ミッション破壊作戦～好戦的なる戦闘種族

■リプレイ

●作戦開始前の一時
　ヘリオンは本州を外れ、日本海を行く。
「ただただ海が広がる景色ってのも、いいものだ」
　ヘリオンの窓から下に広がる青い海を眺め、村雨・柚月（黒髪藍眼・e09239）が落ち着いた様子で呟く。
　山口県最北端の孤島、見島。
　ここが今回、ケルベロス達がミッションに臨む場所だ。
　鳥をモチーフとした姿をしたククロイ・ファー（ドクターデストロイ・e06955）が事後の為、アイズフォンでミッション攻略に来るケルベロスと連絡を取る。
　てきぱきと動く緑髪の人懐っこいドワーフ、土竜・岳（ジュエルファインダー・e04093）が周辺地図を用意し、ククロイの提案もあって降下地点や脱出経路について皆に周知を促す。
　それを聞いていた子供らしさを残す無表情な少女、リリエッタ・スノウ（小さな復讐鬼・e63102）にとっては初めてのミッション破壊作戦。
　表情にこそ全く出さないが、リリエッタはこれで準備は良かったのかとかなり不安げな態度をとっていた。
「これがグラディウスかぁ、本物を持つのは初めてだね」
　対して、黒基調の衣服を纏うオウガの鈴城・咲（焔の拳・e56641）もまた作戦参加が初めてとあって、緊張も見せるも気合は十分の様子。
　軽装の騎士を思わせる衣装の上から白衣を纏う、ノルン・コットフィア（星天の剣を掲げる蟹座の医師・e18080）はすでに参加経験があるらしく、ワイヤー紐にグラディウスをくくりつけて紛失せぬよう備える。
　寡黙でほとんど語らぬ終夜・帷（忍天狗・e46162）もまた、ベルトにグラディウスを固定し、作戦決行の時を待っていた。
　やがて、目的の見島が見えてきたところで機内に現地到着のアナウンスが流れ、メンバー達は降下準備へと動く。
「さて、唯一目障りな魔空回廊をぶっ壊しにいこうか」
「見島は絶対に奪還するッ！」
　グラディウスを手にした柚月が告げると、ククロイも立ち上がって叫ぶ。
　皆がヘリオンから降下していくのに、岳も続いて。
「島民の方一人一人の想いを込めた一撃。皆さんの幸せな未来を！　必ず切り拓きます！」
　彼もまた眼下の孤島に向かって、飛び降りていったのだった。

