イケメンは死ねばいいと思うよ♪

作者:久澄零太

 クリスマスはまだ先だというのに、町は少しずつ十二月二十四日と二十五日に向けてその様相を変え始めた、冬本番に向かうこの季節。吹き抜ける木枯らしに耐えるように、男女がそっと肌を寄せ合った、その瞬間。
「リア充は死ねぇええええ!!」
 ビチャッ!
「……え?」
 突然の事に固まってしまった女性の目の前で、肉塊に姿を変えた男性の返り血が、彼女の肌を静かに濡らす。
「ひひっ、ふひひっ、やっぱ殺すなら恋人持ちに限るぜぇええええ!!」
 訳が分からず呆然とした女性をじっくり眺めてから、その頭を握り潰す。グルリと、その首を回せば腕を組む者、肩を寄せ合う者、まだまだカップルは街にあふれていて。
「ひゃぁっはぁああああ! 今夜は血祭だぁあああああ!!」

「皆大変だよ!」
 大神・ユキ(鉄拳制裁のヘリオライダー・en0168)はコロコロと地図を広げて、とある商店街を示す。
「ここにエインヘリアルが現れて、町の人達を虐殺しようとするの! このエインヘリアルは昔アスガルドで悪さをしてたみたいで、ほっといたら被害者を出すだけじゃなくて、他のエインヘリアルの定命化を遅らせる事になるかもしれないよ。急いで迎撃に向かって!」
 と、非常に真面目な事件であるせいか、砂星・イノリ(ヤマイヌ・e16912)は尻尾を隠すようにしてガクガクブルブル。その視線の先にいたのが、四夜・凶(泡沫の華・en0169)。番犬達は何となく、察した。
「このエインヘリアルは誰かの大切な物を壊す事が好きみたいで、カップルを見かけるとその片方を殺そうとするの。カップルを演じれば狙いをこっちに寄せられるかも知れないから、少し考えてみて欲しいな」
 敵が現れるのは人々の往来がある商店街のど真ん中である。避難誘導を考えると、狙いを番犬に向けるのは必要な事となるだろう。
「敵は素手で暴れ回ってるんだけど、攻撃の特性が闘気に似てるみたいなの。戦術を組む時に参考にしてね」
 場合によっては加護と呪詛が役に立たない可能性もある。グラビティの構成と部隊の布陣は念入りに考えておきたいところだ。
「此度の敵は、実に許されざる存在です……」
 吐息に蒼炎を混ぜて、凶が口を開く。
「文字通り、消し炭にしてくれましょう……」
 ブレイズキャリバーの怒りを買うとこうなるんだなー。番犬達はそんなことを思って遠い目になるのだった。


参加者
天谷・砂太郎(心が乾いた地球人・e00661)
楡金・澄華(氷刃・e01056)
光宗・睦(上から読んでも下から読んでも・e02124)
古峨・小鉄(とらとらことら・e03695)
砂星・イノリ(ヤマイヌ・e16912)
白石・明日香(愛に飢え愛に狂い愛を貪る・e19516)
ルフ・ソヘイル(秘匿の赤兎・e37389)
夢見星・璃音(彼岸のゼノスケーパー・e45228)

■リプレイ

●それはある日の昼下がり
 師走までもう少し。忙しくなるにはやや早い、頬を撫ぜる風が冷たくなってきたこの季節。天谷・砂太郎(心が乾いた地球人・e00661)は夢見星・璃音(彼岸のゼノスケーパー・e45228)と手を重ね、指を絡ませる。
 砂太郎の手には青みがかった薄紫の花を象った指輪。璃音の胸元には白灰色の首飾り。互いが、互いに、想いを込めて贈った物。一つ一つの言葉は美しい物であるが、二つを並べると……そこに、二人の意図があったかは分からない。けれど、今はそんなことはどうでもいいのだ。
「こんな時間が、ずっと続けばいいのにな」
「そうですね……でも、それを守るのもまた、私達番犬の役目ですよ?」
 砂太郎は繋いだ手から目を逸らすように空を見上げて、璃音は重なる指を噛みしめるようにそっと瞳を閉じる。二人は違う物を見つめたまま、同じ道を歩み続け……。
「男なんてただの財布、クリスマスは高級ディナーとブランドバッグが欲しいなー♪」
「どるるうぅわわ~♪」
「そいやそいや! わんわん!」
「へいへいへいソヘイル!」

