシュの『瞬走駆輪炉・補填装具』からほとばしるグラインドファイアが群れを裂き、少しだけ開けられた防御の穴へとケルベロスたちは転がり込んだ。
「しつこい奴らめ……敵も必死か。まだくるぞ!」
「よっし、ここはおばあちゃんに任せときなさい。思いっきり歯車をぶっ叩いてきなさい!」
 隆也の声に答えたのは先行班のソフィア・フィアリス。アンドロケートスとの戦いを切り抜けた後とは思えぬ大声と縛霊手が、掴みかかるキャプチャドールを殴り飛ばす。
「戦果と無事、2つのお土産期待してるわよ!」
 殿を頼み突入班が指揮官に挑む。予定通りであり、ここがそのタイミングのようだ。愛奈は元気に手を振り、仲間たちと中枢へ力強く駆け出していく。
「それじゃ、歯車を止めてくるね!」
 殿を任せることへの不安はない。ソフィアは愛奈のおばあちゃんで、愛奈はソフィアの孫なのだから。

●要塞の内で
 中枢へと突破するまではものの数分。
「ゆっくりなさっていけばよいのに、ずいぶんとお早いことですこと」
「俺はお前らの悔しがる顔を見に来たんだ。長居なんぞするかよ!」
 声と共に死角から飛び出すキャプチャドールの巨腕を、守人は貫き撃った『雷刃ー瞬ー』で切り替えす。
「キャンッ!」
「あらあら、乱暴なこと」
 転がり身を引くキャプチャドールを追いかけた彼の前に現れたのはタイプの異なる二人の美女と、侍るようなキャプチャドールたち。
 障害は多くはないが、同時に強大でもありそうだ。
「情報にありました、看護服姿はナースドール「フローレンス」でしょうか。白衣の方は……山之内、冴子」
 突入班の一人、同じ姓をもつ少女をピコはわずかに見やる。関係を詳しく知るわけではないが、彼女の背負う『飛行ユニットだった物』を遺したダモクレスの記憶がふとよぎる。
「……ナースドールは支援タイプです。手早く倒さなければ厄介なことになるでしょう」
「おほめいただき光栄ですわ、ナノマシンタイプ」
 フローレンスがキャプチャドールを引き寄せると同時、一瞬にして戦場は展開した。
「さて、こちらもお言葉を返させてもらおうか」
 山之内冴子の手甲が展開し、狙うは後衛。この班においては樒めがけ、白衣の格闘家が迫る。
「はっ、そうしたけりゃ俺を屈服させてみろ!」
「RED EYE ON」
 迎え撃つは守人の切りかわす『Elementary, my enemy』。
 オーバー気味なアクションで振るわれる雷の小太刀の乱れ波紋に、マークの『RED EYE』が反射して迎撃するダモクレスの視界を焼き乱す。
 その輝きに照らされ、二人の開けた空いた道……否、壁を、天井をフロッシュは駆け抜けた。
「【疾走形態】――コレ喰らって吹っ飛べぇ!!」
 疾走形態へと変形した『ガジェット・瞬走駆輪炉』が縦横無尽に要塞の内壁をかけ、守りをかいくぐった『ソニックナックル“ガストディストーション”』がフローレンスを跳ね飛ばす。
 初撃にして威力は十分。だが血をにじませた唇でフローレンスは妖艶に微笑んだ。
「噂に違わぬお強さですこと。ですけれど……」
 ダモクレスのシリンダーから、漏れ出した薬液が粘土あるいはパテのように形を変える。
 切り飛ばされたキャプチャドールの傷口を一撫でして腕を張り付ければ、何事もなかったかのようにその機能は回復した。
「ワタシの手の内で壊れることは許しませんわ」
「鮮やかな手並み……大したものです」
 樒も目を細める回復の手腕。だが見とれているには時間があまりない。瞬く間に復活した壁がフロッシュを阻み、前衛の仲間たちを押し返しだす。
「どうします?」
 キャプチャドールの振り回すプラグ型の尾鞭を、浮遊する飛行ユニットを振り回してかわすピコが時間を確認して振り向く。
 残り時間十五分、中枢の破壊まで猶予はもう半分もない。
「手早く片付けて殴り込んでやりたいんだけどな……!」
「プランBだ、ここは引き受ける!」
