終末機巧大戦~大地を食らうモノ

作者:なちゅい

●ダモクレスの『終末機巧大戦』
 ヘリポートへと着地してきたヘリオン。
 その中から現れた、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が集まるケルベロスへと軽く手を振る。
「皆、お疲れ様。東京六芒星決戦も勝利できて、喜ばしいことだね」
 この戦いによって死神の野望を砕き、十二創神のサルベージという最悪の事態を防ぐ事が出来た。
 だが、安心するにはまだ早い。
 東京六芒星決戦に参戦しなかったダモクレスの軍勢が、儀式失敗によって行き場を失ったグラビティ・チェインを奪った大儀式、『終末機巧大戦』を引き起こそうと動き出したのだ。
「この大作戦を率いるのは、『五大巧』と呼ばれる五体の有力ダモクレスだよ」
 『五大巧』達はディザスター・キングの指揮によって『六芒星決戦』に参戦する筈だった戦力を支配下に収めると、死神を裏切って儀式への増援を拒否。彼らはその戦力を温存して、今回の作戦を強行したようだ。
「既に、晴海ふ頭は中央部に出現したバックヤードを中心に、周辺の機械や工場などを取り込んでダモクレス化してしまっているよ」
 更に、爆殖核爆砕戦で攻性植物が行った『はじまりの萌芽』を模した大儀式『終末機巧大戦』……核となる『6つの歯車』を利用した儀式を行う事で、爆発的に増殖させ、東京湾全体をマキナクロス化させるのが目的と思われる。
 『終末機巧大戦』を阻止する為には『核となる歯車』の破壊が必要なのだが、儀式は巨大な拠点型ダモクレスの内部で行われる。破壊するには拠点型ダモクレスの内部に潜入する必要がある。
 終末機巧大戦の儀式は、晴海ふ頭外縁部でなければならないらしい。儀式開始と同時に侵攻を開始するので、そこを急襲して儀式を阻止する事になる。
「敵が侵攻を開始してから儀式が発動するまで、30分しか時間の猶予が無いんだ」
 30分以内に敵拠点に潜入し護衛を排除し、儀式を行っている指揮官ダモクレスの撃破か、儀式の核となる歯車を破壊しなければならない。
 儀式の破壊に成功した分だけ、終末機巧大戦の被害を抑える事が出来るだろう。
 儀式が全て完遂されれば東京湾全体が敵の手に落ちるが、全て阻止すれば、晴海ふ頭中心部のみの被害で抑える事が出来る。
「厳しい状況だけど、今回も皆の活躍をボクは祈っているよ」

●担当地域と役割分担
 まず、作戦目的は、儀式の核となる歯車の破壊。或いは、儀式を行っている指揮官ダモクレスの撃破だ。
 核を破壊する場合『部位狙い』による攻撃で大ダメージを与える事が必要だが、指揮官を撃破するのに比べれば難易度は低くなるということを頭に入れておくといいだろう。
「作戦の状況に関わらず、作戦開始後30分で、晴海ふ頭を中心に儀式が開始されてしまうよ」
 全ての核が破壊されていても最小範囲での儀式が発動し、今回の戦場となった拠点型ダモクレスは儀式の一部として捧げられて破壊されてしまう。それもあって、状況に関わらず事後は撤退することになる。
「こちらは、第二の儀式場、『先行班』を担当することになるよ」
 役回りとしては、『拠点型ダモクレスと交戦し、突入班となる3班の支援』と『防衛ダモクレスの増援を足止めすること』だ。
 まず、拠点型ダモクレス、アースイーター・ブロークン。
 晴海ふ頭から勝鬨橋を侵食して晴海通りに侵攻した液体金属型ダモクレスで、隅田川沿いのビル群を喰らいながら無限増殖を繰り返している。
「拠点型ダモクレスを戦闘不能に追い込んだ後、迷宮と化す内部をうまく攻略しながら進む必要があるよ」
 中枢に向かう突入班の方へ、増援……防衛ダモクレスのメックカストが行かぬよう足止めを行うことになる。
 なお、こちらで援護する突入班の相手となるのは、第二の儀式場の指揮官ダモクレス、『終末機巧』アルマゲドン。護衛ボスとしてはミス・リージョンがいる。

