束縛の暴風鎖

作者:雷紋寺音弥

●宵闇の誘拐者
 風のない夜、街中を歩くテンペスタ・シェイクスピア(究極レプリカントキック・e00991)は、ふと奇妙なことに気が付いた。
「……静かだな。まるで人の気配がしない」
 普段であれば、帰宅中のサラリーマン等と擦れ違うことも多い時間帯。それなのに、気が付いてみれば通りには自分が一人だけ。おまけに、店は全てシャッターが下ろされ、家屋の灯りまでも消えている。
(「嫌な感じだ……。まるでゴーストタウンじゃないか」)
 一瞬、自分が異界へ迷い込んでしまったのかと思ったが、それが誤りであるということに、テンペスタは直ぐに気付かされた。
「目標……確認しました……。拘束を開始します……」
 突然、目の前に現れた1人の少女。球体関節人形のような身体に、目元を覆う深紅のバイザー。一見してレプリカントと見紛う姿だが、しかしその実態は。
「……ダモクレスか」
 常人を遥かに超えた殺気を感じ取り、テンペスタは思わず身構えた。そうしている間にも、少女は鎖のような武器を取り出すと、徐々にテンペスタとの間合いを詰めて行く。
「目標の戦闘レベル上昇……。抵抗の意思、有りと判断……。生け捕りが困難と判明した時点で、殺害による肉体の回収に切り替えます」
 どうやら、敵は何が何でも、こちらを捕縛するつもりらしい。だが、こんな場所で何もせずに捕まるくらいなら、最後まで抵抗してやろう。
「上等だ。この私を、そう簡単に捕えられると思わないことだな」
 夜の闇を切り裂いて、無数の鎖がテンペスタへと迫る。誰もいなくなった、無人の街。その中央にある広場にて、誰も知らない戦いの幕が上がった。

●J型実験体、現る
「召集に応じてくれ、感謝する。テンペスタ・シェイクスピアが、夜の街で宿敵であるデウスエクスの襲撃を受けることが予知された。なんとか連絡を付けようと思ったんだが、敵は既に通信妨害と周囲の人払いを済ませている状況だ。連絡を取ることができないだけでなく、周りの人間を通して助けを求めることも不可能にされている」
 遭遇戦などではなく、用意周到に準備された襲撃だ。だからこそ、事態は一刻を争うのだと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に、自らの垣間見た予知について語り始めた。
「テンペスタを狙って現れる敵の名前はオラージュ・ジェイル。少女のような姿をしたダモクレスで、捕縛用の兵装を装備している」
 その目的は、テンペスタの捕獲。だが、必ずしも生け捕りにする必要はないらしく、抵抗が激しければ殺してでも彼女を攫おうとするらしい。
「敵の主な武器は鎖だが、単に対象を捕縛するだけだと思わないほうがいいぞ。電撃を纏って蛇のように相手へと襲い掛かったり、武器に絡み付けて攻撃力を削いだりと、意外に多彩な攻撃手段を持つからな。おまけに、機動性もかなり高い」
 戦場となる場所には一般人の姿はないので、余計なことは気にせず戦闘に集中できるのが幸いだ。もっとも、敵の動きはかなり素早く、それを的確に捉えて攻撃するための術が必要になるが。
「今から行けば、テンペスタがオラージュ・ジェイルと接触した直後に介入できるぜ。ダモクレスにとっては、人間の肉体も生体部品程度の感覚だからな。戦いに負けた場合、『死ぬだけ』では済まされないかもしれない」
 それこそ、肉体を『資源』として持ち去られ、ダモクレス達によって好き勝手に利用されてしまうだろう。それを阻止するためにも、ここでテンペスタを見捨てるという選択肢はないわけで。
「彼女の命は、お前たちの行動に掛かっている。これ以上、オラージュ・ジェイルに地球の人間を攫わせないためにも、ここで撃破してしまってくれ」
 最後に、それだけ言って、クロートは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
御神・白陽(死ヲ語ル月・e00327)
大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)
テンペスタ・シェイクスピア(究極レプリカントキック・e00991)
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・e02879)
ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)
ソル・ブライン(鋼拳乱打・e17430)
リカルド・アーヴェント(彷徨いの絶風機人・e22893)
雑賀・真也(英雄を演じる無銘の偽者・e36613)

■リプレイ

●無情のアブダクター
 誰もいない無人の街。気が付けば敵のテリトリーへ踏み込んでしまっていたテンペスタ・シェイクスピア(究極レプリカントキック・e00991)だったが、それでもここで諦める彼女ではなかった。
