廃工場に咲くコスモス

作者:ほむらもやし

●予知
 背振山から吹き下ろす風が咲き乱れる紅やピンク白のコスモスの花を揺らしている。
 風は冷たくて、まだ陽が高いのに、肌を締めるような寒さ感じさせる。
「工場は潰れてしまったけれど、コスモスは毎年変わらずに咲くよね」
「……信一君。他人事の様に言うのね。単刀直入に言えば、あなたが後を継いで工場を大きくするぐらいの気概は欲しかったのだけど」
 本音だけど、冗談よ。
 と、意地悪く睨みつけながら、掃除ぐらいは偶にしているけれど、此処もだいぶ痛んで来たと肩を竦める。
 コスモスは既に見頃を過ぎているようで、花に混じって沢山の種を蓄えているようだ。
 姉は、小さな子どもの頃を思い出したかの様に、揺れるコスモスの中へと駆け出す。
「姉さん! 逃げろ!!」
「へ……?」
 数秒後、あまりに鋭い、弟の声に立ち止まり、姉は首を傾げるが、時既に遅く、巨大な毛玉のような塊となった攻性植物に飲み込まれてしまう。
 攻性植物は周りのコスモスをどんどん飲み込んで瞬く間に巨大な塊に変わる。
「何の、冗談だよ。雫、姉さん」
 弟にはどうしたら良いか分からず、スマートフォンを握りしめるしか出来ない。

●ヘリポートにて
「攻性植物と化したコスモスに宿主にされる者が発生する」
 日下・魅麗(ワイルドウルフ・e47988)が心配していた、攻性植物の事件が起こると、ケンジ・サルヴァトーレ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0076)は告げる。
 宿主にされた被害者の青年は、。
 攻性植物は周囲のコスモスをも巻き込んで巨大な球状をしている。
「諸君にお願いしたいのは、この攻性植物の撃破。数は1体のみで、配下など味方する戦力はいない」
 現地到着は雫(しずく)と呼ばれる姉が攻性植物に取り込まれた直後。
 即ち、ヘリオンから降下して、すぐに戦闘が可能である。
「今回の依頼でも、攻性植物の撃破だけで成功と見なす。――だけど通常の敵と同じ様に攻撃して普通に撃破すれば、攻性植物に取り込まれて一体化している被害者も一緒に死ぬから注意して。被害者を助けるなら、敵にヒールグラビティを掛けながら戦う必要がある。そうすれば戦いが終わった後で救助できる見込みもある」
 但し、闇雲にヒールを攻撃を交互にすれば良いというわけでは無く攻撃とヒールのバランスが重要になる。
 戦闘中のダメージにはヒールで回復可能なダメージと戦闘中のヒールでは回復できないダメージの二種がある。
 二種のダメージの内、回復可能なダメージを敵にヒールを掛けることで回復させて、回復出来ないダメージのみを攻性植物に蓄積させ、耐久力の上限を慎重に削り続けるというテクニックを使えば、今回の攻性植物に関しては、敵のみを撃破し、取り込まれた被害者を助けられる。
「最高の結果を目指すには手間も意志の統一も必要だ。時間も相当掛かるから、諸君が敗北するリスクも大きくなる。だから絶対に救助すしてくれ、とまでは言えない。だから作戦は任せる」
 ただ可能性があるのなら、出来れば、力を尽くして欲しい。
 そう祈りを込めて、ケンジは出発の時間を告げた。


参加者
星詠・唯覇(星天桜嵐・e00828)
ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)
据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)
ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)
比嘉・アガサ(のらねこ・e16711)
