「みなさん、凄い活躍でしたね!」
元気よく声を上げているのは、チヒロ・スプリンフィールド(ヴァルキュリアのヘリオライダー・en0177)
チヒロが言っているのは、先日のクロム・レック・ファクトリアの撃破とディザスター・キングの撃破の事だった。それだけケルベロスたちの奮戦が素晴らしかったからだろう。
「その後、アビスさんと、櫻さんたちが警戒に当たっていて、ある事は判明しました!」
チヒロが言う二人は、アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)と、阿賀野・櫻(アングルードブロッサム・e56568)。二人のおかげで、死神戦力による大規模な儀式が行われる事が判明したのだ。
その儀式とは、最近多発していた死神による事件が集約された大儀式。
「都内の六ヶ所で同時に儀式が行われるのです」
そう言うと、ホワイトボードに東京の地図を広げ、そこにマーキングをしていく。
「儀式が行われるのは『築地市場』……『豊洲市場』……『国際展示場』……『お台場』……『レインボーブリッジ』……『東京タワー』の六ケ所となっています」
そして線で繋ぐと浮かび上がるのは六芒星だった。
「この六ケ所は、丁度『晴海ふ頭』を中心とした六芒星の頂点になる場所です。皆さんには、判明した儀式場の一箇所に攻め込んで欲しいのです」
六ヶ所の儀式全てを阻止しなければならないので、それぞれの場所に十分な戦力を配置する必要がある。さらに、儀式の場所だけでなく周囲(儀式外縁部)には、数百体の戦闘力強化型の下級死神等が回遊していて、儀式場への侵入を阻止しようとしているのだ。
「儀式を行っているのは、ネレイデスの幹部です」
ネレイデス幹部は、築地市場に『巨狼の死神』プサマテー、豊洲市場に『月光の死神』カリアナッサ、国際展示場に『名誉の死神』クレイオー、お台場に『宝冠の死神』ハリメーデー、レインボーブリッジに『約定の死神』アマテイア、東京タワーに『宵星の死神』マイラが配されている。
「ネレイデス幹部さん達は、儀式を行う事に集中していますので、少しでもダメージを被ると、儀式を維持する事はできなくなります」
つまり、外縁部の敵を突破し、儀式中心部に到達し、ネレイデス幹部にダメージを与える事が出来れば、作戦は成功となる。
「儀式が中断された場合、ネレイデス幹部さん達はすぐに撤退を開始します」
儀式中断から7ターン後に、生き残っていた死神戦力は全て撤退してしまう。もし、ネレイデス幹部の撃破を目指す場合は、この7ターンの間に撃破しなければならないだろう。
しかし、ネレイデス幹部は強敵である上、儀式場内部では更に戦闘力が強化される。単独チームの戦力では撃破は難しい。
ただ、ネレイデスの幹部が多数生き残った場合、今回のような大儀式を再び引き起こす危険性もあるので、可能な限り討ち取りたい。
「儀式場の周りには、もの凄い数の死神さんたちがいますけど、実際に戦うのはそこまで多く無いと思います」
ホワイトボードの地図に様々な形のマグネットを取り付けていくチヒロ。
敵戦力が凄まじいが、それを全て倒さなければならない訳では無い。儀式場へ突破する際に戦うのは数体から10体程度(白百合騎士団の場合には3名〜6体)となるだろう。
また、外縁部から脱出しようとする場合は攻撃の対象外となるようだ。
ただ、全てのチームが儀式場に突入し、増援が来ないと判断した場合、外縁部の戦力が儀式場内に雪崩れ込み増援となる場合がある。
「儀式場内部には、ネレイデスの幹部さんを守る護衛役が配されてます」
チヒロはホワイトボードの図面へ丁寧に戦力図を描いていく。その数に、この戦いの激しさを彷彿とさせる。
「儀式を阻止するだけなら、護衛の全てを相手する必要は無いですが……」
少し悩みながらも説明を続けるチヒロ。
もしネレイデス幹部の撃破を目指す場合は、護衛を撃破するか或いは、ネレイデス幹部から引き離す必要がある。それだけケルベロスたちの危険が増す事になる反面、撃破に成功すれば今後の戦いが楽になるだろう。
