狂笑の太陽、紫の星

作者:雷紋寺音弥

●笑顔の修羅
 巨大な岩が立ち並ぶ、山と山の間にある採石場。
 既に使われなくなって久しいこの場所で、夕刻の陽を浴びて飛翔する影が一つ。
「てやぁぁぁっ!!」
 紫の閃光が煌めき、鋭い爪先が岩塊を砕いた。舞い散る粉塵を払いつつ、星乃宮・紫(スターパープル・e42472)は額の汗を腕で拭うと、確かな手応えを感じて息を吐いた。
 女子中学生の紫としてではなく、正義のヒロイン、スターパープルとして。デウスエクスの襲撃がなくとも、日々の鍛錬は欠かせないと。そう、彼女が思った時だった。
「へぇ……あのサイズの岩を砕くなんて、なかなかやるね」
 突然、後ろから声がしたことで、紫は思わず振り返った。
 採石場の崖の上。夕陽を浴びて佇むのは、巨大な槍を持った影。
「あ、あなたは……!?」
 瞬間、紫が身構えたところで、影は颯爽と崖から飛び降り、着地した。その身の丈は、3mを優に超える。およそ、地球の人間としてはあり得ない長身が、目の前の人物が紛うことなきエインヘリアルであることを物語っている。
「やっぱり、俺を笑顔にさせてくれるのは君だけだ。……さあ、楽しませてくれよ! ほら、早く!!」
 今まで無表情だったエインヘリアルの顔が、実に楽しそうな笑顔へと変わった。戦闘狂というやつだろうか。突然のことに戸惑う紫を余所に、エインヘリアルは手にした槍を高々と掲げ、猛烈な勢いで突撃して来た。

●荒ぶる太陽
「招集に応じてくれ、感謝する。星乃宮・紫(スターパープル・e42472)が、修行中に宿敵のエインヘリアルに襲撃されることが予知された」
 連絡を取りたかったのだが、生憎と辺鄙な場所で鍛錬を行っていたために、携帯電話の電波が届かなかった。至急、現場へと向かった上で、彼女を助けて欲しい。そう言って、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に、事態の詳細について語り始めた。
「出現するデウスエクスはエインヘリアル。槍の使い手で、コロナという名前以外には、殆ど何も分かっていない」
 外見は地球人の少女にも似ており、星霊甲冑は脚部を覆うプロテクターのみ。だが、性別に関しては不明のままであり、戦闘の際は冷静で寡黙な性格が一転、暴力的で苛烈な攻撃を繰り出す戦闘狂と化す。
「敵は槍の使い手だが、それだけでなく素手での格闘も得意としているようだな。戦闘好きのエインヘリアルだが、力任せに暴れる脳筋ではないぞ。高い攻撃力と厄介な技の数々を併せ持った、難敵と思って事に当たってくれ」
 クロートの話では、コロナの使用する槍はサンライトという名前らしい。その名の通り太陽の力を宿した槍で、炎を纏って竜の如く戦場を駆け、光を曲げて幻影を見せる。また、素手でのパワーもかなり高く、拳の一撃はあらゆる加護を容易く粉砕する威力を秘めている。
「今から向かえば、紫がコロナに倒される前に介入できる。現場は、既に使われなくなって久しい採石場だ。周囲の被害を気にする必要のない場所なのは幸いだな」
 普段は無表情なコロナは、好敵手と出会った時にのみ笑顔を見せる。だが、その笑顔のために、誰かが殺され、涙する者が出るというのであれば……それを許すわけにはいかないだろう。
 犠牲の上に成り立つ笑顔など、この惑星には必要ない。そう言って、クロートは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)
村雨・ベル(エルフの錬金術師・e00811)
フォーネリアス・スカーレット(空を蹂躙する突撃騎士・e02877)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
星乃宮・紫(スターパープル・e42472)