 こ れ は ひ ど い 。

 光宗・睦(上から読んでも下から読んでも・e02124)が童謡の替え歌を歌い、古峨・小鉄(とらとらことら・e03695)のコーラスが音程を混ぜっ返して、砂星・イノリ(ヤマイヌ・e16912)のギターがリズムを砕き、ルフ・ソヘイル(秘匿の赤兎・e37389)のシャンシャタシャンシャタッタタッシャァン(騒々しいタンバリン、という言葉はそのタンバリンに食い殺された)。
「なんなのよコレ……」
 白石・明日香(愛に飢え愛に狂い愛を貪る・e19516)、気持ちは分かる。凄くわかるが頼むから虚ろ目になるのやめてくれ。
「だって、このあとリア充眺めながら戦闘ですよ……?」
 だからだよ! 目の前のブレーメンすら直面しようものなら、自ら猟銃に身を差し出すであろう混沌楽団で死んだ目してたら、この後絶対メンタルがもたないからだよ! なんだよこの鳥(天使)、虎、犬、兎って組み合わせ!
「十二支から選抜された精鋭部隊っすかね?」
 ルフ、俺が聞きたいのはそういう事じゃない。
「ふっ、俺の素晴らしいビブラートの続きは全部終わった後のカップルに取っておいてあげるんじゃ……」
 お花ちゃん、優しく見守ってないで、本音を伝えてもええんやで。「小鉄ちゃんのそれは、声が不安定なだけっていうのよ?」って……。
「凶、手伝ってくれてもええんじゃよ?」
 まさか自分の声が震えに震えて、正直何言ってるか(歌ってるか、ではない)分からない事になってるとは知らない小鉄は凶にリコーダーを差し出すのだが。
 ……ジュッ!
「ふぎょ!?」
 受け取るがいいじゃ! と手にぺちってした瞬間、ブワッと膨れて溶けた。怒ってる時の地獄持ちに簡単に溶けるもの持たせちゃいけません、これ組織とのお約束!
「怒りに燃える地獄の炎は頼もしいけど、無茶はしないでね」
「……」
 怒り狂っているらしく、吐息に火の粉を混ぜて腰を落とし、得物を担いだ強面にイノリが声をかけるも返事はない。しかし、一瞬だけ視線を寄越したあたり、意思の疎通はできるのだろう。
 色んな意味で周りのカップルはおろか、通行人すらそそくさと足早に立ち去っていく中、砂太郎と璃音に影が落ちる。
「ひゃっはぁああああ! リア充は死ねぇええええ!!」