「幹部の撃破を目指すかどうかは、皆さんの判断にお任せします。ですが……皆さん、無事に帰って来て下さい……」
一瞬、何かを思い出したような表情を浮かべながら、説明を終えるチヒロだった。
参加者 | |
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愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784) |
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896) |
上野・零(焼却・e05125) |
ガロンド・エクシャメル(災禍喚ぶ呪いの黄金・e09925) |
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983) |
氷鏡・緋桜(プレシオスの鎖を解く者・e18103) |
アトリ・セトリ(エアリーレイダー・e21602) |
病院坂・伽藍(敗残兵・e43345) |
●
こちらはレインボーブリッジの芝浦方面の外縁部。ケルベロス達が複数班で連携を取り、レインボーブリッジの儀式を阻止すべく動いている。
「……死神勢も、随分と色々仕事をしてるもんだ……」
上野・零(焼却・e05125)が静かに呟く。
「死神の儀式なんて、見物していきたい位なんだが……」
その言葉に軽口で返すガロンド・エクシャメル(災禍喚ぶ呪いの黄金・e09925)。その単語だけ聞くとB級ホラー映画を彷彿とさせる。
「死神の甘言に乗せられているなら……」
儀式は死神軍の幹部が行なっているが、これから向かう場所で待ち構えているのは、エインヘリアル第四王女レリ率いる白百合騎士団。
他の儀式場と違い、白銀の鎧に身を包む白百合の騎士たちが周囲を固めている。
アトリ・セトリ(エアリーレイダー・e21602)としては、出来れば女王レリが死神と手を組んでいる理由が知りたい。
外縁部を守る白百合騎士団の一般兵へ言葉を投げかけるのは氷鏡・緋桜(プレシオスの鎖を解く者・e18103)と愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)。
「命が惜しい奴はこの場から去れ!」
「私たちがここにいる時点で、儀式は失敗なのです!」
総勢300人近くのケルベロスが各所に同時に儀式阻止作戦を展開している。
「そんな言葉で我々が臆するとでも!」
そんなケルベロスたちの言葉に答え一斉に武器を構える彼女達。
「それなら……俺達はお前たちを殺してでも止める」
「そこをどいてください!」
敵である白百合騎士団に警告する緋桜とミライ。似た想いを抱く二人。
(「……命を奪わずに敵を倒せる強さが自分にあれば……」)
(「どうか、こんなところで死なないで」)
必要以上の犠牲を出したく無い緋桜と、先の未来を願うミライ。二人の気持ちが、一手、無駄になるであろう時間を取る。
「その口、黙らせてやる……!」
再び放たれた二人の言葉に、一切の躊躇無く、凶刃を振り上げ突撃してくる白百合騎士団!
しかし、それが二人に届く事は無かった。
「生憎、それを見過ごせるほどの優しさは我々にはないのでな」
「あなたにも『ココロ』があるのではないですか!」
緋桜への突刺を防いだのは神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)。ミライへの斬撃を防いだのはフローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)。
「……っ!」
そんな晟やフローネの言葉には、もはや反応を返さない白百合騎士団。
「なら、俺も覚悟を決める」
彼女たちの覚悟を感じたからこそ、緋桜は髪を手でかき上げ、気持ちを切り替える。
「大切な人の為に、死ぬのが怖くない貴方だから〜♪」
覚悟を決めた緋桜とは対照的に、『それでも助けたい』という想いを込め、歌声を響かせ始めるミライ。
ここでの目的は、敵を倒す事ではない。まずは儀式場への到着が最初の目的。
