あやかし

作者:地斬理々亜

●さそうもの
 潮騒が、聞こえる。
 竜派の姿をとった、白いたてがみのドラゴニアンが、夜の浜辺を歩いていた。一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)である。
「少し、冷えるのう。百火は寒くないかの?」
「……」
 白は、傍らを歩いていた、妹――ビハインドへと尋ねた。彼女は、『大丈夫』と告げるかのように小さく頷く。
「――ねえ」
 不意に、声がかけられた。色気を感じさせる、女の声だ。
「む……?」
 白は周囲を見回すが、自分と百火の他には誰もいないように見えた。
「こっちよ。こっち」
 再度かけられた声に、白は海の方向へ視線を向ける。
 海上に突き出た岩場に、女が一人座っていた。
 射干玉の黒髪に、あでやかな顔形。蠱惑的な微笑を浮かべ、海色の着物の胸元を半ばはだけながら、女は白を手招いている。
「……お主は、そうやって」
 ぎり、と白は強く拳を握り締めた。
「一体、何人、手にかけてきたのじゃ! ――死神!」
「あら。お見通しというわけね。それなら……」
 女は……否、死神は、くいと指を動かす。それに従うかのように、海水が生き物のように持ち上がった。
「力ずくでも、貴方の魂をいただくわ?」
 ざあ、と水しぶきの音を立てて。逆巻く怒涛が、白へと襲い掛かる。

●ヘリオライダーは告げる
「白さんが」
 白日・牡丹(自己肯定のヘリオライダー・en0151)の声音には、珍しく焦りの色が見えた。彼女は、落ち着くために一度目を閉じて黙り、仕切り直す。
「一之瀬・白さんが、死神の襲撃を受けることが予知されました。急いで連絡を取ろうとしたのですが……できませんでした」
 それから牡丹は、こう告げた。
「猶予はありません。至急、ヘリオンを出します。白さんの救援に向かってください!」
 牡丹は、手元のホワイトボードに書きつけていく。
 ――現場は夜の浜辺。周辺に一般人はいない。
「死神は、特定の名を持たないようですが……『濡れ女』とでも呼ぶべきでしょう。海に誘い込み、海流を操作し、身動きがとれなくなった人間を刀で斬りつけて殺す、ということを行ってきたようです」
 動きを封じる海流のグラビティは、単体が対象のものと、列に効果を及ぼすものの二種。手にした刃で切り刻む攻撃は、ジグザグの効果を持つ。ジャマーである濡れ女が放つ、行動阻害の攻撃へは、対策が必須になるだろう。
「白さんを、救ってください。そして、死神の撃破を。どうか、皆さん」
 よろしくお願いします、と牡丹は結ぶ。
「任せておいてちょうだい。必ず助けてくるわよ」
 ケルベロスの一人、小野寺・蜜姫(シングフォーザムーン・en0025)が、真剣な表情で応じた。


参加者
草間・影士(焔拳・e05971)
ウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)
フィロヴェール・クレーズ(高らかにアイを歌え・e24363)
クローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)
ベルベット・フロー(フローリア孤児院永世名誉院長・e29652)
一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)
ケルツェ・フランメ(不死身の自爆王・e35711)
アリッサム・ウォーレス(花獄の巫竜・e36664)