●敵能力と状況
「続いて、第二の儀式場、『先行班』で担当する敵の能力だね」
 拠点型ダモクレス、アースイーター・ブロークンは周囲のビルなどを飲み込み続けているが、戦いにおいても液体金属の身体を活かし、クラッシャーとして飲み込み、粘液弾、リキッドウイップ、増殖といったグラビティを使用してくる。
 この拠点型ダモクレスを戦闘不能に追い込んでから内部へと突入、疲弊した状態のままで防衛ダモクレスのメックカストを中枢へと行かせぬよう相手しなければならない。
 こちらは、レプリカント、ガトリングガン、バスターライフルのグラビティを個体ごとに3つ使うようだ。

●作戦に臨むケルベロスに……
 こちらで担当する内容としては以上だ。
「ダモクレスだけは死神の大規模作戦に参加しなかったわけだけれど……、これだけの儀式を用意していたとはね」
 儀式を阻止するか、敵指揮官の撃破を優先させるか。
 それは各儀式場の突入班に委ねることとなるが、掲示板などで自身の意見を出してもよいだろう。
「死神のネレイデス勢力、エインヘリアルの第二王女の軍勢、それに竜十字島のドラゴン勢力……他勢力の動きも気になるけれど、まずはこのダモクレスの儀式を対処しないとね」
 1つずつ各勢力の動きに対応し、地球への侵攻の手を防いでいきたい。リーゼリットはそう告げ、説明を終えたのだった。


参加者
神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)
端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)
コール・タール(マホウ使い・e10649)
ゼラニウム・シュミット(決意の華・e24975)
魅黒・神影(闇夜を駆ける星に願いを・e39259)
彩葉・戀(蒼き彗星・e41638)
夜巫囃・玲(泡沫幻想奇譚・e55580)

■リプレイ

●第二の儀式場
 晴海ふ頭外縁部。
 ダモクレス勢力は『終末機巧大戦』の為、ここに6つの儀式場を置いている。
 各儀式場にある『核となる歯車』を破壊を目指し、ケルベロス達は次々に降り立っていく。
 こちらのメンバーが目指すのは、その2つ目。
 晴海ふ頭から勝鬨橋を侵食して晴海通りに侵攻した液体金属型ダモクレス内部にある第二の儀式場の中枢を、5チームが目指す。
「先の戦いに引き続いてだけど、気合い入れていくぜ。心置きなく新年過ごすために!」
 なお、そんな神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)はクリスマスなど知らないと強がっていた様子である。
「ダモクレス共……動きがないかと思えば、まさか斯様なことを企んでいるとはのぅ」
 さすがは無機物無感情の集団と彩葉・戀(蒼き彗星・e41638)は舌を巻く。
 強敵に違いないその集団の目論見を止めるべく、戀も依頼の完遂に意欲をみせる。
「師団で馴染みの神影の宿縁と聞いて!」
 端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)が名指しした本人、魅黒・神影(闇夜を駆ける星に願いを・e39259)は緊張と恐怖の為か身体をこわばらせて。
(「必ず……生き残るんだ」)
 そんな決意を固める初陣の神影がこわばらせた身体を、括がもふもふとほぐそうとする。
「わしがついておるのじゃから大丈夫、なのじゃ!」
 それに、東京湾の魔力の元……東京六芒星決戦において、死神勢力が奪ったグラビティ・チェインを想えば。
「……悪用なぞ、させるわけにいかぬからの」
 小さく呟いた括は仲間と共に、儀式場に向かう突入チームの支援へと当たるのである。

 ケルベロス一行は程なく、それと直面することとなる。
「随分と大きなブラックスライムですね」
「怪獣映画みたいだな~。サイズ差がインチキだ!」
 ゼラニウム・シュミット(決意の華・e24975)、ペスカトーレ・カレッティエッラ(一竿風月・e62528)が、肥大化し続けるダモクレスを見上げる。
 液体金属を思わせるダモクレス、アースイーター・ブロークン。この地の拠点となるダモクレスだ。
 ドロドロとした液体は見る見るうちに、街を自らの体内へと取り込んでいく。
「うーん、名状しがたいこの流動体。見てるといい感じに精神削れるね、けひひっ」
 お面を被った夜巫囃・玲(泡沫幻想奇譚・e55580)が笑うと、コール・タール(マホウ使い・e10649)は液体だろうと関係ないと切り捨てて。
「グラビティがぶち込めれば、形無くともダメージは通る」
 そうでなくとも、凍らせてから端から削れば問題ないだろうと、コールはこの巨大な相手の攻略法について語る。
 ここまで膨れ上がったダモクレスを前に、神影は一言。
「やぁ、久しぶり……。ぶっ壊れたボク」
 神影の挨拶が聞こえたのか、敵はボコボコと小型のスライムの塊を土塁の如く出現させ、ケルベロス達の侵攻を防ごうとする。
「さて、ではいきますか」
 ソッとお面を外した玲が微笑みかけると、ペスカトーレも八重歯を見せつつ正面のスライム群へと攻め込む。
 まずは邪魔な障害物の排除をと、メンバー達はグラビティを発して小型スライムを蹴散らしていくのである。

