錦秋の緑蛇

作者:寅杜柳

●秋の山にて
 岡山県は奥津渓。
 目の醒めるような鮮やかな紅葉に、清廉な水の流れる秋の山奥。やや肌寒く、けれど歩くには丁度いい位の時期は一年の中でも人気のある季節であり、素晴らしい景観に多くの人々で賑わっていた。
 一組の親子連れが遊歩道をゆっくりと歩いている。両親と思われる男女、小学校高学年くらいの少年と低学年の少女はその景色に感動したり、はしゃいだり。楽しそうに歩いていた。
「あれ、なんかあそこおかしくない?」
 少年が指を差した先には紅葉に似合わぬ緑の点。その点は徐々に広がり、緑鱗の集まり、そしてカメレオンのような姿のドラグナーの姿が現れる。
「これだけいれば十分だろう、狩りを始める! ニンゲンよ、グラビティ・チェインを我が主に捧げよ!」
 唐突に表れたドラグナー、堕落の蛇達の手のナイフがギラリと輝く。
 その直後、紅葉のものではない朱と人々の悲鳴が、穏やかな秋の山に響き渡った。

「皆ちょっと集まってくれないか。ドラグナーの事件が予知された」
 ヘリポートに集ったケルベロス達に、呼びかけるのは雨河・知香(白熊ヘリオライダー・en0259)。
「岡山県北部の奥津渓――この季節は特に観光名所として有名かな。ここに紅葉狩りに来た人達を、『堕落の蛇』というドラグナー達が現れて襲撃するんだ。かといって、出現前に避難勧告をすると他の場所に出て来るなんかして事件の阻止も出来ず、一般人への被害も大きくなってしまう可能性がある」
 厄介な奴らだねえ、と知香は苦々しげな表情で説明する。
「だけど、ヘリオンで急行すれば事件が起こる前に現地に到着できる」
 どうか、ドラグナー達の襲撃を阻止してくれないか。そう彼女はケルベロス達に要請した。
 そして知香は地図を広げ、説明を開始する。
「山の紅葉に紛れて潜伏している堕落の蛇達は三体、潜伏しているのは……この辺り、になるね。この状態のドラグナー達を一般人達が識別するのは不可能だけど、ケルベロスならば注意してよくよく索敵すれば発見かもしれない」
 もし人々に襲い掛かる前に発見し先に仕掛ける事が出来れば有利に戦いを始められるだろう、と白熊は説明する。
「それから戦闘能力についてだけど……攻撃方法は惨殺ナイフに似た攻撃がメイン、あと舌を鋭く伸ばし守りを貫いてくる攻撃方法もある。ただ、隠密偽装に特化しているからか個体としての能力はそこまで高くないみたいだね」
 そこまで説明すると、知香はケルベロス達を見回す。
「紅葉に紛れて人を襲うなんて真似を許すわけにはいかない。この季節を愉しみに来ている人々達の為にも、確実に討伐頼んだよ!」
 皆なら大丈夫! そう知香は、期待に満ちた言葉で締め括りケルベロス達を送り出した。


参加者
シェミア・アトック(悪夢の刈り手・e00237)
モモコ・キッドマン(グラビティ兵器技術研究所・e27476)
キャロライン・アイスドール(スティールメイデン・e27717)
カヘル・イルヴァータル(老ガンランナー・e34339)
晦冥・弌(草枕・e45400)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
リリベル・ホワイトレイン(怠惰と微睡・e66820)
アーデルハイト・リンデンベルク(最果ての氷景・e67469)