桜衣・巴依(紅召鬼・e61643)
肥後守・鬼灯(毎日精進日々鍛錬・e66615)
リセス・メリルシーネ(エンドイレーサー・e66745)

■リプレイ

●落日の刺客
 夕刻の太陽に照らされて、赤く染まる採石場。夕陽を背に受けて立つエインヘリアルの影が、その長身よりも更に長く伸びている。
「あなたは、あの時の……」
「へえ、覚えていてくれたんだ。それじゃあ、早速だけど続きをしようか! 今度は本気で、手加減もなしでさ!」
 そう言うが早いか、コロナと呼ばれたエインヘリアルは、星乃宮・紫(スターパープル・e42472)へ向けて槍を構えた。
「上等よ! また私を狙ってくるなら、返り討ちにしてあげる!」
 対する紫も、覚悟を決めて拳を構える。もっとも、自分だけで目の前の敵を倒せる可能性は、万に一つもないと解っていた。
 迂闊に相手の間合いへと踏み込めば、その瞬間に痛烈な反撃を食らわせられることだろう。だが、そうして機会を窺っている間にも、敵は容赦なく紫との間合いを詰めて来る。
「あれ、どうしたんだい? 君から仕掛けてこないなら、こっちから行くよ!」
 間合いを測るだけの紫を見て、コロナは実に楽しそうに笑いながらも、手にした槍を軽く回しながら距離を詰めて来た。が、次の瞬間、立て続けに撃ち込まれた砲弾の爆風が、コロナの足下に着弾して行く手を阻んだ。
「そこまでです! スターパープルを、やらせはしません!」
 砲撃の放たれた方向から声がする。見れば、いつの間に駆け付けたのだろうか。採石場の崖の上に、大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)を先頭とした仲間達が、夕陽を背に立っていた。
「大丈夫ですか? 今、守りを固めますね」
 桜衣・巴依(紅召鬼・e61643)の指先に装着された指輪が輝き、紫を光の壁で包んで行く。そんな中、周りに散らばる岩塊を見て、ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)は思わず呟いた。
「それにしても……いつもこんなところで特訓してたんだな、紫」
 もっとも、今はそんなことを気にしている場合でもない。数の差を前にしても、敵のエインヘリアルは、何ら動じた素振りを見せていない。
「なぁんだ、仲間がいたんだね。でも、これはこれで面白そうかな? さあ……君達が俺を笑顔にしてくれる存在かどうか、試させてもらうよ!」
 あれだけの一斉砲撃を受けて、この余裕。ともすれば、好敵手が増えたことを喜んでいるようでもあり。
「……紫は、みんなの笑顔を守るために、自分の笑顔を捨ててまで頑張ってるんだ。悪いけど、あんたの身勝手な笑顔に付き合う暇はない」
 それでも戦うというのであれば、ここにいる全員で狂った笑顔に付き合ってやる。そう、ロディが言ったところで、紫もまた頷いた。
「みんな、ありがとう……。一緒に戦って!!」
 これだけの仲間がいれば、百人力だ。気を取り直し、紫は拳を構えてコロナと対峙する。そんな中、他の者達も一斉に身構える後ろで、リセス・メリルシーネ(エンドイレーサー・e66745)だけは静かに様子を窺っていたが。
(「半月前の事件から、どれだけ彼女達が成長したのか。お手並み拝見ついでに、此方もやらせてもらうとしましょう」)
 あの敵は強い。それこそ、下手に攻撃を食らったら最後、こちらが一発で昇天し兼ねない程に。
 ならば、そのような敵を相手に、仲間を得た紫はどう戦うか。後ろで見守るリセスの目に映ったのは、初手から全開で仕掛ける紫の姿。
「いくわよ! パープルパン……ッ!?」
「残念、甘いよ♪」
 まずは先手必勝。いきなり大技を繰り出す紫だったが、しかしコロナは彼女の攻撃を、軽く槍で捌いて見せた。