●やべぇ、思ったよりネタネタしなくて困ってる俺がいる
「相変わらずテメェらは一般人しか狙わないな」
 朦々と、叩きこまれた気弾に吹き飛ばされた石畳が砂煙に姿を変えて立ち込める。
「好戦的が聞いて呆れるぜ」
 腕の一薙ぎで砂を吹き払い、頭をカチ割られて片目を血で潰した砂太郎は、璃音を背に隠すように踏み出して、立てた人差し指を手前に二度、倒す。
「暇潰しに相手してやるからかかってこいよ、ドサンピンが」
「死にぞこないが調子づいてんじゃねぇぞこらぁああああ!?」
 一瞬でプッツンした英雄兵は砂太郎を蹴り飛ばし、一足で距離を詰めるなり拳を振り下ろしてアスファルトにその身を叩きこみ、念入りに踏み砕くように連続スタンプ。
「慌てないで、嫉妬バカが阿呆言ってる間に避難を」
「うわっ!?」
 砂太郎の挑発に釣られて、英雄兵の注意が彼の抹殺に向けられている隙に、それまでそこかに隠れていたのか、姿が見えなかった楡金・澄華(氷刃・e01056)が睦の歌を面白がって聞いていた子ども達の背後に姿を現す。腰を抜かした彼らにしてみれば、誰もいなかったはずの場所に突然人影が現れ、驚いたことこの上なかっただろう。
 澄華は呆気にとられた彼らを軍人特有の威圧的な視線で睨みつけ、突然のデウスエクスによる恐怖を澄華への恐怖に上書きすると、さっさと追い払ってしまった。
「リア充狙って殺すとか、ただの僻み? そんなんだからモテないんじゃないの?」
「んだとコラァ!?」
 睦の小馬鹿にしたクスクス笑いに英雄兵が気を向けた瞬間、砂太郎が自分を足蹴にする脚甲を掴んだ。
「いつまで踏んでんだデクノボウ!」
 体を回すようにして地面に叩きつけ、自身はその間に距離を取り、体勢を整える。入れ替わりに肉薄する澄華の手が、柄に触れれば明日香が指先をパチリ。鳴るは一つの重力鎖。響くは無数の稲光。
「なんだ、カップルに嫉妬か? ……小さいヤツ」
 なんだと、と。英雄兵が返す言葉が届くより速く、刃は駆けた。鞘に纏わされた電流は磁場を生み、刃を加速させて抜刀の速度を研ぎ澄ます。紫電と共に振り抜いた刃は青みを帯びた刀身に、雪が降り積もったように刃が波紋を描く美しき業物。
(今は、間合いではないな)
「あんぎゃぁあああ!?」
 大技を『抜く』のは控えて小回りを優先した小手先の一撃。されど本来の居合の速度に加えて、明日香から回された電撃の加護により、鞘走る刃の切先は英雄兵の鎧を越え、重力鎖を持つゆえの強固な皮膚を引き裂くには十分すぎる。
 軌跡の大気が凍てつき、ささやかな粉雪を舞わせる得物を鞘に納めれば、鼻っ柱に斬痕を刻まれた英雄兵が顔を押さえてのたうち回った。
「ロンリーナイト、お前を討つ為に最高イケてるメンバー……イケメン達が集まった……覚悟しろ」
「誰がロンリーナイトだ!? 俺様の名は……」
「さぁ……リア充狩りはさせないよ」
 こけにされたと跳ね起きた英雄兵だが、ルフが拳を握り、足音を残さぬ歩法で懐へ。
「これは盛り下がったカップルの分!」
 狙うは右脇下段、しかし敵の体躯はルフより一回り、二回り大きく内臓に十分な衝撃を貫通させるには至らない。
「これは凶君の分! そして凶君の分だ~!」
 リバーに続けて、ボディ、ガゼルと左右から拳に角度をつけて叩きこむと兎らしくサマーソルトで鳩尾を抉り蹴り、体を浮かせてノーガードの顎に照準をセット。
「おまけにこれが、ヒャッハーを汚された緋色蜂の分!!」
 回転蹴りの間に銃を抜き、無数の『傷』が刻まれた引き金を引いた。
「凶、やったるんじゃ!」
 撃ち出された弾丸が英雄兵の顎をぶん殴り、骨に弾かれながらもその頭を後方に吹っ飛ばす傍ら、小鉄が金魚が描かれた巨大な団扇を振るう。巻き起こされた風が白虎の姿を取ると、凶に寄り添った後、敵目がけて襲いかかるが。
「覚えとくとええじゃ」
 ふふんと、自分は動いていない小鉄が胸を張る。
「虎の狩は静かにするもんらしいじゃ」
「何言ってんだこのガキ?」
 頭を振って立ち上がった英雄兵が虎の幻影を握り潰した瞬間、凶の姿は怪訝な顔の真横にあり、三本の試験管より薬物を混ぜ合わせ、凍てつかせたそれを首筋に刺す。
「いてっ!?」
 傷跡を押さえた英雄兵が凶に振り向こうとして、突然吐血する。自らの首を絞めながら何かに耐える英雄兵だが、番犬に慈悲などない。
「わおーん!!」
 咆哮? と共にイノリが飛びかかり、Croonが脚部を覆って硬化。文字通りの鉄槌がデウスエクスの頭蓋をカチ割った。