■リプレイ

●敵は紅の中に
 秋の末の奥津渓は人々で賑わっていた。
 空の青に映える燃えるような紅葉と縷々と流れる清水の透明さと波立つ白、穏やかなせせらぎは踏みしめる枯葉の音はまさに秋そのもの。これから起こるかもしれない惨劇の事など知らぬまま、人々は幸福な時を過ごしていた。
(「……かくれんぼとかやったことないなぁ…実家で迷子になったことはあるけど……」)
 紫眼を凝らし、シェミア・アトック(悪夢の刈り手・e00237)は紅葉に馴染まぬ不自然な緑点を探している。観光客に紛れつつ、互いの距離は急襲にもすぐ合流できる程度の距離で周囲を観察、景色に紛れているドラグナーを探り出そうとする。
(「こそこそと隠れながら…いい度胸だよ、見つけ出して斬り刻んであげる…!」)
 擬態が得意でも馴染ませられない部分があるなら隙はある。違和感がないか、木陰や木の上も注意深く彼女は視線を向ける。
 そんな彼女の近く、ゲームで鍛えた眼力、そして見た目のみでなく音や匂いにまで不審な点がないか気を配っているのはリリベル・ホワイトレイン(怠惰と微睡・e66820)。いつも見るモニターとは違うが、それでも違和感を見落とさないよう集中している。
「むぅ……早く見つけないとダメなのに……」
 リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)も隠密気流で気配を消しつつ、周囲を警戒している。普段も今回も無表情、けれど彼女をよく知る者なら今回はやや焦りが滲んでいる様子に気づくかもしれない。
(「以前にも倒したのにまだまだいっぱい堕落の蛇がいるね。この前は戦闘不能に追い込まれたけど……」)
 今度はヘマをしない、そう決意しながら青の目を皿のようにして周囲を確認している。
「うんうん、とっても綺麗に撮れたなぁ!」
 一方、観光客で混んでいる場所に紛れている晦冥・弌(草枕・e45400)の表情はデジカメで撮影した景色に淡い笑顔を浮かべていた。一通り確認すると、別の方向にカメラを向ける。
(「折角の紅葉も、彼らは興味ないんだろうな」)
 世界はこんなにも綺麗なのに、少し残念に想うけれどもそれはそれ。緑点や不審な影がないかカメラを覗き込む。
(「この奥津渓で下劣な血祭りなぞ見たくはないのう」)
 溢れる色が織り成す美しい風景を眺めつつ、カヘル・イルヴァータル(老ガンランナー・e34339)はしみじみ思う。
「折角観光できる機会じゃ。手早く見つけて仕留めてやるわい」
 人々に紛れる彼の姿は普通の観光客のようで、それでいて眼光は鋭い。
 少し遊歩道から離れた地点、と言ってもすぐ合流できる程度の距離を三人のケルベロスが歩いている。
「この辺りにはいないようですわ」
 周囲の熱源を確認していたキャロライン・アイスドール(スティールメイデン・e27717)がサーマルスキャナーから視線を外し、仲間達を見る。隠密特化のドラグナー達ゆえに対策されているのかもしれないが、熱源感知で捉えられずともその注意深さに見落としはないはずだ。
「こうしている奴らは草葉の陰に潜んでいるのが定番というものだけれど、どうかしら」
 白雪と氷の印象を見る者に抱かせるアーデルハイト・リンデンベルク(最果ての氷景・e67469)は、アンニュイな表情と楚々とした立ち振る舞いのまま周囲を冷静に見渡す。
(「……アダムとイヴの逸話から、かしら」)
 いいえ、と頭を過ぎった考えを打ち消す。話を聞く限り、そのような高尚な逸話を元にした神がかった生命体などではなさそうだ。
「こっちに行ってみましょう!」
 地図を広げ探索した地域と現在位置を確認しつつ、モモコ・キッドマン(グラビティ兵器技術研究所・e27476)は重装も苦にせず遊歩道を外れた場所の確認を進める。
(「早く見つけないと……!」)
 堕落の蛇の目的は一般人の虐殺、そのため潜伏場所はある程度絞られるが、それでも範囲は広い。虱潰しに確実に、ケルベロス達は捜索を続けていく。

