木の葉集め

作者:雨音瑛

●かつての働き者
 真昼になっても薄暗く、静まり返った場所――たとえば、どこかの家の物置、その奥の奥。
 輝く宝石のような身体をした蜘蛛は物置の中を素早く移動し、ひとつの電化製品の中に入り込んだ。
 括り付けられた袋には穴が空き、本体の塗装はところどころ禿げているそれは、落ち葉掃除用のブロワだ。
 次の瞬間ブロワが震え、表面が金属で覆われてゆく。袋の部分も、だ。
 やがてブロワ全体ががっちがちに金属で覆われると、袋の下からローラーが現れた。
 もはやブロワとは呼べないそれはいっそ小さな戦車。つまり、ダモクレス。
 彼は物置の扉を破壊し、さらには塀をも破壊して道路へと飛び出した。
「ハッパ、スイコミマス! ハッパ、イガイモ、スイコミマス!」
「うわっ、なんだあれ!?」
「デウスエクスだ、逃げろ!」
 慌てて逃げる人々の努力も虚しく、ひとり、またひとりとダモクレスに吸引されてしまう。
 そうして幾人もの人々が吸引され、命を奪われ、グラビティ・チェインを奪われてゆくのだった。

●枯れ葉散る季節
 ぶかぶかの白衣の袖を捲り直して、左潟・十郎(落果・e25634)は口を開いた。なんでも、気になることがあったためヘリオライダーに予知を頼んだのだという。
「ある民家の物置で眠っていた、落ち葉掃除用ブロワがダモクレス化するらしい。幸いなことにまだ被害は出ていないが、このまま放置すれば多くの人々が殺されてしまうことは間違いない」
 今から向かえば、ちょうどダモクレスが道路に飛び出たところに駆けつけられる。ならば、ケルベロスが向かわない理由はない。
「戦場は、住宅街のある道路。時間帯は、午後1時頃ということだ。道路の幅は戦闘に充分だし、障害物も特に無い。あとは、周辺の人払いをしておくとより安心できるだろうな」
 戦う相手はダモクレス1体。落ち葉掃除用のブロワが変形した、戦車のロボットのような外見をしている。攻撃方法も、元となった電化製品に由来するものとなっているそうだ。
「まずは吸引する攻撃だな。これには、防御力を下げる効果があるらしい。次に、落ち葉を大量に吐き出す攻撃。こちらは落ち葉に何らかの力が込められているのか、麻痺を引き起こすそうだ。最後に、枯れ葉を固めて撃ち出す攻撃。これは、3つの攻撃の中でも比較的威力が高いということだ」
 加えて、状態異常の付与を得意としている個体だというから、少しばかり厄介だ。回復役も、的確に対処していく必要があるだろう。
「あとは……そうだな、実は戦場となる住宅街の近くに公園があるんだ。そこで、落ち葉を集めて焼き芋、なんてイベントが開催されているらしい。無事にダモクレスを撃破できたら、そちらで休憩するのも良いかもしれないな」
 そう話す十郎の眼前を、数枚の枯れ葉が飛んで行った。目を見開いた後、十郎はすぐに表情を緩める。まるで季節がケルベロスを呼んでいる、ように感じられて。


参加者
藤波・雨祈(雲遊萍寄・e01612)
アイヴォリー・ロム(ミケ・e07918)
羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)
藍染・夜(蒼風聲・e20064)
ジェミ・ニア(星喰・e23256)
左潟・十郎(落果・e25634)
ミレッタ・リアス(獣の言祝ぎ・e61347)

