ビルシャナは手も触れぬ純愛を説く

■リプレイ

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　深夜の倉庫。
「男女が一切触れ合わぬ世界を」
　声高に女は叫んだ。ビルシャナである。
「男女が一切触れ合わぬ世界を」
　熱病におかされた患者のような目で信者たちもまた叫んだ。刹那である。
「いいえ」
　嘲弄するような声がその場に響いた。
「……誰だ、お前らは？」
　視線を転じたビルシャナは見た。八人の男女の姿を。
「シャルロッテ・シュトレリッツ（月ニ狂ヒシ獣・e12526）ですわ」
　声の主がこたえた。気品に満ちた美しい少女である。が、人間ではなかった。
　ぴんと立った狐の耳。尻には大きなふさふさの尻尾。妖しい美を秘めたウェアライダーなのである。
「純愛とは純粋に愛し合うこと。理想や思想などは忘れて、相手をただ想い受け入れること。そうしてひとつになって得られる安心感こそが、永遠の楽園なのですわ。何より…触れ合わねば子供も授かれませんわよ？」
　艶然と微笑むと、シャルロッテは傍らに立つ男に身をもたせかけた。
「触れぬ純愛等唯ストレスをためるだけのものではないか！　触れる事が出来得るなら触れあってこそよ！」
　吐き捨てると、少年めいた容姿の男はビルシャナを睨みつけた。
　男の名はコクマ・シヴァルス（ドヴェルグの賢者・e04813）。ケルベロスであった。
「愚かなりビルシャナ！　生きる以上触れ合い味わい尽くす喜びを否定するなど生物としての存在否定に等しいわ！」
　コクマはシャルロッテを抱き寄せた。そして唇をあわせた。舌をからませると、すぐにシャルロッテも応じた。まるで別の生き物のように二つの濡れた舌が蠢く。
「邪魔する気か？」
　甲高い叫びをあげ、ビルシャナが躍りかかろうとした。すると、その前に四人の男女が立ちはだかった。
「そっちこそ邪魔はさせん」
　江田島・武蔵（人修羅・e01739）が、その冷然とした顔に嘲りの色を滲ませた。手には斬霊刀――散椿が握られている。
　ぎくりとしてビルシャナは足をとめた。ビルシャナをしてそうさせずにはおられない凄みが、武蔵という若者には確かにあった。
「主義主張は構わないが、それしか認めないというのはねぇ。そもそも、性欲無視の恋愛なんて成り立たないと思うんだがね。恋に恋している状態でも無い限り。――アンタの相手は俺達だ。覚悟して貰おうか」
　刹那、稲妻が疾った。迅雷の速さで繰り出された武蔵の刺突である。
　さしものビルシャナも躱しきれなかった。鮮血に染まる羽毛が舞い散る。
「誰かを好きになったり、愛したりするのは良い事なの！　でもー、やっぱり触れあったら気持ち良いし、抱き締めてあげたら暖かいの♪　そうゆうのが無いのはダメなのー！」
　甘い花の香りのする美少女が叫んだ。糸のきれた人形を思わせる、綺麗だが、どこか人間離れしたところのある美少女だ。
「ね。ふわりと遊ぼ！」
　天使のように微笑みつつ、悪魔のように美少女――盟神探湯・ふわり（悪夢に彷徨う愛色の・e19466）が襲った。その手の禍々しい形状のナイフに混沌をまとわせ、切りつける。
　切っ先は空間を黒く染めながら疾った。切り裂いたビルシャナの肉体の断面が空間そのものごと切断される。