●紅に燃え
「これは……足跡?」
 暫く観光客に紛れ歩き続けた後、リリエッタが不自然な位置に複数の足跡がある事に気づく。一つだけなら観光客が歩いたのかもしれない。けれどこれは三つ、その上どれも大型の爬虫類のような形状。
(「精神を集中して……何か気配はないか?」)
 風、水流、梢のさざめき、何か動きはないか。モモコが精神を研ぎ澄ませ付近を見渡し、
「……いました!」
 紅葉の中の緑の点、それを視認した瞬間、地面を強く蹴りその点との距離を詰めたモモコがグラビティ・チェインを乗せたイズナを振り下ろす。その寸前、緑の点は一気に広がり擬態を解除してドラグナーが飛びのく。だが、虚を突かれ反応が遅れた為避け切れず、一太刀を受ける。
「デウスエクス出現、近くにいる人はすぐ避難を……!」
「ぼく達はケルベロスです。落ち着いて、この場から逃げて下さい!」
 シェミアと弌の呼びかけにはっとした人々は慌ててその場から離れようと駆け出す。
「そこね」
 人が多く集まる場所への最短距離の身を隠せる位置、ドラグナー達の目的を考え潜伏場所を予測していたアーデルハイトが二匹目にいち早く気づき影の弾丸を放つが、運悪く尾で直撃を防がれる。しかし、弾丸と同時に飛び込んだ影が一つ。
「リリ、同じ手は食わないよ!」
 奇襲を警戒していたリリエッタが鋼の鬼と化した拳で殴りつけ観光客近くから弾き飛ばす。
(「二匹……後一匹は?」)
 モモコが疑問を抱いた瞬間、銃声が響く。発砲した老銃士の見開いた視線の先、後方の一般人の頭上のなんでもない風景に赤色が流れ出し、緑鱗のドラグナーの姿が顕わとなった。
「そこに居てもバレバレじゃよー?」
「なぜ……」
「たとえ目で誤魔化せたとしても風も音もよく通る渓流じゃ」
 風の流れは誤魔化すことはできんのじゃよ、と目にも止まらぬ速度で撃ち抜いた老ガンナーは茶の瞳を眇め、帽子に手をやる。彼のボクスドラゴンも既に戦闘準備は万端。
「斬り、刻め……!」
「はいドーン!」
 更に奇襲を警戒していたシェミアが即座に蒼の大鎌を投擲、リリベルがかちりとスイッチを押し込むと、飛来する大鎌と不可視の地雷が起爆し堕落の蛇達の出鼻を挫く。それら短いやり取りの間に、リリベルの翼猫であるシロハが一般人とドラグナー達の間へと割り込んでいた。
 騒ぎの音に警備員も丁度駆けつけたようで、堕落の蛇が狙うべき人々の姿はドラグナー達の周囲から迅速に消え失せていた。
「おのれケルベロス……! お前達から奪ってやろう!」
 三体のドラグナーは一様に得物を取り出し殺気を放つ。
(「脇目もふらず一心にグラビティ・チェインを集めようと奮闘する様にはいっそ感心すら覚えるけれど……」)
 けれど、駄目ね。そう切り捨てるアーデルハイトは勿論の事、それを黙って見過ごすケルベロス達はここにいない。
「此処を血祭りにはさせませんよ。――だって紅葉がもったいないじゃないか」
 風に吹かれれば枯葉は落ちる、そんな自明の理を言うような当たり前の口調で言うと、弌は紅蓮を纏った如意棒を振り回し炎を撒くと、乾いた葉が燃えるように蛇共を灼く。さらに、
「心を空に、鋭き刃に…ただ一振りの刃となれ……!」
 極限まで研ぎ澄ませた魔力を乗せたシェミアの刃、狙いは先程大鎌を投擲した個体。しかし、万全に近い堕落の蛇はそれをナイフで受け流す。飛び退いた彼女に赤色の追撃が伸びる。
(「ナイフのリーチで油断させて舌の一撃……面白い戦法だけど、タネが割れてるなら……!」)
 大鎌を盾にし直撃を避けるが、重い衝撃は彼女の細腕に痺れを感じさせる。
 さらに残り二体のドラグナーが追撃のジグザグに変形したナイフを守りを崩されたシェミアへと振るおうとするが、シロハとアーデルハイトがその斬撃を受け止める。同時、カヘルの箱竜がシェミアへと属性をインストール、それに続き翼猫が羽ばたいて邪気を祓うと、
「さぁ、お仕事をはじめましょう」
「その傷ついた翼を広げ、再び大空高く羽ばたいていけ!」
 アーデルハイトが巻き起こした癒しの風、キャロラインの力強い歌声とギターの音色が重ねられ、負傷した前衛の仲間の傷を癒す。
 攻撃直後の隙、それを狙ったカヘルが精神を集中させ爆発を引き起こすと、リリエッタがオウガ粒子を解き放ち、前衛の感覚を活性化。その恩恵を受けたモモコがイズナに雷を纏わせると、芯を穿とうと真っすぐに突きが伸ばされ命中。三体は一旦離れようとするが、その背後にはシェミアが回り込んでおり気づくと既に包囲は完成していた。
 倒して突破するしかない、そう悟ったドラグナーは一層の敵意をケルベロス達に向け、攻撃を再開する。