六・鹵(術者・e27523)
香月・渚(群青聖女・e35380)
日下・魅麗(ワイルドウルフ・e47988)

■リプレイ

●助ける為の戦い
 寂れた工場に響くのは、獣の如き咆哮と狼狽える男の声。
 ヘリオンから飛び出た、日下・魅麗(ワイルドウルフ・e47988)の眼下に、周囲のコスモスをどんどん巻き込んで大きくなって行く攻性植物と、その前に立ち竦んでいるひとりの男が見えた。
「た、大変だ。ねえさんを、どうすれば……」
「早く逃げて! 大丈夫。絶対に私たちが助けるもん!」
 自分では解決できない自分の問いに思考と行動を停止させていた男に頭上から最適解の一つが告げられる。
「姉上殿は拙者達が救うでござるよ。お主が此処に居ると、とても戦いにくいゆえ、今は身の安全を優先するでござる」
 周囲をふわりと包むピンクの霧、ラブフェロモンの気配と共に、ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)が語りかける。男は冷静な思考を取り戻し、自身では攻性植物に対して何も出来ない事実を認めた。
 姉弟の名前は事前に知らされている。
 細かいことかも知れないが、救助の場面では名前で呼ばれれば安心感が増す。
 特別な技を使わずとも、言葉に名前含めるだけで、支援者が状況を詳しく知っていると伝わることもある。
「信一、安心、して。雫のことは、必ず、助ける、から」
 そう告げて、六・鹵(術者・e27523)は男を背に守るようにして未だ膨張を続ける攻性植物の前に立つ。
 続けて、星詠・唯覇(星天桜嵐・e00828)が男への守りを重ねながら避難を促すと、機を合わせるようにして、ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)が、『詰所付近のヒマワリ』と名付けた攻性植物を蔓触手形態と変えて、牽制の一手を放つ。
「この元気なヒマワリを躱すとは、生まれたばかりとはいえやりますね」
「雫さんは、必ず助けましょう。この事案、私も手遅れにはしたくありませんからな」
 顔はコスモスの攻性植物の方に向けたままで、据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)はまるで孔雀の如くに赤い翼を広げて威嚇すると、天に向かって矢を射放つ。
 矢は鋭い放物線を描いて飛翔し、妖精の加護と祝福を孕んだ祝福を後衛の一群にもたらした。
 周囲のコスモスをあらかた巻き込んだ攻性植物の膨張は止まるが、向けられる殺気の鋭さは増すばかり。
「さあ早く。あたしたちがお姉さんを助けるから信じて待ってて」
 鉄茨で描いた魔方陣の加護を発動した、比嘉・アガサ(のらねこ・e16711)の声も聞こえた。何人ものケルベロスたちに約束をされて、信一は姉の受難に心を痛めながらも、心強さを感じた。
「さぁ、行くよ、ドラちゃん。援護は任せたからね!」
 唯覇に導かれて共に建物の影の方へと走り去って行く男を刹那、見遣ると、香月・渚(群青聖女・e35380)は『ダメージを与えつつ、ヒールも行う。ヒール不能ダメージのみを徐々に蓄積させて、それが充分溜まったら止めを狙う』と、戦いの方針を心の中で呟いて確認した。
 実際、攻性植物に取り込まれた者の救助には死亡事例も少なくない。誰にだって不安はあるが、自分の行動は他人任せには出来ないし、起こってしまったことは自分で背負わなければならない。
「攻性植物、本当に、毎回、厄介。でも、僕たちなら、助けられる、から」
 短い言葉に意思を滲ませて、鹵は魔法の力を脚に込める。そこから間合いを詰めて鋭い踏み込みからの高速蹴りを繰り出した。
