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「皆さん、クロム・レック・ファクトリア並びにディザスター・キングの撃破、誠にお疲れ様でした!」
小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が、まずは喜色満面で礼を述べた。
「お疲れのところ立て続けで申し訳ありませんけれど、アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)殿や阿賀野・櫻(アングルードブロッサム・e56568)殿が警戒に当たっていらしたお陰で、死神による大規模儀式が行われると判明したであります」
それは、最近多発していた死神による事件が集約された大儀式であり、都内の六ヶ所で同時に儀式が執行されて『ヘキサグラムの儀式』となるらしい。
「儀式が行われるのは『築地市場』『豊洲市場』『国際展示場』『お台場』『レインボーブリッジ』『東京タワー』の六ヶ所であります」
この六ヶ所は、丁度、晴海ふ頭を中心とした六芒星の頂点に当たる位置だ。
「今回の事件では、戦闘力強化型の下級死神や、死神流星雨事件の竜牙兵を模した死神、死神によって生み出された屍隷兵といった死神の戦力に加えて、第四王女レリの直属の軍団も一枚噛んでいるであります」
更には、竜十字島のドラゴン勢力の蠢動も確認されていて、デウスエクス全体を巻き込んだかなり大きな作戦だと想定される。
「皆さんには、判明した儀式場のひとつへ攻め入っていただきます」
6つの儀式場全ての儀式を阻止しなければならない為、それぞれの場所へ充分な戦力を配置する必要があるだろう。
「儀式場の外縁部には、数百体もの戦闘力強化型の下級死神、ブルチャーレ・パラミータとメラン・テュンノスが回遊していまして、儀式場への侵入者を阻止してくるであります」
レインボーブリッジの儀式場のみ、外縁部の防衛戦力が、第四王女レリ配下の白百合騎士団一般兵となっているそうな。
「儀式を行っているネレイデス幹部については、築地市場に『巨狼の死神』プサマテー、豊洲市場に『月光の死神』カリアナッサ、国際展示場に『名誉の死神』クレイオー、お台場に『宝冠の死神』ハリメーデー、レインボーブリッジに『約定の死神』アマテイア、東京タワーに『宵星の死神』マイラが配備されてるであります」
ネレイデス幹部は、儀式を行う事に集中していて、少しでもダメージを被ると儀式を維持できなくなるという。
「即ち、外縁部の敵を突破して儀式中心部へ到達後、ネレイデス幹部にダメージを与える事が出来れば、作戦は成功となります」
儀式が中断された場合、ネレイデス幹部は作戦の失敗を悟って撤退を始める。
「儀式中断より数えて7ターン後に、生き残っていた死神戦力は全て撤退してしまいます」
ネレイデス幹部の撃破を目指す場合は、この7ターンの間に撃破しなければいけないだろう。
「とは申しましても、ネレイデス幹部は強敵である上、儀式場内部では更に戦闘力が強化されますので、単独班の戦力ですと撃破は難しいでありましょうね」
また、周囲に護衛の戦力が残っている場合や、外縁部の戦力が増援として殺到している場合も、幹部の撃破までは難しいかもしれない。
「状況によっては、儀式を中断させた後は戦闘せずに撤退を優先すべきかもしれないでありますね」
ただ、ネレイデスの幹部が多数生き残った場合、今回のような大儀式を再び引き起こす危険性もあるので、可能な限り討ち取りたいところだ。
「外縁部には数百体という大戦力が展開していますものの、『侵入者の阻止』が目的な為、儀式場周囲の全周を警戒しているお陰で、突破する際に戦うのは数体から10体程度となりましょう」
白百合騎士団一般兵は、3名程度の小隊での警戒を行っているので、突破する際に戦うのは3体或いは6体程度だろう。
「また、外縁部から脱出しようとする場合は攻撃の対象外となります」
ただ、全てのチームが儀式場に突入し、増援が来ないと判断した場合、外縁部の戦力が儀式場内へ雪崩れ込み増援となる場合があるので、その点は注意が必要だ。
「儀式場内部には、ネレイデス幹部を守る護衛役が配されてるであります」
築地市場の戦場には『炎舞の死神』アガウエーがいて、数十体の屍隷兵『縛炎隷兵』を集めている。