「私を捕まえるだって? やれるもんなら、やってみろってんだ!」
 機動性では負けるが、パワーだけなら負けはしない。ジェット噴射の勢いで両手のパイルバンカーから杭を叩き込もうとする。が、やはり格上の相手に何の準備もなく大技を繰り出したところで、容易く避けられてしまうのが関の山。
 案の定、オラージュ・ジェイルはアクロバティックな動きで攻撃を避け、テンペスタは思わず歯噛みした。
「ああぁぁっ!! くそっ、やりにくいっ!!」
 射出された杭が空を切る。このままでは拙いと、反撃に備えて距離を取ろうとしたテンペスタだったが、そんな彼女の動きを予測していたかの如く、オラージュ・ジェイルの鎖が伸びて絡みつき。
「対象を確保……。電気ショックによる捕縛に移行します」
「ちょっ……ま、待てって……うぎゃぁぁぁっ!!」
 鎖を通じて情け容赦なく流される高圧電流に、思わず腹の底から悲鳴が上がった。
 弾ける火花と、肉と金属の焦げる臭い。ああ、これは自分の身体が壊されている臭いだ。
 気のせいか、視界が白く染まり、意識もまた朦朧として来る。このままでは本当に、ダモクレスにお持ち帰りされて改造されてしまうかもしれない。ふと、そんな嫌な予感が彼女の脳裏を過った時だった。
「叶えたい夢があるなら。思いのまま迷わず翔け抜けろ!」
 薄れ行く意識の中、微かに聞こえた風の歌。その声に呼び覚まされ、今度はしっかりと目を開いた。
「はぁ……はぁ……。た、助かった……のか?」
 拘束から逃れ、テンペスタは改めて身体の調子を確認しながら辺りを見回した。
 腕にも脚にも、痺れはない。そして、彼女の見上げたその先には、大通りの奥に立つ7つの影が!
「待たせたな。いくぜヒーロー!」
 テンペスタの顔を見た木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・e02879)が、徐に微笑みながら親指を立てて見せ。
「鋼の体に燃える心、鉄機推参! 仲間は奪わせないぜ!」
 歩道橋の上から見下ろすようにして、ソル・ブライン(鋼拳乱打・e17430)が颯爽と舞い降りた。それだけでなく、他の仲間達も彼女の周りに集まると、一斉に武器を構えてオラージュ・ジェイルと対峙した。
「おやおや……これは随分と物騒な奴に狙われたようだな。というわけで、助太刀に来たぞ、テンペスタ」
 斬霊刀を抜き放ち、雑賀・真也(英雄を演じる無銘の偽者・e36613)が苦笑しつつ横目で視線を送る。
「助かる、マジ助かるっ!! 私、こいつと相性悪いっ!!」
 対するテンペスタは、いつになく頭を下げているような気がするが、恐らくは本心なのだろう。猪突猛進な彼女にとって、硬くて強い相手は組み易いが、速くて強い相手はどうにも苦手だ。
「彼女は強いですが、敵はそれ以上ですね。絶対にやらせはしません」
 力量の差を見抜き、仲間達に警告する大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)。もっとも、ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)のように、いつもの調子を崩さない者もいたが。
「これまた、お堅い雰囲気の嬢ちゃんだこと。ちったあ、テンテン見習ってハジケて……あー、やっぱオススメ出来ねえわ……」
「おい……それは、どういう意味だ?」
 思わず、テンペスタがランドルフを睨みつけるが、そこまでだ。敵が未だ健在な以上、お遊びをしている余裕などない。
「漫才をしている余裕は……残念ながら、なさそうだぞ?」
 それだけ言って、御神・白陽(死ヲ語ル月・e00327)が一気に敵との間合いを詰める。そちらが全てを捕縛するというのであれば、こちらは全てを遍く世界から断つものだと。
「真昼の月と夜の月、どちらを見ていても、人は絡め取られ立ち止まるものだ」
 己の魂の総力を以て、対象を世界の理から外す技。その先にあるのは、あらゆる事象が予測不能な、理不尽極まりない無明の世界。
「よし、続けて仕掛けるぞ」
「ああ、任せな。そろそろ真面目モード全開で行くぜ……変身!」
 秋櫻の言葉に、ソルもまた戦うための姿へと身を変え、一気呵成に攻め立てようと大地を蹴った。が、放たれた砲弾の雨や、その隙間を縫って伸びて来た如意棒の一撃でさえも、オラージュ・ジェイルは踊るような動きを見せつつ、ギリギリのところで避けてしまった。
「やはり速いな。手始めに、下準備と行こうか」
 このまま戦っても不利は否めないと、真也が光り輝く銀の粒子を戦場へ散布して行く。その一方で、ランドルフは高々と跳躍すると、高所から狙いを定めて一気に敵の頭部を目掛けて急降下!
