さつまいもはそのままが至高!

作者:三ノ木咲紀

 日本屈指のさつまいもの産地であるその町では、さつまいも祭りが開かれていた。
 いも掘り体験や芋版作り体験もあるが、観光客のお目当てはずらっと並ぶさつまいもをテーマにした屋台たち。
 定番の石焼き芋だけではなく、スイートポテトや大学芋、ケーキにタルトに芋ようかん。スイーツだけではない。さつまいもご飯や煮物にきんぴら、サラダにスープにコロッケに。
 屋台じゃあまり見かけない料理もたくさん揃い、青空の下コンサートを聞きながらテーブルでゆっくり食べることができる。
 毎年人気のイベントに、一体のビルシャナが地団駄を踏んだ。
「なにこれなにこれさつまいもに対する冒涜だわ!!!」
 羽毛の腕を振り上げたビルシャナは、さつまいもを模したブーメランをスイートポテトの屋台に叩きつけた。
 途端に凍りつく屋台。慌てて逃げ出す観光客を尻目に、ビルシャナは配下に大声で指示を飛ばした。
「あーなたたち! 焼き芋とふかし芋以外の屋台は全部壊すの! 壊して薪にして、焼き芋パーティにしちゃうのよー!」
「はい!」
 十名ほどの配下は、鉄パイプや金属バットを手に屋台を襲撃し始める。
 襲われる屋台の店主は抵抗を試みるが、配下となった一般人には敵わない。
「やめろ! なんで襲うんだ!」
「なんで……? 決まってるわ! あーなたたちが神聖なるさつまいもに、やれバターだのやれ醤油だの、異物混入してさつまいもの絶対領域を冒しているからに他ならないわ!」
 恍惚とした表情を浮かべたビルシャナは、両手を広げるとどこからともなくさつまいもを出現させた。
「さつまいもはそのままが至高! 焼き芋とふかし芋以外は邪道よ邪道! さつまいもの良さを殺す殺芋行為に他ならないわ! さああなたたち! さっさと片付けてやきいもパーティーよ!」
 ビルシャナが破壊行為に参加してしばし。
 熾火を囲んだビルシャナとその配下達が、焼き芋が焼けるまでの間輪になって踊り狂っているのだった。


「殺芋行為って……初めて聞きました」
 笑うのを必死にこらえる朔望・月(桜月・e03199)に、笹島・ねむは大きく頷いた。
「バターを入れると、お芋って死んじゃうのかな?」
 その辺りの機微は、ビルシャナにしかわからない。
 気を取り直したねむは、集まったケルベロス達に改めて向き合った。
「さつまいも祭りのさつまいも屋台にね、さつまいものビルシャナが現れるの! 皆にはこのビルシャナを倒して欲しいの」
 ビルシャナが現れるのは、さつまいも祭りの会場。会場にはさつまいも屋台目当ての観光客が多数訪れている。
 ビルシャナの周囲には、彼の主張に賛同する信者達が10人ほどいる。
 彼らに対してビルシャナの主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、戦わずして無力化できる。
 ビルシャナの配下となった一般人は、ビルシャナのサーヴァントのような扱いで戦闘に参加してくる。
 ビルシャナを倒せば救出可能だが、戦闘が不利になることは間違いない。
 ビルシャナが襲撃するのは屋台通り。一般人の避難さえ完了すれば、戦闘に支障はない。
 壊れた屋台も、ヒールは可能。時刻は昼下がり。
 ビルシャナは一体。ビルシャナ特有のグラビティを使う。ポジションはクラッシャー。
 配下には10人の一般人。皆さつまいもの食べ方は焼き芋かふかし芋が好き、という程度だったのが洗脳されて手先にさせられている。
 手を加えたさつまいもも美味しい! ということをインパクトをもって主張できれば、洗脳が解ける可能性が高い。
「無事にビルシャナを倒せたらね、皆でさつまいも屋台を楽しむのもいいと思うよ! おいしいものいっぱい、楽しんできてね!」
 嬉しそうに微笑んだねむは、さつまいもシェイクを一口飲んだ。