 絹を裂く様な悲鳴が響き渡る。攻撃が大きくなりすぎない様にと気をつけたつもりだったが、クラッシャーというポジションは巨大なダメージを生み出す。
 現時点で攻性植物へヒールを掛けると明言しているのは4名。特にジャマーのポジションから繰り出す共鳴ヒールは取り込まれた被害者の救助には欠かせない。真に有効で具体的な一手は長く語らずとも体現される。
「辛いでしょうが、少しの間堪えてください。ケルベロスが貴方を助けます」
 必ず助けると決めたのだから、どんなことをしてもやり遂げる。と、決意と共に姉弟につながる人々に思いを至らせた赤煙は渾身の癒術を繰り出した。敵に施すには勿体なく思えるほどの、強引な鍼治療の如き緊急施術は、彼自身の技量も手伝って莫大な癒やしをもたらした。
「さて、ここからが本番、長丁場となるでござるからな」
 戦いはまだ始まったばかり、敵の攻め手を封じて行かなければ、此方が危なくなる。ルーンアックスを片手で構え直すと、ラプチャーは激しい動きで少しずり下がった眼鏡の位置を無意識の所作で戻して視界のピントを合わせた。
 攻撃を受けるたびに憎悪と敵意を露わにして、攻性植物は自分の身体を大きくしようとしているように見えた。そして女の悲鳴の如き咆哮は被害者を苦しめているような気がして、心地の良いものではなかった。
「仲良しの姉弟の間を引き裂くなんて許さないよー!」
 悪い空気を吹き飛ばすように、かつ圧縮してなお巨大なエクトプラズムの霊弾を気合いで当てるが為に、魅麗は声を張り上げる。近くで聞けば鼓膜が痛くなりそうな大声に導かれるように霊弾は飛び行く。
「行っけーぇ! あいつの動きを止めろー!」
 命中と同時に砕け散る霊弾、荒ぶる攻性植物の動きは激しさを増す。
 渚が足止めを狙って、流星の輝きを纏った蹴りをたたき込み、機を合わせた様にして鹵の詠唱によって描かれた魔方陣の扉が開く。
「囁き、返す、異界の、使者、触れる、落ちる、腐り、たもう」
 直後、扉から噴き出た異界からのおぞましき触手は攻性植物を捉え、巨大な球形の身体をずぶずぶと刺して貫き通す。
 確かな手応えが伝わってくる。赤と黄緑の混じった様なゲル状の液体をボタボタと零しながら、攻性植物はまたしても女の悲鳴の如き咆吼上げながら揺らぐ。そのダメージが想像していた以上に大きそうだと察知して、慌てたようにロベリアは緊急の癒術を発動する。
「今はこれで頑張ってください」
 静かな声色に気迫が滲む。被害者の命を守る。騎士としての存在理由は絶対に譲れないものだ。重なる共鳴、爆発的に発生した癒力により、数え切れない程の孔を穿たれた攻性植物の見た目は急速に修復され、それでも回復しきれないダメージは攻性植物が自身で癒術を発動する。
 そんなタイミングで、虹色の輝きが空から降ってくる。避難を終えて戻って来た唯覇である。
 次の瞬間、高い衝撃音が響き渡り、間を置かずにテレビウム『カラン』が顔から閃光を放つ。
「コスモス自体は嫌いではないのだが、人々を苦しめる攻性植物は土に還ってもらおうか!」
 戦況は明らかに此方が優勢だ。もはや負けることは無いだろうと知ると、唯覇は慎重に戦おうと、テレビウムにも注意を促した。
 力ない人々を守る。一つでも多くの命を護る。今度は敵が得たBS耐性を打ち破ろうとロベリアは太陽の剣、獅子王を握る手に力を込める。
「騎士の誇りに懸けて全力をつくしましょう」
 赤黒く煌めく剣の先端に守護星座の重力を宿す。ロベリアは至近距離では壁のようにしか見えない攻性植物を目がけて重い斬撃を振り下ろし、その守護を破壊した。
「すぐに癒やしますぞ」
 落ち着いた口調で告げて、赤煙が走り出る。