●アースイーター・ブロークン
 ケルベロス達は邪魔な小型スライムを排除しながら、敵へと近づいていく。
 敵も埒が明かないと感じたのか、纏まった個体を分離させて一行の前へと壁のように立ち塞がらせてきた。
 気付けば、先行班2チームは障害物となるスライムによって分断され、ほぼ両サイドから攻める状況。
 その上で、アースイーター・ブロークンは頭上からケルベロスを飲み込もうとしてくる。
 前に出る括が抑えに当たる後ろから、戀が叫ぶ。
「ほれ、征くのじゃ。妾の忠実な下僕共!」
 戀の体から飛ぶオウガ粒子は、仲間達の感覚を覚醒させる。
(「気負う事は無い。いつも通りにやればいい」)
 ――単純だ。敵は殺し、味方は活かす。
 高く跳び上がったコールはまず、流星の蹴りを空属性を宿す靴『輝空脚アイテール』で強く蹴り付け、相手の動きを制しようとした。
 さらに、瑞樹は取り出した『キマイラテックカード』から氷結の槍騎兵を呼び出し、突撃させていく。
 僅かに怯む敵へ、ペスカトーレはルアーを変形させて毒針を持ったウニを召喚する。
「前も左右もどしゃ降り注意、針が降るぞ毒針降るぞ!」
 ペスカトーレがけしかけたウニは回転しながらダモクレスへと毒針を浴びせかけていき、治癒力を大きく減衰させる。これで僅かでも、増殖の効果を食い止められるはずだ。
 そうして仲間が抑えているアースイーター・ブロークンへ、玲が素早く迫る。
「ねぇ、知ってた? 冥界にも雨は降るんだって」
 妖力を纏う禍刀【名残鳥】を抜いた彼女は目の前のダモクレス目掛けて、幾多の鮮烈なる斬撃を浴びせかけていく。それはまるで、打ちつける冥界の雨のようだ。
 その雨を一度降らせた玲が身を引いて距離をとると、盾として布陣するゼラニウムも壁のようなスライムを見上げる。
 すぐさま彼女は構えた盾にセットしたアンプルを下部の砲口から発射し、スライムの治癒能力を阻害しようとしていた。
 相手の初撃を堪えた括は、『霊振りの巫銃』と『てのひらの防衛艦隊』の2挺の拳銃を構え、素早く発砲して伸びようとしてい液体の鞭を撃ち抜いていく。
「…………」
 順調に仲間達が攻撃する中、神影は装備したグラビティに難を覚えていたらしい。
 半数が想定と違った状況の中、彼女は止む無く御業を使って炎弾を発射する。
 さらなる緊張を覚える神影は、立ち塞がるアースイーター・ブロークンの液体鞭に打ちつけられてしまうのだった。

