空は暁に血濡れて

作者:幾夜緋琉

●空は暁に血濡れて
 兵庫県神戸市、ハーバーランド。
 シンボル的な大観覧車や、アミューズメント施設が建ち並び、土日祝日ともなれば多くの人達が遊びに訪れる。
 ……そんな日常の昼の刻……突如空から降り注ぐ巨大な牙。
『キャアアア!!』
 突然の強襲に、偶然そこを訪れていた一般人らは恐怖に戦き、悲鳴を上げる。
 その恐慌の中、みるみる内にその牙は竜牙兵に変身。
「ガハハハ! サァ、オマエたち、グラビティ・チェインをヨコセ!!」
「ソウダ! オマエたちがワレらにムケた、ゾウオトキョゼツ、ドラゴンサマのカテとナルノダ!!」
 と獰猛に笑いながら、周囲の人々を無差別に殺戮し尽くすのであった。

「皆さん、集まっていただけたッスね! それじゃ、早速ッスけど説明するッス!!」
 と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロス達に元気な挨拶と共に、早速。
「今回、兵庫県は神戸のハーバーランドって所に、竜牙兵が現れて人々を殺戮する事が予知されたんッス!」
「ケルベロスの皆さんには、急ぎヘリオンでこちらに向かって頂き、凶行を阻止してきて頂きたいッス!」
「ただ、竜牙兵の牙が降りてくる前に、周囲に避難勧告を行うと、竜牙兵達は他の場所に現れてしまうッス。そうなると、事件の阻止は出来なくなってしまい、被害が大きくなってしまうッスから、皆さんは竜牙兵の牙が突き刺さってからの行動をお願いしたいッス!」
「幸い、ハーバーランドには警察官の方や警備員の方などが居るッスから、そちらに避難誘導を任せて、竜牙兵を撃破する事だけに集中して下さいッス!!」
 更にダンテは。
「今回、地上へ傷を付けた竜牙兵の数は5体ッス。一体一体は体力も攻撃力も並程度ッスけど、己が手柄を上げようと、全員が巨大なゾディアックソードを大きく振り回し攻撃してくるッス」
「無論ッスけど、周りの一般人を殺戮する事に完全に意識が行ってるッスから、まずは彼らの注意を惹きつける必要があるッス。俺達は強い、という風に彼らを常に挑発する事が重要ッス!」
「当然ながら、彼らは仲間と協力する事は無く、自分が倒れるまで協力もせずに、常に攻撃してくる模様ッスから、ケルベロスの皆さんも、その勢いに押しきられない様注意して下さいッス!」
 そして最後に。
「竜牙兵達は、私欲を見たそうと虐殺事件を起こしているッス。この事態を放置しておく訳には行かないッスから、どうか宜しく頼むッス!!」
 と、拳を突き上た。


参加者
一条・雄太(一条ノックダウン・e02180)
暮葉・守人(浜辺の貴公子・e12145)
天司・桜子(桜花絢爛・e20368)
エドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)
ソシア・ルーンフォリエ(戦舞奏唱・e44565)
レナ・ネイリヴォーム(イニチウムフェザー・e44567)
夢月・焔華(焔の様に高く・e50952)
フロッシュ・フロローセル(疾風スピードホリック・e66331)

■リプレイ

●港を前に
 兵庫県神戸市にある、神戸ハーバーランド。
 海辺に建つ、シンボル的な大観覧車を初めとして、結婚式場に温浴施設、煉瓦倉庫等、様々なアミューズメント施設が立する。
 そのような場所だからこそ、土日祭日ともなれば、多くの人々が訪れて安堵した一時を過ごすことが出来る。
 そんな観光地の日常を、不意に劈くは、突如として空から降り注ぎし巨大なる牙……竜牙兵。
「まったく……毎度毎度人の多いところに降ってきやがって!」
「そうですね。本当……懲りないなぁ……」
 一条・雄太(一条ノックダウン・e02180)にレナ・ネイリヴォーム(イニチウムフェザー・e44567)が肩を竦める。
 そんな彼女の、古くからの友人であるソシア・ルーンフォリエ(戦舞奏唱・e44565)も。
「うん。竜牙兵達は何でこんな事をしているのでしょう? 延命……いや、それ以外にも何か裏がありそうですね」
「そうだね」
 微笑み合い、頷き合う二人。
 そして天司・桜子(桜花絢爛・e20368)と夢月・焔華(焔の様に高く・e50952)も。
「皆で楽しむ為のハーバーランドに竜牙兵が現れるだなんて、人々の憩いの場を荒らさせるわけにはいかないよ!」
「そうですね。ハーバーランドは私は行ったことがないですけど、是非一度行ってみたかったのですよね。今回はケルベロスの仕事で楽しむ機会は無いですけど、人々の命を救うため戦いますね」
「そうだね! 頑張ろうね!」
 そこにエドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)が。
「ヒャッハー! 骨退治でござる! バラしてホラーハウスの飾りにしてやんよー!」
 何か、いつも以上に大興奮しているエドワード。
 それにフロッシュ・フロローセル(疾風スピードホリック・e66331)もテンション高く。
「うんうん! まぁ、どんな骨骨だって、アタシが粉々にしてやるよっ!」
 と、天高く拳を振り上げる。
 ……そしてソシアとレナが。
「何にせよ、今は目の前の災厄を祓うのみです。あ、終わったらレナ、少しいいですか?」
「ん?」
「折角此処まで来たので、あの大きな観覧車にも乗ってみたいなって……あ、あそこの高そうな建物にも」
「ふふ……まあ遊んでみたいのは分かるけど、戦闘は先に済ませないと。終わったら一緒に行こう」
 と頷く。
 そして暮葉・守人(浜辺の貴公子・e12145)が。
「それじゃ、皆準備はいいかな? そろそろ時間だから、行くよ」
 と皆を促し、そしてケルベロス達はハーバーランドへと辿り着くのであった。

