旋風! ロック魂!

作者:MILLA

●ロックなダモクレス
 とある街角に捨てられていたエレキギター。
 蜘蛛の如き小型ダモクレスは、そのエレキギターに目を付ける。機械的なヒールによって作り変えられたそれは、人型のダモクレスと化した。
 ダモクレスはエレキギターをかき鳴らし、叫んだ。
「ロック・ンローール!!」
 ダモクレスは己の生きざまと音楽を示すべく、野外コンサート会場に向かうのであった。

●予知
「捨てられたエレキギターがダモクレスと化してしまう事件が予知されました。ダモクレスは野外コンサート会場に出没するようです。そこでは、現在多くのアーティストが集うフェスが開催されており、多くの観衆が詰めかけています。放置すれば、多くの人々が犠牲になるでしょう。その前にダモクレスを撃破して欲しいのです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が熱心に説明する。
「ダモクレスは、音楽をすさまじい音量で演奏し、その衝撃波によって攻撃してくるようです。またエレキギターを振り回したりと、なかなか狂暴です。熱いロック魂を持っているらしく、ロックな音楽や生き様を示せば、興味を抱き隙を見せてくれそうではあります。もっとも、私には何をもってロックというのかよくわかりませんけれども……」
 セリカは拳を固めた。
「みなさんの熱いロック魂で、今度のダモクレスも打ち倒せると私は信じています!」


参加者
カトレア・ベルローズ(紅薔薇の魔術師・e00568)
小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080)
九鬼・一歌(戦人形・e07469)
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)
清水・湖満(氷雨・e25983)
萌葱・菖蒲(月光症候群・e44656)
死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)
カグヤ・ブリュンヒルデ(黄金の戦乙女・e60880)

■リプレイ

●フェス会場の襲撃!
 人気ロックバンドの登場でフェスが最高に盛り上がっている最中だった。ロックに目覚めたダモクレスがステージに現れた。バンドメンバーは何だコイツと目を丸くし、観客は演出だと勘違いして大いに盛り上がる。
「オレノ・ロックヲ・聴ケー!」
 ダモクレスがエレキギターを掻き鳴らす。その圧倒的音量に衝撃が走り、ロックバンドが耳を塞いで吹っ飛んだ。
 そんな折にステージに舞い降りる影。世紀末風なパンクスタイルで二挺ガトリングガンを構えて、ダモクレスをお出迎えするのは、九鬼・一歌(戦人形・e07469)だった。
「音楽性に目覚めたダモクレスとはなかなかロックですね」
「誰ダ、オ前ハ!」
「通りすがりのおばちゃんロッカーや。おばちゃんがロック魂見せたるで!」
 一歌の後ろからひょっこり顔を出す小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080)。
 ダモクレスの目がぎらりと光る。
「オモシロイ! ロックで勝負ダ! オ前タチノ・ロック魂ヲ見セテミロ!」
「……と言われましても、何を以ってロックと定義付けるかよくわからないですけど」
「同じくですわね。音楽は好きですけれど、ロックは……」
 カトレア・ベルローズ(紅薔薇の魔術師・e00568)とカグヤ・ブリュンヒルデ(黄金の戦乙女・e60880)、二人のお嬢様が首をかしげる。ロックとは何ぞや、と。
「とにかく、はっちゃけてみましょうかね」
 カトレアが薔薇をマイクに持ち替えた。
 ステージで仲間たちがダモクレスの気を惹いている間に、七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)、萌葱・菖蒲(月光症候群・e44656)が観客たちに避難を呼びかける。しかしフェスの熱狂に包まれている観客たちにその声が届いているとは言い難かった。
「どうしましょうか?」
「……人が、多すぎるわね」
 避難誘導が滞っているのを見たか見ないか、死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)がステージに上がり、スティックを手にドラムの前に座った。本来、ロックに弾けるキャラではないが軽音楽部員である。知識と技は必要な時のためのもの。それに人命もかかっているとなれば致し方なし。刃蓙理は手慣れた手つきでドラムを叩き、歌声をロックに震わせた。
「避難! 避難! 避難! 避難! 避難を甘くみるやつは 非難を浴びて 死ぬのです♪」
 その脅しのような歌は延々と繰り返された。観客は他のどんな声は無視しても、アーティストの歌声には耳を傾ける。刃蓙理の歌によって、ようやくただならぬことが起きたのだと察し始めた。
「大丈夫ですよ、落ち着いて避難してください。私達が付いていますので」
 綴たちの誘導に観客たちがようやく従う。幾許かの後に、会場からはすっかり観客たちが引けていた。清水・湖満(氷雨・e25983)が周りを凍りつかせるほどの妖気を会場内に漂わせ、人の立ち入りを完全にシャットアウト。髪の隙間から鋭い目つきでステージを見つめ、にやりと微笑んだ。
「これで邪魔は入らんね」