■リプレイ

●救援の到着
 荒波は狙い違わず、一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)の姿を呑み込んだ……ように見えた。
 いや、違う。真珠に似たその体色は同じでも、攻撃を受けたのは彼ではない。
 白の身代わりとなったのは、神器を口にくわえた仔犬。それは、クローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)の『お師匠』である。
「オルトロス!? なぜこんなところに、……っ!」
 思わず身を乗り出した濡れ女を、竜巻状の冷風が襲った。環の、『地雷式・魔訶青蓮』である。
「一之瀬さぁーん! 助けに来ましたよーっ!」
 環の声が近づく。そちらに白が目を向ければ、無数の明かりが揺れていた。合わせて16名のケルベロス達が、駆けつけたのである。
「けしからん! 服装がけしからんのです! 悪い死神は粛清! イクゾオラー!」
 ケルツェ・フランメ(不死身の自爆王・e35711)が意気込んで突撃してくる。
「……ケルツェ、今、直前に何か言ってたわよね? 『綺麗な方』とか『白殿が羨ましい』とかなんとか」
「ききき気のせいです、気のせいですよ蜜姫殿!」
 小野寺・蜜姫(シングフォーザムーン・en0025)の容赦ない追及にケルツェは慌てた。
 アンセルムは、濡れ女を一瞥。
「キミみたいな奴は……海の藻屑になるのが、きっと素敵だよ」
 彼は濡れ女へと言い、後衛の仲間達に、果実の聖なる光を向ける。
 親友の攻性植物が放つ黄金の光を受けながら、和希が、黙々と『牽制射撃』を濡れ女へと行い、無数の弾丸をその身に撃ち込んだ。
「――オレ/我が此処に来テ、敵が此処に居タ。ならば伊達にして地獄へ叩き落ス、例外は無イ」
 ウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)は、ざぶざぶと海中へ踏み込んでゆく。それからウォリアは、一度、白へと振り向いた。右の眼が焔に包まれている。
「小童、刹那だが力を貸そう」
 直後、ウォリアの巨躯が海に沈んだ。波に囚われたのではない、彼は一度しゃがんだのだ。海底を蹴って跳躍、海上へと一気に跳び上がり、ウォリアは重い飛び蹴りを濡れ女に見舞った。
「一之瀬、折角の散歩中に邪魔をする。いや、もう邪魔はされていたか?」
 次いで白へ声を掛けたのは、草間・影士(焔拳・e05971)だ。彼は続けて、濡れ女に言葉を向ける。
「こんな季節に海とは、海水浴には時季外れだが。お望みなら此処で沈めてやる。冷たい海の底にな」
 影士はドラゴニックハンマーを変形させてゆく。やがて現れた砲口から竜砲弾が放たれ、濡れ女へとぶち当たった。
「燃える炎のベルベット登じょ……ふぇっくし!」
 名乗り上げの途中でくしゃみをしたのは、ベルベット・フロー(フローリア孤児院永世名誉院長・e29652)だ。
「うー寒い……さっさと帰りたいし、悪いけど一気に終わらせちゃうよ!」
 ココアなどが入った鞄を放り投げ、場に躍り出てきたベルベットは、ステップを踏み始める。
「引き返し 歩みを止めず 茨道 我が意を得たり 新たなる未知」
 激しい舞踊と共に、足元に魔法陣が広がる。フローリア舞踊魔法第三番、『Thorny Path(イバラノミチ)』――魔法陣から生じた紅い茨の蔦が、たちまち張り巡らされた。まるで、前衛を波から守る防波堤のように。
「……皆。感謝するのじゃよ」
 白は赤い瞳を一度伏せ、すぐに開けて濡れ女を見据えた。
「百火、動きを止めろ!」
 ビハインド『一之瀬・百火』の両腕から鎖が無数に飛来し、濡れ女を四つん這いの体勢に拘束する。
「噛み砕け、咬龍の牙!」
 収束した魂魄が戦斧となり、白の手刀がそれを纏う。濡れ女がいる岩場まで一瞬で移動した白は、濡れ女の頸部に手刀を振り下ろした。魂魄の刃がざくりと埋まり、留まる。さらに、百火が鎖を振るって発動したポルターガイストにより、無数の硬い貝殻が濡れ女にぶつかり、追い打ちをかけた。
「……色香で男を誑かすしか能が無い三下の死神め。ぼく達がいる限り、気高き白龍の魂には指一本触れさせないぞ」
 クローネは砂浜を蹴り、跳び上がる。
「冷たい海の底で、お前が奪った魂達に詫びてもらおうか」
 冬の夜空を背景に、宙返り。
 そこから、星型のオーラを伴った蹴りを、クローネは濡れ女に叩き込んだ。お師匠が続き、神器の剣を振るう。
「お師匠さん、ヒールは必要ですか?」
 アリッサム・ウォーレス(花獄の巫竜・e36664)がお師匠へと尋ねた。攻撃を終えて着地したオルトロスは、ふるふると首を横に振る。
「分かりました。それでは」
 アリッサムは一気に岩場へ接近すると、攻性植物の蔓触手を濡れ女へと絡みつかせた。そのまま浜辺の方向に引くが、濡れ女は岩にしがみつき、動かない。
 フィロヴェール・クレーズ(高らかにアイを歌え・e24363)は光の翼を広げて飛び、白を濡れ女の視界から隠すように割って入った。
「残念ね、とっくにこの人はわたしの大切な人なの。……あなたに渡せるものなんて、何一つないのよ」
 濡れ女へ言い切ると、鞘に入ったままの剣で山羊座を砂浜に描く。星座は輝き、中衛のケルベロス達へ加護をもたらした。
「私の生徒に手を出すのは止めていただきたいですね!」
 濡れ女に言ったケルツェはペイントブキを用い、テンションが上がる背景を描き出す。それは、同じく中衛の仲間達へと、士気向上の効果を与えた。
「演奏するわよ。聴いてちょうだい」
 蜜姫のギターは、前衛を力づける『紅瞳覚醒』のメロディを奏でる。
「わらわらと鬱陶しい番犬の群れね……!!」
 苛立たしげに、濡れ女は叫んだ。