豊洲市場の戦場には『暗礁の死神』ケートーがいて、数十体の屍隷兵『ウツシ』を集めている。
国際展示場の戦場には『無垢の死神』イアイラがいて、数十体の屍隷兵『寂しいティニー』を集めている。
お台場の戦場には星屑集めのティフォナがいて、死神流星雨を引き起こしていたパイシーズ・コープス十数体を護衛としている。
レインボーブリッジには第四王女レリがいて、絶影のラリグラス、沸血のギアツィンスといった護衛と、十体程度の白百合騎士団一般兵が護衛となっている。
東京タワーには『黒雨の死神』ドーリスがいて、アメフラシと呼ばれる下級死神を数十体護衛として引き連れている。
「儀式を阻止するだけならば、護衛を全て相手取る必要はありませんが、ネレイデス幹部の撃破を目指す場合は、護衛を撃破するか或いはネレイデス幹部から引き離す必要がありましょう」
幹部の撃破を目指すかどうかは、儀式場に向かう戦力と戦場の状況を見つつ、判断して行動して欲しい。
「儀式の護衛役であるデウスエクスは、戦力的に儀式の失敗が不可避であると判断した場合、ネレイデス幹部にわざとダメージを与えて儀式を強制的に中断させ、撤退を促す可能性もあります。ひとつの戦場へ戦力を集めすぎると、敵が早々に諦めて撤退を選択、ネレイデス幹部を討ち取る機会が得られない——という事もあるかもしれないので、お気をつけくださいませ」
かけらはそんな補足で説明を締め括り、皆を激励した。
参加者 | |
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久我・航(誓剣の紋章剣士・e00163) |
ペテス・アイティオ(誰も知らないブルーエンジェル・e01194) |
スノーエル・トリフォリウム(四つの白翼・e02161) |
皇・絶華(影月・e04491) |
因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145) |
クロエ・ルフィール(けもみみ魔術士・e62957) |
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107) |
ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719) |
●
国際展示場。
外縁部担当の2班を先頭に、下級死神犇めく敵陣へ雪崩れ込む6班。
「気張れよ、お前ら!」
「いいかてめぇら、俺様達について来やがれ! 着いて来られないノロマは置いてくから覚悟しとけ!!」
黒豹青年とチーター獣人の大喝が響く。
「さて……ここからは狩りの時間だ」
銀狼の女性は魔力籠もった咆哮を上げた。
全力で敵群を薙ぎ払った2班は、サッと波のように割れて4班の活路を文字通り開いてくれた。
「行って来いよヤロー共! 全部ブッ壊してこい!」
「そちらは頼みます。どうか無垢の死神に裁きを」
黒豹や灰髪レプリカントの鼓舞に加えて、元不良ドラゴニアンの激励も重なる。
「殺したい奴、きっちりぶっ殺してきな。文字通りの雑魚どもに邪魔はさせねえからよ」
8人は、仲間の応援を背に受け、止まったエスカレーターを会議棟目指して駆け上がる。
「わあ……みんな凄い頼もしいんだよ!」
スノーエル・トリフォリウム(四つの白翼・e02161)は、数多の下級死神の露払いと掃討戦に徹する2班へ、芯から感謝の気持ちが込み上げていた。
「みんなの頑張りに報いる為にも、イアイラが儀式の中止を選べないような立ち回りが出来たらいいんだけど……難しいね、マシュちゃん」
当班の目的達成の為にと忙しく頭を働かせるスノーエルを察してか、ボクスドラゴンのマシュは大人しく主人に付き従っていた。
「その……恋心を弄ぶのは……鬼畜……と言えるのだろうな……」
一方、目指す難敵イアイラの所業を振り返って、こちらはこちらで渋い顔になるのは皇・絶華(影月・e04491)。
「それにしても、外縁部担当の皆のお陰で助かるな。多くの死神を撃破できれば、それだけ新たな悲劇の芽を摘む事に繋がるし」
絶華は懸命に視線を巡らせて、イアイラの居場所はどこか見極めようとしていた。
「やっぱ予知による情報のアドバンテージって大きいよね」
因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)は、国際展示場の見取り図を眺めながら、しみじみと呟いていた。