●激闘! ロック旋風!
「ロックコソ・我ガ魂!」
 ダモクレスは凄まじい音量でエレキを掻き鳴らし、自慢のデスヴォイスで歌う。歌いまくる。まさに地獄でしか聞かないサウンド! 衝撃がビリビリと伝わり、膝を折るケルベロスたち。
「……音だけやのうて、空気がふるえとるわ。さすがってとこやな。せやけど……」
 真奈は立ち上がり、ダモクレスの浅はかさを笑った。
「それが本当にロックだと思ってんのか?」
「その通り。イチカのロックは音楽性のことを指しません。ロックをするからロッカーなのではなく、ロッカーのすることがロックなのです。汝、ロックを証明するなかれ。汝はすでにロッカーなのだから」
 二挺のガトリングガンを手に、空高く舞い上がり、無表情かつ無感動なムーブでぶっ放す!
「あいむろっきゅー。イチカが銃弾の雨をお知らせします」
 ドゥガガガガガガ!!
 危うくハチの巣にされるところをエレキを盾代わりにやり過ごすダモクレス。
「ヌウ? ステージ上デ・ブッ放スノガ・ロックダト!?」
「Yes、it’s Rock!」
 敵に向けてマグナムを右手に構える菖蒲、
「ここから先は……R指定。派手に決めましょう……Okay Ladies、 it's showtime! Let's Rock!」
 オートパーカッションを起動、軽快なリズムに乗りながら、マグナムを連射!
「オノレ!」
 銃弾ぶっ放すのが何がロックかとばかりに怒るダモクレス、エレキをぶん回して、ノリノリでドラムを叩いていた刃蓙理に殴りかかる。音楽を邪魔されてムッとした刃蓙理はドラムをぶん投げて戦闘開始!
「ロックとは……退かず、媚びず、省みない事です。……バーニング……ファイアー……ッ!」
 深淵より召喚された黒き闇の炎がダモクレスを包み、ごうごうと燃え盛る!
「真のロッカーに……敗北はないのです」
「どうや? おばちゃんの仲間もなかなかなもんやろ。ただ暴れて、まわりの人に危害を与えるのはロックじゃないで」
 真奈が腰を手に得意がる。が、暴れているのは、ケルベロス側も同じなのだが……。
「みんなノリノリやないの……」
 加勢しようにもそうするタイミングを見出せず、ステージの袖で呆れ果てる湖満。
 その横でう~んと考え込むカトレア。
「ロックに疎いと入っていけない空気感がありますわね。まぁ、どの道ダモクレスを倒してしまえば良いのでしょうけど」
「そうですわね。さっさと倒してしまうのがよろしいかと」
「私も同意見ですね」
 カグヤと綴がうなずく。ロック無関心組はさっさと敵を撃破する路線で結託。
「そうやね。ロックなんて関係ないわ。私、クラシック専門やし」
 そうと決まれば情け無用。湖満は冷たい笑みを浮かべたそばに手刀を立てる。そのほっそりとした手に並々ならぬ冷気が纏わりついた。
「行くよ。容赦はせえへんし、する気もないから」
 すり足で敵の背後を取り、手刀を背中に突き立てる。傷口から熱いロック魂も立ちどころに凍り付かんばかりの冷気が走った。すかさず追撃をかけるカトレア。
「この一撃で、完璧にその身も心も凍らせてあげますわ」
 湖満が抉った傷口にさらなる冷気の一撃を叩き込む! それと同時に綴が蹴り飛ばすと、ダモクレスはたまらずよろける。そこにカグヤがゲシュタルトグレイブで高速の回転斬撃を繰り出し、ダモクレスを薙ぎ倒した。
 うずくまるダモクレスの前に、カグヤは仁王立ち。
「どうしたのです? もうお終いですか? 熱いロック魂を持っているのではなかったのですか? それがどういうものなのか、わたくしたちに見せて下さいな」
「オノレ……!! オレノ・ロック魂ヲ侮ルナカレ……!!」