「ま、それでも儀式は阻止するっすけどね」
病院坂・伽藍(敗残兵・e43345)の軽い声と共に、レインボーブリッジへ向かい外縁部を突破しようと突撃を開始したケルベロスたちだった。
●
「サルベージを何だと思っている! 死んだ仲間はそのまま蘇るとでも?」
「行く手を阻むなら容赦はしない!」
アトリと緋桜が歩速を揃えると、地面に星型のオーラが描かれる。
次の瞬間、アトリの柔蹴撃と緋桜の剛蹴撃が星のオーラを描きながら、白百合騎士団を弾き飛ばしていく。
「死んだら悲しむ人がいるのよ〜♪」
そんな仲間たちの背中を押しながら、自分の想いと願いを歌詞に込め、歌声を響かせるミライ。
「悪いが突破させてもらう」
巨躯から発せられる威圧感と共に振るうドラゴニックハンマー・蒼竜之錨鎚【溟】。ドラゴニックパワーを噴出させ、その勢いと共に突撃する晟。
「させません!」
晟の突撃を身を呈して防ごうとする白百合の騎士。しかし、そこへ降り注ぐアメジストの光と霊色の光がある。
「私たちは止められません!」
「それを許すほど甘くないよ」
フローネのアメジスト・バスターから放たれたフロストレーザーと、ガロンドの縛霊手から放たれた巨大光弾が行く手を阻む騎士たちへ降り注ぐ。
「……色々別勢力の動きも気になるし、ここで立ち止まる暇なんて無いよ……」
「先にいかせて貰うっす」
晟に続き零と伽藍も音速の拳と空の霊力を帯びた斬撃を振るいながら目的地へ向かい、一直線に進んでいく。
合計、54人のケルベロス達がレインボーブリッジ外縁部で展開しながら、儀式場を目指し進んでいく。中でも一班は外縁部で意図的に騎士団の足止めを行っていた。
その結果もあり、ケルベロス達は無事にレインボーブリッジ『芝浦』側へ到着したのだった……。
●
レインボーブリッジで行く手を塞ぐのは、第四王女レリ及び、直属の配下『絶影のラリグラス』と『沸血のギアツィンス』たち。
「先に行って、そっちは任せるから」
「先に行け、すぐに追いつくッ!」
陽葉やスノー達が他のケルベロスたちに声をかける。
「神崎、ガロンド、。そっち任せたわ」
さらに、顔なじみの舞彩が蒼と金のドラゴニアンに声をかける。
「儀式阻止は任せて貰おう」
「こっちは任せてね」
晟は頼もしい雰囲気で……ガロンドは緊張を和らげるように軽い口調でこたえた。
二人の返事を聞く間も無く、第四王女レリ及び直属配下に次々に戦いを仕掛けるケルベロスたち。その合間を抜い、儀式場へ向かう。
「任せて! 此処での儀式は止めるしなんなら死神を叩き潰しもする! 私達の全ての力をもってして!」
同様に先へ進む役を託された勇華達からも声が響く。
「儀式、必ず阻止しましょう」
フローネが決意を新たに呟く。この場は舞彩たちに任せ、儀式を行う死神アマテイアの元へと急ぐのだった……。
●
他班のケルベロスたちの活躍があり、死神幹部元までたどり着いた。この場にいるケルベロスは16名。
到着と同時に攻撃を仕掛けるケルベロスたち。反対側からもう一班が攻撃を仕掛けた。
アマテイアへの被弾と同時にタイマーを作動させるアトリ。今から7分以内に死神幹部撃破が目標だ。
「儀式もここまでですか……第四王女も役に立ちませんね」
攻撃を受け、儀式の邪魔をされた死神幹部アマテイアの周囲に炎が燃え上がる。
「此度は出直すことにしましょう……」
不思議な炎からの光に導かれるように、影から城が具現化していく。
陽炎の中、そびえ立つ城がアマテイアを守るように現れ、同時に陽炎の騎士団が周囲に展開される。
時間が過ぎれば、アマテイアは撤退する。可能であれば、ここで死神勢力の戦力を削いでおきたい。
そこへ響くのは美しい歌声。
「死者は蘇ったりしない〜♪」
アマテイアの威圧するよな夢幻の城に抵抗するかのように、美しい歌声を響かせるミライ。
その歌声は聴くものに希望を与えアマテイアの威圧感を吹き飛ばす。同時にボクスドラゴンのポンちゃんが歌声に合わせてブレスを放つ。
「……そうだな。……死者は蘇ったりしない」
静かに一歩踏み出し、如意棒を握る零。そのまま真っ直ぐに鋭い突きを放つ。