 正面から突入班が見守る中、先行班2チームはアースイーター・ブロークンの活動を止めるべく、攻撃を繰り返す。
 相手の増殖を止めようと、ペスカトーレはウニの毒針をスライムに食い込ませていく。
 その間、ゼラニウムや括は相手が広範囲に発砲する粘液弾を浴びながらも、戦線を持たせる。
 ゼラニウムが両腰から生やす銀の蟻の足。それは、蟻型オウガメタル『エルピス』だ。
「エルピス……皆に力を」
 それに答え、エルピスは周囲へと癒しの粒子を飛ばしてくれる。
 括はというと、もう一方の先行班メンバーを気にかけていたが、逆側にいることもあって支援が難しい。
 離れずに戦えれば良かったが、さすがに敵もこちらの思惑通りにはならないということだろうか。
 この場は、自チームメンバーのカバーに注力する括は相手の気を引きつつ、二挺拳銃からの発砲と前方に紙兵を撒いて仲間を護らせる。
 皆を、神影を護ろうと、括も奮闘する。
 その神影は想定と異なる状況に、かなり苦慮していた。
 相手の抑えを御業で代用させ、その炎弾と自らが発するエネルギー光線で相手を弱らせようとする。
 もちろん、アースイーター・ブロークンもケルベロスを退けようと激しく抵抗し、しなる液体金属の鞭で広範囲のメンバーを捕えてしまう。
「ここで一つ、お聞きあれ。幻想曲」
 戀は金属の鞭に絡まれる仲間の拘束を解くべく、星々の儚き光を歌う。
 その間も、ケルベロスの攻撃は続く。
「――暴虐の凶顎は、欲望のままに貪り、無辜の血肉を無益に散らす――」
 十文字槍の形状にした機械槍を携え、コールは前方へと跳ぶ。
「――嗤え――」
 チェーンソー状の刃が、液体金属の身体を切り裂いていく。
 彼の渾身の一撃によって、スライム外壁は大きく変形し、その身を怯ませてしまう。
 瑞樹はすかさず、内部の儀式場を目指す突入班の為にと赤い信号弾を発射する。
 程なくして駆けつけた3チームは突破口を造るべく、正面からスライム外壁へと近づき、グラビティを使ってその壁を掘り進め始めた。
 降下開始より9分後。
 増殖しようとする液体金属の塊に対して、バトルオーラを纏う瑞樹が音速の拳を叩きこむ。
 すかさず、玲が刀を抜き、目にも留まらぬ速さで相手の巨体を切り伏せた。
 その直後、身体を維持できなくなった液体金属はついに、爆ぜ飛んでしまう。
 スライム外壁の消滅を確認し、突入班は中枢を目指して進んでいく。
 こちら先行班も別班と合流の上で突入していくのだが、括が周囲に散らばる液体金属を少しだけ回収する。
 神影もまた、動きを止めたスライムを見詰めて。
「少しだけだけど、返してもらうよ」
 彼女はコアの一部分を回収してから、先を行く仲間を追いかけるのだった。

●ダモクレス、メックカスト
 突入班を追う前に、一戦を乗り切ったメンバー達は各自ポジションチェンジを行って態勢を整える。
 盾役を請け負うのは、瑞樹、戀、体力を残すコール。
 火力役には玲が引き続き当たり、神影、ペスカトーレが阻害役。ゼラニウムが回復役、括が狙撃役として後方支援に当たる。
 さて、アースイーター・ブロークンの内部は迷宮と化しており、ゼラニウムや括は照明、ワイヤーラダーを駆使して先へと進む。
「う~ん。成長変化する迷宮、ある意味合理的なのかなァ。手がかかる手合だネ」
 ペスカトーレが言うように迷宮はかなり複雑な構造をしているが、こちらの先行班は基本追いついた突入班についていくスタンス。
 先を行く仲間がつけた方向が赤い印を避け、中枢を目指す。
 しばらく進み、三叉路に差し掛かったところで、虫人間のような形をしたダモクレス、メックカストの群れが一団を遮る。
「どうにも、虫と縁がありますね……」
 ゼラニウムが群がる虫の群れに対し、すぐさま構えを取った。
 さらに後方からも、多数のメックカストがこちらに近づいてきている。
「守りは不慣れだが、やってやる」
 こちらのチームの役目は突入班の支援。彼らが心置きなく戦えるよう雑魚を散らすこととコールは告げる。
 その上で、コールはガジェット『不明戦具アデル・CC』から自らに金属片を含む蒸気を吹きつけ、火力となる敵から流星のごとく蹴りかかっていく。
「皆さんも、どうかご武運を――」
 そんな突入班の1人の声を聞きながらも、玲、神影もまた、中枢を目指す3チームの方へとこの虫どもが近寄らぬよう蹴散らすべく、身構える。
「さあ、後詰のお仕事。何がなんでも守り切るヨォ!」
 大声で叫ぶペスカトーレは周囲へとヒールドローンを展開し、長期戦に臨む。中枢での戦いを考えれば、おそらく10分程度はこの場を持たせなくてはならない。
 回復役となるゼラニウムはオウガ粒子を振り撒き、前線の仲間達を支える。
 何せ敵は背後からも尽きることなく現れ、全身から発射するミサイルやエネルギー光線で中枢で戦う突入班を襲おうとしてくるのだ。
「私は……癒す側の立場なのだから……、その決意を今此処に!」
 ゼラニウムは細かく状況を見定め、傷つく仲間を救う強い意志を決意……ゼラニウムへと変えて。
「『決意の華冠』!」
 決意の華を依代にし、ゼラニウムは戦う仲間達を癒しの光で包み込み癒しへと当たり続ける。
 括は両手の拳銃で、敵と地面に発砲していく。
 グラビティによって撃ち抜いた2点の縁を括りつけ、彼女は相手の足を止める。
 敵はそこで、山の幸の幻影を見出して。
「ひふみよいむな。葡萄、筍、山の桃。黄泉路の馳走じゃ、存分に喰らうてゆかれよ」
 美味しそうな食べ物に、メックカストは思わず足を止めてしまう。
 盾役となる戀は仲間の支援に当たるが、そのグラビティはほとんど使役するエネルギー体任せ。
「ほれ、ダモクレスを近づけさせてはならぬぞ」
 戀の指示で動くエネルギー体はゾディアックソードを操り、守護星座を描いてこの場のメンバー達を光で包み込む。
 支援を受けつつ、同じ盾役の瑞樹は果敢にメックカストへと攻め込む。
「これでも喰らえ!」
 近場の敵1体を見定め、瑞樹は相手の経絡を狙って連続回転蹴りを食らわせていく。
 この場のメックカストを抑えるという役回りに強く責任感を抱く瑞樹はさらに、エクスカリバールを手に殴りかかっていった。
 その後ろでは、神影がここでもグラビティのやりくりに頭を悩ませる。
 しかしながら、死力を尽くして戦う仲間達に支えられ、彼女も襲い来るメックカストの足を止めていた。
「グリムさん……力を貸して……『アースイーター』起動シーケンス開始……!」
 神影の言葉に応じて現れるは、大量の液体金属。
 自らの意思で周囲のごく一部分を操り、彼女はメックカストの殲滅へと当たる。
 とはいえ、それも一時的なもの。液体金属はなおも、肥大化を進めようと動き始めていた。
 抜刀した玲は目の前のダモクレス達へと斬りかかり、刃の雨で攻め立てていく。
 メックカストは射撃メインの個体が多いこともあり、玲は個別に近づいて相手を切り伏せていたようだ。

