東京六芒星決戦～神堕の謀略

■リプレイ

　東京の中でも有数の観光名所である、東京タワー。
　しかし今は、死神たちの目論む大儀式の準備によって、タワーの周囲には戦闘力を強化された下級死神が無数に警戒しており、物々しい雰囲気に包まれていた。
　正面突破の掛け声が聞こえた。東京タワーに集まった６チーム、５０名近いケルベロスたちが、異様な形状の深海魚のような下級死神たちへの攻撃を開始し、道を切り開きながら東京タワーのフットタウン入り口を目指して突き進む。
「残念ながら、観光目的ではないんですよねぇ」
　アゼル・グリゴール（アームドトルーパー・e06528）は突進してきた深海魚の顔面を蹴って間合いを開き、ガトリングガンの銃身をがしゃんと向ける。至近距離から爆炎の魔力を込めた弾丸を連射し、下級死神の身体を焼き尽くしていった。
　アレックス・アストライア（煌剣の爽騎士・e25497）は自分のチームの後衛に視線を送り、カトレアと姶玖亜のふたりに軽くウインクしてから、オウガメタルから光の粒子を輝かせ、感覚を研ぎ澄まさせてく。
「勝手な真似は許さねえぜ」
　無数の下級死神が群がるように集まってくるが、グレイン・シュリーフェン（森狼・e02868）が縛霊手を突き出し、御霊殲滅砲で撃ち払っていく。
「…………」
　豊田・姶玖亜（ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077）も何か思う所があるのか、一瞬微かに眉根を寄せるが――。鐘をあしらった銃握を駆る腕は精密に、深海魚たちの尾びれを撃ち抜き制圧していく。
　その足止めの最中、千種・終（白き刃影・e34767）もライフルを担いで駆けていく。
「この目論見を放っておけば、悲劇が起こるのは目に見えている。……防いでみせるさ」
　ギリギリまで進んで足を止め、同時にゼログラビトンで狙撃する。一撃が下級死神の頭を砕くが、別の個体が触手を伸ばし、終に絡み付いてくる。グレインにも無数の卵が発射され、その勢いが削がれつつあった。
「夜明けの光よ、皆を包み込み、その魔力を高めよ！」
　赤月・夕葉（黒魔術士・e45412）が夜明けのように幻想的な光で仲間を包み込み、体勢を立て直させる。そのままの勢いで一同は、一気にフットタウンの入口から内部へと突入していった。

●外階段の戦い
　東京タワーの内部は、死神ドーリスの配下であるアメフラシが、多数徘徊していた。それはフットタウンを抜けて外階段に出ても変わらず、狭い道幅と高低差を利用して、こちらの足を止めようと襲いかかってきた。
「……！」
　アゼルのアームドフォートが火を噴き、アメフラシの身体を爆散させる。しかしそのすぐ後ろからも、別のアメフラシが次々と向かってきている。
「おいおい、勘弁してくれよ」
　アレックスが剣を立てて構え、超高速で突進してアメフラシたちを蹴散らしていく。
　どうせなら素敵なレディに迫られたいものだとぼやきながらも、アレックスは剣を振るって軟体な敵――アメフラシを斬り払っていった。
「今まで登る機会はなかったが、こんな形で登る事になるとはな」
　グレインは階段を駆け上がりながら、ちらりと周囲に視線を巡らせる。するとその直後、アメフラシたちが踊り場から、一斉に階段をなだれ落ちて来た！
「……ぐ、うっ」
　前衛陣が踏ん張るが、その物量と勢いに押し潰され、流れに呑み込まれそうになる。
「東京タワー……。良いロケーションには良い音楽が必要だろう？」
　カトレア・マエストーゾ（幻想を紡ぐ作曲家・e04767）がブラッドスターを、生きる罪を肯定するメロディーを奏で始める。
　姶玖亜も素早くガトリングガンに持ち替えて、嵐のように撃ち出す弾丸で、片っ端からハチの巣に変えていった。
　何とか生じた隙にグレインもマインドスラッシャーを放ち、敵の勢いを削いでいった。
　――展望台に辿り着く前に、これだけの苦戦を強いられるとは。
　終は歯噛みしながらも思考を冷静に保ち、アームドフォートの狙いを絞り、撃ち出していくのだった。

　そうしてアメフラシたちを蹴散らし、ケルベロスたちは何とか展望台への入口へと辿り着いていた。集まったのは４チーム。残り２チームは外縁部の敵が内部に侵入しないよう、戦い続けてくれている。
　準備を整えるメンバーも居たので、一同は僅かだけ呼吸を整え……、視線を交わし、頷く。
　展望台へと足を踏み入れた瞬間、闇色の光と衝撃が襲いかかってきた。
　――奇襲。
　展望台への入り口は狭く、待ち構える敵としては奇襲にもってこいの状況だったのだ。
　こちらが身構えるより先に、アメフラシたちが突撃して圧し掛かり、黒い液体が身体を蝕んでくる。
　まずい、まずい。何とか広い場所に出て、体勢を立て直し、攻撃に転じないと……。
　一方的な攻撃を受けながら、辛うじて展望台へと出てきたケルベロスたち、それを待ち受けていたのは、儀式を行う死神マイラと、それを護衛する死神ドーリスだった。