●届かぬ挑発
「分かった! 近寄ったら若作りがバレるから遠巻きに誘惑するような真似してるんでしょ!」
 続く戦いの最中、ベルベットが濡れ女へと笑って言った。
 未だ岩場から動こうとしない濡れ女を、陸地におびき寄せるため、挑発しようというのだ。
「そうね、独りぼっちの寂しいおば様だわ!」
「ぼく達、年増と水遊びしに来たわけじゃないんだけど」
 フィロヴェールやクローネもベルベットに続き、怒りを煽るような言葉を濡れ女に向ける。
 ケルツェもまた、内心怖いと思いつつも、勇気を出して口火を切った。
「このケルベロスの数を見てくださいよ! 貴方の顔のシワよりは少ないかもですが数の暴力を行うには十分! 無駄な抵抗や努力は止めて大人しく殺られてくれると助かります!」
「――ふふふ、あははははっ」
 それらの言葉を聞いた濡れ女は……笑った。
「何が、おかしい」
 影士が問うと、濡れ女は答える。
「だって、醜く老いさらばえて死ぬ運命にあるのは、貴方達、定命の者の方でしょう? 私はデウスエクス、永遠の存在なのよ。むしろ、貴方達の方が可哀想だわ!」
 心からおかしそうに笑う濡れ女。この死神への挑発の言葉として、『老化』絡みは――適切ではなかったと、言えるだろう。
 それから濡れ女は、ベルベットを見た。
「貴女の方こそ、顔を炎で覆っているのはなぜかしらね?」
 これを聞いたベルベットは、口元から笑みを消した。
「黙りなよ。アンタに教える気はないね」
「そう」
 ざあ、と水の音。
「来ます! 中衛です!」
 アリッサムが警告を発する。ベルベット達によって耐性が十分に付与されている前衛を後回しにし、まず中衛から狙うことを濡れ女は選んだのだ。加えて、フィロヴェールが白の前を飛び回り、濡れ女の注意を引いていたのもあるだろう。
 かくして、ベルベットやフィロヴェールは渦潮に呑まれたが……。
 赤い光がジグザグに走った。海水が割れ、無傷のフィロヴェールが現れる。グラビティを相殺したのだ。
 手にしているのは真紅のナイフ。
 トラウマで持てなかったが、白に助けられたことで、彼女は乗り越えたのだ。
「わあ! あなたの波、すごそうに見えて、こんな小さなわたしの炎も消せないのかしら!」
「く……!」
 濡れ女が、ぎり、と歯噛みする。
「今、ヒールするのですよ!」
 かりんが、攻撃を受けたベルベットへと『渡し守の導き』を与える。
 ミミックの『いっぽ』は、濡れ女へと飛びつき、喰らいついた。
「援護は私たちに任せてください」
「はい、僕も喜んでお手伝いしますよ」
 竜矢が濡れ女へ轟竜砲を撃ち出して足止めし、エルムはオウガ粒子によって仲間達の超感覚を目覚めさせてゆく。
「……来たれ星の思念、我が意、異界より呼び寄せられし竜の影法師よ…………神魔霊獣、聖邪主眷!!! 総て纏めて……いざ尽く絶滅するが好いッ!」
 『戦神竜皇・翔崇星影ノ断』。詠唱したウォリアの足元から、地獄の炎によって作り出された分身達が現れた。様々な武具を構えた彼らは、総攻撃を濡れ女に叩き込み、崩れるように消える。
「猛き炎をその身に宿し、全てを砕く牙を持つもの。我が求めに応え、この禍々しき波の呪縛を食らい尽くせ。その紅蓮なる顎を以って」
 魔法陣を描いたのは影士。それにより作り出された毒蛇は、波を切り裂くように進んで、濡れ女の柔肌に牙を突き立てた。『プロミネンスヴァイパー』の灼熱の鱗は、容赦なく濡れ女の体を焼く。
「冬を運ぶ、冷たき風。強く兇暴な北風の王よ。我が敵を貪り、その魂を喰い散らせ」
 真冬のような冷たい風が、濡れ女を中心とした極小範囲に吹き荒れる。それはまるで、獰猛な獣の牙。クローネによる、『北風の牙(ボレアース・ファング)』。
「一人たりとも、倒れさせぬのじゃ!」
 マインドソードを逆手に構えた白は、肘撃を濡れ女へ放つ。
「……やっぱり、貴方からの方がいいわね!」
 集まった16人のケルベロス、その高い士気の、要。それは白だと、濡れ女は見抜いた。
 劣勢を覆すには、まず白を殺すしかない……そう判断した濡れ女が、再び荒波を白へ向かわせた。