■リプレイ

●木の葉
 住宅街の道路に吹く風は、既に冬の訪れを予感させる。
 まばらに歩く人々が纏うのはコート、それにマフラー。身を縮ませながらも、ほんのり温かい陽光にどこかほっとした表情を見せる。
 時間は午後1時、特段急ぐ様子も見せない人々を、ぶかぶかの白衣を着た少年が呼び止めた。いや、少年ではない。小柄で童顔な小熊猫のウェアライダー、左潟・十郎(落果・e25634)だ。
「このあたりで、デウスエクスとの戦闘が始まる。念のため、避難してくれないか?」
「でもご心配なく、わたくしたちケルベロスにお任せください! 皆様の安全はもちろん、付近の『落ち葉を集めて焼き芋』イベントもお守りしますので!」
 胸元で握りしめた拳ふたつ、アイヴォリー・ロム(ミケ・e07918)の蕩けるショコラ色をした瞳に強い光が宿る。ふかふか光る自慢の羽も、ぴこぴこと動かしつつ。
「そうでしたか、ケルベロスの皆さんもお気を付けて!」
「ありがとう、慌てずにね」
 青みがかった銀の瞳を細め、藍染・夜(蒼風聲・e20064)は穏やかに告げた。
「では、人払いを行いますね」
「その後は、私が道路の封鎖を!」
 殺界形成を使用する羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)と、キープアウトテープを使用するミレッタ・リアス(獣の言祝ぎ・e61347)。
 念入りな人避けは、決して戦場に一般人を立ち入らせまいという強い意志ゆえか。
 不意に強く吹いた風で、ジェミ・ニア(星喰・e23256)の眼前に木の葉が舞った。ぴたり動きを止めれば、思考は焼き芋と秋の味覚に染められる。
「……いえ、まずは依頼解決を最優先で!」
 ぶんぶんと首を振るジェミ。その様子から、藤波・雨祈(雲遊萍寄・e01612)は彼の思考を理解した。
「だな。焼き芋を肴に酒盛りしよう。その為にも、さっさと片付けてしまわないとな」
 後ろ髪を結うのは、雨祈が本気モードである証だ。開店休業中の運び屋が、結った髪から手を離すが早いか。
 鈍い破壊音が聞こえ、続いて塀が崩れた。
 現れたるは、落ち葉掃除用ブロアと小さな戦車を思わせる形状のダモクレスだ。
「ハッパ、スイコミマス! ハッパ、イガイモ、スイコミマス!」
「えっ、葉っぱ以外も吸いこんじゃうの? お芋吸い込むのはダメなんだからねっ!?」
 ゴールデンタイガーの尻尾をぴんと立て、フリューゲル・ロスチャイルド(猛虎添翼・e14892)は拳を構えた。

●ハッピーエンドのために
 人々が立ち入ることは無い場所で、ケルベロスたちは存分にその刃を振るっていた。
 もちろん、ダモクレスも最初から遠慮は無し、だ。
「ハッパ、ハキダシマス!」
 ダモクレスのまき散らした葉で、前衛に痛みと麻痺が広がる。
「思い通りにはさせないさ」
「援護しますよ、十郎さん」
 降り注ぐ流体金属の光に続き、オーラの花弁が舞い散る。戦場を照らす祝福が、前衛の傷と麻痺を消し去ってゆく。十郎とジェミの手厚いヒールに、夜は笑みを見せた。
「ありがとう、十郎、ジェミ」
 回復は手厚い。何より、癒し手への信頼は格別だ。
 自身の手番に、夜はマインドリング「詠月」へそっと手を触れた。現出した剣は光り輝き、ダモクレスに輝く閃きを刻み込む。
「ブロワ君はやる気充分、だね。勿論、此方もやる気で返す所存だけれど」
 すなわと、早期決着という方針。
 呟く夜の横を、丸太ほどもある光線が抜けてゆく。ダモクレスが光線に包まれたのを見届け、紺はライフルの銃口を下げた。
 煙を上げるダモクレスに思うのは、此度の事件。落ち葉掃除用ブロアは、この時期にこそ役に立つものであったはず。それが今や、周囲に不幸を撒き散らす存在となりかけているのだというから。
「悲しいお話です。落ち葉掃除用ブロアが人々を襲う前に、私たちで引導を渡しましょう」
「うん! ボクたちケルベロスが来たからには、絶対にみんなを守ってみせるんだよ!」
 力強くうなずいて、フリューゲルはダモクレスとの距離を詰めた。
「負けてばかりはいられないから…大人しくしててね」
 伸ばした手が、ダモクレスに触れる。内側から発生した爆発は、送り込まれた凝縮オーラの成せる技だ。
「アイヴォリー! お願い!」
「はい! ――終りなきを終えましょう、御身だけの其の為に!」
 ぐるり螺旋に廻る、挽き刻まれた真白い身躯と骨。続いて切り分けられた一口サイズのさおれには、誰とも知れぬ呼び声が渦巻き、冷えた断面を彩っている。
 ダモクレスに与えられた料理と氷を見て、アイヴォリーは小さくため息をついた。
「お料理の手順を見ると、お腹が空いてきますね……」
「もう少し我慢して、とびきりのご馳走をいただくっていうのは? 空腹は最高の調味料、なんて云うみたいだし」
 雨祈の言葉に、ミレッタは生唾を呑み込んだ。
「なるほど、最高の調味料……」
 ばらまく紙の兵に落ち葉と芋を幻視し、ぶんぶん首を振って振り払う。今はまだ幻想でも、一刻も早く現実のものとするため。
「うう、しっかり頑張るんだから……!」
 ミレッタのうめき声を聞いて、雨祈は緩く笑みつつ左手の人差し指を噛み切った。
「絡め取れ、影法師」
 指先から零れ落ちた血が、雨祈の影に落ちた。影は波紋のように波打ち、ずるりずるりと迷うことなくダモクレスまで伸びてゆく。機械の身体を浸食して締め上げる影が数秒の後消え去った。
「オオオオオチバ、マダ、アツメ、マス!」
 不具合を起こし始めた機械音声を聞いて、ケルベロスたちはいっそう苛烈に攻撃を重ねるのだった。