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「理想世界の追求者たちよ。異端の者どもを駆逐するのだ」
　怪鳥のような声でビルシャナが叫んだ。が、信者たちの目はコクマとシャルロッテの痴態に吸い寄せられていた。
　すると、二人の男女が彼らの方に歩み寄っていった。日柳・蒼眞（落ちる男・e00793）と凍夜・月音（月香の歌姫・e33718）だ。
「好きになった相手の身体を求めるのは当然の感情だ。逆に相手からそういう気持ちを向けられないというのも、異性として認識されていない、つまり魅力を感じないという事だけど本当にそれで良いのか…？」
　信者たちを見回し、蒼髪銀瞳の若者が問うた。爽やかそうな顔立ちは端正であるといっていい。が、この時、彼の瞳には一抹の迷いがよぎっていた。
「手も触れぬ純愛こそ至高、なんてのに賛同した理由を考えてしまうとやりにくいな…」
　蒼眞は囁くような声でごちた。
　信者たちがこのように極端な教えにはしった理由が純愛に夢を見過ぎているなどというものならどうとでもなる。が、もし性的暴行を受けたなどという理由ならどうなる？　そのような理由で男と触れ合うことに忌避感をおぼえたとするなら、これから見せようとする行為は、その者たちを傷つけることなりはしないだろうか。
「好きな人に触れたいのは自然な感情なのだし、否定するのは良くないと思うの」
　月音がいった。そして秀麗な顔を信者たちにむけた。
　艶やかな微笑。が、その奥に高山の空気を思わせる凛とした澄んだ涼やかさがあるのはどうしたわけだろう。
　月音は蒼眞の手をとった。すると迷いを消し、蒼眞もまた月音の手を握り締めた。
「争いなんて仮に肉欲が消えても無くならないのに、随分と頭がお花畑な主張があったものね。まあ信者は一時の気の迷いのようなものでしょうし、少々過激なものを見せて目を覚まさせてあげましょう」
　蒼眞にだけ聞こえる声で月音が囁いた。そして蒼眞の首に手をのばした。
「手を握って、抱き締め合って、キスをして、繋がり合って…」
　月音の方から蒼眞に口付けした。
「どれもとても気持ち良い事なのに、避けてしまうなんて勿体無いと思わない？　それに、キスは気持ち良いだけじゃないのよ。激しくすれば意外と良い運動になるから。多少はダイエットにもなるんじゃないかしら。例えば、こんな風に」
　月音は濡れた舌をのばした。そして同じようにのばされた蒼眞の舌にからみつかせた。ぬちゃりと湿った音がする。唾液を交換するいやらしいキスだ。
「おお」
　信者たちの口からため息がもれる。それを横目で盗み見ながら、蒼眞はいった。
「なんて柔らかい唇だ。舌がぬるぬるして気持ちいいぞ。唾は甘い果汁のようだ」
　ごくりと蒼眞が月音の唾液を嚥下する。それから蒼眞は月音の衣服を脱がせた。冷然たる美貌からは想像もつかぬ豊満な肉体が露わとなった。肌が月光の精のように透けるほどに白い。
「なんて柔らかだ。それでいて弾力がある」
　月音のたわわな乳房を優しく蒼眞は揉んだ。そして薄紅色の乳首をつまむ。
「ああん。おっぱい、気持ちいいの。もっと揉みしだいて」
　月音がねだった。すると蒼眞は乳房を鷲掴みにした。他方の手は丸みをおびた尻に這わせる。
「すべすべの尻。指がくい込むぞ。それから」
　蒼眞は月音の秘肉に指を入れた。はあん、と一際大きく月音が喘ぐ。
「すごく濡れていて、指を誘い込んでくる。いいか」
「いいわ。来て」
　月音がいった。すると蒼眞は月音の足を広げた。そして自らの猛り立ったものを突き入れた。
「うっ」
「ああ」
　同時に二人の口から声がもれた。やがて蒼眞が腰をすすめる。
「熱い肉襞が……俺を包み込んでいる」
「ああん。いいわ。太いのが奥まで届いている。もっと突いてぇ」
　月音が身悶えた。ああと頷くと、蒼眞は尻の動きを速めた。
「ぬるぬるの肉襞がからみついてきて……ああ、もうだめだ」
　月音の中で蒼眞は果てた。