「敵の配置や行動パターンが読めてるゆえの作戦の組み立てだしねぇ」
じっと地図を睨んで唸る白兎。自宅警備員の彼にとって、もしかすると国際展示場は目を瞑ってでも歩ける庭のようなものかもしれない。
「敵に紛れてこっそり近づけば、不要な戦闘を避けられるです!」
そう豪語するペテス・アイティオ(誰も知らないブルーエンジェル・e01194)は、真っ赤な鱗も鮮やかなタイの着ぐるみに身を包んで、ぴょこぴょこ跳ね飛んでいた。
「タイが曲がっていてよ、です!」
果たしてウーロン茶不足による彼女特有の禁断症状かは判らないが、陸に打ち上げられた魚のようにぴちぴち跳ね飛びながら、ナマ足で走るペテスだ。
他方。
「この時期に国際展示場で儀式とか冗談じゃねーぞ」
珍しく怒りを露わに全力疾走しているのは、久我・航(誓剣の紋章剣士・e00163)。
「ヒールで直してもファンタジー要素入ったら今後のイベントに支障が出るかもしれんし、極力施設は壊さずに……無理だな」
航も、死神達を食い止めている外縁部担当2班の大立ち回りを有り難く思って、自分らはイアイラ打倒に尽力しようと発奮した。
「しゃーない、せめてこの怒りは全部敵にぶつけて殲滅しよう。このまま行けばすぐに儀式場へ着けそうだしな!」
その傍ら。
(「私はイズミ君のお祖父さんやお祖母さん達に約束した……必ずイライアを倒す、と」)
ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)の頭の中は、ネレイデス事件の遺族にとっての仇敵たるイアイラの事でいっぱいだった。
「大勢の方に我儘を聞いて頂いてここまで来たのだもの……もう後には退けない。退くつもりもない。絶対にイアイラをこの手で……!」
悲壮な決意を胸に、2階正面玄関を駆け抜けるジュスティシア。
何せ、イアイラと相見える機会を逃すまいと、かなり無理をしてヘリオンに乗り込んだ身なのだ。遺族の無念を晴らす為なら全てを捨てるぐらいの覚悟があるのだろう。
さて。
「色んな班との共同作戦、頑張っていきましょう!」
気合充分といった風情で仲間へ発破をかけるのは、クロエ・ルフィール(けもみみ魔術士・e62957)。
「みんなでおねむになる時間まで、動く食べ物に怯えたりうっかり何かを喚びそうになったりしながら相談したんです。自信持って行きますよ!」
クロエ自身、率先して他班のケルベロスと相談し、イアイラ班の1人として当班の総意や提案を伝えようと奔走していたからこそ、外縁部担当班への感謝は一入だろう。
「愛や恋の想像がつかないわたくしでも、嘘をついて利用していいものでないことは、わかりますわ……」
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)は、知らないからこそ憧れている愛や恋心を騙って凶行に及ぶイアイラの卑劣さに、強く嫌悪していた。
「尊敬できる先輩方の苦労に報いる為にも……無理やりティニーにされた和泉様の仇を討つ為にも……わたくしにできることをいたしましょう」
仇を討つと約束した同居人の顔を脳裡に浮かべながら、ルーシィドも皆に遅れは取るまいと死神の群れが泳ぐ隙間を縫って走った。
●
クレイオーと戦う予定の2班を先頭に、2階の正面玄関よりいよいよ国際展示場へと突入する8人。
中では寂しいティニーが防衛線を張っていた。
力を合わせて強行突破する4班だが、ティニー達も追いかけて攻撃してくる。
「ここの配下って全員、イアイラに殺された少年たちなのでしょうか……?」
寂しいティニーに襲いかかられたルーシィドは、先日対峙した同種の屍隷兵が意識を掠めて、奴の獣腕が振り下ろされる前から刺すような胸の痛みを覚えた。
すると。
「みんなでとっても楽しそう。もしかしてお友達同士なの?」
紫髪のドラゴニアン少女が心細そうに呟いて、ティニーの関心を引いてくれた。
「……私も仲間に入れてくれる? ……あ、や、やっぱり無理よね」
孤独を湛えた紅柘榴の瞳が寂しく揺れる。
思惑通りにティニーの腕が止まった刹那、ルーシィドを背中に庇った紫髪少女は、オーラ纏いし両腕で狂爪の軌道を見事に弾いた。
「この群れはここで抑える」
「どうか皆は先に」
ヘラジカ降魔拳士とエルフ妖剣士の声が背中を押す。