●鳥葬
 命中率の確保は充分。何より狙撃に最適な位置についたことで、紺の命中率はかなりのものとなっていた。
「消え去りなさい、あなたの世界は終わりです」
 ダモクレスを貫く無数の弾丸――は、夜色の影であった。
 また、付与された状態異常の数もなかなかのもの。装甲の強さを下げるもの、氷、圧力に足止め。
「充分、なんて言いっこなし。まだまだ増やすぜ」
 装甲を抉った後をなぞる雨祈の一閃が、瞬く間に状態異常の数を増やす。
「スイコミ、マス!!」
 吸込み口が狙うのは、ゴールデンタイガーの耳を立てた少年。させません、と飛び出したのは黒服の青年。
 代わりとなって受けた攻撃で防備を下げられたものの、防具のおかげでジェミの被害は軽微だ。
「ありがと、ジェミ!」
「いえいえ。これも含めて今回の仕事であり、僕の役目ですから」
「役目! ボクも役目を果たすよ!」
 金の瞳を輝かせ、フリューゲルはダモクレスに肉薄した。繰り出した脚は見えず、それでも的確に吸込み口を打ち付ける。
「ジェミさん、解除しますよ!」
 癒しのオーラを彼に放ちつつ、ミレッタはダモクレスを見た。
「もしこのブロワが一般人を吸い込んだら……あの動きを見るに、吸い込めない大きさなら砕いてでも吸い込むという強い意志を感じるわ……」
 ダメージがかさんでなお高い戦意を見せるブロワに、ミレッタは身震いした。
「ありがとうございますね、ミレッタさん。それと、その先は考えない方が良いかと……」
 苦笑し、ジェミはダモクレスの正面に立った。僅かに息を吸い込んで整えた呼吸、口から紡がれる静かな言葉。
「餮べてしまいます、よ?」
 ジェミの影から現れた矢が、尾を引いてダモクレスへと向かう。ダモクレスの間合いに入ったと思った次の瞬間、急上昇。次いで落ちれば、持ち手へ突き刺さった。
 ジェミが捕食者であった頃、その能力の名残だ。
「まだまだ行きますよ」
 そう告げ、アイヴォリーはエクスカリバールを振りかぶった。ぼっこぼこに凹んだブロワに、お、い、も、のリズムで繰り出された容赦の無いフルスイングが決まる。
 軽く吹き飛ばされたダモクレスは一度塀に当たるが、すぐに体勢を立て直した。
 その頭上に広がるのは曇天。と思いきや、空を覆うほどの椋鳥の群れだ。
「ほら、そろそろおやすみの時間だ」
 空を奮わせるほどの羽音に身じろぎ一つせず、十郎は静かに指し示す。
 塒を、あるいは犠牲者を。
 発生した灰色の渦が止み、再び姿を現したダモクレスの様子はスクラップと見紛うほど。
 それでもまだ稼働を続けているようで、十郎は夜に目配せした。
 静かにうなずく夜は、朽ちた後も指名を果たさんとする想いを無碍には出来ない。無音に近い瞬きひとつ、
「集めた葉を用いて甘美なる甘味に代え、昇華させるよ。だから、――お休み」
 別れの挨拶を先に済ませて、言葉を紡ぐ。
「冥黒裂閃、天滑べ地駆け喰らい尽くせ」
 天駆ける速翼の鳥に、迷いは無い。喰らいつく獲物が定まっているのなら、結末も既に定まっているようなもの。
 軌跡を描く一閃で訪れる終焉。
「オチ、バ……アツ、メ……オシ、マイ……」
 か細い電子音声を残して、ダモクレスは小さく弾け飛んだ。
 戦場に吹く風が数枚の木の葉を巻き上げるが、既に吸い込む者はいない。
 少しばかりの沈黙の後、フリューゲルが明るく笑った。
「おつかれさま! 周りのお片付けして、焼き芋行こうね!」
 待ちきれないというように尻尾を大きく揺らしながら、フリューゲルは片付けを張り切っている。また、手分けしてヒールグラビティを使用すれば現状の修復はすぐに終わることだろう。
「私はブロワの持ち主に報告してくるね」
 戻ったらヒールを手伝うことを約束し、ミレッタは住宅の呼び鈴を鳴らすのだった。