 この日何度目かの、ウィッチオペレーションは絶大な癒力を発揮した。攻性植物から救助をする戦いでは、癒力が攻撃力を上回ること、慎重さを持って当たる必要がある。
 その確信を持ちうる手練れが揃っていたことが、今回の事件における僥倖であった。
「これが拙者の気持ちでござるよ……自身の行いを振り返りながら切り刻まれろ、でござる」
 目の高さに構えた手の内に出現する鋭い刃、そして黒く変わり行く刃の先の敵を見据えながら、ラプチャーは踵を踏み込み、駆けて間合いを詰める。この黒の濃さも鋭さも全ては罪もない人を巻き込む攻性植物に向けたもの。直後、ど真ん中を狙い、両手で突き出した刃は巨体の外皮を破り体内深くにめり込んだ。
 攻撃に続こうとしたアガサの目の前で、巨体は転がるような動きを見せて、両腕が身体に突き刺さったままのラプチャーを強引に弾き飛ばした。
「心配はご無用、たいしたことはないでござる」
 その声に無言の頷きで応じつつ、更に守りを固めるため、アガサは中衛にも新たな加護を重ねる。
 次の瞬間、巨体の場所で剣が激しく肉を引き裂く音が響いた。
 返り血の如くに攻性植物の体液を浴びた渚の手に握られた断罪の戦鎌、その美しい弧を描く刃が命を吸い取って行くなか、ボクスドラゴン『ドラちゃん』が忙しなく支援に飛び回る様が鹵の目に映った。
 既にかなりのダメージを重ねているはず。刹那に判断すると、鹵は巻き起こした風と共に様子見の蹴りを繰り出した。
「難しい戦いだ。しかしやり遂げてみせる」
 唯覇は鹵に集中しがちな攻性植物の攻撃を自分に引きつけようと虹を纏う蹴りを繰り出すが、元々得意な理力に対して苦手な傾向にある頑健による攻撃のためか確実性は低かった。
「雫さんとの命を繋ぐ大自然の護りよ……」
 大自然との霊的接続を果たした魅麗はアニミズムアンクを掲げ、そして攻性植物を指し示す。
 枯れ色の目立っていた草むらを青白く輝かせて、共鳴を伴う莫大な癒力の奔流が、攻性植物に注ぎ込まれる。
 凶悪な姿を取り戻した攻性植物は、その巨大な球状の身体を転がすようにして襲い来る。
 次の瞬間、鹵の目に庇おうとしてくれた唯覇が地に押しつぶされる様が見えた。
「これしきの傷……たいしたことはない」
「もう大丈夫だから」
 身体を揺らがせて無理をしているように見えたが、間髪を入れずに、アガサが放つ清らかな癒しの青がその傷を瞬く間に消し去って行く。
「この飛び蹴りを、食らえー!」
 そうしている間にも渚は流星の輝きと共に鋭い蹴りを叩きこみ。赤煙が素早く手当をする。
「さあ元通りです。思う存分殴ってやって下さい!」
 被害者を決して傷つけることの無いよう、飄々とした眼差しの奥に冷徹な意思を込めて赤煙はウィッチオペレーション繰り出し続ける。その手に鍼のようなものが握られていた。
 癒やしの直後にタイミングを合わせてラプチャーが繰り出す黒い刃。細いが黒さを増した刃が巨体を裂き、斬撃の跡に見えぬ刃を生んで、積み重ねられたバッドステータスを花開かせる。それを機に鹵は踏み込み、暴風を巻き起こし、続けて唯覇が歌唱により雷雲を召喚する。
「その怒りにひれ伏せろ!」
 雷雲から放たれた強烈な電撃に焼かれて、攻性植物の巨体は白煙を上げながら揺らぐ。
 直後、ロベリアが繰り出す応急癒術の力に包まれて攻性植物は力を取り戻し、再び周囲の草むらを巻き込んで身体を大きくしようとする。
 思い通りにはさせない。一斉に攻撃を掛けようとする前衛のうち魅麗のタイミングが早かった。
「次、お願いします」
「分かったよ」
 獣化がもたらす斬撃の力に満身の力を乗せて、魅麗は攻性植物の真ん中のへそのような窪みに拳を叩きつけた。拳は攻性植物の身体に驚くほど簡単に突き刺さった。少しの間の後、魅麗は肩までめり込んだ腕を力任せに引き抜いた。
