終末機巧大戦~水陸両用型戦艦を倒せ!

作者:baron

「東京六芒星決戦での勝利、おめでとうさんです」
 ユエ・シャンティエが軽く頭を下げる。
 ケルベロスの中には、にやりと笑ったり、飲み物を掲げる者も居た。
「ですが死神の野望を砕き、十二創神のサルベージという最悪の事態を防ぐ事が出来ましたが、安心するにはまだ早いようですわ。その東京六芒星決戦に参戦しなかったダモクレスの軍勢がおりますのえ」
 儀式失敗によって行き場を失ったグラビティ・チェインを奪った大儀式。
 その名も、『終末機巧大戦』を引き起こそうと動き出したのだという。
「この大作戦を率いるのは『五大巧』と呼ばれる五体の有力ダモクレスです。
 中にはバックヤードの件で知っておられる方もおられるでしょお」
 この『五大巧』達は、ディザスター・キングが倒されたことにより、『六芒星決戦』に参戦する筈だった戦力を支配下に吸収。そして死神を裏切って儀式への増援を拒否したのだろう。それは戦力を温存する為、その結果、今回の作戦を強行したようだ。
「さっきゆうたバックヤードですが、既に晴海ふ頭中央部に出現し、周辺の機械や工場などを取り込んでダモクレス化してしまっているですえ。他も同様に大型のダモクレスが出て来とります」
 更に、爆殖核爆砕戦で攻性植物が行った『はじまりの萌芽』を模した大儀式。
 『終末機巧大戦』……核となる『六つの歯車』を利用した儀式を行う事で、爆発的に増殖させ、東京湾全体をマキナクロス化させるのが目的と思われる。
 これを阻止する為には『核となる歯車』の破壊が必要なのだが、儀式は巨大な拠点型ダモクレスの内部で行われる為、破壊するには拠点型ダモクレスの内部に潜入する必要がある。
「ただ儀式は儀式、様式ゆうんがあります。
 終末機巧大戦の儀式は、晴海ふ頭外縁部でなければならないらしく、儀式開始と同時に侵攻を開始するので、そこを急襲して儀式を阻止すればええゆう事ですわ」
 とはいえ敵が侵攻を開始してから儀式が発動するまでは30分しか時間の猶予が無い。
 30分以内に敵拠点に潜入し護衛を排除し、儀式を行っている指揮官ダモクレスの撃破。
 或いは、儀式の核となる歯車を破壊しなければならない。
 儀式の破壊に成功した分だけ、終末機巧大戦の被害を抑える事が出来るだろうとユエは告げた。
「万が一、儀式が全て完遂されれば東京湾全体が敵の手におちます。
 ですが全て阻止すれば、晴海ふ頭中心部のみの被害で抑える事が出来るゆう訳ですね。
 厳しい状況ではあるが、皆の活躍を祈っておりますえ」
 ユエはそう言うと、再び頭を下げて一礼した。