●これリア充を扱うネタだよね?
「囮役とはいえ、無茶しましたね」
 英雄兵が脳震盪を起こしてふらついている間にイノリのスレッジハンマーが頭を直撃、倒れ込む英雄兵を睦が膝で受け、鼻骨を砕きながらこめかみに拳を叩きこんで頭を横に揺らし、殴り飛ばす。
 前衛が敵を押さえている間に明日香は砂太郎の容態を見るなり、その胸元に指先を滑らせる。
「肋骨が折れて肺に刺さっていますが……まぁ、番犬にとっては良くある事ですね」
 言うや否や、彼の背中に掌底を叩きこんで、その衝撃をもって、まずは内臓に突き刺さった骨を抜いた。
「はーい凄くビリッとしますよー」
「凄く!? ちょっとじゃな」
 バヂィ! 派手な電撃で火花が散り、砂太郎は「い」の口から白煙を上げて目も真っ白になるが、ダメージは一切入ってない。むしろヒールだから安心していいと思う。
「これ見て安心しろと!?」
 璃音が何か言ってるけど、ヒールなんだから仕方ない。実際安全。
「内部出血起こす程集中攻撃受けてますからねー仕方ありませんねー」
「何か淡々と言ってますけど、本当にそういう状況なんですよね? ちゃんと必要な治療なんですよね!?」
 テンションが海底並みに低い明日香は璃音のツッコミを無視して、砂太郎の臓物の穴を塞ぎ、乱雑に開いた血管は流した電圧で焼いて止血。戦闘が終わったら速攻で病院に突っ込まれそうだが、少なくとも現状においては戦線復帰を可能に。
「当然ですが、次はありませんからね?」
「上等だ」
 明日香の、魔導医の釘を刺された砂太郎はほとんど飾りのような防具を放棄。
「どうせ喰らえば終わる、ならば身軽になっておくに越したことはねぇ……!」
「援護します……いけっ!」
「お前もだ、段ボール箱!」
 偽箱と、人の骨でできたトラバサミが英雄兵の脚に食らいつき、その場に固定。食らうなって言ってんのに、砂太郎はあえて敵の真正面に立った。
「オラァ!!」
 鎧に亀裂を走らせるほどの鉄拳に、英雄兵がよろめくも砂太郎の顔面に拳を叩き返せば、一歩後ずさるも踏みとどまった砂太郎から逆側に拳が打ちこまれて体を折る英雄兵による振り下ろしの腕が砂太郎の肩から破砕音を響かせ、不敵に笑う彼に引き下ろされた頭に頭突きを叩き返される。
 体格差故の格闘戦の不利をものともしないどころか、楽しむかのような拳の応酬の中、ついに動きの止まった英雄兵の腕を、睦が掴むと引き込むようにして捻じり、跳んで。
「やられる前に……」
 体格にして二倍。自分より遥かに大柄な相手に対して睦は脚力に全体重を乗せ、脚部に食らいつく二匹はその牙を持って肉を抉る。
「やってやるっ!」
 上下反転したまま手首と前腕の二カ所を掴むと落下の慣性と共に捻りを加えて強引に関節を回し、ゴキリ、体内で骨の接続が引き剥がされた鈍い音がした。
「お花ちゃん!」
 小鉄の構えた機構銃に箱竜が乗ると、内部から駆動を響かせて込められた弾丸が回転を始める。
「合わせて……発射じゃ!!」
 トリガー。撃鉄にぶん殴られた弾丸は螺旋に掘られた溝にお花ちゃんの吐息を受けて、季節外れの桜吹雪と共に英雄兵の片脚を貫通に、風穴を残してその膝をつかせた。
「ぁあああああ!?」
 貫通痕から白骨を晒し、吼える。
「殺す! 殺してやる! お前ら全員血祭だぁああああああ!!」
「いちいち大声出すな、喧しい」
 カチ、澄華の刀が鯉口を切る。閃くは風切り音。人の目には一振りに、剣客には四段斬りに剣閃を見せた刃は鞘へ舞い戻る。
「チンピラと変わらんぞ」
 得物が帰るべき場所へ辿り着けば、刻まれた交差する斬痕から鮮血が噴き出すものの、その飛沫は瞬く間に色彩を失って、真白に凍結される。その様は正に雪の花。
「覚悟はいいな、ロンリーナイト!」
「だから俺様の名は……」
「いくぞ、クルーン!」
 鬼鋼はイノリの左右の手に散り、巨大な爪を模した腕甲を形作る。形成を確かめるように握り込み、スライドして一閃。すり抜け様に爪を振るって凍結した血を掠め取ったイノリはそれを握り込む。
「あぁ、そうか、君は……」
「な、なんだよぉ……なんなんだよォ!?」
 狂気の叫びから、恐怖の絶叫に声音を変えて、英雄兵はイノリへ腕を伸ばすも、もはやその脚は動かない。
「さぁ、おいで。もう寂しがらなくていいんだ」
「……お前、何を『視た』? 俺に何をしたァアアア!!」
 もはや枷でしかない動かぬ脚を自ら斬り捨てて、動く片脚で跳ぶように踏み込みイノリの頭を狙うも、その指先が届くことはない。
「おやすみなさい」
 瞳を閉じたイノリを目前に、凍てついた英雄兵は瓦解して、その亡骸は風に攫われ空へ運ばれていった……。