 いくら倒しても、押し寄せてくる虫の兵隊達。
 アースイーター・ブロークン戦での疲労が重なる中、メンバー達は決死の想いで戦い続ける。
 相手へと蹴りかかり、この場から逃がさぬよう抑える瑞樹。
 喰霊刀『禍刀【名残鳥】』で、玲は呪詛を載せた斬撃を浴びせかけ、1体、また1体と切り伏せる。
 敵の銃弾やエネルギー光線を受け止めるコールは、徐々に回復へとその手数を費やすことになる。
 戦線維持の為、戀も使役するエネルギー体に指示を出して仲間を癒すが、それでも彼女もまたかなり疲れを見せ始めていた。
 刻々と過ぎ行く時間。
 中枢はどうなっているのかなど、メンバー達に確認する余裕もない。
 ゼラニウムが右人指し指を使い、仲間の傷口を魔光手術で塞ぐ。
 再度、液体金属を呼び寄せる神影。回復に回りたくとも、ヒールグラビティがないことを悔やみつつ、この場を持たせようとする。
 息つくペスカトーレも攻撃の手を止め、気力を発することで戦線を持たせ始めていたその時だ。
 降下から24分。
 地鳴りと共に真白き光が儀式場を包み込む。突入班がアルマゲドンの歯車を破壊したのだ。
 メックカストを相手にしていたメンバー達は目的を果たした突入班の姿を認め、笑顔と安堵の表情を浮かべながらも撤退へと転じるのだった。

●機械化する街からの脱出
 第二の儀式場の対処に当たっていたメンバー達は急いで、この場から脱出する。
 流体金属が溢れ出し、瞬く間にケルベロス達の後方を機械化していく。
 元々、ケルベロスに与えられた猶予は30分。もう時間はそれほど残されてはいない。
「まだ、お疲れ様とはいかぬようじゃの」
 戀が逃げる最中、ややげんなりした様子で呟く後ろ。
 神影は蠢くちっちゃな流体金属を握りつつ、機械化していく街から逃れるようにして仲間の後を追っていくのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年12月7日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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