●藻屑となる
「『可憐』な青は、幸福の兆し。困難を乗り越え、『どこでも成功』です」
 舞うアリッサムの周囲に、ネモフィラの花が咲く。『花獄の舞~瑠璃唐草~』。花言葉のおまじないと一面の青が、白を癒した。
「白さん、どうかしっかり。一緒に皆さんを守りきって、必ず全員で帰りましょう」
「……そうじゃの、アリッサム殿」
 頷いた白は、再び岩場の方向を見る。そこには、仲間達の猛攻を受け続ける濡れ女の姿があった。
 フィロヴェールが地獄の炎を纏ったナイフで斬りつけ、ケルツェが『トリニダード・スコーピオン』状のメイスで殴って燃え上がらせる。
 ウォリアが凍てつくレーザーを放てば、影士がドラゴニックハンマーを叩きつける。
 幾重にも付与された耐性と、十分な頻度のキュア。それらが、濡れ女によるパラライズを打ち消しているために、攻撃に回ることのできる人数は数多い。サポートを含めて、ヒールも攻撃も非常に潤沢であり、ケルベロス側が濡れ女を圧倒している。
 この状況はまさに、ケルツェも述べた通りの……『数の暴力』と言えようか。
「力を貸せ! ガグノバァァア!」
 ベルベットが右手の籠手、『亡魂武装・炎竜人の右腕』を濡れ女に向けた。その掌から放たれたドラゴンの幻影が、炎を放ち、濡れ女を焼き焦がす。
「ああぁあ!! ……くっ……こうなったら」
 濡れ女は、刀を抜いた。視線の先には、白。
「――貴方の魂だけでも!」
 一息に距離を詰め、白を、斬る。斬る。刻む。その命を奪い去らんと。
(「……確かに、僕もいずれは死ぬんだろうね」)
 刃に刻まれながら、どこか他人事のように、白は思う。
(「でも、それは」)
 白は、しっかりと両足で砂浜を踏みしめる。ぽたぽたと赤い液体が滴った。
(「――今では、ない!」)
 耐える。……耐えきった。白は、倒れない。
「白! 無事ね!?」
 ルナティックヒールを飛ばす蜜姫へは、白は軽く頷き応じる。
「そん、な」
 愕然とする濡れ女。彼女の全身は、既にずたずただ。
「決めろよ主役さん」
 満月のような光球がもう一つ白へと飛ぶ。陸也である。
(「白殿ならできますよ。終わりにしてしまいましょう」)
 ケルツェが白の背中に優しく触れた。接触テレパスで、その言葉を白へと伝える。
 濡れ女の背後に現れた百火は、緑の鎖を伸ばした。それは濡れ女の胸を後ろから貫く。
 包帯越しの百火の視線が、白へと向けられた。じっと、見守るように。
「金剛八式・降龍。……受けてみよ!」
 震脚と共に、白はアッパーカットに似た動きを瞬間的に繰り出す。抗神拳だが、それは八極拳の動きであった。
 濡れ女の頭蓋が下から砕かれ、その命は完全に潰える。激しく宙に吹き飛ばされたその亡骸は、海に落ち、二度と上がって来なかった。