●ネタネタすると思ったら、どうしてこうなった?
「よし、終わった!」
 敵の消滅を確認した砂太郎は璃音の手を取る。
「砂太郎さん、まだ体が……」
「いいんだよ、死ななきゃ生きてる」
 半ば強引に、彼は歩きだす。折角の初めてのデート。たかが死にかけた程度で無駄にしてなるものか。
(全くこの人は……)
 二人で商店街を巡り、店の常備品やクリスマスに向けた材料を買い揃えながら、璃音はため息を溢す。かつて、男は問うた。かつて、女は答えなかった。
(まだ、変われないよね)
 璃音の脳裏に過るのは、とある夜の、『潮風』。
 寄せては返す波のように、今はまだ、『今』に留まっていたいのかもしれない……。
「そうじゃ、凶。まだボッチなん?」
 澄華が現場の被害をヒールし、町が(幻想化して一部不思議なオブジェになっているが)元の姿を取り戻すと同時に、戻って来た人々に届けるように、睦が改めて恋人達に捧げる静かなメロディを奏でる……その傍ら、小鉄が口にしたのはそんな言葉だった。
「ストレートに言うな……まぁ、返答待ち……ではあるが」
「あっ」
 遠い目をする凶から、小鉄は何かを察してそっと両手を合わせる。
「大丈夫じゃ、寂しい時は男同士でジュース飲むんじゃろ? 俺知ってる!」
「はいはい」
 それ酒飲んで忘れるやつだろうなーって虚ろ目になる凶をイノリがじー。
「凶さんも恋してる? 恋って、どんなものなの? 散歩より素敵なもの?」
 未だ恋知らぬイノリに、凶がしばし考えて告げた言葉は。
「きっと、凄く苦しいものですよ」
「えぇ……? じゃあなんで皆恋をするの?」
 半眼で、「うへぇ……」と耳と尻尾がへにょん、するイノリに凶は微笑んで。
「いつか、貴女にも分かる日が来ますよ」
 煙に巻かれた気がして、イノリはぷくー、頬を膨らませた。一方、恋だの愛だのの話に飽きた小鉄は鈴を手にシャンシャンと睦の方へ行って。
「こほん、では俺も迷惑かけた人達の為に本気の歌を……」
 スッと、小鉄が息を吸った途端にお花ちゃんが顔に張りついて、小鉄の歌声をパーフェクトカット。
「あ、ちょ……」
 ふがふが、声を出せなくなった小鉄の姿に、何となく察した睦は気にせず演奏を続け、その隣で伴奏するようにタンバリンを叩くルフは静かに苦笑していたが……それがどこに向けられていた物かは、分からない。

作者:久澄零太 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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