●燃えるロック魂!
「敗北と死の恐怖を感じてからが真のロックですよ。さあ、命ある限り戦いましょう。それがロッカーの生き様というやつです」
 一歌の挑発を受けて、ダモクレスは立ち上がった。
「ウオオオオーー!! オレガロックダ!」
 その悲痛なまでの叫びとともに、ダモクレスが掻き鳴らすエレキの音量はもはや殺人的だった。地を揺るがし、骨の髄にまで響いてくる圧倒的音圧……!
「……あのさぁ、ええ加減にしてよ。めっちゃ耳痛いんやけど」
 湖満が両手を耳で塞ぎ、苛立ちを滲ませた。
「身体を巡る気よ、空高く立ち昇り癒しの力を降らして下さい」
 綴が解き放った気が空で散り、まるで驟雨の如く降ってはデスサウンドを消し去っていく。
「さぁ、皆さん、一気に攻めて行きましょう」
「……ローリング……サンダー……ッ!」
 先陣を切ったのは、刃蓙理。ステージ上空に舞い上がり、そこからダイビングシャドウリッパー! ダモクレスを切り裂く! そこに一歌が容赦なくガトリングガンをぶっ放す!
「ウオオオオ!! ロックンローーーール!!」
 雨霰と降り注ぐ弾丸掻い潜り、ダモクレスはエレキを振り回し殴りかかろうとするが。
「……No Chance!!」
 菖蒲のドラゴニックハンマーが火を噴き、敵の足を止める。
「速やかに終わらせましょう、カトレアさん」
「ええ、そう致しましょうか!」
 綴とカトレアが空を滑るように軽やかにダモクレスの頭上を取る。
「さぁ、焼け焦げてしまいなさい!」
 二人同時に敵の顔面にジャンピングキック!
 キックの摩擦によりダモクレスの全身が燃え上がる!
「ウオオオオ! 燃エルゼ~!!」
 身悶えるダモクレス。
「そろそろ、足にきてるんやないか? せやけど、まだばてるには早いで」
 真奈は腰だめでグラビティを練っていた。彼女は喰らったグラビティを圧縮、己の力に変換する。拳を放ったとき、凄まじい音圧が解き放たれ、ダモクレスを空高くまで吹き飛ばした。
「グッ……!」
 頭からステージに墜落したダモクレス。
 真奈はぐっと親指を突き立てた。
「愛と平和のために戦う、おばちゃんたちこそ、ロックやで!」
「オノレ……マダダ!! オレノロック魂ハ・ソノ炎ハマダ……!」
 ぐぐっと身を起こし、ダモクレスは再度エレキを鳴らそうとした……そのとき。
 虹色の紐が鋭く飛来、ダモクレスの腕を縛り上げた。その際にエレキギターは宙に放り出される。
「衝動のまま暴れるのが貴方のロック魂なのかしら? そうだとしたらわたくしには価値がありませんわね」
 ほとほとうんざりしたようにカグヤが言った。
「放セ……!! オレノエレキガ……!」
「放すものですか! このまま大人しくしていてもらいますわ!」
 ステージの片隅に落ちたエレキギターを拾ったのは、湖満だった。
「……ロックて何やろ。昔腹立って、その人の年収くらいする琴をぶっ壊したことはあるけど」
 ダモクレスを振り向いた湖満の顔に冷酷な笑みが浮かんだ。
 その笑みの意味をダモクレスは察した。
「ヤ・ヤメロォーーーーー!!」
「ごめんねえ」
 容赦はしなかった。手刀をエレキギターに突き立て……。
 ガスッ!!
 鈍い音とともに、エレキは見るも無残な姿に成り果て、地を転がった。
「ウオオオオオオッ!! オレノ魂ガーーーーーーー!!」
 ダモクレスの悲痛な叫びがステージを包んだ。
「OK……Showdown!」
 菖蒲が神をも殺ると謂われるスーパー・デンジャラスなアンチマテリアルライフルを放った。
 その威力たるや凄まじく、ダモクレスのロック魂も悲しみも怒りも、むろんダモクレス自身も、真っ白な灰になるまで燃やし尽くしたのだった。

●ロックとは
「ほんま耳痛い……」
 耳を押さえる湖満の顔は青褪めていた。音楽性の指向の相違云々というより、音楽が破壊的な音量で掻き鳴らされたことが許せなかったらしい。
「結局、ロックとは何だったのでしょうね?」
 とカグヤが首をかしげる。
「ロックとは語りえぬもの。ロックとは生き様なのだから」
 その一歌の答えに、みんな何となく納得したようだった。
 カトレアはふっと微笑み、
「ならば、私たちケルベロスもまたロックなのでしょうか?」
「きっとそうなのでしょうね」
 と綴がうなずく。
 事後処理も終わり、観客も戻った。ダモクレスの襲撃があったとは思えない活気に満ちている。フェスの再開は近い。
「せっかくや、フェスってのを聞いてから帰ろかな。おすすめとかあるか?」
 と真奈。
 ロックの知識がある刃蓙理と菖蒲がお勧めを紹介。みんなでフェス鑑賞という話になった。ロックとは何ぞやという問題はさておき、みんなそれなりにフェスを楽しんだようであった。良い音楽にジャンルは関係なかったようである。

作者:MILLA 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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