●光る小剣に思いを込めて
　見島の一ヶ所にある半円状のドーム。
　騎士達が集うその地点に向けて、ケルベロス達が高空から強襲する。
「わたしの使命はデウスエクスを討伐し、人々を守ること」
　先陣を切るのは、チーム最年少ながらも大人びた少女、ミレイ・シュバルツ（風姫・e09359）。
　ドーム状のバリアを切り裂いたミレイは、その内側にある強襲型魔空回廊へと光る刃を差し向けていく。
「あなた達に奪われた島人達の日常を、返してもらう」
　ミレイがそこに刃を突き立てると、眩い光が周囲を包み込む。
　光の中、さらに咲が飛び込んで。
「孤島だからこそ、人々の生活を脅かす者は排除しないとね」
　自分達ケルベロスは全力で島民の為に頑張ると、咲もまた輝く刃を振り下ろして周囲に雷光を放つ。
　エインヘリアルがどよめき、混乱する中、ケルベロスは次々に攻撃を仕掛けていく。
「さて、そろそろこの島から退場してもらうわ」
　白衣をはためかせるノルンは、想いを魔空回廊へとぶつける。
　――見島を故郷だと想う住民は帰りを待ち侘び、この地を再び踏める日を今かと待ち望んでいるはず。
「アンタらが好き勝手にやっていい土地じゃない」
　ノルンは見島牛に興味を抱く他、この地には希少な日本在住の生物もいる。それらを護る為にも。
「――とっとと砕けやがれ！」
　彼女の振るう刃は光に交じり、爆発を巻き起こす。
「平和に一生懸命暮らしている人達に手を出すなら、許せないよ！」
　激しい爆音の中、感情を外に出すのが苦手なリリエッタも懸命になって手にするグラディウスに想いを込める。
　――見島の住民達の早く帰りたい、日常に戻りたいという願い。
　日常というものはリリエッタに理解できぬものだが、それでも島民達の日常をデウスエクスに壊されている現状は許してはおけない。
「だから……この見島から！　地球から！　出ていけぇぇぇ！」
　思いっきり叫ぶ彼女の刃は強く輝き、魔空回廊深くまで突き刺さる。
　直後、激しい爆発が起こり、それに周囲の騎士達は身体を焼かれていたようだ。
「その島はお前達の物じゃない」
　寡黙な帷が口を開き、騎士らへ言い放つ。そろそろ奪った見島を返してもらう、と。
「お前達が何度侵略を目論もうとも、ケルベロスが何度でも阻んでみせよう」
　帷の刃もまた魔空回廊に突き入れられ、斬撃痕からスモークが噴出し始める。
　さらに、岳、柚月、ククロイの３人が同時に仕掛けて。
「故郷を奪われた島民の皆さんがお可哀想です」
　岳は、この地で生活する沢山の人々の人生を想う。
　それが今、失われている状況に、彼は嘆き悲しんで。
「皆さんの故郷を、生活を、笑顔を今、取り戻します！」
　岳は騎士達の戦うだけの生き様を、蹂躙の性を否定する。
「お前らはちっぽけな島を適当に奪っただけと考えてるかもしれないが、島の大小は関係ねぇんだよ」
　傍の柚月も、小剣に想いを込めて。
　――この地で生まれ育った島民にとっては、ここが故郷。他のどんな場所にも代えられない大切な場所だ。
　そんな場所を理不尽に奪われていい道理など、あろうはずもない。
「何の罪もない人たちに、そんな大きな悲しみを背負わせたままにできるかよ！」
　そして、ククロイもまた吼える。
「デュランダル！」
　エインヘリアルが奪った見島の大地、海、空。
　住民の日常、笑顔、帰るべき場所。
「返してもらうぞ！　全てをッ！！　今日ォ！　ここでェッ！！」
　この島全ての所有を許さず、ククロイはグラディウスを眩いほどに輝かせて、身体に施された白い紋様を淡く発行させた。
「宇宙に輝く蒼き宝石……地球に代わって、大！　大！　大！　お仕置きですよー！」
「一刻も早く辛い現実から解放するためにも、お前らをぶっ潰して島を絶対に取り戻してやる！」
「迸れェ！　グラディウスッ！！　見島の『明日』をッ！！　奪還しろオオオォォォッ！！！！！」
　強い輝きを放つ３つの刃。それらが同時に、魔空回廊を切り裂いていく。
　一撃を与え、見島に着地するメンバー達。
　攻撃に集中しすぎたリリエッタは着地に失敗し、お尻を強く打ってしまう。
　そんな彼女は仲間と共に、強襲型魔空回廊を見上げる。
　３度の降下作戦で確かにかなり傷ついてきてはいたが……、動きを止めるには至らない。
「しぶとい奴らめ……」
　動き続ける魔空回廊を確認し、眉を顰める柚月。
　皆の魂の叫びはかなり効果があったにもかかわらず、破壊には至らなかった。もしかしたら、時の運に嫌われてしまったのか……。
　ともあれ、岳、ノルン、帷、咲はまず、光が失われた己のグラディウスが手元にあることを視認する。
「急いで撤収を」
　スモークが晴れてしまう前にミレイが仲間達へと離脱を促すが、そうはさせぬとサーフブレイドに乗った騎士が一行の前に立ち塞がる。
「そう簡単に、拠点を明け渡すものか」
　現れたのはエインヘリアル、飛行型のデュランダル騎士。
　敵の姿を前に、ミレイは自らの周囲に螺旋力を纏わせた鋼糸を煌かす。
「敵対目標確認、戦闘開始します」
「『対神組織デュランダル』か……。至高の神だろうが、ぶっ殺してやるまでだな！」
　ククロイは相手が全てのデウスエクスに宣戦布告したことを思い返しつつ、チェーンソー剣を抜いて。
「さァ、サーファー気分の騎士さんを血祭りにあげようかァ！！」
　声を荒げた彼は、敵に向けてその刃を振り上げたのである。