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「くっ」
　動かぬ信者たちを睨みつけ、ビルシャナは炎を放った。空を灼きつつのびる火流は蒼眞と月音に。いや――。
　立ちはだかった女が火流を受け止めた。艶やかな黒髪と磁器のような白く滑らかな頬。人形のように美麗な娘であった。名をユーディット・アルニム（装甲砲士・e29597）という。
　その時だ。彼女のサーヴァントであるライドキャリバーが弾丸をばらまいた。反射的にビルシャナが跳び退る。
　と、炎が薙ぎ払われた。現れたユーディットの冷たい目はビルシャナを憐れむかのように見据えている。
「ヒトである以前にイキモノなのだから、その命の営みを否定して何になるというのだ。言いたいことはまあ理解できなくもないが、それがヒトノヨ、というものだろう。そうやって生きていくしかないのだ、ヒトもケルベロスも。もし清浄な世界が訪れたとしても、それはヒトのための永遠の楽園ではなく、デウスエクスための永遠の狩場だぞ。それこそ奴らの思う壺だ」
　呆れたように呟くと、ユーディットは身体に装備された砲台をビルシャナにむける。
　ロックオン。主砲が火を噴き、唸り飛ぶ砲弾がビルシャナを直撃した。
　爆発。凄まじい衝撃に、ビルシャナが仰け反った。足がガリガリと地を削る。
「説得組はその内に飯とか奢れよー？　戦闘は此方で何とかするからさ」
　裸で楽しそうにからみあう仲間を見やり、反骨心溢れる顔に苦笑を滲ませて白焔・永代（今は気儘な自由人・e29586）は超鋼金属製の巨大ハンマーをかまえた。砲撃形態に形態変化させたそれは、すでにハンマーとはいえぬ形になってはいたが。
　次の瞬間、ハンマーが竜のごとく吼えた。吐き出されたのは竜の一撃に匹敵する破壊力を秘めた砲弾である。爆炎に包まれたビルシャナはさすがに身動きもならなかった。
「おい」
　気さくな口調で永代は呼びかけた。
「君に興味あるんだよねん。どうしてそう思うようになったの、何かあった？」
「おまえに話したとしても何にもならない」
　ビルシャナはこたえた。黄色く底光りする目にあるのは無限の憎悪だ。
　永代は大きなため息を零した。女好きである彼はあまり女と戦うことを好まなかったからだ。ましてや哀しい女とは。

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　コクマはシャルロッテの衣服の内に手を滑り込ませた。小ぶりだが形の良い乳房を揉みしだく。
「ンっ…こうするのも久しいな？」
「あっ……そう……ですわね」
　甘い吐息をもらすと、シャルロッテは自ら衣服を脱いだ。華奢で壊れそうな眩しい裸身が露わとなる。
　コクマの他方の手が滑り降りていった。シャルロッテの秘肉を割り、小さな尖端を指で転がした。
「ああん、そこぉ」
　たまらないといった様子で、シャルロッテは信者たちに見せつけるように股を開いた。くぱぁと秘肉が開く。
「いくぞ」
　シャルロッテを押し倒し、コクマは腕かと見紛うばかりに黒々と太く怒張したものを秘肉にあたがった。そして、一気に貫いた。
「ああっ」
　悲鳴にも似た声をシャルロッテはあげた。あそこが張り裂けそうな痛みと快感が彼女の肉体をはしりぬけている。
「ああん。やっばりコクマさんのすごいですわ。あそこが壊れそう」
「おまえこそ」
　いまにも爆発しそうになる快感をこらえ、コクマは尻を動かした。濡れる肉が彼の肉棒をこすり、襞がからみつく。
「まさに天井の如き心地よさ。身と心がまさに満たされる愉悦よっ…！」
　コクマがシャルロッテの白い乳房を掴んだ。コクマのものが膨れ上がる気配に、シャルロッテが叫ぶ。
「来てぇ。中に。おねがいですわ」
　刹那だ。にコクマの欲望が爆発した。白濁液をシャルロッテの中にぶちまける。
「ああん。熱いですわ」
　秘肉から溢れ出した液体を、うっとりとした顔でシャルロッテは手ですくった。そして尻のすぼまりになすりつけた。それは、なまじ彼女が貴族的な美貌の持ち主であるだけに、おそろしく淫蕩な眺めであった。