●狂い散る命に
 ハーバーランドには、いつもと変わらぬ日常を過ごす人達の姿。
 平和な日常、子供達の笑い声に、杖を突きながら歩くご老人方の姿。
 ……そんな平穏の中、上空への警戒を強めて歩くケルベロス達。
「何時、落ちてくるのかな、ってね」
 ただ、フロッシュは口笛を吹いて、周りの一般人に要らぬ不安を与えない様にする。
 警戒と、日常の狭間で……ケルベロス達はハーバーランドを歩き回る。
 ……そして、ケルベロス達が到着して数分後。
「……来たぜ!」
 雲間から地上に向けて、みるみる内に落下する竜牙兵の牙。
 一番始めに気づいた守人の号令、直ぐにケルベロス達は反応。
 先ずは予想落下地点の辺りに待ち伏せて居たレナとソシアが。
「みなさん、取りあえず至急此処から避難をお願いします!」
「私達はケルベロスです。細かい事を説明している暇はありません。こちらに!」
 兎に角大きな声を上げて、この場が危険である事、ここから逃げなければならない事、の二つをポイントに声を上げ、兎に角この場から避難する様、光の翼を展開しながら、指示。
 ……突然の言葉に一瞬は戸惑うも、とるもの取らず、その場から避難していく一般人。
 ご老人など、素早く避難する事が出来ない人達については、肩を貸して、僅かに飛翔。
「っ……そこの方、この方に肩を貸して、一緒に避難を!」
 と、テキパキと避難指示を与え、落下地点からの一刻も早い離脱を指示する。
 ……その間にも、空から落下する竜牙兵の牙……地面へと落下し、地を穿ち、土埃を上げる。
「良し、包囲陣だ」
 と雄太に頷き、避難させている二人を除き、残る仲間達で牙の全周囲を包囲。
 ……土埃が晴れると共に、牙は竜牙兵に瞬く間に姿を変化。
『……ヘ、ヘヘヘ!!』
『サァ、グラビティ・チェインを狩ルトシヨウ!!』
 カタカタと音を立てながら笑う竜牙兵達、それに真っ正面から対峙すると。
「ココから先は通行止めだ、悪いが行かさせねぇよ!」
「そうだ。グラビティ・チェインを得る為に罪も無い人達を殺す? ……ふざけた事、させねえよ!」
 守人、雄太が怒号と共に言い放ち、更に殺気と剣気を解放し、竜牙兵を威圧。
『ヌゥ……!?』
 ほんの一瞬えはあるが、怯んだ竜牙兵。
 でもすぐに。
『オモシレェ、コロセルモノナラコロシテミロ!!』
 骨をカタカタ鳴らし、最前列に立った竜牙兵がゾディアックソードを空高く掲げる。
 ……でも、その大きな隙を突いて、どこからともなく現れたのは……フロッシュ。
「はぁ!!」
 と不意打ちの形で、その竜牙兵に制圧射撃の一撃を放つ。
『ヌゥ!? ジャマスルナ!!』
 と別の竜牙兵が睨み付けて、別の方向から剣を抜くが、不敵な笑みを浮かべたフロッシュ。
「そうは問屋が卸さない……ってね!!」
 と流れる様な動きでその攻撃を回避。
 そして、入れ替わるように桜子と焔華がスターゲイザーと獣撃拳で迎撃。
 更にエドワードは、何処から持ってきたのかは分からないが、持ち込んできた手榴弾を竜牙兵に向けて無差別に投げ込み、大量爆破。
 更に土煙が舞い上がるが、すぐに煙は落ち着く。
 ……その間に、避難させていたソシアとレナも戦列に合流し、ケルベロス8人が竜牙兵五体を完全に包囲する。
 ……包囲された竜牙兵の方が不利な筈ではあるが、決して竜牙兵は弱音を吐かない。
 いや、むしろ。
『テメエラ、全員ブッ殺ス!!』
『俺ノ剣ノサビニシテヤルゼ!!』
 表情筋はないものの、ニタア、と笑みを浮かべた様にも見える。
 ……そんな竜牙兵達に対し、フロッシュは暴風形態で暴風を撒き。
「アタシたちが剣の錆? 何言ってるのかな、アタシらに殺されるのがアンタ達だよっ!!」
 と、敵陣の注意を強く惹きつける。
 そしてレナが、前衛陣へメタリックバーストを付与し、取りあえず狙アップを付与。
 強化を受けた雄太と桜子が。
「一般人の方には行かせねえ!!」
「そうだよ。桜の花々よ、紅き炎となりて、かの者を灼き尽くせ」
 雄太はサイコフォースを竜牙兵の足元に放ち挑発、更に桜子も『紅蓮桜』で燃え上がらせる。
 クラッシャーの効果でダメージは倍増……その一方、フロッシュは。
「絶対行かせない! ここで止ってて貰うから!」
 と、サイコフォースの一撃を放つ。
 ……そしてスナイパーの守人、焔華。
「取りあえず、一匹でも倒す事に集中しようか」
「そうですね。霊弾よ、敵の動きを止めて下さい!!」
 と雷刃突とプラズムキャノンによる猛攻、そしてエドワードのファナティックレインボウと、ソシアのライジングダークが続く。
 ……流石に集中攻撃を受けた一体の竜牙兵は、かなり厳しそう。
 でも、回復行動を決して取る事は無い竜牙兵。
 例え手負いであっても、攻撃を重ね続ける。
 ……そして、そんな竜牙兵の猛攻……身を呈して庇うはエドワード、ソシア、そしてソシアのウイングキャットのミラ。
 三人で代わる代わる好悪劇を受ける事で、ダメージの分散を図る。
 次の刻になれども、桜子が。
「必殺の光線だよ、これでも喰らえー!」
 と桜子のコアブラスターに、雄太も。
「骨だけの方が軽くて投げやすいな!」
 と、骨に掴みかかりながらの達人の一撃。
 地面落下の衝撃で、骨の体が四散するも、それに入れ替わる様に別の竜牙兵が一閃。
 ……その攻撃を、唇を噛みしめ。
「痛……っくねぇ!!」
 と、雄太は気合いで耐えきる。
 そして、エドワードが『Haunt and Stalk』でのパラライズ効果を付与する一方、ソシアは戦術超鋼拳で、一体に確実に攻撃。
 そのターゲットへ更に。
「ッハッハッハァ!! ComeOn! ChickenBone!」
 手をクイクイと招きながら、威嚇。
 そしてフロッシュの戦術超鋼拳に、守人の素手で引き裂く、そして焔華が。
「この一撃、貴方に耐えられますか!?」
 と獣撃拳。
 そしてレナがクイックドロウを撃ち抜き、更なる一体を仕留める。
 ……その後もケルベロス達は、竜牙兵の攻撃をディフェンダーが受け止め、被害をレナが確実に回復。
 そして、ギリギリの攻防を繰り返しながら、経過する事十数分。
 ……残るは後一体……そんな竜牙兵に。
「吹き荒べ大嵐……クタバレ骨人形! 武力諸共に根こそぎ狩りとれぇっ!!」
 と『ソニックブレイク”フォルツァンドゲイル”』を放ち、深い一撃を叩き込む。
 そして桜子が。
「貴方達を、氷に閉じ込めてあげるよ」
 とアイスエイジ、更に雄太が。
「これが、ドラゴン殺法だ!!」
 『飛龍原爆固め』を叩き込むと……その一撃に竜牙兵の体躯は、全てが粉々に崩壊するのであった。