 そして数分。
 伸ばされた舌が弌の腕を刺す。傷は浅いが、呪縛を厭うた彼は気合を込め振り払う。
 さらにドラグナーが箱竜へと舌を伸ばす。シロハが割り込み防いだが、残りの一体が変形させた刃で追撃。連続攻撃に守りを一気に崩されたが、生きる事の罪を肯定するメッセージソングが奏でられ大部分の呪縛は祓われる。
 戦場に響く演奏はいつの間にか、傷つきながらも翼を広げ羽ばたく事を応援するメッセージソングから、止まらず戦い続ける者たちの歌へと転調していた。
 そして炎の剣を担ぐ様に構えたリリベルが、
「ファイナルソード・カグツチ!」
 気合と共にその剣で堕落の蛇達を薙ぎ払う。さらに炎を斬り裂くように飛び込んだカヘルが星形のオーラを蹴り込み守りを脆くすると、
「これで動きを止めるよ! ライトニング・バレット!」
 巨大な水鉄砲の形をしたバスターライフルから雷を圧縮した弾丸が放たれる。リリエッタの弾丸は過つ事無く命中、解き放たれた雷は痺れを齎す。痺れた瞬間を狙い澄まし、真っ直ぐに伸ばされた弌の如意棒が喉元を突く。衝撃にドラグナーが一歩下がるが、
「逃さない!」
 時間差で斬りかかったモモコの空の霊力を纏った一撃が、地道に自身を癒やしていた堕落の蛇の努力をごっそりと削り取る。けれどまだ、生を諦めないとでもいうように、雄叫びを上げ堕落の蛇は自身を癒やす為に刃を振るい、アーデルハイトを斬り裂く。
「……嫌ね、痛いわ」
 白い肌に鮮やかな赤が流れるも、彼女は敵の熱に構わず冷静にオーラを溜めて自身の傷を癒やす。
「その首、貰い受ける……!」
 ナイフを振るった後の隙、それを逃さずシェミアの大鎌がドラグナーの生命を刈り取った。