「テンテンの蹴りで顔面に足形付けられたかねえんでな! ちっとはマジに行かせてもらうぜ!」
 殺られる前に殺れとは、このことだ。強烈な飛び蹴りをお見舞いし、敵のバイザーに亀裂が走り。
「………目には目を、歯には歯を、か。ならば、風には風を、と行かせてもらおうか」
 風を操るが如き鎖ならば、その特性もまた知っておくべきだ。そう呟きつつ狙いを定め、リカルド・アーヴェント(彷徨いの絶風機人・e22893)は氷の槌より竜砲弾を発射する。
「……っ! 敵、戦闘力、こちらの推定予測を大きく上回ると判断。……これより、対象の殺害による捕縛に切り替えます」
 爆風の中から、何やら物騒な声がした。
 これより先は、手加減なしの殺し合い。暗闇の中で赤いバイザーが不気味に輝き、オラージュ・ジェイルは淡々とした口調で、ケルベロス達に非情なる死刑を宣告した。

●捕縛する風、侵略する炎
 無人の街を、多数の鎖が嵐の如く駆け抜ける。テンペスタの危機に、間一髪のところで馳せ参じたケルベロス達であったが、しかし敵の凄まじい機動力の前に早くも翻弄され始めていた。
「でぇぇぃ、ちょこまかと! このやろ、逃げんなっ!」
「想像以上に素早いですね。動きを止めたくとも、このままでは……」
 テンペスタと秋櫻が立て続けに繰り出した回し蹴りを、オラージュ・ジェイルは曲芸のような動きで軽々と避けて見せた。
 敵の運動機能を麻痺させることで、その行動を阻害する。戦い方としては悪くないが、攻撃を当てられなければ意味がない。そもそも、麻痺では瞬間的にしか動きを封じられず、せいぜい敵の攻撃を稀に失敗させる程度の効果しかない。
 こういう場合、取れる戦法は大きく分けて2つある。1つ目は、初撃で敵の足を止めることに集中し、一気呵成に牽制攻撃を叩き込む方法。速攻で相手を倒すのには効果的な戦法だが、相手が状態を立て直す術を持っていた場合、振り出しに戻されてしまう危険もある。
 その一方で2つ目は、仲間の精神を研ぎ澄まし、その知覚を強化することによって、俊敏に動き回る敵を強引に捕捉してしまう方法。こちらの強化を崩されない限りは安定して戦えるのが強みだが、その状態に持って行くまでは、ある程度の持久戦も要求される。
 それでは、ケルベロス達の取った戦法は、果たしてどちらか。答えは、その両方だった。
「縮地とも違う……随分、独特な動きをするね。……久々に、楽しめそうな相手だよ」
 呪詛を宿した白陽の斬撃が、オラージュ・ジェイルの影を捉えた。
 現状、地力だけで追随しているのは、彼のみだ。しかし、そんな白陽とて1対1では少々不利であることも否めない。
「悪いな、もう少しだけ耐えてくれ」
 まずは真也が粒子を展開し、仲間の感覚を極限まで研ぎ澄ませる。その上で、リカルドとランドルフの二人が後方から、敵の機動力を奪うべく牽制攻撃を繰り返す。
「紡げ糸凪、影を縛り、禍を留めよ。縛れ、暇(いとま)を紡ぐ『凪縫』よ」
 遠間からの鋭い一撃。糸状に圧縮した風をリカルドが放ち、そのまま相手を舗装道路へと縫い付ける。敵も強引に振り解こうとするが、しかし解いたところで風の糸は瞬く間に再生を遂げ、再び冷たいアスファルトの道へと縫い止めて。
「おっと、逃がすと思ったか? 悪いが、その傷口を広げさせてもらうぜ」
