血に濡れた星屑の宵

作者:幾夜緋琉

●血に濡れた星屑の宵
 愛知県名古屋市、中区金山。
 東海地方の中心地の一つであり、繁華街でも有る此処には、昼夜問わず多くの人が往来する。
 そんな繁華街の煌めく灯を眼下に収めながら、遥か上空でくすりと微笑む【星屑集めのティフォナ】。
 暫し眼下の人の息吹を眺め、そして次に彼女はその宙空に奇妙な魔法陣の様な物を描く。
 ……そして、その魔法陣から産み出された、奇っ怪な姿の【パイシーズ・コープス】を召喚し。
「さぁ、竜牙流星雨を再現し、グラビティ・チェインを略奪して来なさい。私達の真の目的を果たす為に……」
 呪文のようにその言葉を詠唱し……それに応じた彼らパイシーズ・コープス達は、次々と星空から降下。
 地面に着地するなり、その場に居た一般人を殺戮。
『う、うわぁぁぁ!!』
 叫び声を上げる周囲の一般人らへ、パイシーズ・コープスはニヤリと笑みを浮かべ、更なる殺戮を始めようとした。

「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね! 感謝ッス!!」
 と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスに目を煌めかせながら、早速説明に入る。
「ケルベロスの皆さんに集まって貰ったのは他でもないッス。愛知県名古屋市中区の金山駅の前に、死神にサルベージされたと思しき竜牙兵『パイシーズ・コープス』が現れて、人々を殺戮する事件が予知されたんッスよ! 急ぎヘリオンで彼らの襲撃を止めてきて欲しいんッス!」
「ただ、パイシーズ・コープスが地面へと落下してくる直前までは、周囲に避難勧告を行う事が出来ないッス。事前にそれをすると、彼らは他の場所に出現してしまうっすから、事件の阻止も、大量殺戮も阻止出来なくなってしまうんッスよ! 空から彼らが姿を現わした瞬間からなら、彼らが狙いを切り替える事も無く、更に避難誘導なども警察の方等に任せられるッス!」
 更にダンテは、詳細を詰める。
「今回現れるパイシーズ・コープスには3つの種類が居る様ッス」
「先ずはαタイプ、ゾディアックソードを持った前衛タイプの者ッスけど、これが1体居る様ッス。こいつはディフェンダーの動きで、ケルベロスの皆さんの攻撃を後ろにと押さぬ様に立ち回る様ッスね」
「次にβタイプ。簒奪者の鎌を持った、ジャマータイプッス。こいつらは、バッドステータスを中衛の一から撃ち込んできて、ケルベロスの皆さんを常にバッドステータスに陥らせようとするッス。これが一番勢力が多く、3体居る様ッスね」
「最後にγタイプ。バトルオーラを纏うキャスタータイプ。こっちは攻撃も防御も出来る遊撃隊のタイプで、攻防バランス良く仕掛けてくるッス」
 全て合わせて五体のパイシーズ・コープスが出現し、彼らは一般人殺戮に勤しもうとするッス。ケルベロスの皆さんが現れても、決して撤退する事なく、殺戮を仕掛けてくるッスから、一般人の方々を護りつつ、倒して来て下さいッスよ!」
 そして最後にダンテが。
「パイシーズ・コープス達は、通常の方法でサルベージされた竜牙兵とはちょっと違う様ッスね……でも、詳細はまだ分からないッスから、ケルベロスの皆さん、討伐宜しく頼むッスよ!」
 と、力強く拳を振り上げるのであった。


参加者
ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)
春花・春撫(プチ歴女系アイドル・e09155)
玄梛・ユウマ(燻る篝火・e09497)
加藤・光廣(焔色・e34936)
遠野・姫貴(魔ヲ狩ル者・e46131)
ベルゼルガ・グランツ(深海の竜影・e65472)
リリベル・ホワイトレイン(怠惰と微睡・e66820)
吾妻・凜人(歪なノブレスオブリージュ・e67621)