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「くっ」
　ビルシャナは悔しげに歯を軋らせた。からみあう男女に夢中で、もはや信者たちは彼女のいうことに耳を傾けはしないだろう。
「みんな、死ね」
　ビルシャナは光を放った。死の光線が周囲を薙ぐ。
　瞬間、ケルベロスたちを庇って飛び出したものがあった。ミミック――メクレンブルクとライドキャリバーだ。光に灼かれ、二体のサーヴァントが地に転がった。恐るべき破壊力である。
「貴様」
　日本刀をふりかざしたユーディットであるが――様子がおかしい。仲間の痴態が、彼女にある記憶を呼び起こしたのだ。香蓮に乳首を弄られた記憶だ。その時の快感は今も肉体に刻み込まれている。さらに寄生球型生体防禦反応利用装甲が微妙に蠢き、彼女の肉体を嬲っていた。
「これ以上立っちゃ駄目」
　困ったようにユーディットは胸を見下ろした。乳首がピンと立っている。秘肉から溢れ出した液体が股間を濡らしていた。欲しくてたらまなくなっている。
「相手がいないからって、こんなの嫌…」
　がちゃり。ユーディットの手から落ちた日本刀が地を打った。

　他の三人のケルベロスたちは攻撃を始めていたのでユーディットの異変には気付かなかった。
「俺はビルシャナ化から君を戻せないから……生まれ変わったとかしたら、今度は口説かせてよん。平和な所でねん」
　永代の全身から炎が噴出した。真白な奔流がビルシャナを飲み込む。
　それは地獄の炎であった。倉庫の壁のみならず地ですら溶解していく。寒気するにさらに激しく炎が揺らめいた。と――。
　炎を割って炎が翔けた。ビルシャナの孔雀炎だ。今度は永代の身が炎に包まれた。
「ふわりが全部癒してあげるの……」
　炎に灼かれるのもかまわず、ふわりが永代を抱きしめた。そして永代に口付けした。永代の火傷が見る間に癒えていく。
「こうして触れ合うの、気持ちぃの……♪」
　ふわりが童のように微笑んだ。口と口をつなぐ唾液の筋がきらりと光る。
「だまれ」
　憤怒の雄叫びをあげ、ビルシャナは死の光を放った。ケルベロスたちの肉体を構成する細胞が滅殺される。
「さすがは」
　武蔵は呻いた。ビルシャナの光は範囲攻撃であるのに絶大な威力を秘めている。このままでは回復が追いつかないだろう。
「一気にやるぞ」
　武蔵の放った弾丸がはね、ビルシャナを撃った。ユーディットの日本刀が薙ぐ。
「くそっ。皆殺しにしてやる」
　羽毛を鮮血に染め、またもやビルシャナは光を放った。
　直後である。ふわりが武蔵にキスした。手で股間を撫でさする。
「武蔵くんので貫いてあげてなのー」
「ああ」
　ふわりから離れると、武蔵はビルシャナと相対した。すうと散椿を上段にかまえる。
「哀れな女。後の主張は地獄でしな。あばよ」
　武蔵は踏み込んだ。どおんと響く地鳴りめいた音。縦一文字に銀光が疾った。
　示現流なる古流剣術がある。初太刀にすべてをかける剣流だ。
　武蔵の剣流はそれに似ていた。防御を捨て去った必殺の一撃だ。さしもの不死者も、それを防ぐことは不可能であった。
　ザンッ。
　武蔵の刃がビルシャナを真一文字に切り裂いた。

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「私、今日はすごく危ない日なんですのよ…？　いいですのっ…どうぞ遠慮なく」
　白濁液にまみれた尻を信者たちにむかってシャルロッテは突き出した。名前も知らぬ男に孕まされる背徳の悦びに震えている。
　が、誰も近づいてはこなかった。信者たちは互いに愛し合っていたのだ。
「宴としようと思ったが」
　笑うと、コクマはシャルロッテを壁に押し付けて貫いた。
「お疲れ様」
　コクマたちをちらりと見やってから、月音はいった。先ほどまでの痴態が嘘のような冷静さである。そして永代に歩み寄ると、その頬にキスした。
「これで、貸し借りは無しね。それとも、もっと欲しいのかしら？」
「飯でも酒でも付き合いますよ。その後の事も」
　ひどく真面目な顔で武蔵はいった。

作者：紫村雪乃	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年11月30日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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