「各要塞の攻略作戦ですが、合計五班が、先行二班、突入三班に分かれる作戦を取ります。
 この班は第四の儀式場の、突入班になりますえ」
 先行し、要塞を止めて外からの破壊と増援の足止めを目的とした二班。
 突入し、儀式を止める三班。この合計五班が一チームと言う訳だ。
「ここで重要なんが、護衛にどう対処するかですわ。相手は足止めするでしょおしなあ」
 三班で協力して護衛を全滅させてから、核に向かう。
 これは最も確実な半面、足止めに弱い。
 では一班が足止めをしている間に、二班が核に向かう?
 その場合は足止めチームが全滅すると、護衛が敵増援となる得る。
 最後に二班で護衛と戦い、一班が核に向かう場合。
 この場合はおそらく互角、勝利した側が増援として現れる事になるだろう。
「確認された指揮官ダモクレスは『終末機巧』カタストロフィ。光の剣で戦う凄腕の剣士ですが、玉座その物が歯車ですので、当て易いのが弱点の様です。場合によっては倒す事よりも破壊する方が楽かもしれません」
 ユエはそう言って、玉座に座る老人の絵を見せた。
 座ったままで戦うことができるくらいに間合いを熟知し、グラビティの放射が得意なのだろう。もちろん立って戦う事も可能で油断など出来ない。
 そして続く二枚の絵には、女性方が二人分ほど描かれている。
「護衛ボスの山之内冴子。こん御人は開発者で戦闘力はそこそこでしょおか? その恐るべき計算能力や、改造した腕に寄る技術力によって攻撃してきます」
 護衛ボスというのも変な話だが、雑魚を連れているらしい。
 あえて言うならば、中級指揮官というところか。
 この女性は腕がギミックになっており、直接攻撃の他、ギミックによる射撃も行うだろう。
 それがダモクレスが良く使うビームなのか、それともメスか何かが飛んでくるのは良く判らない。
「次に護衛ボスの2人目。ナースドール『フローレンス』。護衛ボスだが、やはり戦闘力はそこそこ。問題なんは強力な回復グラビティで、戦線を支える事ができることでしょう」
 メディックゆえに当然ながら他の防衛ダモクレスに庇ってもらい易い。
 強さよりも厄介さの方が問題だろう。
 外見の方は大型の注射器を持つナース……何かデフォルメした様なナース姿だ。
「なお儀式の核である歯車を破壊された『五大巧』は、強制的に本拠地であるバックヤードに転移させられるよおです。もし指揮官の撃破を狙う場合は注意が必要かもしれません」
 ユエは予めそう言った上で、次の問題を提示した。
「儀式の阻止を最優先するか、敵指揮官の撃破を狙うか。完全撃滅が無理やという前提で、どっちを選ぶかは判断作戦に参加するケルベロスにお任せします」
 護衛に時間が掛ると間に合うかが怪しいが、歯車を壊せば阻止はできる。
 だがその場合、指揮官はバックヤードに移動してしまうと言うことだ。
 どちらが良いとも言えないので、突入班同士で話し合って決めるのが良いだろう。
「他にも死神やエインヘリアル、ドラゴンの動向は不明です。しかしここでダモクレスの好きにさせる訳にはいきません。よろしうお願いしますえ」
 ユエはそう言うと、軽く頭を下げて皆の相談を見守るのであった。


参加者
伏見・勇名(鯨鯢の滓・e00099)
シェミア・アトック(悪夢の刈り手・e00237)
モンジュ・アカザネ(双刃・e04831)
九鬼・一歌(戦人形鬼神楽・e07469)
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)
ウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)
黒岩・白(すーぱーぽりす・e28474)
本田・えみか(スーパー電車道娘・e35557)

■リプレイ


 先行二班が陽動を務め、突入三班が水陸両用戦艦アンドロケースに穴を開ける。
 そして全班で侵入した後、余裕を残した先行班が迫りくるキャプチャドール達を担当。
「さて、ここまでは順調。この先はどんなもんっすかね。なにも居ないと嬉しいんすけど」
「居ないと言うことは無いと思います。問題は……」
 黒岩・白(すーぱーぽりす・e28474)は先を探る為、オルトロスのマーブルと共に先行。
 その言葉に九鬼・一歌(戦人形鬼神楽・e07469)は僅かに苦みを交えた表情を造る。
「先ほどの足止めにどれほど使ったか、判らない事だナ」
「ええ」
 その懸念をウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)は察して見せた。
 戦力と言うものは多い方が良い。使える駒ならばさっさと使って相手を叩き潰すべきだ。
 だが他に敵が侵入する可能性。そしてこの三班がそうする様に、抜ける相手がいると話が変わってくる。
「まっ。居たとしても大軍ってことはないさ。戦闘畑じゃない幹部くらいは残ってるかもだがね」
「我はむしろ、待ち構えている猛者の方が愉しいがナ」
 楽観的なモンジュ・アカザネ(双刃・e04831)に対し、ウォリアは趣味全開で答えた。
 もっとも居なくとも構わない。精鋭と言う意味では、五大巧とやらの方が美味いだろう。
「どちらでもいい」
「倒してしまえば同じことだよ」
 伏見・勇名(鯨鯢の滓・e00099)がポツリと呟くと、シェミア・アトック(悪夢の刈り手・e00237)が頷いた。
 問題なのはむしろ時間の方だ。

 相手が儀式に成功してしまえば大事になる。
 その為には十分な時間を持って指揮官の元に辿りつく必要があった。
「時間はどうかな?」
「先行班と分かれた時が約十分前。もう直ぐ……十二分ですね」
 シェミアが確認すると、タイムキーパーの一人であるイリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)が答えた。
 足止め役だけならまだしも、雑魚まで居たら時間内に倒すのは難しい。
「むう……いた。時間ない?」
「突破すればいいっすよ!」
 勇名が唸ると本田・えみか(スーパー電車道娘・e35557)が拳を握る。
 時間を聞くだけならまだしも、視界の端に敵の姿が見え隠れし始めたからだ。
 そして敵は足止めに出てきた中級指揮官が二人、……合計で十名を越えるダモクレス。
「やはり居ましたね!」
「こちらで相手をしよう。お前達は予定通りに行くがいい」
 一歌の言葉に別班のマーク・ナインが刃を構え提案した。
 こうなった場合に備え予め相談しておいたのだ。
 倒せそうならば十五分まで粘るつもりだったが、この時間で接敵するならば抜けるルートを計算しておく必要があるだろう。
 主力は相手の治療師らしきナース姿の個体に向かい、一同は空いた隙を狙って歩を早めた。