 フロッシュの轟竜砲が山之内冴子の手甲に弾かれる。この二人を倒すのは全員でも少々手こずりそうだ。隆也は呼びかけながら、『天魔』の裾を翻して蹴りを放つ。
 一撃がキャプチャドールの首を薙ぎ、フローレンスがすかさず治癒。だがこれで一手は潰せた。
「心苦しいですが、後はお願いします」
「そうやすやすといかせると……」
 一礼し、九鬼・一歌が突破する。追いすがろうとする冴子だが、そこに食らいつくルーンの斧刃。
「いかせてもらうよ、アーニャ!」
 受け止められた『トライセラフ』をつかみ、素早く愛奈は銃形態へと変形させる。柄が回転し、銃身の零距離に捕らえたダモクレスに時空凍結弾を連射。一気に身を引く。
「この程度!」
「させません! 時よ凍って!テロス・クロノス!」
 瞬間、弾幕がダモクレスたちを襲った。
「デュアル……バーストっ!」
 目前にして倍加する砲撃。それこそはアーニャが静止した時空から打ち込んだ多重射撃『テロス・クロノス・デュアルバースト』の力。
 戦場を包む爆風の中、突破していく仲間たちの姿にアーニャは頷いた。

●ナースドール『フローレンス』
「……ずいぶんと風変わりな子だね」
「シュネールイーツ、と言えばおわかりでしょう?」
 残り十五分。突破を許したダモクレスたちとのケルベロスの戦況は再び膠着する。
「知っていたとしても、敵の質問に対して馬鹿正直に答える義理なんてないねぇ」
「まぁそういわず。ここは仕切り直しといたしましょう」
 アーニャの問いをすげなくかわす冴子の後ろ、フローレンスの手にした注射器が雨を撒く。
 吹き飛ばされたキャプチャドールたちは注入される修理物質に瞬く間に修復され、ケルベロスたちへと襲い掛かった。
「エクトプラズムのような性質のようですね、あの薬液は……やはりそうなりますか」
「ワタシは働きものでして」
 ダモクレスたちの攻撃は樒に向けられており、同時にフローレンスを庇うよう布陣してくる。それにしても、こうも作戦から何まで被るとは!
「全く初歩的だ。人の嫌がることは率先してやりなさい、って俺も習ったよ!」
 掴みかかる大腕を振り払い、守人は雷刃を突き立てる。『黒雫の手甲』がきしみ、『犬耳パーカー』が血に濡れるが引くことはできない。後ろにはフロッシュたち戦友がいる。
「だから、俺もそうさせてもらう……!」
「ドールは私たちで抑えます。突破を優先してください」
 守人の構える黒影弾へ、ピコの『飛行ユニットだったもの』が砲身のように円を描く。中心を射抜くように飛ぶ影の弾丸が螺旋氷縛波の氷をまとい飛んだ。
 すかさずキャプチャドールたちが割って庇おうとするが、更なる砲撃が脇からそれを吹き飛ばす。
「TARGET CLEAR」
「あら、かわいげのない……!」
 マークの声が直撃を告げる。撃ち抜かれ凍り付いた肩口を癒しフローレンスは呻く……いや、癒せない。
 キャプチャドールも、自身もだ。
「グラビティが、効かない……?」
「毒はお二人だけのものではありませんよ」
 アーニャのアームドフォートから擲弾された『殺神ウイルス』は樒のそれと共に、濃厚な汚染地帯を形成していた。
 短期決戦で状態異常やエンチャントは効果を発揮しづらいが、こうも執拗に連射されれば別だ。配下と冴子に攻撃を集中し、彼女自身に回復する余裕を与えない……作戦はきれいにはまった。
「そしてこちらはあらゆるものを粉砕する戦士の偉烈……その身にとくとご覧あれ」
 フローレンスに嘆く暇はない。仲間を助けおこすは勿論、そのために癒し手自身が倒されてはならない。癒し手の対決はそれを知る樒に軍配があがった。
「18分経過! ギアあげるよ!」
『王薬【囁く岩】』の強化を受けたフロッシュのガジェットガンは、彼女からエンチャントを剥ぎ取り、その身を石化させ始めている。
「ROGER,FULL POWER」