「慌てるな、紫! まずはオレが足を止める!」
 続けて仕掛けたロディの蹴りが炸裂し、コロナの身体が激しく吹き飛ぶ。やはり、いきなり大技を仕掛けるのはリスクが高い。そもそも、敵の傷口を広げるのに特化した技は、初撃に用いるのにはあまり向いていないのだ。
「ふふっ……。今の蹴りは、なかなか素敵だったよ」
 空中で槍を回して勢いを殺し、颯爽と大地に降り立つコロナ。やはり、一筋縄で行く相手ではなさそうだ。だが、用いるのが長槍でないのであれば、勝機はあるとフォーネリアス・スカーレット(空を蹂躙する突撃騎士・e02877)が仕掛けた。
 刺突だけでなく、斬撃や殴打にも使える長槍に対して、突撃主体の騎士槍は不利だ。しかし、格闘混じりの短槍ならば、リーチの面で自分に利があると踏んで。
「槍使い同士、弱い所は知ってるのよね!」
 稲妻を纏った槍先で、真正面からコロナを突く。が、突進の衝撃に再び弾き飛ばされても、コロナは笑顔を収めることもなく。
「俺の弱点を知ってるって? だったら……コイツを止めてみなよ!」
 そう言って、コロナは満面の笑みを浮かべつつ、手にした槍を天高く投げた。
「投槍!? ……しまった、後ろが!?」
 フォーネリアスが気付いた時には遅かった。
 夕陽の光を受けて、空中で分裂して降り注ぐ無数の槍。確かに、真正面からの突き合いでならば、敵の槍はパワーもリーチも劣っていた。しかし、投擲を主体にしたコロナの技は、射程だけならフォーネリアスを優に上回る。
「させるな! 全員、壁を作れ!!」
 敵の狙いを察した秋櫻が、慌てて防御の陣形を取るよう指示を出す。各々のサーヴァントも加わって自ら降り注ぐ槍に対する壁となったが、その代償として早くも視界がぼやけ、意識が朦朧とし始めた。
「これはいけませんね。同士討ちに持ち込まれるのは勘弁です」
 村雨・ベル(エルフの錬金術師・e00811)が、すかさず肥後守・鬼灯(毎日精進日々鍛錬・e66615)の身体を魔法の木の葉で覆い隠す。彼女自身に、仲間達から幻覚を取り払う術は無い。が、癒し手の力を高めることができれば、それだけ脅威の排除も容易になるはずだと。
「皆さん、しっかりしてください。さあ、ここから立て直しましょう!」
 油断は大敵。紙兵を散布する鬼灯の言葉に、意識を取り戻す仲間達。
 戦いは、これからが本番だ。狂った太陽の笑顔を止めるため、灼熱の槍を駆るエインヘリアルと対峙するケルベロス達の影が、採石場に細く、長く伸びていた。

●沈まぬ太陽
 戦闘狂のエインヘリアル。それを聞いて、どのような者を想像するだろうか。
 粗暴で野蛮。猪突猛進で無鉄砲。筋骨隆々とした肉体を持ち、力任せに暴れ回る姿を思い浮かべる者も多いだろう。
 だが、それらのイメージを悉く覆す程に、コロナの戦い方はスマートだった。戦いを望みこそすれど、その思考は冷静にして冷徹。どのように戦い、どのように相手を倒せば己の嗜虐心を満たすことができるのか、解った上で戦っている。
 正に、冷静に狂っていると言った方が正しい相手だった。だからこそ、単に粗暴なだけの相手よりも、コロナは危険な存在だった。
「どうしたんだい? 君達の力は、そんなものか?」
 秋櫻の放ったミサイルの雨を槍で薙ぎ払い、コロナは実に楽しそうな笑みを浮かべた。
「さすがに手強いですね。ならば、これはどうでしょうか?」
 続けて、シャーマンズゴーストのイージーエイトさんと共にベルが仕掛けるも、彼女の投げた対デウスエクス用のカプセルを食らってもなお、コロナの勢いは止まらない。
「おっと、今のは少し強烈だったね。……けど、それだけだ!」
 身体をウイルスに汚染され、脇腹を爪で貫かれても気になどしない。回復も補助も持たないコロナにとって、彼女達の技では単に少しばかり威力が高いグラビティ以上の効果は望めない。