 行き掛けの駄賃に攻撃を行いつつ、相手側がカバーに出た所を抜ける作戦だ。
 三班の攻撃で雑魚が壊滅してもよし、しなければ空けた穴より抜ける算段である。
「十三分!」
「行くっすよ!」
 真っ先に突入したイリスから次々と攻撃を仕掛けて行く。
 えみかも皆に遅れまいと突進した。
「銀天剣、イリス・フルーリア……参ります!」
 剣が光を帯びて輝き手近なダモクレスに見舞われた。
 その個体は他の班が攻撃した折にカバーに入った相手。
「消えロ!」
「どんどんいくッスよ~!」
 その敵が倒れた事で、ウォリアと白が砲撃態勢で豪砲を放つ。
 次なる敵を散々に打ち砕いて行く。
「天に在りし御身の輝き、意志を掲げし我らに恵ませたまえ」
 シェミアは仲間達に聖なる力の付与と、ここまでに傷付いた体を癒す。
 他の班ともども前衛が穴をこじ開けに掛り、そこに余裕を持たせる為だ。
「うごくなー、ずどーん」
 勇名はその足元にミサイルを放ち、カラフルな火花を放たせる。
 動きを止めた敵の一部が空へ跳ね、また何処かの班が攻撃を浴びせて、次にまたこちらの班が攻撃を重ねて行く。
「汚たねえ花火だ。っと。このまま少しずつ進んで行こうぜ」
 モンジュは弓を構えると落ちてきたダモクレスに矢を放つ。
 他班の白兵戦メンバーが空いた穴に飛び込んだのを告げつつ、自らも腰を落とした。

 かなり良いペースであるが、二分の攻防では雑魚はともかく護衛ボスまでは無理だ。
「援護します! こちらも道を確保してください」
「ぶちかますっす! えみかがいる場所が土俵! 場所も数も問わないっす!」
 一歌がグラビティの防壁を作りあげると、えみかは体当たりを掛けた。
 体重を掛けて突進し、自らの体をネジ込むようにして飛び込む。
 まるでアメフトのようだと誰かが行ったが、えみかは相撲だと言って欲しいと抗議する。
「くっ。仕方無い、じゃあ行こうか」
「大丈夫だって。信じて止まらなきゃ抜けられるぜ!」
 シェミアは蒼い鎌に炎を灯し、敵の途切れた穴へ動き始める。
 雑魚の一体が塞いでしまうが、モンジュは首を振って問題無いと口にした後、足へグラビティを集めた。
「こっちはもう準備できてますよ。いつでも行けま……くっ」
 一同の先頭をイリスが走るのだが、その先はやはり塞がったまま。
「させません! 時よ凍って! テロス・クロ……」
 その時、時間が凍り付いた。
「……テロス・クロノス! デュアル……バーストっ!」
 一瞬の閃光がした後、それに倍する量の閃光が突如として弾ける。
 制止時間の中で唯一人、ケルベロスの一人が猛烈な射撃を放ったのだ。
 何か起きたのかは判らない、だが、結果は問うまでも無いではないか。
「心苦しいですが、後はお願いします」
「早く来ないと、喰ってしまうゾ」
 一歌が声を掛けて通り過ぎた時、既に彼方に消えつつあるウォリアは歪な笑いを見せた。


 儀式上に辿りつくと男が一人、玉座に腰を掛ける。
 儀式に専念して居るがゆえに、ただ座って集中して居るだけだ。
 それなのに、まるでチェスでも指して居るかのようではないか。
『やはり、来てしまいましたか、ケルベロス』
 その目に宿る輝きは焦りも昂りもなく、常に先を見通す様な静けさがある。
『時間的にユニット・アンドロメダを放置するか、仲間を置いて来たようですね。その解はあり得ましたが……人間が危険を伴う選択肢へ意見の一致をみるとは思いませんでした』
 その男……カタストロフィは、アッサリと一同の行動を看破して見せた。
 ゴクリと喉が鳴る音は、隣の誰かか、それとも自分自身の音か。
「ハッタリ? どこかにモニターが……」
「いえ、それもまた演算でしょう。……死神たちを利用する悪辣さは見事だとイチカは思います」
 裏切り騙し討ちは戦の華。それはそれとして倒すと一歌は告げる。
 そして他のケルベロス達もまた、ここで止まる気など更々ない。
「そのくらいの危険。割り切って引き受けてもらえるくらいの絆はあるっす!」
『それが種としての力を底上げするのであれば興味深い。ですが、この儀式を阻止させるわけにはいかないのです』
 白が声を上げて拳を構えるが、カタストロフィは疑いもせずに受け入れた。
 だが、それは別にレプリカントへの道を示すと言う訳ではない。