●見島を飛び回る騎士
　まるで波に乗るかのように自らの乗るサーフブレイドを空中で操り、ケルベロスへと攻撃するタイミングをはかるエインヘリアル、デュランダル。
　先んじて、そいつへと岳が仕掛ける。
　相手のブレイドを踏み台にして跳び上がった彼は、回転しながらルーンアックスを叩き込んで敵の鎧に亀裂を入れた。
「まずは動きを封じます」
　次にミレイが螺旋の力を纏わせた鋼糸を周囲へと張り巡らせ、相手の体を切り裂いていく。
　下手に動けば、その身が鋼糸によって真っ二つになりかねない。デュランダルも迂闊には動けぬはずだ。
　ただ、動きを止めれば、火力となるメンバーの的となる。
「投影『地球人』！　超力刃一閃ッ！！」
　レプリカントのククロイは地球人のデータを読み込んで自身に投影し、グラビティを破壊力に変えて赤い光のラインが入った『モディファイズ』を叩き込む。
　グラビティによって、僅かに身体を凍りつかせた相手の頭上から、柚月が飛び掛る。
「落ちやがれ！」
　飛び回る相手を地面に叩き落とそうと、彼は流星の蹴りを浴びせかけていく。
「リリが撃ち落してやるよ！」
　さらに、リリエッタも敵へと電光石火の蹴りを真横から叩き込み、相手の態勢を崩そうとしていた。
　それでも、見た目に反して軽やかに態勢を整える敵をリリエッタは注視し、次こそは地面に落とそうとグラビティを構える。
　ノルンも攻撃役として動くが、まずは地固めからと立ち回って。
「白き焔舞い踊り、立ち上がりし者らに祝福を。仇名す者を惑いへと誘う加護を与えん」
　それは、ノルンが独自に編み出した術。
　燃え上がる白焔は時に陽炎を起こして虚像を生み出し、敵を惑わせるのだ。
　そうして、後方メンバーを支援したノルンは焔を纏い、アクロバティックな動きで敵へと蹴りかかる。彼女のテレビウムのディアも前線へと出て、メンバーの盾として動いてくれていた。
　ケルベロスにも盾役はおり、帷、咲の２人がデュランダルの動きを止めようと動く。
　相手は素早さを売りにし、これでもかと戦場を動き回る。
　チームの盾となる帷は防御に重きを置いた立ち回りをする以上、多少相手よりも機敏さでは劣る部分はあれど、そこは他の仲間に気を引いてもらうことでカバーする。
　正面から飛び込んでくる敵に対し、咲が素早く相手へと蹴りかかって。
「この蹴りを受けて、痺れてしまいなさい！」
　鎧の隙間を見定め、咲は相手の体に直接打撃を与えて痺れを与えていく。
　相手が多少動きを止めれば、帷にとってチャンスとなる。
「…………」
　忍者らしく身軽さを活かして敵と対する帷は、素早い蹴りと同時に理力のオーラを敵へと打ち込む。
「小癪なヤツらめ……」
　鎧の中から瞳を輝かせるデュランダルは怒りを露わにしながら反転し、帷目掛けて飛びかかってくるのである。