●プロジェクト発動!
 戦場からほど近い場所にある公園では、いくつもの煙が立ち上っていた。
「――最高の焼き芋を求めて、ケルベロス達は敵と落ち葉と情熱を燃やした――」
 『プロジェクト・ヤキイモ』。そうナレーションするアイヴォリーは、紺とともに落ち葉を集めている。プロジェクト名に笑いを堪える雨祈も、紺の指示で落ち葉を集めている。
「落ち葉集め職人の紺さん、コツは何ですか?」
「軍手ですね。手を切ることなく、存分に集められます。さて、結構集まったので……夜さん、運ぶの頼めますか?」
「もちろん。力仕事なら任せて?」
「職人の指示は、的確だ。次は、火加減の担当者に話をうかがおう」
 アイヴォリーが夜とともに落ち葉を運んだ先では、ジェミ、十郎、ミレッタが火加減を調節している。
 因みに、アイヴォリーのナレーションを聞いているミレッタの腹筋は崩壊寸前である。
「――火加減のコツは?」
「ゆっくり時間をかけて焼くことだな。そうすると、甘くなるからな」
 難なく答える十郎を横目に、夜は白ワインの瓶を開栓した。
「焼き上がりが楽しみだね」
 弾ける気泡と甘く香るモスカートに悪戯っぽく笑い、落ち葉を運んできた雨祈と火加減を調整するミレッタにコップを差し出す。
「食前酒という奴だ」
 乾杯、とコップを合わせて。発泡酒は飲み切らないと、という名目で飲めば、一瓶目はあっという間に空に。
 ご機嫌な三人を見守りながら、芋の見張り番もしっかりこなす十郎だ。焼き上がりと同時に探すのは、紺の姿。
 とびきり甘く美味しくなるよう拘って焼き上げた芋は、働き者にはぜひ食べてほしい。
「焼き芋は栄養豊富で美肌や老化防止も期待できるぞ。一つどう?」
「喜んで」
 手招きに素早くやってきた紺にはもちろん、熱々を皆で分け合う。一部を土産に取り置くのも忘れずに。
 同時に夜が掲げ、注いだシャルドネにミレッタは戦慄した。口の中に広がる柔らかな泡は、芋の優しい甘さにぴったりだ。
 酒を飲まない組の飲み物は、十郎の持参した茶葉で淹れた焙じ茶を。
「香りにリラックス効果があると言うし、一仕事終えた後の一杯には丁度良いだろ?」
「はい、体も温まりますね」
 白い吐息を吐きだしながら、紺はほうじ茶をすすった。ジェミも香ばしい香りを吸い込み、大きく息をつく。
「コーヒーと紅茶もあるよ!」
 差し出した後、フリューゲルは熱々の芋にかじりついた。
「あ、バターを持参しましたので、宜しければ」
「ありがとう。芋はやっぱホクホクだよな、バターとの相性も格別だ」
「ああ、俺もほくほく派だ」
 ジェミの持ち込んだバターを芋に載せ、ふわり立ち上がる香り。夜は十郎とともに舌鼓を打つ。
「バター、チーズ……両方気になるな」
 雨祈が湯気の立ち上る仲間の手元をあちこち見る一方で、ミレッタは魅惑の味覚たちに目眩を覚えている。