 伸びきっていたゴムが切れるように攻性植物の緊張が抜け落ちた。
 女の悲鳴のような音も聞こえず、廃工場のある風景を静寂が支配する。
 呼吸のたびに肩を上下させていた魅麗が、一息をついて顔を上げれば、自分の指先から肩までが黄緑のドロドロにまみれて青臭い匂いを放っていることに気がついた。

●戦い終わって
 長い戦いが終わり、あなた方は攻性植物の残骸のなかに被害者の女性の姿を見いだした。
 巨体はもつれた毛糸玉の如くに複雑に絡み合って異様な存在感を示していたが、不思議なことに女性を運び出して救助を終えると、その巨大な塊は、まるで氷が溶ける様子を早回しのフィルムで見ているかのようにして、小さくなり、程なくして何の変哲もない刈草の塊にへと変わった。
「良かった。これでもう大丈夫だよね」
 魅麗は目を覚ました被害者の女——雫にヒールを掛けつつ、事件のあらましを告げる。
 雫はしばらくの間、瞬きを繰り返していたが、心配そうな弟の顔を見て前後の記憶が繋がったのか、正常な意識を取り戻した。
「ありがとうございます。なんと感謝してよろしいものか……」
 被害に遭った直後という状況で身近なコスモスが突然に凶悪なデウスエクスと化す事象を誤解なく説明するのは難しく、無用な誤解と不安を煽ることにもなりかねないので、事件の背景は潜伏していたデウスエクスと不運にも遭遇してしまった程度に留めたが、姉弟ともに納得している様子だ。
「それにしても、あんなに可愛いコスモスが攻性植物になるなんて、本当にびっくりだよね」
 そう渚の言う通り、宝くじに当たるくらいの希な不運だったと考えるくらいに考えておけば不安になることもないだろう。
「これで、思い出のコスモスにトラウマが残らないと良いのでござるが」
「思い出、ですか……そんなたいそうなものではなかですので、お気になさらず」
 ラプチャーの気遣いに笑顔と感謝で返す雫だったが、その表情は暗い。
 なぜ自分ばかり不幸になる。
 口には出さないだけで都会で自立して、自分の家族を持っている弟にも怨嗟に近い感情を抱いている。
「災難でしたな。襲われたのが弟さんだったら良かったでしょうにね」
「あははは、面白かことば言いますとねー。ばってん、デウスエクスさんにも人を見る目があった。……そういうことでございますね」
 わざと意地の悪い言い方をする赤煙を、刺すような目線で睨み返しながら、雫は満面の笑みを作った。
「……姉弟仲良くされるとよろしい」
 あと10年か20年後か……両親を看取った後、雫に残されるものなど、少しの財産以外には何もないだろう。
「左様でござる、姉と弟の古き思い出に水を差すのは良くないでござるよね」
 なんとなく胸騒ぎを感じ始めたラプチャーが視線を逸らした先に、念のためと言って、警戒のため周囲を歩き回る唯覇の姿が見えた。
「じゃあそういうことで。これからは、二人にとっていい方向へ進んでいくことができるといいね」
 なんといえば良いのだろうか、信一さんは普通にしているのに、どうして雫さんは笑顔でこんなに怖い目をしているのだろう。アガサは不可解さに首を傾げながら、大きな問題は無いと思うことにした。
 そして、鹵はそっとしておいたほうが良いだろうと、口を閉ざしたままである。
 かくして、攻性植物の事件は終わり、山から吹き下ろす木枯らしのように一行は廃工場を後にする。
 去り行こうとする、ケルベロスたちの周囲の田んぼでは、来年の春に向けて播かれた麦が、青く、確かな、優しい芽吹きの顔を出していた。

作者:ほむらもやし 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。