●緑は伏し
 更に戦いは続く。紅葉の木々をニ、三度蹴り飛び上がり、リリベルが流星の軌道で愛用のブーツをドラグナーの頭にめり込ませると、シロハが主に合わせリングを飛ばし追撃する。
 回復の為に堕落の蛇が刃を振るうが、そこにアーデルハイトが庇いに入る。
「頑張ってちょうだい。あと少しよ」
 艶やかな唇から言葉を紡いだアーデルハイトが癒しの風を前衛へと送る。さらに続くカヘルの抜き撃ち。彼が火力を削ぐ事に集中している事と、
「ここで皆さんを倒れさせるわけにはいきません!」
 パールホワイトの衣装を纏った歌姫の、希望の名を持つ魔道ギターの音が、勇気持つケルベロス達の戦う為の意志を歌い上げる声を彩る。彼女の付与する護りがドレインの効果を抑制していた。
 範囲回復を中心に準備していたキャロラインが呪縛の解除と広範囲の治療、カヘルの箱竜が属性をインストールする事で負傷が大きい者の治療を補う。癒し手達の回復に護り手の回復が重なる事で、戦況はケルベロス優位で安定していた。
「そんな汚い舌なんてリリが蹴飛ばしてやる」
 転じてやや大きなコートを後ろに靡かせたシャドウエルフの少女が、疾風のような勢いで距離を詰め蹴りをぶち当て、さらにリリベルの炎剣の追撃。
「ファイナルじゃなかったのか!?」
 先に受けた時の口上に堕落の蛇がツッコミをいれる間もなく、
「蒼炎の一撃、その身に刻め……!」
 シェミアの右腕から地獄が炎として吹き出し、大鎌の蒼炎と合わさり高熱で堕落の蛇を斬り裂く。間を置かず、精神集中したモモコがイズナを奔らせ、ナイフを割り込ませ防ごうとした堕落の蛇の足掻きごと切り伏せるような剛剣が放たれる。
 その傷は致命傷、けれど命を絶ち切るには少しだけ不足。
「それっ!」
 紅蓮を装填したドワーフの少年の如意棒が振るわれ、けれどギリギリで耐えた堕落の蛇が舌を伸ばそうとするが、その前に頭部の中心に正確な銃撃。
「なんじゃ汚い舌を此方に向けるでないわい」
 飄々とカヘルが言い終える前に、ドラグナーは崩れ落ちた。残りは一体。

「凍てつくように氷の華を」
 歌うように軽やかな弌の言葉、伸ばされた指先には少しだけ早い冬の欠片。触れられた緑蛇の緑鱗に透明な氷の華が咲いて、リリベルの炎を帯びた蹴りと、モモコの雷刃突が続く。
 残り一体になり、じわじわと炎に削られ消耗していた分もありドラグナーはあっという間に満身創痍。苦し紛れに伸ばされたドラグナーの舌がキャロラインの肩を貫く。しかし、演奏は止まらない。寧ろ終焉へと向けて盛り上がりを高めていく。
 そこに圧縮されたエクトプラズムの霊弾が直撃、
「甘く見られっぱなしでは女が廃るというものよ」
 アーデルハイトの言葉への反撃に舌を伸ばそうとしたドラグナーの動きが停止、リリベルの氷のハンマーがその隙を逃がさず的確に振りぬかれる。
「迷彩の暗殺者……刈り捨てる……!」
 オラトリオの少女のただ一振りの刃、魔力を乗せた蒼炎の刃が堕落の蛇を深々と切り裂き、
「これで終わりだよ!」
 追撃にリリエッタが雷の弾丸を炸裂させる。
 君達は、この景色に要らないんだよ。弌のその呟きを認識する前に、最後の堕落の蛇もその生命を終わらせた。

●枯れゆく前に
「ふいー、疲れたー」
 弱メンタルには少々堪える戦闘を終え、リリベルが一息つく。
 攻撃を受け止め続け、少し乱れた服装を整えたアーデルハイトが周囲を見やり、状況を確認。避難が速やかに済んでいた事、また周囲への被害もそれ程でもなさそうだ。
「うん、もう大丈夫だね」
 被害の少なかったこともあり、リリエッタやカヘルによる周囲へのヒールも短時間で完了。これで人々もゆっくり紅葉や景観を楽しめるだろう。
「……こんな綺麗な紅葉に、血の赤なんて無粋だね……」
 先程までゆっくり見る余裕もなかった紅葉を見やり、シェミアが呟く。
 虐殺を防げた事に安堵しているモモコ、そしてキャロラインも落ち着いて見回した景色は、これだけの観光客が訪れるに相応しい、素晴らしい彩。それこそ戦いだけには勿体ない程の。
「それじゃ観光再開じゃな!」
 修復を終えたカヘルが仲間達を促す。秋の彩に満ちたこの地をゆっくりと巡るのも悪くはないだろう。
「ええ、いきましょう」
 旅行好きの弌も再びカメラを取り出し、宇宙のように深い青の瞳に期待を輝かせて同意する。

 ケルベロス達はこうして、冬の前の鮮やかな自然をゆっくりと楽しみ、帰路へとついたのであった。

作者:寅杜柳 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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