 すかさず、ランドルフがナイフで斬り付けたことで、束縛の風はより深く、複雑に絡み合って、敵の動きを封じ込めた。
「よし、これなら外さねぇぜ! 食らいな……轟炎断!」
 未だ、足元を束縛されたままのオラージュ・ジェイルに、業炎を纏ったソルの刃が叩き込まれる。鋼鉄さえも飴のように溶かす焔は、それだけで敵の繰り出す鎖を溶かし、果ては装甲さえも粉砕するのに十分な威力を持っていた。が、しかし……。
「……敵、戦闘レベル……攻撃力……分析完了。強制武装解除……開始します」
 後方に大きく吹き飛ばされながらも、オラージュ・ジェイルは巧みに鎖を操って、それを一斉に周囲へと展開し始めたのだ。
「……っ!? こちらの火力を削ぐつもりですか!」
「だぁぁぁっ! 面倒臭ぇぇぇっ! 小細工しねぇで、正面から殴り合えこのやろぉぉぉっ!!」
 身体ではなく使用する武器を鎖に絡め取られ、秋櫻とテンペスタが思わず叫ぶ。どうやら敵は、徹底的に持久戦の構えを取るつもりらしい。
「まだだ! そうそう、好きにはさせないぜ!」
 すかさず、ウタが長剣を掲げて星辰の加護を広げたことで、なんとかこの場はやり過ごせた。
 だが、それでも不安は残る。敵の足を止めつつ味方も強化して行くとなれば、どうしても即効性には欠けてしまう。バランス重視と言えば聞こえは良いが、そもそも回復系のグラビティを持っていないオラージュ・ジェイルに、果たして持久戦になりそうな戦法は、本当に正しい判断だったのだろうか。
(「あらゆる事態に備え、丁寧になり過ぎるのも考え物だな。だが……」)
 そんな中、リカルドは冷静に敵の様子を窺いながら、微かな勝機を見出さんと瞳を光らせる。バイザーの奥に佇む二つの目には、先程、ソルが与えた炎が、未だ消えずに敵の身体で燃えているのが映っていた。
(「……風を操れば操る程、種火は燃え上がる、か……。消し止める術がないのであれば、そこに勝機はあるはずだ……」)
 ハンマーを降ろし、ガジェットに次弾を装填しつつ、リカルドは心の中で呟いた。

●起死回生
 燃える炎が深夜の街を煌々と照らし出す。度重なる連戦によって、今やオラージュ・ジェイルの鋼の身体は、既に原型を留めない程にまで溶かされていた。
 風を炎で煽れば、より激しく燃える。リカルドの読みは正しく、あの後に彼が繰り出した火炎は、着実に敵の身体を覆っている。
 一度でも燃え広がってしまえば、時間をかければかける程に、炎はその勢いを増して行く。攻撃を当てることができなくとも、広がる炎は一切の情けも容赦もなく、全てを奪い取って灰にする。
 もっとも、対するケルベロス達もまた、激しく消耗しているのは否めなかった。特に、幾度となく敵の攻撃から仲間を庇い続けた、秋櫻とソルのダメージは相当なものだ。
「……まだ、行けますか?」
「なんとかな。だが、ちょいとばかり、キツくなって来たかもしれないが……」
 秋櫻の問いに苦笑して答えるソルだったが、その身体を覆う鋼の装甲は、既に限界が近かった。こちらが準備を整えている間も、敵は攻撃を当ててくる。相手の動きを捉えたところで、こちらも無傷とは言えないのが辛いところだ。
「損傷率、80%を突破……。体外温度、更に上昇……。これより、強制捕縛を試みます……」
 全身を燃やされているにも関わらず、オラージュ・ジェイルが再び鎖を飛ばして来た。正面に立っている者達ごと、纏めてテンペスタを捕縛するつもりだ。