■リプレイ

●星空に響く叫び
 愛知県名古屋市、中区は金山。
 東海地方の中心地の一つであり、繁華街の一つ。
 ……そんな繁華街の空に、突如姿を現わしたのは『星屑集めのティフォナ』。
 彼女によりサルベージされた『パイシーズ・コープス』が、繁華街で楽しんで居る一般人達を不意に殺戮しようと言う事件。
「……罪もない一般人を、滅ぼそうとは……絶対に許せないね……」
 と、吾妻・凜人(歪なノブレスオブリージュ・e67621)はにこやかながらも、その口調には少々怒りを孕んでいる。
 更に続けて。
「……パイシーズ・コープス……話しに聞いていた不思議な死神ってこいつらか?」
 とベルゼルガ・グランツ(深海の竜影・e65472)が小首をかしげると、それに玄梛・ユウマ(燻る篝火・e09497)も。
「ええ……そうですね。死神は今、東京でも大がかりな事をしていますが、こちらも見過ごす訳にはいきませんね。一般人の犠牲を出さない為にも、全力を尽くさないといけません……!」
 静かに拳を握りしめるユウマ、それにピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)も。
「ま、また市街地に竜牙兵かぁ! 死神の手先かなんだか知らないが、グラビティ・チェインは絶対奪わせないぞ!」
 強く拳を振り上げるピジョン。
 それに対し、加藤・光廣(焔色・e34936)も。
「ああ。ここは俺のほぼ地元みてーなもんだからな。必ず凶行は阻止してやる」
 いつも以上に力強い言葉で、決意を紡いだ光廣。
 ……そんな光廣の言葉に、春花・春撫(プチ歴女系アイドル・e09155)がニコッ、と微笑み。
「そうですね。加藤さんの地元愛、素晴らしいと思います。その地元愛に、わたしもこたえたいです!」
「ん……応援してくれるのかい? あんがとよ!」
 と、春撫に感謝を伝える光廣。
 ……そんな二人の言葉に、リリベル・ホワイトレイン(怠惰と微睡・e66820)が。
「んー……そうだな。まぁ、頑張ろうぜ~、って事で。でもここ、結構人多いんだな?」
 と、不意な問いに対し、光廣とユウマが。
「……まぁ、ここは名駅に次ぐターミナル駅だ。夜も過ぎた頃、飲みに繰り出す人も多いからな。放っておけば、被害はかなりの物になってしまうだろう」
「ええ。本当は先に避難させて起きたい所ですが……先に避難させる事は出来ないと言われてしまいましたしね……悩み所ではあります」
「そっか。んじゃ仕方ねぇな。取りあえず、空から降りてきたらさっさと避難させて、ちゃっちゃと倒す、と! やってみようぜ!!」
 何処か自信満々なリリベル。
 そして、ベルゼルガと遠野・姫貴(魔ヲ狩ル者・e46131)が。
「初めての依頼とは言え、手を抜くつもりは毛頭無い。さっさと蹴散らしてくれる……!」
「だな……今回の相手も強いんだろうな。五匹のパイシーズ・コープスが居るらしいが、確実に一匹ずつ仕留めていくとしよう」
 と、姫貴の言葉。
 それに傍らのテレビウムの『シュウ丸』は、ちょっと心配そうな面持ちを向けるのであった。