ルーシィドら8人は、作戦通りティニーの妨害に残った班へ後を任せて、ただ走った。
「ありがとうございます……!」
7階の会議棟へ突入した時、イアイラとクレイオーは少なくない護衛に囲まれていた。
「たくさんの可哀想な子達に囲まれて、満足ですか? 恋心を抱かせて、自分のものにして」
早速、ルーシィドが駆けつけざまに大音声を発した。
「そう、恋心を抱かせたと、思っているのですよね、あなたは」
イアイラの注意を引きつけ、あわよくばクレイオーと分断した状況で戦えるように、と。
「でもあなたは、ただ弱った心につけこんだだけ。その子達は手を指し伸べてくれる人を求めていただけ。あなたが奪ったのは恋心ではありませんわ」
妖精弓を引き絞り、懸命に弁舌を揮うルーシィド。
「だって、あなたでなくても良かったんだから」
だが、妖精の加護宿りし矢がイアイラの脇腹をいかに追尾して捉えても、
「そんなことも分からないなんて、可哀想なイアイラ」
ルーシィドの決死の挑発は、イアイラへ届かなかった。
「私が寂しいティニーを増やすのは何故だと思っていたの?」
イアイラは変わらぬ甘い声で謳った。
「私が恋心で満たされたいから? ……それは違う」
あの方の役に立ちたいからよ。
せせら笑ったイアイラの声はぞっとする程冷たかった。
そして、彼女の周りに浮かんでいた水球もまた、物理的な冷えと圧迫感を齎すべく銃弾の如き速さで飛んでくる。
「ウーロン茶以外飲む気はありませんです!」
ジュスティシアを庇って水球の突進を喰らったのはペテス。
「あなたが立ち向かっているのが誰なのか、改めて見せつけちゃうんだよ?」
イアイラの一撃は傍目にも判るほど重かったが、これしきで気圧されてはいけないとスノーエルは奮い立ち、竜語魔法の応用たるドラゴンの幻を己が背後に生み出す。
「……さぁここに、おいでっ!」
マシュによく似た幻影は恐ろしい形相でイアイラを睨めつけ、けたたましい唸り声を上げて美しい尾ビレを竦ませた。
マシュも偽者に負けじと綿属性をインストールして、ペテスの異常耐性を高めた。
「貴様は恋されて来たのだろう」
斬狼を履いた足で、機敏に跳躍するのは絶華。
「なら……貴様にとって恋した者達はなんだったのだ?」
鋭い詰問と共に、流星の煌めきと重力宿した飛び蹴りをイアイラの下半身へ炸裂させて、尾ビレの動きをますます鈍らせた。
「死んだ後に自分と似たような境遇の友達がたくさんできるっていうのも、皮肉が効きすぎじゃない?」
白兎は、寂しいティニーに同情心を覚えつつ、オウガ粒子を放出。
全身の装甲から眩い光を振り撒いて、前衛陣の超感覚を覚醒させた。
「国際展示場を占拠して謎の儀式など言語道断!」
ペテスは相変わらず鯛着ぐるみでビチビチ走り回る。
「冬のイベントに向けて原稿作業してる人たちとその人たちが待たせてる印刷屋さん全員に謝罪するです!!」
エラの中から覗かせたパイルバンカーの杭をドリル回転させて、イアイラの細いウエストを怒りのままに抉り貫いた。
「話に聞いただけだが、虫も殺せなさそうな顔して随分と好き勝手やってくれたようで……いや、現在進行形か」
航は、日本刀を抜き払う際にもじりじりと後退り、何とかしてイアイラをクレイオーから少しでも引き離そうとする。
「デウスエクスなんてどれもそうとはいえ、死神もいちいちやる事がえげつないんだよなぁ……あんまり関わった事ねーけど」
その上で空の霊力帯びし白刃を閃かせ、イアイラの尾ビレの傷跡を正確に斬り広げた。
「色んな恨みを抱えている様だね……死んで償って貰うね」
冷たい声音で言い放つや、古代語を詠唱するのはクロエ。
同時に魔法の光線を放射して、イアイラの身体をまるで石像のように硬直させた。
「イアイラ! 多くの子どもの心と命を弄び、家族をも慟哭させた報いを受けてもらう」
ジュスティシアはJ&W2000 対物狙撃銃の銃口をイアイラへ向けて、真っ直ぐに怒りをぶつける。
狙い澄ました凍結光線がイアイラの鱗に覆われた脚部に命中して、その発達した筋肉から熱を奪った。
●
幾ら広くとも同じ7階、ひいては同戦場にいるイアイラとクレイオーを分断するには、8人の集中攻撃だけでは力不足だった。
分断の具体的な策を仕掛けられぬまま、戦闘開始から3分が経って。
「て、ティニーを倒したくらいでいい気になるなよ! わ、私は強いんだからなっ!!」