 これよりは闘いと言う名の宴。
 儀式を遂行する最後の仕掛けとして、ケルベロスを阻む為に光の剣を取る。
『演算叡智の果ての果て。力及ばずとも、このハグルマは必ず守り切ってみせよう』
 膨大なグラビティがナニカを中心にして形作られる。
 チリチリと小さな振動がした後、そのナニカを掴み取る仕草で力を収束させた。
「来ます!」
「散開シロ!」
 イリスとウォリアは走り込みながら、膨れ上がった気配に忠告を投げる。
 剣を振り上げる途中で、イリスは光の波が周囲を覆うのと、影がソレを遮るのが見えた。
「まだまだ! えみかの大一番に付き合ってもらうっすよー!」
「ありがとうございます。……我が手に有りしは銀天剣!」
 イリスが意識を集中させると、それに伴って周囲の光が刃に結集する。
 眩い輝きがそこだけクリアになり、まるで雪降ろしをした北邦の光景であった。
 ワイパーの様に振り降ろせば、雪の如く力が敵の周囲に足枷を残す。
「ヌン!」
 カバーが間に合わなかったのか、ウォリアはフォトンウェーブの中から顔を突き出した。
 そして腰溜めに構えた獲物に咆哮を放たせる。
「もう一発喰らうッす!」
 白は砲撃を掛けながらライフルを構え直し、次なる攻撃に備えて様子を窺う。
 グラビティの砲弾が直撃した時、カタストロフィの周囲でナニカが花弁の様に散っていくのが判った。
「やっぱり格上相手に速攻は無理みたいだね」
 シェミアは再び魔力を天に捧げ仲間達へ祝福があらんことを祈った。
 神聖なる力がケルベロス達に冷静さを与え、同時に先ほど負った傷を癒して行く。
「まあ戦ってりゃ、その内に後ろの連中か駆け付けて来るぜ。そこまでの辛抱だな」
「ここがぼくらの、しょうねんば」
 モンジュは飛び掛る為、腰を落として走り始めた。
 それに先駆けて勇名が放ったミサイルが着弾し、色とりどりの色彩が儀式場を染め上げた。
『そこですか』
「ちっ。良く視てやがる」
 その閃光に紛れてモンジュが蹴りを放つ。
 軽く頭を揺らしてよけようとしたカタストロフィは、何もない場所で剣の様に直列の光を掲げる。
 祝福により強化された虹色の煌めきの余波を削り取り、上手く受けられてしまった。
「……この先を見通す叡智。大首領に匹敵する相手と見ました。油断できない様ですね」
 一歌は指先で軽く鯉口を切ると、抜刀するのではなく、むしろ酒瓶を空けるようなイメージを浮かべた。
 聖杯の如く封印した魂を開放し、カバーが間に合わずに負傷したウォリアの傷を癒す。
「同じ土俵に立ったからには、えみかの相撲に付き合ってもらうっすよー!」
『そうはいきません』
 えみかが吐いた炎の息吹。
 土俵さながら円状に燃え広がるはずが、花弁の様な力に阻まれる。
 ソレはカタストロフィが防壁として転ずるために力を込めたことで、ハッキリとした形になっていく。
「あれは歯車?」
「それともルーン? まさかルーンを覚えたと言うのですか!」
 自身も使うルーンの力を前に、一歌は無表情の裏に一筋の汗をにじませる。
 偽造かもしれない。
 しかしこのダモクレスはルーンすら盗み出す能力があると言うのか?