　ケルベロス達は飛び回る飛行型デュランダルの動きを制しつつ、そいつへと攻撃を繰り返す。
「食い破れ、大蛇【竜牙】」
　エルフの里に伝わる神器『神威』の尖端を操り、ミレイは相手の装甲に傷をつけていく。
　だが、デュランダルは鎧に多少傷を負ったところでさほど気にかける様子もなく、サーフブレイドで襲い掛かってくる。
　主として、前線で相手の気を引くのは帳だ。
　彼は黙したまま突撃してくる敵のサーフブレイドに切りかかられながらも、自らに分身の幻影を纏わせて前線を持たせようとしていた。
「雪さえも退く凍気を、その身に受けなさい！」
　横に立つ咲は時に帷を庇いつつ、パイルバンカーに凍気を纏わせ殴りかかる。
「本当、すばしっこくてうっとうしい相手ね！」
　積極的にカバーへと入り、咲もまた戦線維持に努めていたようだ。
「回復に当たります！」
　そして、後方からは岳が回復支援にと、前線の仲間へと緊急手術を施す。
「誰も傷つけさせません！」
　力強く意気込みを見せつつ、岳は仲間に声がけして回復を続けていた。
　仲間が戦線を持たせている間に、火力、狙撃に動くメンバーがデュランダルへと攻勢を強める。
　巫術士である柚月が取り出すカードは、流れる気を覚醒させる力を秘めていた。
　刀を抜いて一気に敵へと斬りかかった彼は、斬りかかる瞬間にその力を解放していく。
「神を倒す力はそっちのもんだけじゃねぇ！」
　放たれたエネルギーを浴び、デュランダルは自らの体に違和感を覚える。
　そこを、リリエッタが逃さず。
「ルー、力を貸して！」
　ワイルドスペースから召喚したルーシィドの残霊に呼びかけ、リリエッタは手を繋いで互いの魔力を循環させた。
「――これで決めるよ、スパイク・バレット！」
　刹那限界を超えた力を込め、リリエッタ達は魔弾を発射する。
　荊棘の魔力が込められた弾丸はデュランダルを追尾し、そいつの身体に纏わり付いて一気に追い込もうとした。
　だが、敵はまだ宙で踏みとどまる余力がある。
　反転と同時にサーフブレイドで斬りかかってくる敵をテレビウムのディアが抑える横から、ノルンが身軽な動きで距離を詰めていく。
　彼女は棘を生やしたエクスカリバールで殴りつけ、相手の傷を一層深める。
　続いてククロイが飛びかかり、唸るチェーンソー剣で相手の鎧を切り裂く。
「まだ、だ……！」
　すると、ようやく、態勢を崩した敵が地面へと落ち、態勢を立て直しながらも自らの身に治癒を施す。
　だが、柚月の一撃で治癒の力が弱まっていたデュランダル。傷はほとんど塞がらない。
「その鎧の急所は見抜いた。……穿て、八咫烏」
　ミレイが飛び込み、相手の頭、胸、腕にすばやく三連蹴りを叩き込んでいく。
　同時に、周囲に張り巡らせた彼女の鋼糸がデュランダルの体へと食い込んで。
「裂け、彼岸花」
　エインヘリアルの巨躯から血飛沫が上がり、その身体を寸断してしまう。
「…………！！」
　叫びすら上げることが出来ず、デュランダルはエインヘリアルとして貰い受けた命までも散らしてしまったのだった。

●また来ることを誓って
　飛行型デュランダル騎士を倒し、ミレイは改めて仲間に向けて一言。
「任務完了。帰還します」
　ケルベロス一行はスモークが晴れて増援がやってくることを懸念し、離脱を急ぐ。
　改めて、ノルン、リリエッタ、咲は自らのグラディウスを確認する。
　帷もグラディウスを確認するが、同時に仲間の状態も合わせてチェックする。皆、自力で脱出できそうだと判断した彼は、手振りで離脱の方向を示す。
　前方では、ククロイ、岳が再度ミッション攻略中のケルベロスと連絡をとり、合流の上での撤収へと動いていた。
「来年の夏には、見島でダイビングできるといいですね」
　この島から臨む蒼き海。宝石のような綺麗なこの場を、岳は取り戻したいと本心から願う。
「何度でも来てやるよ、お前らをぶっ潰すまでな」
　光を失ったグラディウスを握りしめながら、柚月は仲間に続いて稼動し続ける魔空回廊から背を向けたのだった。

作者：なちゅい	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年11月17日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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