クレイオーが癇癪を起こしたのへ気づいたイアイラが、弾かれるように床を滑り飛んで助太刀へ向かった。
「クレイオー様、短気はお鎮めくださいませ。まだイアイラめがおります!」
主君の窮地に護衛を何体も引き連れ、涙を浮かべて駆けつけるイアイラ。
「おぉ、イアイラ。良く駆けつけてくれた。其方がいれば百人力だ……!」
クレイオーの素直な賛辞からは、奴の芯から安堵した心持ちが看て取れる。
「どこまで行っても逃がさないんだよ」
いち早く追いついたスノーエルが、鋭い声を投げた。
微かに滑空したまま白詰草のブーツを履いた足先から、理力溢れる星型のオーラをイアイラ目掛けて蹴りつける。
マシュも主の意思に忠実に綿属性のふわもこブレスを吐きつけ、イアイラの今しがた鱗が砕けたばかりの下半身をますます痛めつけた。
「……本来は愛を司る貴様ならば……愛の代名詞たる我がチョコを与えたかったが……何故か止められてな」
絶華は何故だか悔しそうに歯噛みする。ちなみに賢明な判断をしたのはクロエ。
「なので貴様にはグラビティでこそないが我が圧倒的なパワーのチョコで歓喜を味わわせよう」
言うや否やイアイラの口に突っ込んだのは、漢方やら腐肉やらミミズやらを混ぜ込んだカカオ1000%濃度チョコ。
「貴様は死神で人魚なのだろう! ならばこれで歓喜の雄叫び……」
「何の真似かしら」
「これでも駄目か。では……直接切り刻むしかなさそうだな!」
しょぼんとする絶華だが、気を取り直して古代の魔獣の力を宿し、カタールを爪の如く振るっては神速の斬撃を狂ったように浴びせた。
「まっすぐ向いてるつもりでも、端から見ればフラフラだよ!」
白兎は、イアイラの真下に対象の方向を変える床を生成。
床そのものをぶつけてダメージを与えるのみならず、奴が誤った向きへグラビティを空撃ちするよう仕向けた。
「神にネクタルあろうとも、地には人の叡智たるウーロンがあるです!」
頃合いを見て大地の精髄"ウーロン"をグラビティで霧状に変成するペテス。
自分やマシュ含む前衛陣の遺伝子に刻まれた原初の脈動を呼び起こし、体力を回復させた。
「OK、この場で確実に仕留めるぞ!」
航は、ジュスティシアの7分を告げるアラームを聞いて、日本刀を持ち直す。
「まぁこんだけあちこちでヘイト買ってりゃタコ殴りにもされるわな」
三日月にも似た緩やかな弧を描く斬撃で、イアイラの急所を的確に斬り裂いた。
「みんな、一斉攻撃いくよ!」
クロエは時間の魔術でイアイラの時間を数秒だけ操り、奴の周辺含む時の流れを停止する。
そうして生み出した隙を突いて、雷撃呪文を付加した戦斧を思い切りイアイラの背中へ叩きつけた。
「承りました。参りますわ」
ルーシィドもこの時ばかりは回復の手を休めて、妖精弓の狙いを定める。
妖精の加護の宿った矢がイアイラを逃がさずに追尾、喉元にズブリと突き刺さった。
「全ての人間がお前の消滅を待ち望んでいる——その薄汚い魂の欠片も残さない!」
最後は義憤骨髄に徹したジュスティシアが、迦楼羅炎掌を嵌めた手を振り上げながら肉薄。
視認困難なぐらい密やかな斬撃を繰り出し、イアイラの急所を掻き斬って遂に息の根を止めた。
「クレイオー様……良かった……あなたさえご無事なら、悔いは」
血泡を吐きながらイアイラが最期の力を振り絞るも、言葉は途切れた。
「うぅ……イアイラァ……逝くんじゃない……逝ってはだめだぁ」
人魚の亡骸を揺り起こし、クレイオーが慈悲を垂れるも、もはや彼女の耳には届かない。
「――覚えていろ。ケルベロス。我が身を護る為に散っていった者達の為にも、堕神計画は必ずなしとげて見せる。その時まで、精々あがき生き続けるがいい……」
クレイオーは、自分へ辛酸を舐めさせたケルベロスらへ呪詛を吐いて、姿を消す。
時を同じくして、2階で防衛線を張るも足止め班にじわじわ数を減らされていた寂しいティニー達、加えて階下で外縁部担当2班に翻弄されていた下級死神達も、撤退を始めた。
作者:質種剰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年11月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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