(「動きを止めて、そこまではいいわね。けど……このままだと、力の差でいずれ押し負けるわ」)
 常に真正面から突撃して行くフォーネリアスの姿を後ろから見定め、リセスが静かに如意棒を握り締めた。
 敵の足を止め、機動力を削ぐ。確かに有効な作戦だが、攻撃に特化しているのがフォーネリアスだけでは、どうしても火力が乏しくなる。
 結果、図らずも持久戦のような戦い方になってしまったが、そのような戦い方をするのであれば、せめて時間差で体力を削る術を用意しておく方が賢明だった。なにしろ、敵は攻撃力が凄まじく高い。いかに秋櫻達が守りを固めようと、このままでは強引に押し切られてしまう。
「くっ……その身に蝕むあらゆる毒を祓いたまへ……」
 見れば、巴依が幻視に惑わされつつも懸命に抗い、白く輝く狛犬を呼び出していた。その間、攻撃はライドキャリバーの緋椿に任せていたものの、気合で幻覚を吹き飛ばせない彼女では、味方の盾になり多数の攻撃を受けることもまた、相応のリスクを抱えてしまう。
 仕方がない。このまま後ろから援護射撃を続けても良かったが、少しばかり前に出るのも一興か。
「良いわ、とても味しいそう。その魂を私にくれるかしら。この妖竜メリジューヌに!」
 それだけ言って、リセスは恍惚と色欲の入り混じった表情を浮かべながら、二つに分解した如意棒を振り回してコロナに迫る。
「こっちでも援護するぜ! とにかく、そいつの力を削いでくれ!」
 ロディもまたリボルバー銃による援護射撃を行い、無数の銃弾が着実にコロナの力を奪って行ったが、それでも敵はどこか楽しそうだった。
「いいね、君! 君も俺と同じで、戦うことで笑顔になれる人なのかい?」
「さあ、どうかしらね? 少なくとも、敵には情けも容赦もかけない主義よ」
 激突する拳と如意棒。互いに一進一退の攻防を繰り広げる二人の姿に、心の奥で何かを鼓舞されたのだろうか。
「今度は逃がさないわよ! パープルメタルナックル!」
 リセスの攻撃を捌き切れず、顔面を打たれてバランスを崩したコロナの正面から、紫が鋼の拳を振り上げ叩き込んだ。
 瞬間、木っ端微塵に粉砕される、コロナの履いていた脚のアーマー。元の火力が足りないのであれば、敵の防御を下げることで補えばよい。
 作戦としては、間違いではなかった。しかし、コロナの得意とする間合いもまた、他でもない接近戦だ。
「岩だけじゃなく、俺の星霊甲冑まで砕くなんてね。やっぱり、君は俺が見込んだだけのことはある! あの時、一気に殺さなくて本当に良かったよ!」
 殴る、蹴るなら、自分も負けてはいない。狂笑と共に繰り出されたコロナの拳が、深々と紫の腹に突き刺さり。
「……くぅっ……」
 途端に襲い掛かる凄まじい衝撃。あまりの強さに、内臓を全て吐き出しそうだ。
「しっかりしてください! まだ、倒れたら駄目です!」
 慌てて鬼灯が応急手当てを試みるも、紫のダメージは思った以上に深い。巴依より授かった光の盾も粉々に砕かれていたが、しかしそれがなかったら、確実に倒されていたところだ。
 恐るべきは、冷徹非情な戦闘狂。既に日は落ち掛けていたが、しかし目の前の太陽は、未だ沈む素振りさえ見せなかった。

●日、没する時
 夕陽が地平線に頭を隠し、少しばかり薄暗くなった頃。採石場で繰り広げられる戦いは、いよいよ佳境へと突入していた。
 長引く攻防によって、既にサーヴァント達の姿は無い。それだけでなく、守りに徹している秋櫻や巴依も、そろそろ限界に近かった。
「強い……ですね。まだ、行けますか?」
「大丈夫です。桜衣流陣描術士として立つ以上、手は抜けませんから!」
 肩で息をしつつ問う鬼灯に、巴依が答えた。そんな巴依自身、既に敵の攻撃から仲間を庇い過ぎでボロボロだ。