●風星の屑
 そして、ケルベロス達が繁華街へ展開し、暫し歩く。
 目の前の繁華街は、日常の喧騒に包まれている。
 酒に酔う者、カラオケ等に向かう者……思い思いの楽しい一時を楽しんで居る。
 そんな一般人の平穏を眺めつつ、周囲と上空に注意を払いながら歩き……十数分経過した時。
『ヒュゥゥゥ……!!』
 突如その場に、空からの落下音が響き渡る。
 その音と共に、煌めきと共に雲間から現れる……その影は、パイシーズ・コープス。
「現れました! 皆さん、私達はケルベロスです。至急、此処から避難して下さい!」
 と、ユウマは大声を上げて、周囲の人達に避難勧告。
「そこの警察の方々、近くの一般人を連れてここから避難を頼む。俺達は、あいつらを此処で足止めさせる……!」
 その一方でベルゼルガらが、警察官や、警備員の方達に指示を与え、其の場から避難する様に的確に指示を与えていく。
 そして他のケルベロス達は、パイシーズ・コープスの真っ正面に対峙すると。
「この力は弱き人々を守る為に」
 短く呟きながら、凜人は地獄化した右目付近に触れる。
 すると……その触れた部分に炎が灯り……彼は戦闘態勢を取る。
 そして。
「避難誘導は警察の人にお任せー。という訳でこっちはちゃっちゃとバトル開始してタゲ取りしよう」
 とリリベルの言葉に頷きつつ。
「ああ。出て来てもらって悪ぃけど、早々に立ち去ってもらうぜ!」
「そうだ、ここはてめぇらの場所じゃねぇ! 消し飛べぇ!」
 と姫貴と凜人が、辛辣な言葉と共にケイオスランサーと死天剣戟陣を初っ端から叩きつける。
 その攻撃を受けてから最前線に立ちはだかる。
 対し、構えるαタイプのパイシーズ・コープスは……ゾディアックソードで迎撃。
 しかしながら、仲間が攻撃を受けたとしても、残るβ、γは余り気にしている様子を見せない。
 いや、寧ろ……目前の敵をただただ殺戮する為に動くパイシーズコープス。
 そんな彼らに対しピジョンは。
「お前たちがサルベージされた竜牙兵か。なんか派手になったな!?」
 と言うと、それに姫貴が。
「そうだな。でも死神が堂々と現れちゃだめだろ?」
 と肩を竦めるが……当然パイシーズ・コープスは一切構う様な事は無く、とりあえず攻撃を継続。
 そしてユウマは、巨大な鉄塊剣を縦に構え、間へと割り込んでいく。
「その攻撃は通しません!」
 そして、パイシーズ・コープス達の攻撃が一巡した所で。
「さあ、一曲聴いていってよ!」
 コートを脱ぎ、アイドル衣装姿にチェンジする春撫……そして、βに向けて接近、スカルブレイカーの一撃を放つ。
 その一方で、クラッシャーを中心とした前衛陣にブレイブマインで壊アップを付与し強化。
 そしてピジョンが。
「……頼んだ」
 と短く『妖茨の残香"Order of petal"』での狙アップを後衛陣に付与すると、それを受けたリリベルがエスケープマイン、彼女のウイングキャットのシロハが猫ひっかき。
 さらにベルゼルガが破鎧衝を穿ち、ユウマはホワイトレインにブレイクルーンで破剣を付与。
 次の刻……パイシーズ・コープスに正気が有るはずも無く、どんどん押せ押せの展開。
 簒奪者の鎌のβが沢山のバッドステータスを付与し、それを補助するγのバトルオーラ。
 そして最後にαのゾディアックソードが大ダメージを付与する、という形。
 それら攻撃は、連携とは言えないが、立て続けに食らうと、中々厳しいのは間違いない。
 ……そんな攻撃をユウマだけでなく、ピジョンのテレビウムのマギーと、シュウ丸が入れ替わり立ち替わりに防衛展開し、ダメージを分散。
 そして、受けたダメージは自己回復と共に、光廣のブレイブマインで体力回復を補助。
「光廣さん、ありがとうございます!」
 と御礼を言うユウマに光廣が。
「ああ、宜しく頼むぜ!」
 と、声を返す。
 ……そして、敵陣の攻撃をかいくぐった後、ユウマは。
「ブラッドさん、いいですか?」
 と声を掛けると、ピジョンは。
「ああ。えーっと? ここで起動だったっけ?」
「ええ。ブラッドさんとこうして肩を並べて戦うのは久しぶりですが……よろしくお願いします!」
「了解」
 くすりとピジョンが笑い、彼のアイスエイジに続き、ユウマが達人の一撃。
 その連携攻撃を横目に見ながら、リリベルが。
「んじゃ私もー。ファイナルソード・カグツチ!」
 『終剣・迦具土』と、猫ひっかきを連携し、さらに凜人が。
「我が刃は焔! さあ、地獄の業火を浴びせてやるよ!」
 と『斬魔の剣・獄炎』の一閃……その一撃にて、パイシーズ・コープスβの腕が一つ吹き飛ばされる。
『グゥォオオ……!』
 と苦しみ叫び、その隙を突いて。
「死神だろうがなんだろうが、ぶった斬るまでだッ!!」
 とベルゼルガの竜爪撃と、姫貴のグラインドファイアがそれぞれ穿ち、そして春撫が。
「えっへへ、わたしのビート、たくさん感じていってね!」
 と『戦打楽』を討つ。
 ……と、その攻撃を耐えきれず、βの一匹目が崩れ墜ちてしまう。
『グゥ!?』
 と、少し驚愕したような感じを示したパイシーズ・コープス。
 ……だが、その隙を活かして。
「余所見している暇はありませんよ!」
 とユウマが声を上げ、挑発は止めない。
 ……それにパイシーズ・コープスらは攻撃のターゲットを、又ケルベロスらに向けて来る。
 敢てその攻撃を引き受けながら、一撃、一撃を確実に継続。
 ……数分を掛けながらも、一体、また一体と仕留め、β3体を全て討ち倒し……残るは後αとγ。
「αは躱して、γを先に倒すぞ!」
 とベルゼルガの声に頷き、包囲されたγに向けて総攻撃。
 ……ディフェンダーのαはベルゼルガが牽制攻撃で惹きつけ……攻撃をγに集中。
 猛攻撃は、数分の内に体力を完全に削り取る。
 ……戦闘開始から十数分で、残るは後一匹のみ。
 そんな最後の一体に凜人がブレイズクラッシュ、リリベルのスターゲイザー。
 そして、姫貴の黒影弾に、春撫の旋刃脚。
 ……多量の連携攻撃に、膝を突いたα、そして。
「ぶっ壊してやるァ!!」
 獰猛な叫びと共に、渾身の竜爪撃を放つと……その一撃に、全てのパイシーズ・コープスらはその場に崩壊するのであった。