●温かな場
「どうやら、力ずくで魂をもらうのは此方だったか」
 影士が、濡れ女の沈んだ海を見ながら呟く。
「……くしゅん」
 アリッサムが小さくくしゃみ。
「ヒールが終わったら甘くて温かいものが欲しいですね! みんなで祝勝会でもあげましょうよ!」
 仲間や周辺のヒールに取り掛かりながら、ケルツェが言った。
 ウォリアは、ごぅ、と全身から地獄の炎を噴き上げる。
「晩秋の波すらオレ/我にはぬるい……戦が終われば去るのみだ」
 強者との戦のみを求める、二つの人格を持つ竜人は、場を後にした。
 その後、皆が持ち寄った物を使っての、ちょっとした祝勝会が始まる運びとなる。竜矢の作った焚火を囲んで、ケルベロス達は集まった。
「これで寒さをしのいでください」
「夜の海は冷えますからね」
 戦いを終え穏やかな雰囲気に戻った和希は、バスタオルや外套を配る。エルムも毛布を渡して回った。
「あったかーいほうじ茶ですよー」
 環は心和む温かなお茶を淹れた。かわいいカップルを見やって、にっこり。
「真白い真白い宝物 黒い海に隠してね 黒い宝石が浮かぶ甘い海 ほんの少しのお塩がスパイスよ」
 陸也は詠唱し、『悪戯かお菓子か(トリック・オア・トリート)』の力でお汁粉を創造した。お餅という名の宝物が、小豆の海の中で待つ。
「あったかいものと聞いて」
「ぬ、ぬいぐるみ?」
 真顔でアンセルムが差し出した物に蜜姫は戸惑う。
「こうやって使えるのですよ!」
 かりんは持ってきた湯たんぽを、うさぎぬいぐるみの背中へ入れる。
「あら、素敵ね」
 本領発揮した『ぽわぽわ抱っこうさぎ』に、蜜姫はにっこり。
「炙ったマシュマロ、ココアに乗せて欲しいな」
「ええ、火の扱いには慣れておりますので」
 クローネの申し出を快く受けて、アリッサムはマシュマロを炙る。ほんのり、おいしそうな焦げ目がついた。
「ブレイズキャリバーの者が暖房代わりになれんものかの?」
「なあに? 抱き締めてあたためればいいの? ふふっ」
「実際寒いしね、人間ストーブになろっかな!」
 茶化す白と、笑うフィロヴェールにベルベット。
 和んだところで、白は賑やかな場から静かに離れる。フィロヴェールがそっと追うと、彼は海を見つめ、物思いに耽っていた。
(「また、死神に狙われた……か」)
 白の前には、静けさを取り戻した海と、星空が広がっていた。

作者:地斬理々亜 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
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