 もっとも、それはコロナもまた同じこと。攻撃こそは最大の防御であると、最初に仕掛けたのはロディだった。
「やれるな? 紫。……行くぞ!」
「ええ、わかったわ!」
 そう、紫が頷いた瞬間、ロディはアームドフォートを砲撃形態へと変形させ、全身のエネルギーを注ぎ込み叫ぶ。
「MAX! ぶちかます!」
 文字通り、全身全霊の一撃だ。さしものコロナも成す術なく、凄まじい爆発と共に宙を舞い。
「続けて行くわよ! 来て、カルネージウエポン!」
 追い討ちとばかりに、空中で騎兵槍を構えて突撃するフォーネリアスだったが、しかし敵もまた負けてはいなかった。
「素晴らしい勢いだね。でも、言ったはずだよ……。リーチは俺の方が長いって!」
 落下しながらも、コロナは受け身を取ることより、相手の迎撃を優先したようだ。
 満面の笑みを浮かべ、放たれた投槍が炎を纏う。その姿は、太陽より噴き出す紅炎の如く。
「拙いわね。この間合いじゃ……」
 正面からの直撃は避けられない。炎の槍と激突し、空中で激しい爆発に飲み込まれたフォーネリアスを前に、リセスが思わず駆け出そうとした時だった。
「騎士を……ナメるなぁッ!」
 爆風の中から飛び出して来たのは、他でもない騎士槍を構えたフォーネリアスだった。
 鎧は弾け飛び、髪もまた焦げてはいるが、しかし彼女は退かなかった。ただ、ひたすら真っ直ぐに。正面から敵の槍と激突し、そして見事に競り勝ったのだ。
「この一撃なら貫けない物なんて無い! カルネージウエポン、セット。これが、航空騎士乾坤一擲の一撃! 急降下突撃よッ!」
 少しでも間合いが狂えば、それだけで自爆になり兼ねない危険な技。それを承知で仕掛ける、フォーネリアスの瞳に躊躇いはない。
「……ぐっ! こ、これは……!?」
 胸元を貫かれて大地に縫い付けられたことで、コロナの顔に初めて浮かぶ焦りの色。
 だが、もはや流れは変えられない。それでも強引に変えようと言うのであれば、それもまた邪魔してやらんと、ベルが自慢の拘束制御術式を解放し。
「拘束制御術式三種・二種・一種、発動。状況D『ワイズマン』発動の承認申請、『敵機の完全沈黙まで』の能力使用送信ー限定使用受理を確認」
 止めの一撃として用いるのは、少しばかり威力が足りない。が、これで良いのだ。止めの技を繰り出すのに相応しい者は、他にいる知っていたから。
「近接高速格闘モード起動。ブースター出力最大値。腕部及び脚部のリミッター解除。対象補足……貴方は私から逃れられません」
「紫の連撃、味わいなさい!」
 まともに動けなくなったコロナへ、秋櫻と紫の二人が同時に仕掛ける。殴り、蹴り、そして吹き飛ばし。無数の打撃による連続攻撃が、情け容赦なくコロナを遅い。
「今です、スターパープル!」
「とどめよ! はあああああ!!!」
 最後は必殺の蹴りが、コロナの胸板を鋭く貫く。だが、己の肉体が崩壊して行くのを感じながらも、コロナはどこか幸せそうだった。
「ああ……やっぱり、俺の見立ては間違っていなかった。君達との戦い……楽しかったよ……」
 これで想い残すことは何もない。満面の笑みを浮かべつつ、夕刻の採石場に巨体が散った。

●笑顔の先
 気が付くと、戦いの終わった採石場は、すっかり暗くなっていた。
「取り敢えず無事に終わった、かな」
「頑張ったわね、お疲れ様」
 巴依とリセスに労われ、深々と頭を下げる紫。
「ほ、本当にありがとうございました……」
 これでまた、自分は少しだけ強くなれたはず。その力を、まだ見ぬ誰かの笑顔を守るために使おうと、夜空の星に向かい決意した。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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