参加者
楠・牡丹(スプリングバンク・e00060)
セルリアン・エクレール(スターリヴォア・e01686)
朔望・月(桜月・e03199)
セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)
長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485)
八久弦・紫々彦(雪映しの雅客・e40443)
アメージング・ファンタスティック(測定不能のすごいやつ・e44964)

■リプレイ

 両手を広げたビルシャナは、さつまいもを振り回しながら叫んだ。
「さつまいもはそのままが至高! 焼き芋とふかし芋以外は邪道……」
「ちょっと待って」
 息巻くビルシャナの声を遮って、セルリアン・エクレール(スターリヴォア・e01686)はこめかに人差し指を当てた。
「焼き芋とふかし芋以外は邪道って……干し芋忘れてない???? ふざけてるのかな???」
 ぶっきらぼうに言い放つセルリアンに、ビルシャナは一瞬言葉に詰まった。
「ほ、干し芋はあーたアレよアレ。忘れて……もとい! こ、ここに干し芋屋台が無いからよ!」
 一瞬本音を垣間見せるビルシャナに、セルリアンは小さく鼻で笑った。
「個人的に干し芋は生でもよし。焼いてアツアツでもよしで大好物なんだが。なんで忘れられてるのかな??? お前のさつまいも愛は、その程度なのかな???」
 更に言い募るセルリアンは、こめかみの指をビシッと突きつけながら詰め寄った。
「そのままが至高って言っておきながら干し芋がラインナップにないのはどういうことだふざけているのか今すぐさつまいもに謝罪しろ!」
「シャラップ!」
 詰め寄るセルリアンを一喝したビルシャナは、さつまいもを高らかに掲げた。
「そんなに言うなら干し芋も加えてあげられなくはないけど、さつまいもはそのままが至高! これは揺るがないわ!」
「焼き芋とふかし芋だけとは了見が狭いな」
 肩を竦めた長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485)は、隣人力を発動すると重武装モードを全開にした。
 逃げ遅れた一般人達の注目を集めたゴロベエは、顔だけ重武装モードを解除すると大皿に盛られた大学芋を高らかに掲げた。
「はい! ちゅーもーく! さて今日の料理は大学芋。この世の全ての食材に感謝して……いただきます!」
 片手で重々しく礼をしたゴロベエは、とろっとした蜜のかかった大学芋を一口頬張る。
 その瞬間、ゴロベエの脳裏にサツマイモの皮の様な紫色の着物を着た女性の姿が思い浮かんだ。
 いい感じにムチムチでゴマの如き泣き黒子のある女性が、ゴロベエを優しく抱擁する。
「うーまーいーぞー! そうこれは……懐かしき母の抱擁! まず感じるトロリとした蜜の甘さ。次に感じるのはサツマイモ自身のホクホクとした食感と優しい甘さ。最後に鼻に抜けるゴマの香ばしさ! こんな美味しいものを要らないだなんて勿体無い」
 爪楊枝の刺さった大学芋を手に取ったセレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)は、一口頬張ると幸せそうに微笑んだ。
「ん~♪ 美味しいですっ♪」
 ビルシャナや信者達に見せつけるように頬に手を当てたセレネテアルは、さつまいものきんぴらを差し出した。
「さつまいものきんぴらは出来立てほくほくも美味しいですが、お弁当に入れて外出先で食べる事が出来るのも良いですよね~! 外出先に焼き芋を持って行くのはやっぱり大変です~」
 同情の目でビルシャナを見たセレネテアルは、信者達を見ると腕を組んだ。
「それに、火や石で熱を入れているという事は結局他の料理と同じでさつまいもに手を加えている訳で……。ふかし芋なんて水まで入れちゃってますね~!」
 うんうん頷いたセレネテアルは、さつまいもを取り出すとじゃじゃん! と掲げた。
「さつまいもをそのままと言ったら、当然これですよね~?」
 良い笑顔で生のさつまいもを取り出したセレネテアルは、良い笑顔で信者達に差し出す。
「はい! さつまいもをそのまま頂いてみてください~! 熱を通してないから甘味が無くて味がかなり物足りないですが、ちゃんと食べられますよ~! 普通は調味料をつけますがっそのままの美味しさを伝えるためファイトです~!」
 いつの間にか置かれた椅子に座ったセレネテアルは、テーブルに置いたきんぴらを摘みながら観戦モードで手を振る。
 配られた生のさつまいもに戸惑いを隠せない信者達をよそに、ビルシャナはさつまいもを口に入れ咀嚼した。
 そのまま美味しそうに飲み下したビルシャナは、至高の表情を浮かべた。
「いいさつまいもだわ! でもこれでアタシの戦意を削ごうだなんて、笑止千万!」
「信者の皆さんは、そうじゃないみたいですけどね」
 生芋を手にしたまま呆然と立ち尽くす信者達を示した楠・牡丹(スプリングバンク・e00060)は、呆れたようにため息をついた。
「別に焼き芋とかふかし芋が好きなのはいいんだけどさー、そればっかり押しつけないでほしいよねー。もっと他にも美味しい食べ方あるのに。そんなにそのままがいいなら皮付き泥付きのまま生で食べられるはずよね?」