●煌めく灯に
 そして……全てのパイシーズ・コープスが消え失せ、繁華街は、何とも言えない静寂に包まれる。
 ただ、パイシーズ・コープスを倒しきり……振るいし刀をそっと納めた凜人は。
「今度は守れた、んだよな」
 と静かに呟き、其の場に軽く座り込む。
 その横では、姫貴が失するパイシーズ・コープスの影に向けて。
「……運が悪かったな。恨むなら、お前らを造った奴を恨みな……弔いはしてやんよ」
 と瞑目し、静かに祈りを捧げる。
 ……取りあえず、至近の緊急事態は無事に止められたのは間違い無い。
「しっかし……死神の奴ら……まだまだ来そうだな。懲りねえ奴らだよな、本当」
 と、瞑目から肩を竦めた姫貴。
 それに光廣が。
「全くだ。だが……俺が庭のようにしている土地に手を出したことを、奴らには必ず後悔させてやる。郷土愛、なめんじゃねぇぞ!!」
 拳を空に突き上げ、叫ぶ。
 自分の大事な故郷、そこを荒れされ、怒りを覚えるのは当然。
 そんな光廣に、春撫はこくり、と頷きつつ。
「そうですね……いつかはしっかり、『星屑集めのティフォナ』にけじめを付けて貰いましょう……と、皆さん、色々と荒れてしまいましたし、手分けして片付けませんか?」
「おっけ~。でもヒールは出来ないから、私は事後処理の手伝いでもするかな」
「そうですね。警察の方と協力して、後始末をお願いします。ヒールグラビティを使える人で、破壊された所を一つずつ治していきましょうか」
「了解だよ。繁華街だし、余り時間も掛けたくないしね」
 春撫、リリベル、そしてピジョンら、皆で手分けして、周囲を色々と修復。
 暫くし、避難していた一般人達も其の場に戻り始め……日常を取り戻す。
 その光景に安堵の一息を歯来つつ、ケルベロス達はその場を後にするのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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