「ああ、そうだな……」
緋桜もその歌声に答えるように気迫を込め、拳を握る。
「……その通りだ!」
握る拳が、一瞬の隙を突きアマテイアの腹部を貫く。
「……」
緋桜の拳に、身体こそ揺れるものの表情を全く変えずに反撃の動きを見せるアマテイア。幻影の城から陽炎の騎士団が現れ、ケルベロスたちへ突撃を繰り出す。
「ふっ」
その攻撃を真正面から受け止めたのは晟。その巨躯で緋桜たちかばいながらも、揺るがぬ様子に頼もしさを感じる。
「十二創神をサルベージしようとしているらしいが、それは見過ごせぬな」
ドラゴニックハンマーを豪快に振り回し、アマテイアの夢幻の城壁へ真正面がら強烈な一撃を繰り出す。
「ここだね」
晟の攻撃に合わせてアトリがドラゴニックハンマーを砲撃モードへ展開させる。
「ここは合わせようかねぇ」
アトリの動きに合わせて声をかけたのはガロンド。同時にドラゴニックハンマーを展開させる。
「そうですね」
ガロンドとアトリの中央で金剛の輝きを放つフローネ。三人が連携して展開された三門の轟竜砲。
それは巨大戦艦の三連装砲のよう。金剛の輝きと共に竜砲弾が放たれる。
斉射ではなく、連携して撃たれた竜砲団がアマテイアを捉え爆炎に包んでいく。
「……」
三連の竜砲弾を浴びても動じない様子のアマテイア。無論、ダメージが全く無い訳ではないだろうが、その様子に不気味さを感じさせる。
「続きます!」
しかし、それで怯むようなケルベロスはこの場に居ない。攻撃の手を緩めず連携を密にアマテイアを倒すべく懸命に攻撃を続ける。
「無駄な事を……」
そんなケルベロスたちを横目で見つめながら、淡々と攻撃を受けるも、今のところ余裕の雰囲気を漂わせるアマテイア。
「悪いけど、首は置いてって貰うっす!」
伽藍はオウガ粒子を放出し、アトリたちの感覚を覚醒させる。撤退にかかる時間は7分。全力で攻撃を繰り出すケルベロスたちであった。
●
「しかし、ちょっと予想外だね」
静かに呟くのはガロンド。周囲の白百合騎士団が死神アマテイアを守ろうと動く様子がほとんど無いのだ。無論、周囲では別のケルベロスたちが第四王女レリを中心に、攻撃を仕掛けている結果もあるのだろうが……。
加えて、アマテイアの様子も当初の余裕の様子から、段々と怒りの態度を滲ませていた。
「何故、妾を守らぬ! どういうつもりだ!」
その言葉は届いているか不明だが、少なくとも護衛であるはずの第四王女は自身の戦闘に集中し、死神勢力幹部であるはずのアマテイアを守ろうとする様子はやはり無い。
(「王女レリは死神と手を組んだ訳ではないのかな?」)
アトリの中で疑問が生まれるも、真実は不明。思慮を巡らすアトリの周囲をくるっと旋回しながら、癒しの光を放つウイングキャットのキヌサヤ。
死神勢力とエインヘリアル勢力に、何らかの繋がりがあるのかもしれないが、現状はっきりしている事は、第四王女レリ率いる白百合騎士団が死神幹部アマテイアを守ろうとしてない事実だけだ。
「状況は分からないけど、チャンスみたいだねぇ」
ガロンドが轟竜砲を構えなおしながら、軽口を叩く。しかし、ガロンドの口調ほど楽観視出来る状況では無い。
「……っ」
苛立ちを隠そうとしなくなってきたアマテイア。同時に陽炎の城壁を堅牢な物へと描き直す。
後数分、経過すればアマテイアは撤退してしまう。それまで足掻く様子だ。
「……こちらの都合だが、此処で消えてもらうよ『条定の死神』アマテイア!」
そうさせまいと、最後の突撃を見せる零。
「後1分です!」
そこへアトリの声が響き、隣の班からも何か時間を知らせるような音が響く。
「どんなに願っても涙は枯れはしない。ゼロを1に変える魔法が~♪」
ミライの歌声が戦場に響き、ケルベロスたちに最後の一歩を踏みだす力を与えてくれる。
「行くぞ!」
歌声を背中に、最後の一歩を踏み出す緋桜。
「受けてみろ……」
気合いを入れる緋桜。その動きは側から見ると普通の気合い。
「……俺の拳を!」
そのまま、懐に入り込み打ち込まれる緋桜の拳。しかし、その拳は、怒涛の連撃が一瞬に込められている!