 信者達に微笑んだ牡丹は、テーブルにとりどりのさつまいも料理を並べた。
「スイートポテト! バターとお芋のコラボレーションにお芋の甘さが口の中いっぱいに広がる! 滑らかな舌触りもベリーグッド! 濃いめの紅茶が欲しくなる一品! サツマイモのパウンドケーキ! こちらも美味しい! ごろっとしたおいもが入ってると尚良いね。そしてサツマイモチップス! 映画見ながらゴロゴロして食べられる! ジャガイモよりも甘みがあって幸せ!」
「あー! せっかくのさつま芋に色々混ぜてくれちゃって! 殺芋! 殺芋行為だわ!」
 牡丹に羽をずびし! と突きつけたビルシャナに、八久弦・紫々彦(雪映しの雅客・e40443)は静かに首を横に振った。
「これだけ調理法に幅のある食べ物の調理法を限定してしまうのはもったいないな。スイーツだけでなくおかずにもなるぞ」
 きんぴらやさつまいもの煮物を差し出した紫々彦は、湯気の立つ鍋の中からさつまいもの味噌汁をお椀によそった。
 続いてジャーの蓋を開け、炊きたて新米さつまいもご飯の天地を返す。いい匂いに鼻をひくひくさせる信者達の目の前でご飯と味噌汁をケルベロス達に振る舞った紫々彦は、改めてビルシャナと信者を見た。
「幅を狭めてしまうほうが殺芋行為じゃないかと思うね。……さ、他のメニューも食べてみろ。新しい魅力を見つけられるかもしれない」
 次々に出される多彩なさつまいも料理を、ケルベロス達が信者の目の前で美味しそうに試食する。
 美味しい笑顔が溢れる食卓に、セルリアンは二種類のご飯を出した。
「さつまいも茶飯と洋風アレンジさつまいもご飯だ。バターを効かせたポタージュとチーズケーキ。干し芋もあるぞ」
 食べやすく握られたおにぎりに、歓声が上がり手が伸びる。いつもとはまた違った味に仕上がったご飯を一口食べたセルリアンは、信者達に向き合った。
「調味料は、素材の味を活かしつつさつまいもの味を次の次元に昇華させる最高のパートナーだ。これを否定するのは、さつまいもを否定することに他ならないな」
 上がる歓声にゴクリと喉を鳴らした信者達に、ビルシャナは羽を広げた。
「騙されちゃダメよあなた達! 調味料なんてただのごまかし……」
「うるせぇ、四の五の言わずにカロリーを取れ」
 ビルシャナの声を遮ったアメージング・ファンタスティック(測定不能のすごいやつ・e44964)は、前へ出ると立ち竦む信者達にさつまいも料理の盛り合わせ皿を押し付けた。
 うまうまな皿を押し付けられた信者は、おずおずと箸を取ると料理を口にした。
 目をキラキラさせながら頬張る信者達に、アメージングは胸を張った。
「かろりーいずぱぅわ。時期的にも冬に向けて蓄えねばなりません、脂肪を」
 さつまいも料理に舌鼓を打っていたケルベロス達の幾人かは、「脂肪」の一言に一瞬食べる手を止める。それに気づかないアメージングは、一心不乱に食べる信者達に笑顔を向けた。
「素朴な味わいもおいしいですが、人類の知恵と創意工夫の結晶たる、カロリーマシマシ糖分マックスの力を味わう(物理的に)と良いでしょう」
「シャラップ!」
 ビルシャナは信者達が食べるのをやめさせようとするが、洗脳が解けかかった信者達の耳には入らない。
 アメージングの説得に頷きながら頬張っていた信者の一人が、胸焼けを起こして咳き込む。
 涙目になる信者に、そっとドリンクが差し出された。
「大丈夫? これでも飲んで落ち着いてみてヨッ」
 微笑むペスカトーレ・カレッティエッラ(一竿風月・e62528)の手からストローの刺さったコップを受け取った信者は、トロッとしたドリンクにホッと一息ついた。
「ありがとう。これ何?」
「さつまいものジュースなんだよネ」
 ペスカトーレの言葉に目を見開いた信者は、改めてジュースを口に含む。
「美味しい……」
「確かに、さつまいもに限らないけど、好きな食べ物でも揚げ物や煮物に限って苦手って人いるよネェ」
 腕を組んでうんうん頷くペスカトーレは、顔を上げると微笑んだ。
「でもやっぱり美味しい食べ物だからこそ、色んな食べ方で楽しめるって証拠じゃない?」
「僕、さつまいもには無限の可能性が詰まっていると思うのです」
 信者達に静かに語りかける朔望・月(桜月・e03199)の声に、信者達は顔を上げた。
「どのメニューも其々に良いところがあります。そのままでも美味しいのは勿論ですが、アレンジする事でお芋の新しい一面に気づく事ができます」
 目と耳を離せない信者達を見渡した月は、にっこり微笑むと受け入れるように両手を広げた。
「これは殺芋行為なんかじゃないのですよ。言うなれば、活芋行為なのですよ……!」
 いいこと言ったっていう顔で言い切る月に、信者達は憑き物が落ちたように頷いた。
 空になった皿を手に、ケルベロス達のいる方へと向かう。隣人力を駆使してそのまま避難させる月に、ビルシャナはわなわなと羽毛を握った。
「こうなったらアンタ達を倒して、再びさつまいも原理主義者に戻してやるわ!」
 新たなる言葉を生み出したビルシャナは、羽毛を振り上げるとケルベロス達に向かっていった。