●明ける前に
 そして、ケルベロス達は無事に竜牙兵を討ち倒す。
 ……周囲に対する被害は結構爪痕を残しているものの、一般人に対する被害はゼロ。
「取りあえず、終わった……かな?」
 ゴーグルを外し、ニッ、と笑みを浮かべるフロッシュに、桜子も。
「そうみたいだね……うん、皆お疲れ様」
 と優しく微笑みつつ、皆の傷痕を一つ一つヒールグラビティで修復していく。
 ……取りあえず、重傷迄負った仲間達は居なかったので、一安心。
 そしてケルベロス達はそれぞれの傷を癒した後には。
「良し。それじゃ後は破損箇所の修復と、避難した一般人の怪我の回復を始めようか」
「そうだな。結構広い場所に被害が及んでるし、手分けして治していくとしようか……俺はそういうの無いけど」
 と守人に雄太は苦笑。
 取りあえず、ヒールグラビティを使える人はヒールグラビティで修復。
 ヒールグラビティが使えない人は、壊れた破片などを片付けたり、力仕事で片付けたり……と。
 ……一通り修復等を終えると共に。
「さて、と……それではレナ、折角ですし散歩しましょうか?」
「うん」
 レナとソシアは、二人でハーバーランドへ散策開始。
 そして、他の仲間達も……折角のハーバーランドを楽しもうと、各々の気持ちと共に、ハーバーランドへ散っていくのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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