「それでは護衛の死神諸君。ちょっとの間付き合ってもらおうか！」
　カトレアがケルベロスチェインを床に伸ばし、まるで楽譜を描き出すように地面に守護の紋を刻み付けて、光を立ち昇らせていく。
　その光の中を鏡月・空（ツキが最近ない・e04902）がダッシュで駆け抜け、ドーリスへと流星の如き勢いで蹴りを繰り出した。
　ドーリスは僅かに動くと、黒い水の塊のようなものを生み出して、空のスターゲイザーを受け止めた。
「ユニット固定確認、炸薬装填、セーフティ解除、目標捕捉……。これより突撃する！」
　アゼルが近接戦闘用刀身射突ユニットを突き出し、ドーリスの胴へと衝撃を叩き込む。相手が僅かに揺れた所を狙って終もゼログラビトンの光弾を射出し、その弱体化を試みる。
　主を討たせてなるものかと、無数のアメフラシがそこに近づいていくが、そちらにはアレックスが向かっていた。ウイングキャット『ディケー』には清浄の翼で仲間たちの回復を命じ、自身は星降の剣を構えてアメフラシたちに立ち向かう。
「邪魔はさせん！」
　剣に宿らせた天秤座のオーラを輝かせ、刃を振り下ろすと同時に解き放つ！
　ゾディアックミラージュがアメフラシたちを凍らせ、魔力の氷で閉ざしていく。
「……まあ、仕事は仕事だ」
　姶玖亜はアメフラシと床との接点を狙い、精密な狙撃で浮足立させる。黒い液体が姶玖亜に向かって何発が吹き出されたが、それはグレインが庇ってガードする。
「これくらいで倒れちゃいられねえからな」
　マインドリングから光の盾を生み出しつつ、グレインは口元に笑みを浮かべて見せた。
「希望よ、皆に勇気を与えよ！」
　夕葉が希望の為に走り続ける者たちの歌を奏で、仲間の傷を癒していく。
　別チームによってマイラに攻撃が通れば、儀式は中断。これで最低限の目標は達成だが……、この死神たちを、黙って見逃す手はない。
　どこまでやれるのか、ケルベロスたちの挑戦が始まった。

「――マイラに集中攻撃！」
　死神マイラと戦っていたチームから、マイラに集中攻撃するよう声がかかった。
　マイラに集中攻撃する。考えにはなかったことではあるが、アレックスは咄嗟に、縛霊手をマイラ側に展開していた邪魔なアメフラシたちのほうへと向けていた。
　引き金を引くように剣を振り下ろし、御霊殲滅砲の巨大な光弾でアメフラシを蹴散らしていく。
「了解……！」
　アゼルも狙いをマイラに変えて、炎の弾丸を射出してく。だがその直後、ドーリスがそうはさせないと言わんばかりに鎌を振り下ろしてきた。
　ずばんと胸を袈裟懸けに薙がれ、アゼルの意識が飛びかける。
「いけない！」
　カトレアが急ぎ、全身のオーラを練り上げて治癒にかかる。
「死霊たちよ、その魔力を以って、仲間を回復せよ！」
　夕葉も大地に眠る惨劇の記憶から魔力を抽出し、治癒力に変えて仲間たちを癒していった。

「……５分！」
　タイムキーパーを務めていた者からの声がかかる。敵が撤退するまで、あと僅かだ。
　空は焦る気持ちを抑えながら精神力を極限まで集中させ、サイコフォースの爆発でマイラを狙う。辛うじて逃れようとマイラが動いた所へ、グレインも踏み込んでいった。
「何を呼び起こすつもりか知らねえが、思い通りにゃさせねえさ」
　グレインの言葉に対し、マイラの表情は変わらない。しかし問答している場合ではないかと、グレインは降魔真拳を叩き込んでいた。
「さあ、鉛玉のプレゼントだ」
　そのマイラの背に、姶玖亜の弾丸が突き刺さる。射線は通っていない筈だったが、姶玖亜は跳弾を利用して敵の背を狙ったのだ。更に１発、２発と別の角度からの追撃も決まっていく。
「もう……、ひと押し」
　終がアームドフォートを構え、砲弾を放つ。一撃はマイラの肩口に命中し、マイラを担当していたチームへの攻撃へと繋がった。
　そして――、小柄ながらも日本刀を携えた、漆黒の髪の少女が、マイラに斬りかかる。
「千鬼流……奥義」
　その斬撃は超高速でマイラを裂き、血の華を咲かせ、戦いに終止符を打つのだった。

「今後良からぬ事を企めないように、できればこの場で始末したい」
　姶玖亜が銃を構え、ドーリスの足元を狙って銃弾を撃ち込み始める。
「…………」
　ドーリスはマイラが倒れた方をちらりと見てから、何とか避けようと間合いを取った。
　そうはさせないと空が踏み込み、『空』の霊力を込めた絶空斬の斬撃を振り下ろす。がきんと黒い鎌でドーリスは受け止め、空を振り払うようにして体勢を立て直す。
「隙あり、です」
　だが次の瞬間、アゼルのフォートレスキャノンがドーリスの胸に突き刺さっていた。
　このまま一気に攻め落とす……。と思いきや、ドーリスの身体が黒い霧のようなものに包まれていく。
「ここまで、か……」
　小さく呟くと、ドーリスはそのまま黒い霧に包まれ、消えていった。
　死神ドーリスを倒すまでには至らなかったものの、死神マイラを倒し、敵の儀式を中断させることはできた。
　戦いの終わりを悟り、ケルベロスたちはひとまず安堵の息を吐くのであった。

作者：零風堂	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年11月22日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 7／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 0
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