「食らえ! さつまいもブーメラン!」
 さつまいも型のブーメランが、前衛に放たれる。
 衝撃を受けきり腕を凍りつかせた牡丹は、氷をものともせずに破鎧衝を繰り出した。
「食べ物を粗末にしちゃいけません!」
 声と共に放たれる痛烈な一撃が、ビルシャナの羽毛をえぐる。同時に動いたブローラが、凶器攻撃で追撃を掛ける。
 そこへ、風が吹き抜けた。
「暴風警報! 嵐が来るぞー!」
 ペスカトーレが手にしたルアーがカモメ型に変わり、ビルシャナへ突進する。
 直後起きる暴風雨。嵐に巻き込まれたビルシャナは、羽毛を逆立てながらもまだ立っていた。
 戻ってきたルアーをしまいながら、ペスカトーレは呟いた。
「最近魚以外を釣り上げる機会の方が多いなあ」
「お魚もいいですね♪」
 楽しそうに微笑む月は、前衛に向けて紙兵を散布する。地面を蹴って飛び出した夏雪の爪がビルシャナを抉った時、寒風が吹いた。
 鋭い冷気と氷の粒を纏った白い獣が、ビルシャナを睨む。
「白魔よ、駆け抜けろ」
 紫々彦の声で吠えた白魔の顎が、ビルシャナを捕らえる。
 人外の獣に襲われるビルシャナの耳に、三つ首の犬の遠吠えが響いた。
「ケロ君ご飯の時間だよー。ちょっとアイツ喰ってきてくれないかな?」
 現れた自宅の番犬 ケルベロスの頭を撫でたゴロベエは、ビルシャナを指差すと後頭を軽く叩く。
 更に吠えた獣がビルシャナを食い破る勢いで襲いかかる。
 連続する攻撃がビルシャナを釘付けにしている間に、セレネテアルは牡丹に駆け寄った。
 腕の氷を重そうに引きずる牡丹の両肩を手で触れ、目を閉じ氣を循環させる。
「体を貫く氣の流れ……平常の自分を感じてっ!」
 循環する氣の流れに、牡丹の腕の氷が溶けていく。
 そこへ、清浄の風が流れた。
 前衛を包み込むように、ウイングキャットのみるにゃが前衛を癒やしていく。
 体力は回復したが氷が残る前衛に、アメージングは翼を広げた。
「お戻しします。これが、一番≪よいかたち≫」
 手の骨を模した大きな光の翼が、前衛を包む。あったかくてくすぐったい光が消えた時、前衛の氷は消え去っていた。
 壊世を構えたセルリアンは、そっと目を閉じると日本刀を抜き放った。
「――死線を超えた罪、己が原罪の刃に蝕まれることで贖え」
 声と同時に放たれる一刹那の連技が、ビルシャナを切り裂く。
 戦いは続く。数分後、ビルシャナはよろりと立ち上がった。
「こんな殺芋者達なんて……認めないわ!」
「そんなに好きなら、焼き芋になっちゃえ」
 肩を竦めたペスカトーレが、ガジェットをビルシャナに向ける。
 直後燃え上がる炎。バスターフレイムに巻かれたビルシャナに、ペスカトーレは小さく舌を出す。
「焼き芋じゃなくて焼き鳥か」
 ペスカトーレの声に答えるように、ビルシャナは燃え尽きて消えていった。