「だから、させねぇって言ってるだろ? 何度やって来ても無駄だってことを、あんたを倒してダモクレスに判らせてやるぜ!」
 鎖が仲間を絡め取った瞬間、ウタが再び長剣を天高く掲げて叫ぶ。互いに退かぬ、根競べ。しかし、その終わりが近いということは、その場にいる全員が解っていた。
「仕掛けるなら今か。こちらでも援護するぞ」
 まずはリカルドが、竜砲弾で敵の足元を狙い。
「こいつを避けるのは、少々骨が折れるぞ」
 異空間より特殊な弓を呼び出した真也が、躊躇うことなく漆黒の剣を矢に見立ててつがえ、そして放つ。
「血に飢える電光石火の猟剣よ。その力をもって、敵を亡き者にせよ。喰らいつけ、血に飢える電光石火の猟剣!」
 その速度は、優に音速の10倍。凄まじい衝撃波の爪痕を周囲に残しつつも、剣は深々と敵の胸に突き刺さり。
「……そろそろ終わりだよ」
 擦れ違い様に、空の霊力を纏った刃で白陽が斬り付けたところで、勝機は見えた。
「雷光纏う一撃、その身に刻みなっ! 必殺、雷重落斬!」
 刃を高々と掲げたまま跳躍し、その刀身にソルはエネルギーを溜めて行く。一見して直線的な技に思われがちだが、しかし振り下ろされた斬撃は、狙った敵を逃がさない。
「真向! 唐竹割りぃ!」
 刀身が振り下ろされる瞬間、そこから溢れ出した光によって、刃のサイズとリーチが増した。真正面から頭を叩き割られ、同時に敵のバイザーも砕け散り。
「コイツはとっておきのPresentだ! 遠慮はいらねえ! 喰らって爆ぜろッ!!」
 ランドルフの放った無数の銃弾により、敵の身体は瞬く間にハチの巣に!
「プラズマドライバー・アクティブ!!」
「近接高速格闘モード起動。ブースター出力最大値。腕部及び脚部のリミッター解除」
 その上で、最後は秋櫻とテンペスタが、猛烈なラッシュで敵を追い込んで行く。
「対象補足……。貴方は私から逃れられません」
「うぉぉぉっ! 肘打ち! 裏拳! 正拳……」
 矢継ぎ早に繰り出される拳と脚。さすがのオラージュ・ジェイルも、これだけの連打を全て捌くことは不可能だ。
「間合いに入った!! に・が・さ・ん! 剛腕粉砕ぃい、必殺!! レプリカント・ファントム!!」
 この間合いなら、外さない。最後は、エネルギーを纏ったテンペスタの拳が、敵の顔面を粉砕した。

●暴風去りて
 無人の街が、再び静寂包まれる。思いの他に消耗したのか、テンペスタは安堵の溜息を吐いた。
「悪ぃ、マジで助かった……」
「さすがヒーロー、カッコいいぜ」
 もし、良かったら、帰りにラーメンの一杯でも食べて行くか。そう言って誘うウタの隣では、ソルとリカルドが敵の狙いについて考えていた。
「しかし、こういったケルベロスを狙った事件も、ますます増えてきそうだな」
「………次の狙いが俺でも、他の誰かでも、勘弁して欲しくはあるな」
 強靭なケルベロスの肉体は、格好の生体部品ということか。同じく真也も、今に自分を狙って何者かが襲ってくるのではないかと考えたが。
(「いや……ないな。所詮、俺は偽者。攫っても何も得はないだろう」)
 そう、心の中でつぶやいて、静かに首を横に振った。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。