「とろーりとろけておいしいよ! 食べて食べて、みんなで食べれたら嬉しいなっていっぱい持ってきたんだ」
 フリューゲルの振る舞うチーズが、紺の持つ芋の断面でゆっくりと溶ける。
「ありがとうございます。どれも美味しいですね」
 目を閉じてしみじみ味わい、紺は一息ついた。
 また、雨祈と夜の手元には大人の飲み物。
「日本酒はどうだ? さっきのお礼」
「いいね、頂こう」
 彼らに混ざれないことにちょっぴり拗ね、アイヴォリーはクーラーボックスを開いた。
「わたくしが焼き芋界に新たな革命を起こします!」
 取り出されたるは燦然と輝くお高めのバニラアイス。十郎が拍手を送り、ジェミがゴージャス、と賞賛する。
 甘い蜜芋に絡めてじたばたと至高の味を堪能するアイヴォリーの肩を、夜が突いた。
「ね、一口頂戴?」
 どうぞ、と香り立つ芋を半分こ。瞬く間に熱さと冷たさの競演を胃に収めたアイヴォリーは、十郎の芋にも革命をもたらす。
「芋の熱に溶ける一匙、何とも贅沢だな……うん、美味しい」
「フフフ、どうです? ジェミも良かったら如何? そう、これは最早デザートと言うべき味わい――」
 なんて、思い出したようにナレーションを再開するアイヴォリーであった。雨祈のお裾分け依頼にも快く対応する。
 いただいたアイス一口、雨祈はミレッタにウイスキーを差し出した。
「バニラにウイスキーをかけると美味いぜ」
「! では、いただきま……!?」
 足元はいっそ、ふわふわの雲。一口ごとに震えるのは、驚きの美味しさによるものか。
「はは、そっちは本格的に酒盛りだな」
「大人おやつを開発する雨祈さん、意外と酒豪なミレッタさん……ケルベロス恐るべし、でしょうか」
 十郎とジェミの言葉に得意気な笑みを向け、雨祈は和らぎ水かわりの焙じ茶で一息つく。
「甘いのを食べた後にほくほく×有塩バター、最高です……ね、ミレッタはどれが一番好き?」
 アイヴォリーの問いに、ミレッタはしばし石化してしまう。思考の末に目と耳をぐるぐるさせ、
「バニラアイスウイスキー添え!」
 と宣言するお酒はザル、な兎のウェアライダーなのだった。
 ウイスキーの色を視界に映した夜は、トングで落ち葉の中を探る。
「林檎にもウィスキー、合うよ」
「わ、何でもありだな」
「ね、ね、焼きリンゴと焼きいもとバニラアイス合わせたら最強じゃない?」
 驚く十郎の横から、フリューゲルがぴょこんと飛び出した。
 集めた落ち葉がぱちりと鳴り、降り注ぐは紅葉の赤。
 まだまだ続くごちそうと豊かな彩りに、味覚の秋を堪能する者たちの笑顔がいっそう華やいで見えた。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 3
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