 屋台のヒールを終えたセルリアンは、再開したさつまいも祭りの屋台を見渡した。
「さて、さつまいも屋台を巡ろうか。新しい料理との出会いがあると嬉しいんだが」
 その声に、アメージングははしゃいだ声を上げた。
「屋台巡りですやったー!!」
「行きましょう! 当然目指すは……」
 顔を見合わせた月とアメージングは、同時に拳を上げた。
「「全屋台のメニュー制覇!!」」
「当然ですね!」
「今、ここにはありとあらゆるお芋の夢とロマンが詰まってます! 僕と一緒に食べ尽くしに行きましょう?」
「うまうまあんまーなさつまいも。やはりおいもは正義です!」
 仲良く頷きあった月とアメージングは、屋台通りに駆け出した。
 二人を追うように歩き出したセレネテアルは、珍しいさつまいも屋台に目を輝かせた。
「さつまいもってこんな料理もあるんですね~! あ、これも美味しいそうですっ」
「干し芋の屋台、あるじゃねえか」
 呆れたように屋台で購入した値段お高めの丸干し炙り芋を頬張ったゴロベエは、口に広がる甘みに目を細めた。
 ねっとりとした食感と香ばしさ、そして干された事でより濃厚に甘くなった干し芋を心ゆくまで堪能するゴロベエの隣で、牡丹は焼き芋を頬張った。
「焼き芋も美味しいんだけどね。二つに割って、バターを落として。寒い日はあったかいのがいいもんねー」
 プロが焼いたホクホクの焼き芋に、甘じょっぱいバターの風味が華やかに広がる。
 料理を余すこと無く堪能したペスカトーレは、いきなりだんごを頬張ると目を見開いた。
「だんごなのに、中にさつまいもとあんこが入ってる」
「小麦の皮であんこと生のさつまいもを包んで一緒に蒸し上げる、熊本の銘菓だな」
 屋台で一つ購入した紫々彦は、普段食べられない銘菓に目を細めた。
 屋台グルメをテーブルに乗せて、さつまいもパーティの二次会が始まった。
 設置されたステージに立った月は、少し照れながらマイクを握った。
 事前に覚えてきた、さつまいもにちなんだ歌を歌う。
(「……櫻。僕、ちゃんと頑張ってますよ」)
 今は傍らに居ないビハインドへ届くよう想いを込めて歌う月の声は、秋風に乗せて響き渡っていった。

作者:三ノ木咲紀 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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