「……ッ!」
懐から打ち込まれた緋桜の一撃がアマテイアの身体を浮かせる。
「叩き込むは我が竜槌!」
そこへ追撃するのは晟。蒼竜之錨鎚【溟】を構え、翼を広げ飛翔!
それを追撃するのはボクスドラゴンのラグナル。
「轟雷と共に、その肉叢を砕かん!」
ラグナルのタックルに合わせ、ドラゴン・パワーの噴出で加速させたドラゴニックハンマーで叩き潰す。
「ただ硬く!」
晟の攻撃に追撃するのはフローネ。父の形見であるダイヤモンド・ハンマーを頭上に掲げると、金剛の輝きに紫水晶の輝きが重なり、強く黎明のような輝きを放つ。
「ただ、重く、父のように!」
金剛と紫水晶の重なる輝きを放ちながら、アマテイアの頭上に振り下ろされる。
「ぐっ!」
フローネの一撃に耐えようと地面を踏み締めるアマテイア。
「……金剛の一撃、喰らいなさい!」
次の瞬間、強烈なグラビティチェインの重力波が追撃され、膝を付く。
ケルベロスたちの攻撃を受け、陽炎と消えそうなアマテイアは、かろうじて耐えている。
「もうひとりの相棒の出番だねぇ……」
後、ひと押し必要だと、ガロンドが呼び出した攻性植物は、ガロンドの血を吸い金色に輝き出す。
「いけ! 黄金龍の果実!!」
金色の輝きを放つ攻性植物が、左から……そして右から同様の輝きを放つミミック・アドウィクスが齧り付く。
ガロンドの攻撃に続き、伽藍とアトリが動く。
「狂い咲け!」
伽藍が呪いの言葉を放つと、アマテイアの身体からグラビティチェインの蔓が形作り、身を縛っていく。
「只の早業じゃないよ……」
そこへ踏み込むアトリ。影を自身の靴に纏わせ、震脚の音と共に彼女のの身体が影に消える。
「黒百合!」
アトリの影と伽藍が形作った蔓が重なった瞬間、蔓から黒百合の華が咲き乱れ、アマテイアの身体を蝕む。
「……今に分かる」
影に消えたかに見えたアトリ。実際には一瞬の早業でアマテイアの懐へ踏み込み、影と共に蹴撃で貫く。
「……」
二方向からケルベロスたちの攻撃を受けるも、耐えるアマテイア。このままでは撤退されてしまう。
そんな最後の一手に動いた影がある。
「……これが……」
身体から蒸気が吹き出るほどの限界を超えた機動を繰り出す零。
「生まれたときから君に掛かってる♪」
ミライの歌声を背に高速で攻撃を繰り出す零。肉体のほぼ全てを地獄に変え触れる全てを溶かすほどの熱量で攻撃を繰り出す。
「……地獄だ」
拳から溢れる地獄の熱がアマテイアを焼き尽くしていく。
ほぼ同時に、反対側からも三人のケルベロスが三つ首の獣のごとき連続攻撃を繰り出す。
「……っ」
一瞬の間の後、アマテイアが静かに嗚咽を漏らす。
「死者の泉を掌握し、シャイターンを統べる……」
零の限界を超えた地獄攻撃を受け、さらにセイヤ、煉、鈴の攻撃を受けたアマテイア。
「妾の野望が……」
そのまま、無念の声を響かせながら浮かぶ陽炎の城が消え去ると同時に、灰塵と化していく……。
儀式は阻止したものの、気になる言葉を残したアマテイア。
しかし、その言葉の意味を考える間もなく、周囲が騒がしくなる。
「目的も果たしました。撤退しましょう」
儀式を防ぎ、死神勢力幹部アマテイアも撃破した。これ以上の戦闘は無意味だ。ケルベロスたちはレインボーブリッジから海へと跳躍する。
他の戦場はどうなったのだろうか。今、彼らが知る術は無い。しかし、最大勢力だと思われるレインボーブリッジでの儀式阻止が成功したのだ。他の儀式も阻止出来ていると信じ、今はレインボーブリッジより海に飛び込み、撤退するケルベロスたちであった。
作者:雪見進 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年11月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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