 フロッシュの告げる時間に、マークはプラズマグラインダーが回転数を上げて旋回。騒音をあげ、キャプチャドールたちをズタズタに解体していく。
 彼の配下への備えは、時間を詰めるのに大きな力となってくれた。
「ケルベロス、これほどとは……!」
「おばあちゃんが言っていた……『美味しい料理は下準備と手際の良さが大切』……ってね!」
 半身に構えた愛奈の引き抜いた『ダークアクスェイバー』の光刃へ、少女の手から赤光が伸びて染め上げる。
 逆袈裟に切り上げた刃から地を走る『スパークルスラッシュ』。フローレンスの体が拘束され、跳ね飛ばされた先には既に隆也が回り込んでいる。
「絶望を受け取れ――ハッ!」
「不覚……アァッ」
 身を封じると石と氷ごと、降魔真拳はダモクレスを打ち砕いた。それは山之内冴子が倒れるとほぼ同時。
「おばあちゃんはこうも言ってたよ……『練達したケルベロスの連携は、機械の統制にも劣らない』って」
「ではそれをカタストロフィにも教えに参りましょうか」
 天を指す愛奈に、樒は薬匙の雷杖を中枢へと向けた。

●終末へのカウントダウン
 駆け付けた二班は戦闘の流れを変えた。
「カタストロフィ、貴様の最期を以てダモクレスの終末の始まりとする……!」
 宣言と共に乗り込む隆也の金色の『魔弾』が『『終末機巧』カタストロフィ』の守りを穿ち、回天の一矢を示す。
 作戦開始からニ十分。道中には想定外の事態もあったが、遂に三チームからの突入班は中枢に集結したのだ。
「お待たせしました。それでは立て直して参りましょうか?」
「TARGET LOCK,OPEN ALL ARMS」
 先行したイリス・フルーリアたちを樒のライトニングウォールが隙なく護り、マークとアーニャのアームドフォートが弾幕を張ってカタストロフィの動きをを牽制。
 作戦の合致もあり終末機巧大戦の発動まで数分と迫りつつも、もはやダモクレスの側に勝ち目はなかった。
「終焉に頭を垂れよ……驕れる巧者の不遜を、焔で禊ぎ祓うは今。天に輝く七の星を見よ……オマエに死を告げる赫赫たる星こそが我!」
 イリスの振り下ろす銀天の剣がカタストロフィに食らいつき、ウォリア・トゥバーンの炎の分身が四方から各々の武器をもって攻め立て、一気呵成に討ち取っていく。
「皆、済まぬ。あとは、任せたぞ。動き出した歯車を止めてはならぬのだ……」
「あとは歯車を……」
 ピコの言葉に重なるように伏見・勇名の一撃が残された玉座、歯車を打ち砕く。
「さようなら。もうひとりのイサナ」
 鯨の銘を持つ少女レプリカントの別れにアンドロケートスの体内が揺れた。

「おい……まさかこれ、山之内あたりが自爆装置を仕込んでたとかじゃないよな!?」
「原因は不明ですが暮葉さんの言う通り、この要塞ダモクレスは分解されつつあるようです」
「分解!?」
 浮遊する『飛行ユニットだった物』を腰に補助推進装置として配置したピコの答えに、守人の心にいやな予感が走る。
『動き出した歯車を止めてはならない』
 核を破壊されてなお終末機巧大戦を強行しようとする者がいるのか? だが崩れ行く壁、床を前にしては考える時間もない。
「こっちだよ! 瞬走駆輪炉、疾走形態――!」
 かろうじて無事な足場をフロッシュが先導する。間一髪、要塞を飛び出したケルベロスたちは見た。
「戦いはまだこれから、というわけか」
 さっきまで要塞型ダモクレスだったものが散らばり、空を飛び去っていく。更なる戦いを予感させるその光景に、ぽつりと隆也は呟いた。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年12月7日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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