「くあー強いっすね! 負けてられないっすよ!」
 えみかが嬉しそうに四股を踏んで気合いを入れる。
「そうです。敵は格上、この程度はできて当たり前でしょう。休まず攻め立てましょう」
 その様子に頷いて、イリスはライフルから重力波を放った。
「ククク。敵は強けれバ、強いほどに喰いごたえがあるというものダ!」
 猛烈な圧が放たれるのだがカタストロフィはソレを無視し、続いて放たれるウォリアの冷凍光線をこそ弾いた。
 避けられる物とそうでない物、明らかにソレを理解して居るとしか思えない。
「それがどうしたっすか! 命中予測ならケルベロスだってできるっすよ!」
『然り。なれば我が剣は刻をこそ切り裂きましょう』
 白が放つ光の乱流を、カタストロフィは座ったまま刃を立てて切り裂いた。
 半減させるが完全には防御できない。
 否、それは防ぐことで、何より大切な時間こそを稼いでいるのだ。
「だからといって……世界の悪夢を晴らすためにも、負けられないんだよ……」
「ん。どかーん」
 それほどの相手ゆえ、シェミアは祝福を仲間達にもたらす為に祈り続ける。
 勇名はその意志を汲んで言葉少なに頷いた。
 砲撃態勢で豪砲を放ち、防がれはしても、後の戦いに備えて攻撃し続ける。
「自分の為じゃねえ。誰かの為の戦いってのもあるもんだぜ」
『それはこちらとて同じこと。役割こなし繋ぐことが我らの役目』
 モンジュは大弓を構えて意志を射志に変えて撃ち放つ。
 似ているのかな……と思いつつも、似て非なるモノをモンジュは感じた。

 やがて転機が訪れる。
 長い様で短い時間過ぎた時、駆け付けたのはケルベロス側だった。
「カタストロフィ、貴様の最期を以てダモクレスの終末の始まりとする……!」
 龍造寺・隆也(邪神の器・e34017)の放った黄金の輝きが先触れだった。
 万象一切を破壊せんが如く、煌めきが戦線の崩壊を告げる。
「待たせたな」
「二十分! このペースならば行けるはず」
 一歌は混沌の水を呼び込み仲間達の力を開放して行った。
 定めからは逃げず、その運命を加速する為にこそ力を振るう。
 増殖したナニカは障壁の厚さを物語り、敵や歯車を覆っている。
 だが二十名を越えるケルベロスの力が、数分を掛けて少しずつ削って行った。
「二十五分!」
「届け、僕の愛! La……♪」
 何人かが腰を据えて攻撃すべく専念し始めて行く。
 経過する時間の中で、白はまだか……。と焦りを覚えるが、自分たちならばやれるとシャチの精霊・ジェニファーを憑依し、超音波を浴びせた。
『好機はここですか』
「そんなの無いっすよ! えみかごとやるっす!」
 何度も膝をついては立ち上がり、えみかは咆える。
 腹を切り裂く刃は痛い、しかし、自分を攻撃して居ると言うことは回復に力を注いでいないと言うことだ。
 そして最後の時間がやって来る。
 歯車狙いに変えた者も、あと数撃とあってまずはカタストロフィに絞った。
「光よ、かの敵を束縛する鎖と為れ!」
 イリスの剣閃は降り積もる雪の如く。光が光を狩り、少しずつ奴のチャンスを削る。
 これまで技を重ねた成果もあり、カタストロフィとて全てを防げはしない。念動防壁も既に割れて無くなり……三班の攻撃は、外れる方が珍しくなっていった。
「終焉に頭を垂れよ……驕れる巧者の不遜を、焔で禊ぎ祓うは今。天に輝く七の星を見よ……オマエに死を告げる赫赫たる星こそが我!」
 ウォリアの分身たちは槍や長巻を手に、動きを止めたカタストロフィへ攻め掛る。
 それを光の剣が弾く様はまるで時代劇で悪党を捕まえるかのようだが、大剣が押し切って貫いた後に炎と化して消えた。
「皆、済まぬ。あとは、任せたぞ。動き出した歯車を止めてはならぬのだ……」
 嗄れた声で呻いたのを最後にカタストロフィは立ったまま息絶えた。
 儀式発動まで時間も無く、一同は玉座であった歯車を破壊。
「東京湾を明け渡す訳にはいかない……バックヤードごと、この地に沈め……! 浄化の輝き、悪しきを穿て……!」
 シェミアは閃光の中で歯車だけでは無く、要塞そのものが崩れて行くのを感じた。
 崩壊を始める中、ケルベロス達は手近な場所に穴をあけて脱出を決意。
「さようなら。もうひとりのイサナ」
 勇名はぽつりと、その消えゆくクジラ……勇魚とも呼ばれた姿に声を掛ける。
 パーツがバラバラに飛び去っていく姿は、戦いに終わりを告げるかのようであった。

作者:baron 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年12月7日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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